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第2弾〜両想いな一織〜





久しぶりに訪れた、井上の部屋。

俺の制服を片手に、脱衣所へしばらく隠ってしまった井上。

コーヒーを啜り、テレビをぼんやりと見ながら、彼女を待つ俺。

…そして。

漸く姿を現した彼女に、俺は絶句した。












《初めての…》











「ねぇ、今度のサッカー部の練習試合の応援、行ってもいいかな…?」

…2週間前。

近々行われる練習試合のため、助っ人としてサッカー部に借り出された俺。
そんな俺の帰りを、井上は毎日、グラウンド横で待っていてくれて。
その日も、「影が長くなったね」なんて話しながら、二人で夕暮れの中を歩いていた。

「…は?」
「だから、黒崎くんの応援に行きたいの…。駄目かな…?」

あの必殺の上目遣いで伺う様にそう言う井上に、一瞬ぐらりと揺れる俺。

そりゃあ、応援に行きたいっていう彼女の気持ちだって嬉しいし。

…けれど、俺は井上の為に心を鬼にし、わざと素っ気ない返事を返した。

「駄目だ。」
「ど、どうして?やっぱり…邪魔?」
「ばぁか。ちげぇよ。」

直ぐにマイナス思考に陥る彼女に、大きく溜め息をついて。
俺は、頭をバリバリとかきつつその理由を告げる。

「オマエ、試合の相手校知らねぇだろ?…男子校なんだよ、しかもあんまり評判の良くねえ。」
「…だから?」
きょとんとして可愛らしく小首を傾げる井上に、俺は思わずがっくりと肩を落とした。

ああもう、そんなんだから駄目なんだよ!

井上のあまりの勘の悪さに、俺の声も次第にデカくなっていく。

「だから?じゃねぇ!!男子校にオマエみたいなのが来てみろ!狼の群れに仔羊投げ込むようなモンだろうが!」
「違うよ黒崎くん!狼さんに襲われるのは羊さんじゃなくて7匹の仔ヤギさんだよ!」
「はぁ!?オマエ今の話の流れ解ってなさすぎだろ!」

無邪気な井上は全くもって危機感がないが、男子校の男なんざ、女に飢えまくってるに決まってる。
そんな中に、この無防備極まりない井上が特盛揺らしながら来るなんて…俺、心配で試合どころじゃねぇし。
つーか、井上をその他大勢の男の視線に晒すって段階で俺的にはお断りだ。
…悪かったな、独占欲の強い心配性な男でよ。

「とにかく、駄目だったら駄目だ!」
「うう…。解った…じゃあ…考えるね。」

俺の意図が井上に伝わったかどうかはともかくとして。
井上が一体何を「考える」つもりなのか俺にはよく分からなかったが、とにかく最終的には井上が折れることでこの話にも決着がついた。











…そして、今に至る。

井上が、「学校帰りに家に寄ってほしい」と突然言い出して。
井上の部屋に上がれば、今度は「俺の制服を貸してほしい」と言い出した。まぁ、俺は部活帰りでジャージ姿だったから、制服の入った鞄ごと井上に手渡してやって。
脱衣場に引っ込んだ井上を待つこと20分。

脱衣所の扉が静かに開けられ、井上の足音がこちらへ近づいてきたのを感じ、振り返った俺、は。

「…黒崎くん!」
「お…う…!?」

…絶句した。

「ね、どうかな?」

井上は嬉しそうにそう言うが、俺は目を真ん丸く見開いたまま、二の句が継げないでいる。

井上、は。

俺の制服の上下を、裾を何重にも巻き上げて着ていて。

多分、胸はサラシか何か巻いてある感じで(でも本体がデカすぎて、不自然な膨らみが全然隠しきれていない)。

トレードマークの長い胡桃色の髪は束ねて上に纏め、その上からニットキャップを被って隠している。

「…これで、男の人に見えるかなぁ?」
「見える訳ねぇだろ!!まんま女だよ!!」
「ええ~!?そ、そんなぁ…!」

俺が即座に突っ込めば、心外だと言わんばかりの声を上げて、うるっ…と瞳を潤ませる井上。
ほら見ろ、その今にも落っこちそうなでっかい瞳。
アイドルみたいに可愛い顔も、ダボダボな制服に包まれた華奢な身体も、どう見たって女そのものじゃねぇか!

「たつきちゃんに相談したら、『織姫が男になれば応援に行けるんじゃないの?』って言われて…頑張って男装してみたんだけど…駄目?」「絶っ対ダメだ!!!」

あまりにも不自然で下手くそすぎる井上の男装に、当然俺の返事は『不許可』。
しかも、井上はやがてへなへなとその場にしゃがみ込んで。

「…ど、どした?井上…何か顔色が悪いぜ?」
「…うぅ…胸を締めすぎて…苦しいよぉ…。」
「ばぁか!どうサラシ巻いたって、オマエの特…胸は隠せねぇに決まってるだろ!ほら、早くほどけ!」
「うわーん、黒崎くんのサッカーの応援したいよぉ!」








《初めての、男装。》







…失敗。
















「きゃー!!黒崎くん、ナイスシュート!!」
「うわ!あそこにスッゲェ可愛い子がいるじゃん!!…ねぇねぇ、その制服って空座一高だよね…ひ、ひぃ!」
「ム…。」
「おいコラ、こいつは一護のなんだ。気安く声掛けんじゃねぇよ。」
「うわぁ、すいませんでした~!!」
「…ってか、こんな玉の蹴り合い、何が面白くてやってんだ?一護のヤツ…。」
「えへへ~。2人共来てくれてありがとう、茶渡くん、恋次くん!」


鉄壁ボディガード2人のお蔭で、黒崎くんからの許可をもらい、無事に応援に行けました♪



(2014.10.17)
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