パズル







…翌日、屋上、お弁当。

心配してくれていたたつきちゃんに、私がアップルパイ片手に昨日黒崎くんと話したことを報告したら、たつきちゃんは笑顔で頷きながら聞いてくれた。

「…一護のヤツ、気の利いたこと言えるようになったじゃないの。でも、私から言わせてもらったら、織姫と一護は根っこの部分がそっくりだけどね。」
「ほえ?根っこ?」

私がきょとんとして小首を傾げれば、たつきちゃんはニッて笑って。

「そ。自分より他人を大事にしちゃうところや、意外と頑固なところ。正義感が強いところや、肝心なことは私に話してくれないところも、そっくりだわよ。」
「たつきちゃん…。」
「だから、一護も織姫といるとあんなに居心地良さそうに、穏やかにしていられるのよ。あんたは何も心配しなくていいんだよ、織姫。」
「…うん。」

私がたつきちゃんの言葉に素直に頷いたそのとき、遅れてきたみちるちゃんや鈴ちゃん、千鶴ちゃんがパタパタと走って来て、食事の輪に加わった。

「ねぇ織姫、昨日テレビでどっかの大学教授が言ってたんだけどね。恋愛って、自分と真逆の人を選ぶものなんだって!」
「へ?」

お弁当の包みを開くと同時に、鈴ちゃんは勢いよく話し出す。

「生物学的な話なんだけどね。同じタイプ同士で子孫を残すと、親に似たレベルの子供しか生まれないじゃない?でも、真逆のタイプと子孫を残せば、両親それぞれの能力や長所を受け継いだ、より優秀な子供が生まれるからなんだって。だから、織姫と黒崎くんが惹かれ合うのは道理だったって訳なのよ!」

箸を振り回しながらそう力説する鈴ちゃんに、私とたつきちゃんは思わず顔を見合わせてクスリと笑った。

「あはは…確かに、織姫と黒崎くんの子供なら、どんな子が産まれてきても不思議じゃないもんね。何でもできる赤ちゃんが産まれそう!」
「み、みちるちゃん!?あ、赤ちゃんなんて…その…!」
「おのれ黒崎!アタシの織姫と既に子作りの計画まで立ててるなんて…!いっそ私もその場に混じって…ぐふぁっ!」
「だから真っ昼間からそういう変態発言はやめなさいって言ってんのよ!」

…ねぇ、黒崎くん。

私とアナタが似ているのか、それとも真逆なのか解らないけれど。
私はただ、ずっとアナタの隣にいたいだけ。

アナタというピースに寄り添って、重なり合って出来上がるジグソーパズルはきっと、私にキラキラした無限大の景色を見せてくれるよ…。



          
 

              終







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《あとがき》



このお話は、2015年5月に発行されました、洸希様主催の一織アンソロジー「strawberry*love」に寄稿させていただいたものになります。

もう6年も前なのか…と驚きでいっぱいです!

若かりし頃、二次創作といえば同人誌しか手段がなく、興味がありながらも一人で本を作ってイベントで売る…なんて勇気がなかった私。
今ではインターネットが発達し、こうしてサイトを作ってお話を読んでいただけるようになりましたが、実際にアンソロジーを手にしたときは「自分の作品が本に載っている…!しかも一織サイトや支部でお見かけする有名な方々と一緒に…!マジか…!」と感激したことを覚えています。

このお話を書いた頃はまだ原作が完結していなかったので、「一織結婚しろー!」が合い言葉になっていました。したよ、しましたよ!可愛い息子もいますよ!(笑)

まだ一織が公式夫婦になっていなかった当時、「一護と織姫は似てるところが全然ない!性格のタイプも全然違う!だから合わない!」みたいな意見を見かけたことがあって、「違う、そうじゃない!」という熱い思いのもと、書き上げた作品です。
確かに一護はルキアやたつきちゃん、ネルちゃんには強い口調で言い返したりするのに対し、織姫にだけは絶対的に優しいですもんね。でもそれは「遠慮」ではなく「好意」であり、一護にとって織姫との時間が最も穏やかで癒されるものだった…ということなんですよね!「ぎゃあぎゃあケンカしている男女だけがカップルではない」ということを、一織が示してくれたんですよ…!(☆∀☆)
現実問題、旦那ちゃんと毎日の会話でぎゃあぎゃあ言い合っていたら落ち着かないし疲れちゃいます、私なら(^_^;)。

ちなみにラストの大学教授の話は「ほんまでっか」で聞きました。「まさに一織…!」とソッコーでネタに結び付けた6年前の私…(笑)。



6年も前の作品なので、サイトのお客様にはむしろこのアンソロジーをご覧になっていない方の方が多いのではないかと思います(逆に「私持ってます」という方がいらっしゃったら驚きです・笑)。
楽しんでいただけたら嬉しいです(*^^*)。

洸希様、その節は本当にありがとうございました!m(_ _)m



(2021.05.08)
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