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マブ達との邂逅



「どーも。タケミチの”マブ”のエース・トラッポラでーす。以後お見知り置きを〜」

「おい、エース態度が悪いぞ!タケミチのダチ達何だからちゃんと挨拶しろ!……デュース・スペードだ」


千冬、八戒と初対面のエースは面白くないといった感情があからさまに表情や声色にでており、それをデュースは態度が悪いと咎める。
それに全く反省した様子も見られない為、千冬と八戒は初対面ではあるものの「コイツ嫌いなタイプかも」と薄らと感じていた。


「ッたく……この馬鹿が本当にすまない」

「知ってる?馬鹿って言った奴が馬鹿なんだぜ?」

「じゃあ、エースも今言ったから馬鹿だと認めたようなものだな」

「ムカつく~~~!!!」

「ちょっと、自己紹介してんのに何二人でじゃれあってんの」

「うっ……すまない……タケミチがせっかくダチを紹介してくれてんのに……」

「いや、デュースはエースを注意してくれてたし悪くないよ」

「タケミチ……」

「ちょっとちょっとちょっと〜!?なーに、2人でほのぼのしてんの!?」

「何だエース混ざりたいならそう言え」

「はぁ〜!??デュース君上から過ぎない〜!?ムカつくんですけど〜???」

「混ざらないのか?」

「混ざりますけど〜!?」


煽り煽られ、慰めて貰うかのように武道と肩を組むように寄り添う。
べーっと舌を出しデュースを睨みつけるその仕草は武道よりも年上とは思えないほど幼げで末っ子感満載。


「俺はどっかの誰かさんと違ってデリケートなんです〜!!」

「デリケートじゃないどっかの誰かさんがいるのか……ハッ!もしや、タケミチ!??」

「誰の心臓がオリハルコン製だって?」

「言ってない言ってない」


エース、デュースそして武道のまるで豪速球のキャッチボールのような会話に驚く。東京卍會の集会で自分だけではなくそれこそマイキーやドラケン、三ツ谷達のような幹部達とも沢山話している様子は見るけれど、年相応に見えることは実はあまり多くはない。絡まれても大抵は敬語で返しているし、中学生ならではのしょうもない会話にも自ら率先して参加することよりどちらかというと巻き込まれていつの間にか参加していることがほとんどだ。
幹部たちで且つ年上だからと言ったらそれまでだが、先程の自己紹介でエースたちが高校生であることを知っていたから年相応に笑いあっていることに余計に驚いてしまった。
何よりいざ仲の良さを見せつけられてしまえば、隅に追いやっていた寂しさがまた出てきてしまいかねない。


「千冬?」


俯いてしまった千冬を案じて武道が声をかける。顔を覗き込もうとしようとした瞬間、バッと顔を上げてくるからぶつかりそうになって思わず一歩下がる。


「俺のことは遊びだったのかよ相棒!!」

「はぁ!?」

「俺という相棒がいながら余所の男にうつつを抜かしやがって!!」

「ちょ、千冬何言っt「はぁ?ウチの子誑かしたのはそっちの方っしょ?」エースも何言ってんの!?」

「そーだそーだ!俺たちのタケミっちをとるな!」

「!それは流石に聞き捨てならないな。タケミチは何もお前たちのもんじゃないだろ」


人見知りを発動していたのかそれまであまり会話に参加して来なかった八戒の言葉が癪に障った様子でエースのストッパーをしてくれていたはずのデュースまでもが若干の怒りを示したことで収拾がつかない状況になってきた。
いやもう、誰でもいいからこの状況何とかしてくれ……!そう思った矢先、背後から武道達に近付いてくる複数人の足音が聞こえ思わず振り向く。
そこにはどう見ても真面目そうだなんて思えない風体をした男たちが立っており、中には金属バットなどの武器を持参している者もいる。
武道だって不良の一人であるけれど流石に野球少年でもないのに金属バットを常に持ち歩いている知り合いなどいない……と思ったけどよく良く考えれば武道の周囲の人間は持っててもおかしくないな、なんて現実逃避をしてしまう。
それに目の前の男たちは何処かで見たようなきもしているし、ピリピリとしている様子だったから何となく何をしに来たのかを察してしまったんだ現実逃避くらいさせてくれよ。休日くらい穏やかに過ごさせてくれ。
最早諦めの境地に入ってしまった武道の心境など露知らず、男たちの中の一人が近づいてくる。


「テメェら東卍の連中だよなァ?ちょっと面貸してくんね?」

「あ?誰」

「……ッ、テメェらはこの前の抗争にいた…!」


先日東京卍會に喧嘩をふっかけてきたチームと抗争をした。決して小さい訳ではなくメンバーの数だけ見れば東京卍會よりも多い人数がいたが"無敵"であるマイキーに勝てるはずもなく、何事もなく東京卍會の勝ちで抗争はつつがなく終わった。
負けたチームは東京卍會の傘下に下る形に落ち着いたが、メンバーの何人かはそれを良しとせずチームから出ていった者たちもいる。今、目の前にいるのも同じようにして出ていったものたちだった。


「今更何をしに来た?チームにはもういねぇんだ。これといった用もねぇだろ」

「用ならあるぜ?テメェらをぶん殴るって用がなァ!」


男は一番近い場所にいた武道めがけて拳を振り上げた。現実逃避をしていた武道はハッと意識を戻すが、突然のことに動くことなどできない。
その瞬間二人の間に黒い影が飛び込んできた。


「デュース!!」

「ッてぇな…」


武道の代わりに拳を受け、なお且つこれ以上武道に手を出せないように男の前に立ち塞がる。
別に"まだ"反撃をしようとは思っていないが痛いものは痛い為、機嫌よくなんて居られない。思わずデュースのそう言った心情が表情に出てしまったのか視線を向けられた男はたじろいだ様に身体を震わせた。


「なっ……何だよテメェ!」


殴られるだろうということは分かっていただろうに関係なく間に割って入ってきたデュースを得体の知れないものを見るように見つめる。反撃をしてくるようならまだ良かった。ただただ威圧するような視線を向けてくること、そしてその視線だけで人を殺せてしまいそうな事が何より怖かった。


「ちょっと男子〜何うちのデュース君に手ぇ出してんの〜?」

「男子しかいないだろ… チッ」

「元ヤンでてんだけど大丈夫??」

「大丈夫だ。ただ穏やかじゃないな」

「確かに〜。で?どうすんの?」

「……手は出さないさ。"まだ"な」


決して視線は男から外そうとしないデュースにやれやれといった様子でため息をつく。男にとっての悲運は三つ。一つは【武道に手を出そうとしたこと】二つ目は【デュースが武道のマブだったこと】そして三つ目は【デュースには与えられた痛みを返す術を持ってしまっていること】。そんな不運な彼に哀れみ込めて嘲笑う。

「あーあ、かわいそ」

なんて、思ってもないのだけれど。
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