きっと2度目は






《きっと2度目はエピローグ・織姫side》





窓から見える景色は、すっかり秋の色。
屋上は少し寒そうだから、今日はたつきちゃん達と教室でお昼ご飯を食べることにした。

「お、美味しい~!」
バイト先からもらったチョコチップメロンパンに舌鼓をうつ私を、皆がニヤニヤしながら見ていることに、ふと気が付いた。

「なあに?私のほっぺたにご飯粒でもついてる?」
「いや、今日アンタが食べてるのパンだから。…そうじゃなくてさ、そろそろ織姫からの報告があってもいいのになあ…って思ってさ。」
「報告?」

たつきちゃんの言葉の意味が良く分からずに小首を傾げる私に、鈴ちゃんやみちるちゃんが嬉しそうに笑いかけた。

「またまた、とぼけちゃって!」
「水くさいなあ。黒崎くんと付き合い出したんなら、ちゃんと教えてくれたっていいじゃない。」

…はい?

ぽろり、私の手からメロンパンがこぼれ落ちる。

「…え、え、えええーっ?!」

思わず椅子からがたりと立ち上がってしまう私。
恥ずかしさが熱になって、身体中から吹き出すのを感じた。
「な、な、何でそんなこと…!」

つい昨日、やっと黒崎くんと両想いになれたばかりなのに、どうしてみんながもう知ってるの?
それに、付き合い出したなんて私自身実感がまだないし、黒崎くんは照れ屋さんだから、しばらくは隠しておこうって思ってたのに…!

慌てる私に、わっと千鶴ちゃんが泣きつく。

「あーん、何よ、何よ!二人で見せつけるみたいにお揃いのストラップつけておいて、とぼけないでよ~!」
「お、お揃い?!」

私は思わず自分のケータイを取り出した。
そこには、黒崎くんが買ってくれたのと同じデザインのストラップが付いている。

…黒崎くんと両想いなんて、正直今でも信じられなくて。
夕べの出来事が、夢なんじゃないかって不安になりそうで。
黒崎くんがアパートまで送ってくれた後、彼が買ってくれたのと同じデザインで、私のケータイに合わせて白を基調にしたパステルカラーのストラップを作ったの。
今朝目が覚めたときも、そのストラップを見て泣きたいぐらい安心した。
ああ、全部「本当」なんだって…。

でも、それが「お揃い」って…?

「一護のケータイ、それの黒っぽいのが付いてたよ。色は違うけどお揃いってバレバレだし。しかも、両方とも織姫の手作りでしょ?」
「二人の間になんにもないなんて、言わせないからね。」

たつきちゃんと鈴ちゃんが、ずいっと私に迫る。

けれど私は、昨日黒崎くんがストラップを買ってくれたときのことを必死に思い出していた。

黒崎くんが買ってくれたストラップは、3つ。
ピンク色のは、きっと遊子ちゃんへだ。
青色のは、多分夏梨ちゃんへ。
じゃあ、黒色のは…。

…そう言えば、黒崎くんのケータイも黒。

そっか…!
黒崎くんが、自分用に買ってくれていたんだ…!しかもそれを、ちゃんとケータイに付けてくれた…!

「く、黒崎くん…!嬉しい…!」
今更気が付いた事実に、私は思わず口元を手で覆った。

「あーあ、のろけちゃってるよ、このコは。」
「幸せそうな顔しちゃって、ね~え。」
「く、悔しい、黒崎め~っ!」
私の頭の中は黒崎くんでいっぱいになっていて、周りの友達の声も何だかよく聞こえない。

「こら、織姫!」
「ほ、ほえっ?!」
たつきちゃんが私の腕をぐっと引っ張って、椅子に再び座らたことで、漸く私は現実に戻った。

「どうせ、また一護のこと考えてたんでしょ?こうなったら、全部白状するまでこのパン達はお預けだからねっ!」

…見れば、私の昼食のパンが入った紙袋は、しっかりたつきちゃんの腕の中。

「え、ええっ!」
「さあ、パンが食べたければ、全部喋っちゃいなさい!」
「む、無理、無理だよ~!」
「あたし達、親友でしょー?」



…ランチタイム終了まであと20分。
私は、残りのパン達に辿り着けるのでしょうか…?




(2012.11.23)
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