～side Z～




あー…我ながらよく寝た


疲れてたってのもあるけどメチャクチャ熟睡出来た


それに何だか温かい｡心の底から安心できる幸せな音もする…心地よくて気持ちぃ


そう言えば宇髄さん…宇髄さん…Σはっ


ヤッベェ忘れてた!!くっついていると気持ち良くて思いっきり寝落ちてしまった


あの人ちゃんと寝れたかな…？


｢宇髄さっん､……？｣

｢……すぅー……｣


え…寝てる？スッゲー穏やかな寝息が聴こえる


慌てて起き上がろうとすると物凄い力でしっかり腰に回された腕に抱き込まれてるから動けない


腕一本なのにどんだけ怪力なんだよ…びくともしない


すぐ目の前には宇髄さんの綺麗に整っている美しい寝顔


滅多に見れないからレアな光景だな…片目が潰れてても綺麗って相当な上玉だよな


何時も先に寝ちゃうからこんな隙だらけな宇髄さんって見たことない


何でこう言う完璧な人が俺なんかの相手をしてくれてんのか分かんないけど､無防備な様子を晒してくれるこの人が凄く愛しく感じる


口に出すのは恥ずかしい…でも態度で示すなら今かも知れない


考えてみれば俺から気持ちを伝えることとか殆ど無いような気がする


前に潜入していた遊郭で遊女のお姉さん達や昨日､甘露寺さんから聞いた言葉以外の愛情表現を試してみよう


本人は寝てるから分かんないだろうけど､ちょっとならいいよね



｢……宇髄さん｣


サラサラな髪と頭を起こさないようにそっと撫でながら軽く唇を寄せて口付けてみる


これは親愛｡この存在が堪らなく愛しいって思慕の表れ…今の俺の素直な気持ち


続いて唇が触れたのは瞼


憧れの気持ち｡俺にとってアンタは勿体ないくらいに理想的な人だよって意味での口付け


たまに宇髄さんも同じ所にシてくれるけどこれは大切に思ってくれている証…幸せな瞬間と行為


そして耳へと移動する


｢……大好きです…宇髄さん…｣


これは誘惑｡別に今ムラムラしてるって訳じゃない…けど､そう言う意味でも魅力を感じる人だから他所にいかないようにって想いを込めて


この人に対する感情が高ぶってるから普段はあまりやらない耳飾りの上や耳朶にもちゅっ､と満遍なく口付けてみる


俺と一緒で耳が敏感だからどうかな…まだ起きないでいてくれるなら有り難いんだけど


｢ええっと次は……ひゃっ｣

｢さっきから随分と可愛いことシてくれてんじゃねぇか善逸君よォ｣

｢うっ宇髄さん!?起きてたの!?だったら言ってよ！心臓に悪いじゃない｣

｢それはこっちの台詞だっての｡何してんのかなって思ってたらお前は…俺の寝込みを襲うとはいい度胸してんな｣

｢あらやだゴメンなさいね!?ちょっと試してみたくなったから…嫌だった？｣

｢嫌なら最初から黙って触らせてねぇよ｣


次の箇所にいこうとしたら急に耳にフッと息を吹き掛けられた


何時から起きてたのか分かんないけど､寝ていたはずの宇髄さんがすっかり目を覚ましていた


もう少し綺麗な寝顔を見てたかったんだけど残念


俺がした事については嫌がられてはないみたい…良かった


｢まあ､額にしなかっただけ良しとするか｣


額は何だっけ…友愛を表すものだったかな


友人として信頼する気持ちが強いとソコにする人が多いらしい


そう言えば､宇髄さんと関係を持つようになってからはされた事がない｡たまに俺がやると良い顔はしなかった


でも普通に街中の夫婦とかでも見かける事もあるからそれはそれで仲良く見えるから良いと思う


恋愛感情だけで結ばれているより､お互いに友情も抱いている方が長続きするってお姉さん達も言ってたし



｢お前のお陰で昨夜は久し振りによく眠れたお礼にたっぷりお返ししてやんよ｣

｢えっ､あぁ……ん､｣


特に俺は何もしてないのに…この人の役に何かしら立ったんなら嬉しい


そうこう考えていると頬に温かくて柔らかい感触が


頬への口付けは唇の次に主流の行為｡これも髪と同じように親愛の気持ちによるもの


お姉さん曰く､相手のことを可愛く思って愛でてあげたいという感情を抱いた時にする場所らしい


唇よりもやり易い箇所で､何となくスキンシップしたい時やリラックスしている時にするって人が居るみたい…って事は今の宇髄さんは安定してるってこと？


少なくとも昨夜みたいな辛そうな音はしていない｡うんうん､良い傾向だ


頬への口付けは額にするよりも親密度が高い気がする


宇髄さんの俺に対する気持ちも上がってくれたら嬉しいな