自称番犬の天竺みっち
東京卍會がいなくなったあと、イザナに抱きつく。いつもならこんなことしないけど、今日ばかりは許してほしい。
「どうした?」
「……なんでもない。ただ、ちょっと疲れただけ」
自分が一方的に知っていて、且つ勝手に苦手意識を持っていた男と邂逅を果たしたことでどっと疲れが押し寄せる。
いつもはこんな状況になった時、カクちゃんやモッチー君に話を聞いてもらって、蘭くんにからかわれながら、竜胆くんや獅音くんと遊んだりして気を紛らわすけど、今日はきっとそれだけじゃ足りないだろうから久しぶりに飼い主に甘えにいく。イザナには頼りになる犬だと思って欲しいから甘えている所を見せないようにしているけれど、今日は本当に疲れてしまったから、ほんの少しだけ。
「いい
その為にも俺は番犬であり続けるよ。皆に何かある前に俺が嗅ぎつけて、吠えて、噛み付いて悪い物全部追い払ってあげるから。
「当たり前だろ。……俺も、お前も、アイツらも生きやすい居場所を作るんだ。俺だけじゃない。お前も一緒に」
「うん」
ねぇ、イザナ、俺の飼い主、俺の王様
君の未来に俺は当たり前のように君の傍にいるんだね。
でも、俺は君と、君の大切な仲間たちの番犬。きっと、天竺っていう俺たちの国に何かあったら君達が止めたとしても、守ろうとしたとしても、俺は真っ先に前に飛び出すからいなくなってしまうことも遠い未来じゃないかもしれない。
それでも、それでもね
いつか、君が治める国で誰に脅かされることも無く、のびのびと自由に走り回れる日を夢見ているんだ。
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