ギャグ系一護✕織姫のお部屋






…朝。

「はよ~ん!待ってたぜぇ、いっちごぉ~♪」

教室に入るなり、啓吾が俺に向かって大きく手を振っているのが目に飛び込んできた。

ニヤニヤした顔、今にも踊り出しそうな足取り。

俺は盛大に眉間に皺を寄せながら、挨拶代わりに1つ舌打ちした。










《3つの願い》











事の始まりは昨日、体育のバスケットの時間。

チーム毎に分かれてシュート練習をしていた時、啓吾が突然フリースローラインに立ち、ボールを構えた。

「なぁなぁ一護ぉ、今からフリースロー打つから!何本入ると思う?」
「ゼロ。」
「酷っ、即答!?もうちょっと悩んでから答えてもよくね!?」
「ん~ゼロ。」
「悩む時間も短っ!…じゃあ一護、今から3本打つから、もしシュートが入ったら、入った数だけ僕ちゃんのお願い事を聞いてくれる?」
「いいぜ、ゼロだから。」
「スゴい自信!傷つくっ!」

レイアップですらロクに決められない啓吾が、フリースローを決めるなんて、奇跡以外の何物でもないだろう?

…けどよ、起きちまったんだよな、その「奇跡」とやらが…。














「一護、最初のミッションだぜ。」
「…何だよ。」

俺が鞄を机に置くなり、スキップしながら傍へとやってきた啓吾。…そして。

「早速だけどさ、あそこにいる井上さんに、今日の下着の色を聞いてきてくれよ…ごはっ!」

びろびろに伸びた啓吾の鼻の下を見るに、ロクなこと言わねぇだろうと予想はしてたが…やっぱりソッチ系のネタかよ!

反射的に飛び出した俺の拳を頭に受けて、半泣きの啓吾がそれでも尚食いつく。

「酷い一護、約束破るの!?破っちゃうの!?そんな不誠実な男、井上さんのカレシ失格だぜ!?…ぶはっ!」
「…ウルセェ。」

クソ、つまんねぇ賭けに乗っちまったもんだぜ。

俺は啓吾に再びゲンコツを一発落とすと、仕方なく井上の傍へと歩み寄った。









「おはよう、黒崎くん!」
「…はよ、井上。」

俺が近付くと、井上は椅子から立ち上がり、いつも通りの明るい挨拶をしてくれて。
けれど、挨拶を交わした後、なかなか用件を切り出せずに黙りこくる俺に、きょとんとして小首を傾げた。

「なぁに?」
「や…えーと…その…。き、聞きたいことがあるんだ…。」

背中に感じる啓吾の視線に苛立ちながらも、俺が思いきってそこまで打ち明ければ、井上はニコッ…と天使の様な笑顔を見せて。

「うん、知ってるよ。」
「へ?」
「見せてほしいんだよね!」「は…はぁぁっ!?」

教室のど真ん中で思わず大声を上げてしまい、慌てて口を押さえる俺。

も、もしかしてさっきの啓吾との会話が聞こえてたのか!?

「いいよ、黒崎くんなら。」
「い、いいよって…。」

ちょ、ちょっと待て井上、相手がカレシである俺なら、そんなに簡単に許しちまうのか?
…だったらもっと早く言えば良かった…じゃねぇ、俺達まだ付き合い出してそんなに経ってねぇっていうのに…。

「だって、そのつもりで今日は頑張ってきちゃったんだもん。」
「な、何だと!?」

が、『頑張った』って何をだ!?
あれか?レースがいっぱいとかか?
まさかの紐?透けてるとかかっ!?

「ち、ちなみに…色…は?」
「え?色はねぇ、ピンクと水色と黄色と…。」

しかもめっちゃカラフルだし!
もう俺の想像の域を遥かに超えてるぜ、井上!

「待っててね、今見せるから!」

そう言って、おもむろに井上が腰の辺りをゴソゴソ探り始める。

「へ!?いや、待て井上、場所がここじゃあ…!」

だ、ダメだ井上!
オマエの下着を見ていいのは、世界中で俺だけだ!
他のヤツらには、例え1ミリだって1秒だって見せたくねぇんだ!

「じゃーん!!」「…へ?」

…しかし。

井上がゴソゴソと探っていたのは制服のスカートではなく、彼女の机の中だったらしく。

「ピンクが古典、水色が数学、黄色が英語だよ!」
「…はい?」

俺の目の前に広げられたそりゃあカラフルな3冊のノートに、目が思わず点になる。

「だって今日の日付、黒崎くんの出席番号だもんね。当たる確率高し!ですぞ!」
「…へ?」

俺がゆっくりと黒板を振り返れば、燦然と輝く今日の日付「15」、俺の出席番号。

「や、やべぇぇっ!!井上、そのノート貸してくれっ!!」
「はーい。」











「ちなみに、社会のノートはオレンジでね、理科は緑なの。何となくそんな感じしない?」
「そのイメージはよくわかんねぇけど、オマエの予習ノートはすっげぇよく解るぜ!」
「えへへ~、昨日頑張って予習したんだ!お役に立てて光栄っす!」



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