完結後SS
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シュガーブロッサム・イン・ザ・パリ 2
「思ってたより暑いな」
選手村に足を踏み入れ、聖臣が空を見上げてぽつりと呟く。シャルル・ド・ゴール空港についた時も同じことを言っていた。日本に比べたら多少空気は乾燥しているけど、暑いものは暑い。
「うん。あと、選手村広ーい!あっ、五輪マークがある!写真スポットだよね?夜久さん、牛島さーん、撮りに行きませんか」
大人気の映えスポット、大きな五輪のモニュメントの前で手を広げると、スタッフさんがカメラのシャッターを切った。早速俺がはしゃぎ倒してるのを見て、聖臣の目が赤ちゃんと言っているのが見えた。すみませんね。
一緒に写真に収まった夜久さんが苦笑い。
「そういや千歳は初めてだもんな、五輪」
「そうです!SNSや雑誌の記事を通じて見ているだけのものだったから……本当に来たんだなあ」
隣で牛島さんが周りを見渡して、ふむ、と頷く。
「今回は東京に比べると選手村が広い。色々な施設があるが移動も時間がかかるだろう。他国に比べると食事面など手厚くなってはいるが、慣れないことも増える。上手くやろう」
「はい!」
日本代表の宿泊施設へ向かう道すがら、見たことあるブランドショップにはじまり、五輪グッズのおみやげ店。時間帯のせいか食堂は人がごった返していて、美容院からはカラフルに彩られた髪をした選手が上機嫌でセルフィー。
どこに行っても国を代表するアスリートだらけの、一個の街。
「ふふ、夢みたい!」
アスリートなら一度は夢見るといっても過言ではない、オリンピックの舞台。夢よりも、夢みたいな場所。自分がここにいられるのが光栄でしかない。不意に吹く熱風に、聖臣の首にぶら下がったタグが揺れた。名前と写真、日本代表のバレーボール選手であることの証明書が日差しに反射する。
「……こういう大会、柊生にはうってつけだと思うよ」
マスク越しの淡い声が深い信頼であることを、この時の俺はまだ知らなかった。
*
「おお……普通に、ある……」
食堂の出入り口。人通りの多いところにはアメニティなんかも置いてある。……実はちょっと気になっていたものがあるんだよね。かごの中に入っていた、小さな四角形のパッケージを手に取った。
不意に背後から声がかかる。
「サイズ合うの?それ」
「うーん、ワンサイズしかないっぽ……って!うわあっ!?お、及川、さん!?」
日本語だったから完全に油断していた。ピースサインで小気味よい笑みを浮かべるのは、世界のオイカワことアルゼンチン代表セッター。なんとなく気心知れたチームメイトの誰かかと思ったから、手の中のモノが妙に気恥ずかしい。オイカワさんはカラカラと俺の恥じらいを笑い飛ばしてくれた。
「まったく、元気だねえ!」
「はは……お恥ずかしい……」
改めて手のひらに握りしめたものは東京五輪でも聖臣にお土産でもらってきてねなんて言ったこともある。五輪のロゴが入ったコンドームだ。使うにしろ使わないにしろかなりの人気アメニティだと思われる。
「俺ももらってこっと。早めに確保しておくに越したことはないやつだよ、ソレ。トーキョーでも人気だったし」
「あ、やっぱり?色々貰えますよね、五輪。さっき化粧品たくさん貰いましたよ」
「スポンサーの商品が色々回ってくるからね。ありがたいことに……って世間話に持ち込むの、上手いな。厄介だね、ホント」
「いや普通に話してただけですが」
普通に話していただけなのに厄介って言われるとは。首を傾げてみれば、及川さんはわざとらしく額に手を当てて頭を抱え、自分のペースを作る。
「ハネムーン気分で金メダルなんて獲らせる気はないからね?」
「ふふ、気を引き締めて挑ませて頂きます。どうぞお手柔らかに」
「……やっぱ君みたいの厄介だよ。ね、写真撮らない?」
「あ、俺も。もしよろしければ、SNS掲載してもいいですか?」
「いーよ、俺も載せるね」
部屋は今回ももちろんおなじみ、パートナーと同室。段ボールベッドの上で貰い物を広げながらスマホを眺め、呆れ顔で俺を見つめてきた。スマホの画面には及川さんと俺のツーショットや他競技の選手たちとの集合写真。
「お前、大人気すぎねえ……?」
「あはは……何か及川さんと写真撮ってたら色んな人に声をかけられちゃって……」
世界のオイカワなんて言われたりもしているトップレベルのセッター、及川さん。プレーは苛烈、ルックスも華やかだし、ファンサは爽やかだし、それでいて岩泉さんとの掛け合いはコントみたいだし。そんな華やかなスター選手と一緒にいれば注目もされるってもの。
聖臣はそうじゃねえと言った。
「お前の家族のこともあるだろ」
「ああ、まあね」
昨年、両親が出演した映画が国際映画祭で賞を取っていたり、欧州にはおじいちゃんやおばあちゃんのファンも多い。
聖臣のベッドに腰掛けて、スポンサー様からの頂き物をまとめる手伝いをすることにした。
「家族なんて言い回しして。ふふ、お前と結婚したことももちろん含まれておりますとも」
「ああ。だから俺は部屋からできる限り出るつもりは……柊生?」
自分にも注目の一端はあるってことはよくおわかりのようだ。でも、それだけじゃない。
「ふふ。あのね、俺達のプレーが楽しみだって言ってくれる人が一番多かったんだよ」
「……元気なわけだ」
真っ黒い瞳には盲点があったみたい。聖臣は静かに笑うと、優しいキスをくれた。
ここにいる大半の人がアスリート。国を背負って、自分が今まで懸けてきたものを抱いて最後まで戦い抜く、そんな場所で健闘を祈る言葉が飛び交うのが嬉しくて仕方がなかった。
(……できたら閉会式にも参加したいなあ)
五輪の選手村には色々な規定がある。俺と聖臣の二人部屋。小さなエアコンに、2つ並んだ段ボールベッド。サイドボードにはマシュマロの写真を置いた。窓から見えるのは真っ青な空と、他の国の宿舎。
ここは最後に競技をした日から48時間で退去となる。
「あ、食堂行った時これ見つけたんだけどさ。いつ使う?」
食堂のロビーで見つけたパリ五輪のエンブレム入りコンドームを手渡せば、聖臣は少し首を傾げて、ベッドの上に転がった。
「段ボールベッド、俺達の体重支えきれるのか……?」
「ふふ、早速実験……と行きたいところだけども、ちょっと待っ───」
聖臣の隣にごろりと転がったところで、薄い壁が俺達の甘い時間を阻んだ。
「突撃隣の新婚さん!!!ってもう新婚とちゃうんやっけ?……臣くん、コワッ」
バァンと元気な音を立てて開くドアに聖臣の眉間には深いシワが刻まれた。ベッドでゴロゴロしてる俺達を突撃した宮くんの手には日本代表のチームカメラ。SNSや動画サイトで五輪密着映像を出すためのカメラはいろんな選手の手にわたっていて、今日は宮くんが担当してる。
宮くんからは後で行くから少しの間、鍵開けといてとは言われてたけど。
「不用心」
案の定、タイミングが悪かった。ピリピリする聖臣に言い訳するしかなくなる。
「いや今言おうと思ったところ、間が悪かったんだよ。ドッキリもコンプラありきだべ、安心安全な基準で突撃してもらおうと思ってましたとも」
「は?こいつが突然部屋に突撃とかどんなタイミングでも嫌だけど」
「お前らイチャつくんか罵倒するんかどっちかにしてくれんか!?カットなしでこのまま使ってもらうからな!」
ベッドの上でゴロゴロしてるだけの映像が果たして皆様のお楽しみになるのかどうかはわからないけれど。
「息抜きも大事やけど開会式の準備もせーよ」
「はーい、キャプテン」
「いや今のキャプテンは牛島さんやけど?柊生くんホンママイペースやな……頼りにしとるで」
「?はい」
これまた何だか神妙に肩を叩かれてしまったのだった。
*
「────もしもし、佐藤さん?聞こえます?ふふ、キャンディの声も聞こえてますよ。
はい、今セーヌ川の上にいます!……あ、カメラだ。映るかな?マシュマロー!聖臣、マシュが開会式見てるって!マシュー!」
快晴の日差しに照らされたセーヌ川、日本選手団がいよいよ乗り込むタイミングで俺は日本へ電話をかけた。愛しい愛犬を預かってくれている佐藤さん。深夜という時間帯だけど、隣のMSBYブラックジャッカル選手寮で仲間たちと一緒に見届けてくれている。
日本国旗を持て余している聖臣がカメラの前に顔を出す。
「マシュ見てるの?キャンディも?」
「きっと見てるよ!ほら、元気な声してるしょ」
「マシュ……このテンション、間違いなく今俺等映ってるな」
「ふふ、俺達頑張るからねー!」
スマホを聖臣の耳に押し当てると、優しい顔をして国旗を振って見せた。俺も負けじと大きく手を振る。マシュマロに、応援してくれている皆さんに、そして、セーヌ川沿いを埋め尽くす大勢の観客に。
スマホの通話を切ると、1件の通知。夜桜さんが、佐久早家と合流したとのこと。皆元気にパリ入りしました、とのことだ。家族勢揃いですべての試合を応援しに来てくれるのが、面映ゆくて心強い。
(……うん。いよいよ本当に、準備万端)
水の匂いと太陽の日差しに透ける国旗を、きっと一生忘れない。
熱い熱い『もう一度』がない戦いがいよいよ幕を開けた。
「思ってたより暑いな」
選手村に足を踏み入れ、聖臣が空を見上げてぽつりと呟く。シャルル・ド・ゴール空港についた時も同じことを言っていた。日本に比べたら多少空気は乾燥しているけど、暑いものは暑い。
「うん。あと、選手村広ーい!あっ、五輪マークがある!写真スポットだよね?夜久さん、牛島さーん、撮りに行きませんか」
大人気の映えスポット、大きな五輪のモニュメントの前で手を広げると、スタッフさんがカメラのシャッターを切った。早速俺がはしゃぎ倒してるのを見て、聖臣の目が赤ちゃんと言っているのが見えた。すみませんね。
一緒に写真に収まった夜久さんが苦笑い。
「そういや千歳は初めてだもんな、五輪」
「そうです!SNSや雑誌の記事を通じて見ているだけのものだったから……本当に来たんだなあ」
隣で牛島さんが周りを見渡して、ふむ、と頷く。
「今回は東京に比べると選手村が広い。色々な施設があるが移動も時間がかかるだろう。他国に比べると食事面など手厚くなってはいるが、慣れないことも増える。上手くやろう」
「はい!」
日本代表の宿泊施設へ向かう道すがら、見たことあるブランドショップにはじまり、五輪グッズのおみやげ店。時間帯のせいか食堂は人がごった返していて、美容院からはカラフルに彩られた髪をした選手が上機嫌でセルフィー。
どこに行っても国を代表するアスリートだらけの、一個の街。
「ふふ、夢みたい!」
アスリートなら一度は夢見るといっても過言ではない、オリンピックの舞台。夢よりも、夢みたいな場所。自分がここにいられるのが光栄でしかない。不意に吹く熱風に、聖臣の首にぶら下がったタグが揺れた。名前と写真、日本代表のバレーボール選手であることの証明書が日差しに反射する。
「……こういう大会、柊生にはうってつけだと思うよ」
マスク越しの淡い声が深い信頼であることを、この時の俺はまだ知らなかった。
*
「おお……普通に、ある……」
食堂の出入り口。人通りの多いところにはアメニティなんかも置いてある。……実はちょっと気になっていたものがあるんだよね。かごの中に入っていた、小さな四角形のパッケージを手に取った。
不意に背後から声がかかる。
「サイズ合うの?それ」
「うーん、ワンサイズしかないっぽ……って!うわあっ!?お、及川、さん!?」
日本語だったから完全に油断していた。ピースサインで小気味よい笑みを浮かべるのは、世界のオイカワことアルゼンチン代表セッター。なんとなく気心知れたチームメイトの誰かかと思ったから、手の中のモノが妙に気恥ずかしい。オイカワさんはカラカラと俺の恥じらいを笑い飛ばしてくれた。
「まったく、元気だねえ!」
「はは……お恥ずかしい……」
改めて手のひらに握りしめたものは東京五輪でも聖臣にお土産でもらってきてねなんて言ったこともある。五輪のロゴが入ったコンドームだ。使うにしろ使わないにしろかなりの人気アメニティだと思われる。
「俺ももらってこっと。早めに確保しておくに越したことはないやつだよ、ソレ。トーキョーでも人気だったし」
「あ、やっぱり?色々貰えますよね、五輪。さっき化粧品たくさん貰いましたよ」
「スポンサーの商品が色々回ってくるからね。ありがたいことに……って世間話に持ち込むの、上手いな。厄介だね、ホント」
「いや普通に話してただけですが」
普通に話していただけなのに厄介って言われるとは。首を傾げてみれば、及川さんはわざとらしく額に手を当てて頭を抱え、自分のペースを作る。
「ハネムーン気分で金メダルなんて獲らせる気はないからね?」
「ふふ、気を引き締めて挑ませて頂きます。どうぞお手柔らかに」
「……やっぱ君みたいの厄介だよ。ね、写真撮らない?」
「あ、俺も。もしよろしければ、SNS掲載してもいいですか?」
「いーよ、俺も載せるね」
部屋は今回ももちろんおなじみ、パートナーと同室。段ボールベッドの上で貰い物を広げながらスマホを眺め、呆れ顔で俺を見つめてきた。スマホの画面には及川さんと俺のツーショットや他競技の選手たちとの集合写真。
「お前、大人気すぎねえ……?」
「あはは……何か及川さんと写真撮ってたら色んな人に声をかけられちゃって……」
世界のオイカワなんて言われたりもしているトップレベルのセッター、及川さん。プレーは苛烈、ルックスも華やかだし、ファンサは爽やかだし、それでいて岩泉さんとの掛け合いはコントみたいだし。そんな華やかなスター選手と一緒にいれば注目もされるってもの。
聖臣はそうじゃねえと言った。
「お前の家族のこともあるだろ」
「ああ、まあね」
昨年、両親が出演した映画が国際映画祭で賞を取っていたり、欧州にはおじいちゃんやおばあちゃんのファンも多い。
聖臣のベッドに腰掛けて、スポンサー様からの頂き物をまとめる手伝いをすることにした。
「家族なんて言い回しして。ふふ、お前と結婚したことももちろん含まれておりますとも」
「ああ。だから俺は部屋からできる限り出るつもりは……柊生?」
自分にも注目の一端はあるってことはよくおわかりのようだ。でも、それだけじゃない。
「ふふ。あのね、俺達のプレーが楽しみだって言ってくれる人が一番多かったんだよ」
「……元気なわけだ」
真っ黒い瞳には盲点があったみたい。聖臣は静かに笑うと、優しいキスをくれた。
ここにいる大半の人がアスリート。国を背負って、自分が今まで懸けてきたものを抱いて最後まで戦い抜く、そんな場所で健闘を祈る言葉が飛び交うのが嬉しくて仕方がなかった。
(……できたら閉会式にも参加したいなあ)
五輪の選手村には色々な規定がある。俺と聖臣の二人部屋。小さなエアコンに、2つ並んだ段ボールベッド。サイドボードにはマシュマロの写真を置いた。窓から見えるのは真っ青な空と、他の国の宿舎。
ここは最後に競技をした日から48時間で退去となる。
「あ、食堂行った時これ見つけたんだけどさ。いつ使う?」
食堂のロビーで見つけたパリ五輪のエンブレム入りコンドームを手渡せば、聖臣は少し首を傾げて、ベッドの上に転がった。
「段ボールベッド、俺達の体重支えきれるのか……?」
「ふふ、早速実験……と行きたいところだけども、ちょっと待っ───」
聖臣の隣にごろりと転がったところで、薄い壁が俺達の甘い時間を阻んだ。
「突撃隣の新婚さん!!!ってもう新婚とちゃうんやっけ?……臣くん、コワッ」
バァンと元気な音を立てて開くドアに聖臣の眉間には深いシワが刻まれた。ベッドでゴロゴロしてる俺達を突撃した宮くんの手には日本代表のチームカメラ。SNSや動画サイトで五輪密着映像を出すためのカメラはいろんな選手の手にわたっていて、今日は宮くんが担当してる。
宮くんからは後で行くから少しの間、鍵開けといてとは言われてたけど。
「不用心」
案の定、タイミングが悪かった。ピリピリする聖臣に言い訳するしかなくなる。
「いや今言おうと思ったところ、間が悪かったんだよ。ドッキリもコンプラありきだべ、安心安全な基準で突撃してもらおうと思ってましたとも」
「は?こいつが突然部屋に突撃とかどんなタイミングでも嫌だけど」
「お前らイチャつくんか罵倒するんかどっちかにしてくれんか!?カットなしでこのまま使ってもらうからな!」
ベッドの上でゴロゴロしてるだけの映像が果たして皆様のお楽しみになるのかどうかはわからないけれど。
「息抜きも大事やけど開会式の準備もせーよ」
「はーい、キャプテン」
「いや今のキャプテンは牛島さんやけど?柊生くんホンママイペースやな……頼りにしとるで」
「?はい」
これまた何だか神妙に肩を叩かれてしまったのだった。
*
「────もしもし、佐藤さん?聞こえます?ふふ、キャンディの声も聞こえてますよ。
はい、今セーヌ川の上にいます!……あ、カメラだ。映るかな?マシュマロー!聖臣、マシュが開会式見てるって!マシュー!」
快晴の日差しに照らされたセーヌ川、日本選手団がいよいよ乗り込むタイミングで俺は日本へ電話をかけた。愛しい愛犬を預かってくれている佐藤さん。深夜という時間帯だけど、隣のMSBYブラックジャッカル選手寮で仲間たちと一緒に見届けてくれている。
日本国旗を持て余している聖臣がカメラの前に顔を出す。
「マシュ見てるの?キャンディも?」
「きっと見てるよ!ほら、元気な声してるしょ」
「マシュ……このテンション、間違いなく今俺等映ってるな」
「ふふ、俺達頑張るからねー!」
スマホを聖臣の耳に押し当てると、優しい顔をして国旗を振って見せた。俺も負けじと大きく手を振る。マシュマロに、応援してくれている皆さんに、そして、セーヌ川沿いを埋め尽くす大勢の観客に。
スマホの通話を切ると、1件の通知。夜桜さんが、佐久早家と合流したとのこと。皆元気にパリ入りしました、とのことだ。家族勢揃いですべての試合を応援しに来てくれるのが、面映ゆくて心強い。
(……うん。いよいよ本当に、準備万端)
水の匂いと太陽の日差しに透ける国旗を、きっと一生忘れない。
熱い熱い『もう一度』がない戦いがいよいよ幕を開けた。