完結後SS
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ちょっとしたこと
無事第一志望の大学へ入学し、慣れない90分授業にあたふたしとったところを今度はサークル活動にてんやわんや。そろそろバイトもせーへんとカネがない。
大学近くのドラッグストアでバイトをすることになったんやけど。
「ここ、たまーにスポーツ選手とかも来たはるよ」
「へえ……」
割とスポーツが盛んな土地柄でもあり、バレーのMSBY選手寮なんかも近いらしい。知らんかった。
「お待たせしましたー、いらっしゃいま……せ」
ぼんやりレジ打ちしとったところで少し目の前が暗くなった。と、思ったら、壁のようにデカい男がカゴを差し出してくる。
(デカいな、体分厚っ……)
MSBYの文字が入っとるし、間違いない。ボディシートや除菌シートなどの日用品をスキャンしているところ、追加でカゴに差し出されるものがあった。
「聖臣ー……あっもう会計してたの!?すいません、これもお願いします」
感じの良い涼やかな声は標準語。目線を上げればこれまた背のデカい金髪ピアス。怖っ、いや、笑顔は優しい。見慣れない男の壁を前に、追加商品をスキャン。……コンドームと、ローション。
マスクをした男が眉間にシワを寄せた。
「おい」
「いや、だってもうなかったもの」
勝手知ったるといったやり取りに一瞬面くらい、ひとつの記号が頭によぎる。
(名前、何やったっけ。でも、知っとる)
彼らは、パートナーだ。
「────お会計5635円です。お支払いは……」
「あ、カードで」
金髪ピアスの方が爽やかにカードを差し出した。マスクをした男は何となく居心地悪そうだったが、ローションとゴムを紙袋に入れたところで眉間のシワは解消された。
高校の頃、彼らがパートナーとなったことで教室では結構話題になったのを思い出す。
(えらい落ち込んでた子もおったなぁ……いや、それにしても。ちょっとしたことやけど、公表してないと、こういうのも買いにくいんちゃうか?いや人それぞれか?)
色々思いを巡らせつつ、レシートが出てくるのを待った。
「レシートです。ありがとうございました」
「どうも」
「ありがとうございます」
小さく一礼するマスク男と、にこりと微笑みかけてくる金髪ピアス。二人一組で成立って感じの挨拶に笑ってしまいそうになった。
「聖臣、ご機嫌?」
「……袋詰、綺麗」
「おお、聖臣のお眼鏡にかなうとは。また来ましょうね」
エコバに荷物を詰める二人の会話に身を正す。常連さんが増えるんはありがたい。空になったカゴを元の位置に戻した金髪ピアスが、自信たっぷりに微笑んだ。
「ふふ、ご機嫌な理由が店員さんの仕事ぶりだけでないことも知ってますよ?」
「深読み好きだな……」
一瞬大きくまばたきした男がマスクの下で微笑んでるのは一目瞭然。……ご馳走様です。
「ええなあ……」
新しい大学生活、サークル活動、アルバイト。きっと自分にも出会いがあるだろうと胸を弾ませていたというのに、今のところそういった出会いはない。
恋愛のれの字が恋しくなるほど、甘ったるい二人の後ろ姿に頭を下げた。
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