武道君のお友達
いつも通りに集会を終え皆帰宅をし始める。武道も東卍メンバーとお喋りを楽しみながらそろそろ帰宅をしようとしていた。
そんな時、すっかり暗くなった神社に1人の人物が現れた。
「ばぁ♡」
「!!!????ふ、フロイドくん!??」
「ピラニアくん久しぶりぃ〜〜!元気してた??」
「久しぶり!元気にしてたよ!!というか、日本に来てたんだね!?」
現れたのはターコイズの髪に黒のメッシュが入った長身の男、フロイド・リーチ。
気まぐれで、気分に高低差がありすぎて、昔ある経緯で「論外」と言わしめた男だった。
武道のことを”ピラニア”と呼び、ご機嫌な様子でにギザギザの歯を見せながらニッコリと笑ったフロイドは慣れたように抱きついて見せた。
「アズールがモストロを日本でも〜って話しててさぁ〜視察行くって言うからピラニアくんにも会えるかもと思って着いてきたんだ〜♡場所は、ピラニアくんママに聞いたの〜!アズールとジェイドもピラニアくんに会えるの楽しみにしてるよ」
さりげなく自分は家族公認の仲であるアピールを抜かりなく混じえた。
そんな突如現れ、しかも自分たちのお気に入りである武道に馴れ馴れしくしている見たこともない男に対して東卍メンツ……特にマイキーは不機嫌を隠そうともせず顕にした。
「いや、というか誰?何、たけみっちに馴れ馴れしくしてんの??」
「……あ゛?何このちっちぇ〜のォ?ピラニアくんの知り合い?」
「ちっ……!?誰が小さいだこのひょろ長野郎!第一さっきからピラニアだか何だか言いやがって!!!コイツには俺が愛情込めてつけたたけみっち♡って名前があんだよ!!!」
「はぁ〜?何それそのまんまじゃんつまんねーの。というか、渾名つけたの俺の方が先だし。なんせエレメンタリースクールからピラニアくんはピラニアくんだし」
「うるせぇ!!どっちが先かなんて関係ねーんだよ!たけみっちはたけみっちだ!!!!」
「いや、お前いつも「たけみっちは俺が最初に見つけた」ってマウントとるだろうが……」
「俺はいいの!!!!!」
自分たちの総長と知らぬ男との言葉の応酬に思わずドラケンが口を挟むも一蹴された。
「あの……エレメンタリースクールって?」
馴染みのない言葉に千冬は恐る恐る発言した。
「しらねー」
「スクールってついてるし学校の事じゃね?」
「スクールって学校の事だったんか……?」
「嘘だろ場地」
千冬に馴染みがなければ他のメンツにも馴染みがなかった。
みんなで首を傾げていたとこにそれまで黙っていた稀咲が口を挟んだ。
「……簡単に言うと外国で言う小学校のことですよ」
「へ〜稀咲はやっぱり物知りだな♡」
「えっ……というか、今その、エレメンタリースクールからって……たけみっち、お前日本にいなかったんか??!」
「!?タケミチお前外国人だったんか!!!」
「そういう事じゃないと思うっスよ場地さん!!」
「あ……と、実は小2の途中で親父の仕事の都合で外国に行くことになって……単身赴任とかでも良かったらしいんスけど、母さんが着いてく!って言って必然的に俺も行くことになったんです。あ、でも小6の夏とかにばあちゃんちに帰省したりとかはしたんですけど、卒業までは海外で中学からはこっち戻って来たんです」
今まで話すきっかけがなかったからだが、今更こんなことを言うのも……と思いながらも少々後ろめたさを感じていた。
「で、フロイド君とはその時からの友達なんです」
「そ♡また、日本に戻るって聞いて、ホントはやだったけど、まぁ家の都合なら仕方ねーし。俺もピラニア君が生まれた日本見てみたかったしちょうど良かった〜!アズールも日本支店作るって喜んでるし、納得はいかねーけどジェイドも日本の山、なんだっけフジサン?登るとかいってて張り切ってるし」
「ジェイド君確かエレベスト登頂成功してなかった……??富士山とか簡単すぎるのでは……???」
「今度ピラニア君も連れてくんだっつってたよ」
「え、どっちに!?富士山!!?エベレスト!!??」
「あはっ♡しらね〜〜」
東卍メンバーを取り残すかのように2人で仲睦まじく会話をしている所を見せられそれまで顔を俯かせていたマイキーがゆっくりと顔をあげた。目が笑っていない。
「たけみっち?俺とお前の仲に秘密はなしだっつったよなァ?」
「えっ、そんなこt「言ったよなァ!!?」アッハイイイマシタ」
「それなのに?たけみっちは??なーんも教えてくれねーし??あーあ、悲しいなぁ〜〜〜????」
「ヒェ……スミマセン……」
全くもって悲しそうな顔をしていないが、悲しいと言いながら詰め寄ってくるマイキーが恐ろしく思わずドラケンや三ツ谷、場地に千冬、なんだったら話に参加していて普段なら助けを求めないだろう稀咲や半間にも助けを求めるように視線を向けた。
だが、全員目が笑ってなかった。
「……まぁ、マイキーの言い分も分かるよな」
「だよなぁ。結構たけみっちのこと世話してたつもりだったんだけどなぁ?」
「隊長の俺にも隠し事たァ許せねぇな?」
「相棒の!!!俺には!!!話しとけよ!!!」
「小6の夏……だと……?しかもたまたま帰省していた……?通りであの後探しても見つからなかった訳だ……つまりあの日出会えていたのは運命だったってことだ……!やはり、お前は俺のヒーロー……!!」
「なになに?普段仲良さげにしてる奴らも知らなかったんか〜おもしれ〜♡」
助けてくれなさそうだった。
「あれあれ〜〜??もしかしてピラニア君からなーんも聞かされてなかったんだ〜??あはっ信頼されてなかったんじゃないの〜?おもしれ〜♡」
「「「「「「「あ゛ァ!!????」」」」」」」
フロイドもニッコリと笑いながら煽るせいであわや一触即発の状態になった。そんな時何かに気づいたように武道が声を上げた。
「あっ!!!!!!!!」
視線は半間とフロイドに向いていた。そして長いこと(と言っても集会が始まる前から今にかけてだが)悩んでいた悩みがやっと解決されたかのように、思わず半間、フロイド両名に対して叫んだ。
「既視感の正体!!!!!!!」
高身長、気まぐれ、気分屋ジェットコースター、論外(と言われそう)、メガネをかけた男(稀咲/アズール)に付き従っている。様々な共通点がある男2人は思わず既視感と言われる互いに視線を向け、
「「ダリィ♡/ウゼェ♡」」
と、呟いた。