IF〜ふたりぐらし〜







「…子供は、まだいいよ。結婚したばっかだし、正直もう少し織姫と二人でいたい。」

その俺の言葉に、織姫がはにかんだ様に笑う。

「そっか…。私も、赤ちゃんにはもう少し待っててほしいかな…。」

何となく照れ臭くて、お互いくすりと笑ってしまったけれど、俺たちは夫婦だから。
こんな話だって、ちゃんとしていかなくちゃいけないんだよな…。

「けど、な?」
「うん、けど?」

大きな目をぱちくりとさせて俺を見上げる織姫に、俺は再びにやっと笑って見せる。

「…子作りの『練習』は、いっぱいするぞ。」
「れ、練習って…?きゃ、きゃあんっ!」

ちなみに、この一連の会話の間も、織姫のブラウスは半分ほど捲れ上がっていて、括れた白いウエストと見えそうで見えない胸の谷間が俺をずっと誘惑していた訳で。

「とりあえず、今日は3回ぐらい練習しとくか?」
「さ、3回?!」
「そ。とりあえず今から1回、遅めの昼飯食ったら1回、夕飯の後に1回…。」
「そ、そんなの私の身体が持たないよぅ、一護くん!」

あわあわと慌てる嫁さんにくつくつと笑いつつ、俺は彼女の額に、頬に、唇にキスの雨を降らせる。
それはつまり、行為再開の合図。
「あの、じゃあせめて寝室に行こうよ。それで、ちゃんと遮光カーテンも閉めて…ね、聞いてる?」

織姫の提案は無言で却下。
俺は、もぞもぞと動いて抵抗の意思を見せる織姫のスカートが捲れた隙間に、手を滑り込ませた。

「ひゃっ…!」

びくんっと大きく跳ね上がる嫁さんの身体。

そのまま白い太ももを撫で上げつつ、首筋を俺の唇と舌で攻めあげれば、いやいやをするように身体をくねらせる織姫の唇から漏れる呼吸が次第に艶っぽさを帯びてくる。

「い、一護、くんっ…。ねぇ、ここじゃだめだよぅ…。」
「せっかく二人暮らししてるんだ。たまには、こういう場所でってのもいいだろ?」

そう言いながら、嫁さんの顔をちらりと覗けば、そこには桃色の頬と困惑しながらもとろけそうな瞳。

…あと一押しで、落ちるな。

内心にんまりしながら、そう俺が確信した、そのとき。

「井上…もとい織姫!いるか?」
「おう、邪魔するぞ…お、何してんだ?」

…せっかくのいいトコロだと言うのに、突然窓から入ってきたのは、ルキアと恋次。

「きゃっ…!」
「うわ!な、何しに来たんだよ!」

慌てて織姫の乱れた服装を整え、織姫と二人ソファに座り直す。
ちらりと横を見れば、真っ赤になって俯いたまま硬直している嫁さん。
織姫は真面目だからな、俺より100倍は気まずいんだろう。

「何しに…って、普通に遊びに来ただけだが?」「真っ昼間から、盛ってんなぁ。いや、マジで邪魔したみたいで悪いな。」

そう言いながらもどっかりとテーブル前に腰を下ろす二人に悪びれた様子はなく。

「いや、邪魔だと自覚してるなら帰れよ。」

せっかく今日は二人で終日いちゃつくことに決めたのに…しかもいい雰囲気だったところをぶち壊されて、俺は不機嫌さを隠すこともせず振る舞った。

しかし、俺の無愛想になどとっくに慣れているルキアや恋次は、遠慮して帰るどころかますます態度がでかくなっていく。

「何を言うか、一護は知らぬだろうが、いつも織姫が独りで寂しそうだからこうしてよく遊びに来ているのだぞ!」
「まさか一護がいるとは…つーか、まさか子作りに励んでるとは思ってなかったからなぁ。まぁ、続きがしたいって言うなら俺たちも帰るしかねぇけどな…。」

真剣な顔で反論するルキアと、ニヤニヤしながらそう言う恋次。

「や、やだなぁ、せっかく来たんだから、ゆっくりしていってよ、ね?」
「な、織姫?!」
さっきまで隣で固まっていた織姫がすっくと立ち上がり、そう言ってキッチンへパタパタと走っていく。
俺も急いでその後を追うと、飲み物と茶菓子を準備し始めた織姫の耳元に小声で話しかけた。

「ばっか、何で引き止めるんだよ!」
「だ、だって、引き止めなかったら、その、続きがしたいみたいじゃない…。」

いや、全くもってその通りなんだが。

真っ赤な顔でコーヒーを淹れる織姫に、俺は盛大に溜め息をついた。

…仕方ない。
ここは一つ、ルキアと恋次を適当にもてなして、なるべく早く退場してもらう作戦に切り替えよう。
そしたらそのあとは…。

「…解ったよ、織姫。その代わり、な。」
「うん、その代わり?」
俺は嫁さんからコーヒーの乗ったトレイを受け取ったついでに、彼女の耳にそっと囁く。

「…3回ってのは譲らねえからな。夜は覚悟しとけよ。」

がしゃん!

「どうした?いの…織姫、何の音だ?」
「な、なな何でもないの!ちょっと手が滑って…!」

居間からルキアに尋ねられ、慌てて落とした菓子を拾いつつ答える織姫に、再び小さく笑う俺。

…しかしこの後、なかなか腰を上げない来客と俺の戦いが始まったのだった…。









《あとがき》

さて、一織の新婚生活を2パターンで書いてみましたが、いかがでしたでしょうか?

いや、どっちも邪魔が入ってるじゃん、って感じですが、邪魔が入ってくれないとR指定まっしぐらなので…(笑)。

当初は「ふたりぐらし」の方のラストも乱菊さんなど続々と来客が増えて一護ががっかりする予定でしたが、「ごにんぐらし」に引き続き…じゃあ一護が可哀想かなということで、あんなラストになりました。

それでは、読んでいただいてありがとうございました!





(2013.04.15)
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