短い話のお部屋






《狭い視野・織姫ver.》





昼休み、屋上。

青い空の下、心地よい風に吹かれながらランチタイムを過ごす、織姫達女子グループ。

そして、そこから少し離れたところに、一護達、男子グループ。

「ねえねえ、見て見て~!」

きゃあきゃあと女子高生ならではのハイトーントーク。多少距離があったところで、一護達の耳には嫌でも会話内容が飛び込んでくる。
何やら最近ご贔屓のアイドルグループについて熱く語っている啓吾を除いて、だが。

「ね、ね、カッコいいでしょう?!」

鈴やみちる、真花が何やら雑誌を広げて、織姫とたつきに見せている。

「ああ、最近話題の韓流グループね。」

たつきの相槌に、なんだ、あっちもこっちとそう変わらない話をしてるんだな…と一護はパックの牛乳を飲みながら思った。

「ね、ね、織姫もカッコいいと思うでしょ?」「うん、カッコいいね…。」

織姫のその返事に、一護の牛乳パックがくしゃっと音を立てた。

ちらっと織姫に視線をやれば、目を閉じてなにやら妄想トリップ中らしく。

一護の眉間の皺が、じわじわと増えていく。



…少しして、織姫が目を開けて現実に戻ってくると、ぽっと顔を赤らめて。

「…はあ、本当にカッコいいなあ、黒崎くん…。」
「ぶっ!!」

予想を遥かに超越した織姫の呟きに、思わず牛乳を吹き出しそうになった一護だったが、話をこっそり聞いていたのがバレては困るので全身を震わせてむせるのを堪えた。

「はあ?どういう展開なわけ?」
「さっき、この写真見て『カッコいい』って言ったじゃない!」

周りの友人の当然とも言える突っ込みに、照れたようにもじもじしながら織姫は答えた。「うん、カッコいいな、この服って思って…。」
「ふ、服ぅ?!」
「服しか、見てなかったの?」

唖然とするみちるたち。

「で、えと、黒崎くんが着たらきっと似合うだろうなあ…って思って…えへへ。」

どうやら織姫の脳内トリップでは、韓流アイドルのステージ衣装を身に纏った一護がダンスでもしていたらしい。

「ちょ、ちょっと、じゃあ本人達への感想は?!」

「え?えっと…ごめんね。芸能人とか疎くって…全部、同じに見えちゃうんだ。」

申し訳なさそうにそう言う織姫。


…むせるのを堪えきった一護の眉間に寄っていた皺はいつの間にか消えていた。顔が赤いのは、果たしてむせたせいだけなのか。


「…面白いね、本当に…。」
「ウム…。」

パンにかじりつきながら、そう呟いた水色に、頷くチャド。

「やっぱり?やっぱりボクの話は面白いっすか?!」

未だ独り舞台に立っていることに気づかない啓吾は、更にハイテンションになるのであった…。





(2012.9.15)
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