完結後SS
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幸福な彼ら(後編)
────少しばかりVリーグデビュー時のことを振り返らせて下さい。佐久早選手は開幕スタメン、王者アドラーズを相手に勝利を得ました。
千歳選手はベンチ入りが続きましたね。
千歳「初年度は本当に、聖臣のすごさにはしゃいで落ち込んで浮かれて打ちのめされての繰り返しでしたね。いやでも楽しかったなあのアドラーズ戦。何度も見ちゃった!」
佐久早「超楽しそうだったよな」
千歳「ふふ、だって日本の主砲たる牛島さんに、イタリア帰りで円熟期の昼神さんに、リベロが平和島さんでさ。そこにあのロメロが!光来くんが!影山くんまで!もう怒涛のスター揃いだもの。戦ってもみたかったけど、ああ、今日はまず出番はないなとも思ってさ」
佐久早「ベンチからいい指摘してくれてたのは覚えてる」
千歳「出来ること探して必死だった記憶しかないや。……ん?そういえば聖臣は学生時代からほぼずっとスタメンだよね?ですよね?」
─────あ、はい。見てきた限りでも、データでも、多くの試合にスタメン出場されていますね。
千歳「うん。一緒のチームになってことでその理由が一気に紐解けて、すごいよなあ、って思い知ってばっかだったな」
佐久早「それはこっちも同じだけど」
千歳「いやいや。まず自分の体との向き合い方が違ってて。俺はほら……バンドもやってたから結構ライブだと楽しむことまっしぐらなときもあったし。それで怪我もしたし」
────結婚式で暴露されていましたね。
千歳「はい……お恥ずかしい限りですけど、聖臣はすごく慎重だから。自分の体の隅々まで常に手を尽くしてる。古森くん(EJP所属・佐久早選手とは従兄弟)も言ってたけど、ささくれ一つあっても不機嫌になる、って」
佐久早「怪我のリスク減らすのも仕事だろ」
千歳「本人がそのつもりでなくても、プロ意識が高い。だから俺も聞いてみたかったんだ。俺のこと呆れたりしなかった?」
佐久早「は?」
千歳「初年度は特にお前と比べてまだまだ甘いなあって思うことが多かったんだよね。いつもずっと優しかったけどさ、呆れたりしなかっ……怖い……顔怖い。助けて山本さん」
────不満が100万点くらい顔に滲んでいらっしゃいますが、佐久早選手。
佐久早「……初年度だけじゃなくて、その前からも。柊生は千歳夫妻の息子ってずっと言われてて。マスコミだけじゃなくて、芸能界とか、色んなところから声がかかってて。それでも、振り回されたりしないし。すげえ負けず嫌いだし。別に、口を挟むところはなかった」
────満足が100万点くらい顔に滲んでいらっしゃいますね、千歳選手。
千歳「うん、すごく嬉しい(笑)」
佐久早「疲れる」
千歳「ごめんね、かまってちゃんな質問しちゃって」
佐久早「山本さんの仕事を奪うな」
千歳「あっ、本当だ。申し訳ありません」
────いえ(笑)お二人の自然な姿をたくさん書けそうで、ファンの方々も喜んでくれたらいいなと思います。
……ずっとお付き合いされてきた中で、木兎選手以外の誰からも気づかれなかったとのことですが。
佐久早「(頷く)」
千歳「はい(笑)隠してはいなかったんですけどね。というか……匂わせるも何も同じチームで、一緒に写真を撮ることも初年度なんかは結構ありましたし、珍しいことじゃないですし」
佐久早「気づきようがなかったんだろ」
────仰るとおり、私も実際何度かお二人の対談やインタビューを担当させて頂きましたが、わかりませんでした。
千歳「記者の皆さん、そう仰いますね(笑)それでも昔はちょっと困ったよね」
佐久早「……まだ本当に誰にも気づかれてなかった時とかな」
千歳「ユースの頃かな。付き合ってたから下の名前で呼んでたけど、わざわざ名字呼びに戻したりしてね」
────悩ましい場面もやっぱりおありでしたか。
佐久早「割と柊生頭回るから、そんなには」
千歳「悪知恵働く人みたいな言い方……僕の両親の知名度は言わずもがなですし、どことなく常にお互いそういう意識はあったと思います。でもやっぱり、皆俺達が付き合ってるとは思いもしないわけで」
佐久早「鈍感さに助けられた部分もあった」
千歳「言い方。……でも結局、痴話喧嘩からのプロポーズ事件になりました」
────痴話喧嘩?VNLの最中ですか?
千歳「はい。腹をくくろう聖臣」
佐久早「……結婚する時期が明確にならないことに業を煮やした俺の落ち度」
千歳「VNL終わったらプロポーズしようと思っていたんですが、流石に待ち切れない聖臣にさっさと腹をくくれと怒られまして。プロポーズリングを取り上げられてしまったんです」
─────えっ!?千歳選手に贈った指輪を、佐久早選手自ら奪い取ったんですか?
佐久早「…………(ため息)(おそらく小さく頷いた)」
千歳「結婚する気になったら返してやる、ってことで。そして俺は俺で聖臣宛のプロポーズリングを用意していて……間の悪い話でした。
うーん、でもこれ、他の代表選手から聞いたほうが面白いかもしれないな(笑)百沢くんだったかな?文字通りの痴話喧嘩ってやつ初めて見たって言われた。
自分で話しても今ひとつ面白みにかけちゃうような、そんな痴話喧嘩をチームメイトの前で繰り広げました」
佐久早「もうお前との意地の張り合いは二度としない……」
千歳「何でお前が負けた風になってるの。あれは待たせまくった俺の負けでいい」
────結婚発表の際は驚かれたとのことでしたね。
千歳「お互いの両親への挨拶自体はもう済んでいたのですが、明確に結婚する時期は決まってなかったので」
佐久早「頭を下げようとしたんだけど、謝ることひとつもないでしょう、と。夜桜さんはしゃいでたね」
千歳「母からの祝電に出た時、もうすでにシャンパン開けてて。聖臣に電話変わったら一升瓶が空いていた伝説の通話が裏話ですかね」
佐久早「酒豪すぎる」
────前代未聞の結婚式も多くの方々を巻き込んでのことだったと聞いております。
千歳「はい、チームスタッフとチームメイトをはじめ、そこから一気に話が広がって……JVAや、出身校のOBに至るまで本当に様々な方々からお力を頂きました。
山本さんをはじめマスコミの皆さんにもパネルを贈って頂けて……その節は本当に素敵なお写真、ありがとうございました」
佐久早「(会釈)」
─────いえ、もうとっくに御礼を言われてますし。お二人のお人柄もあってのことですね。
千歳「いえ、そんな」
佐久早「柊生顔が広いなって改めて思った」
千歳「お前も大概、というか、マジで学生時代から年がら年中一緒だったんだなあと思い知ったよ……知り合いの知り合いが聖臣の知り合いみたいなことばっかりだもの!」
佐久早「それは俺のセリフ」
────(笑)ずっとご一緒ですものね。
千歳「はい」
佐久早「(頷く)」
────お二人の結婚生活に欠かせないのは愛犬のお話かなと思うのですが。マシュマロくんを飼おうと思ったのはいつ頃ですか?
千歳「犬を飼いたくなったのは、ジャッカルの寮生活の時です。MSBYの社員さんの飼い犬を預かる機会がありまして……」
佐久早「(写真をこちらへ見せながら)キャンディ。可愛い」
────マシュマロくんそっくり!キャンディちゃんがお姉さん、ですよね。
佐久早「そう。突然預かっててびっくりした」
千歳「いろいろな偶然が重なって俺が預かることになりまして。3日間預かったんですけど、帰り際寂しくて泣いちゃったもの」
佐久早「犬はかわいいし、何なら人間より清潔って思ってたけど、飼うことを考えたことはなかった」
千歳「俺達年中移動ばっかしてるしね」
佐久早「でも柊生となら飼えるかも、って思った」
千歳「俺も。夢が叶って、本当に嬉しいことです」
────やっぱりペットを飼うと生活も変わると思うのですが、お二人も変化がありましたか。
千歳「そうですね。まずは、家族が増えるってこんな楽しいんだ!って思うことがいっぱいです」
佐久早「よく笑わせてくれる」
千歳「俺がギターで速弾きするとヘドバンするんですよ、マシュ。それを見た聖臣がいっつもツボに入ってる」
佐久早「柊生がピアノを弾くと踊るし、歌うし。のんびり屋だけど、面白いやつ」
千歳「歯磨きは聖臣にしてもらうのが好きで、寝る前に歯ブラシ持って聖臣の元へ走ってくのが可愛いです」
佐久早「散歩してほしい時はハーネスくわえて柊生のところに行くし、役割分担をしてる感じある」
千歳「それね。俺達はどれも出来るし平等にやってくつもりだけど、マシュが相手を選んでるような。選ばれると光栄な気分になります」
佐久早「大袈裟」
千歳「お前だっていっつも超嬉しそうだべ!わかってんだよ、マシュも俺も」
佐久早「……総じて、赤ちゃんみたいで可愛いです」
千歳「俺も含めて総じたな?」
────(笑)一家仲良しなご様子、これからもお聞かせ下さい。
お二人共ジャッカルに所属して8年目、今後の展望などをお伺いしたいと思います。
千歳「はい。聖臣と一緒に、もっと面白いVリーグにしていきたいっていう思いがあります」
佐久早「……ロメロやヨッフェみたいな選手が集まってくるような、そんな環境であったらいいと思います」
千歳「(頷く)今は日本の大学に通いながら海外挑戦する選手もいるし、その逆で海外からたくさんの選手がVリーグ目指してやってくるような、そんなバレーがしたいですね」
佐久早「天皇杯や黒鷲旗で対戦したけど、最近はV2V3もかなり力つけてるし。そういう思いを持ってるのは俺達だけじゃないんだなと実感はしてる」
千歳「そうだね。皆それぞれの場所で、全力でバレーを楽しんでる。今、すごく最高の時期だと思う。
だからこそ今の立ち位置で出来ること、やりたいことがたくさんあります。コートの外でも、楽しんでもらえるような、夢のある企画にもフットワーク軽く挑んでいきたいなと思います」
佐久早「また女装?」
千歳「何して蒸し返すの!楽しそうなお話が来たら、勿論やりますけども!具体的なところを言うなら、俺も聖臣も後進……学生の育成などに携わろうと思っています」
────チームでもバレークリニックの企画は多く行われていましたね。オールラウンダーな佐久早選手に、千歳選手のブロックの技術を教わりたい方は多いと思います。
千歳「(頷く)俺も聖臣も今は揃って、自分が持っている情報をよりわかりやすく伝える術を今は磨いているところです」
佐久早「国語の勉強してる気分」
千歳「頑張ろうね」
────これからもお二人の展望を追いかけさせて貰います。今日はありがとうございました。
千歳「ありがとうございます。一緒に楽しみましょう」
佐久早「(小さく一礼)」
展望を語り、頑張ろうねと肩肘張らずさらりと千歳が言うと、佐久早はこくりと小さく頷いた。ただそれだけのやり取りの奥に、膨大に積み重ねられた努力がある。
可愛らしい愛犬を傍に、幸福いっぱいの日々。そして選手としても上を目指す日々の中、様々な方面からバレーボールを盛り上げていこうという志が伺えた。
「したっけ俺も聖臣もずっとバレー馬鹿なんで、山本さんにはずっと追いかけて貰うことになりそうだなあ。今後ともよろしくお願いします」
「ねえ山本さん、若利くんの取材行ってきたんでしょ。元気だった?」
インタビューの後、千歳はそう言って笑いかけてきた。佐久早はと言えば、マイペースに代表チームメイトの話を振ってくる。取材を終えて別れるまで、飾らない笑顔が弾けていた。
彼らの在るところ、きっとすべて眩いのだろう。幸福な彼らに幸あれと願うばかりだ。
────少しばかりVリーグデビュー時のことを振り返らせて下さい。佐久早選手は開幕スタメン、王者アドラーズを相手に勝利を得ました。
千歳選手はベンチ入りが続きましたね。
千歳「初年度は本当に、聖臣のすごさにはしゃいで落ち込んで浮かれて打ちのめされての繰り返しでしたね。いやでも楽しかったなあのアドラーズ戦。何度も見ちゃった!」
佐久早「超楽しそうだったよな」
千歳「ふふ、だって日本の主砲たる牛島さんに、イタリア帰りで円熟期の昼神さんに、リベロが平和島さんでさ。そこにあのロメロが!光来くんが!影山くんまで!もう怒涛のスター揃いだもの。戦ってもみたかったけど、ああ、今日はまず出番はないなとも思ってさ」
佐久早「ベンチからいい指摘してくれてたのは覚えてる」
千歳「出来ること探して必死だった記憶しかないや。……ん?そういえば聖臣は学生時代からほぼずっとスタメンだよね?ですよね?」
─────あ、はい。見てきた限りでも、データでも、多くの試合にスタメン出場されていますね。
千歳「うん。一緒のチームになってことでその理由が一気に紐解けて、すごいよなあ、って思い知ってばっかだったな」
佐久早「それはこっちも同じだけど」
千歳「いやいや。まず自分の体との向き合い方が違ってて。俺はほら……バンドもやってたから結構ライブだと楽しむことまっしぐらなときもあったし。それで怪我もしたし」
────結婚式で暴露されていましたね。
千歳「はい……お恥ずかしい限りですけど、聖臣はすごく慎重だから。自分の体の隅々まで常に手を尽くしてる。古森くん(EJP所属・佐久早選手とは従兄弟)も言ってたけど、ささくれ一つあっても不機嫌になる、って」
佐久早「怪我のリスク減らすのも仕事だろ」
千歳「本人がそのつもりでなくても、プロ意識が高い。だから俺も聞いてみたかったんだ。俺のこと呆れたりしなかった?」
佐久早「は?」
千歳「初年度は特にお前と比べてまだまだ甘いなあって思うことが多かったんだよね。いつもずっと優しかったけどさ、呆れたりしなかっ……怖い……顔怖い。助けて山本さん」
────不満が100万点くらい顔に滲んでいらっしゃいますが、佐久早選手。
佐久早「……初年度だけじゃなくて、その前からも。柊生は千歳夫妻の息子ってずっと言われてて。マスコミだけじゃなくて、芸能界とか、色んなところから声がかかってて。それでも、振り回されたりしないし。すげえ負けず嫌いだし。別に、口を挟むところはなかった」
────満足が100万点くらい顔に滲んでいらっしゃいますね、千歳選手。
千歳「うん、すごく嬉しい(笑)」
佐久早「疲れる」
千歳「ごめんね、かまってちゃんな質問しちゃって」
佐久早「山本さんの仕事を奪うな」
千歳「あっ、本当だ。申し訳ありません」
────いえ(笑)お二人の自然な姿をたくさん書けそうで、ファンの方々も喜んでくれたらいいなと思います。
……ずっとお付き合いされてきた中で、木兎選手以外の誰からも気づかれなかったとのことですが。
佐久早「(頷く)」
千歳「はい(笑)隠してはいなかったんですけどね。というか……匂わせるも何も同じチームで、一緒に写真を撮ることも初年度なんかは結構ありましたし、珍しいことじゃないですし」
佐久早「気づきようがなかったんだろ」
────仰るとおり、私も実際何度かお二人の対談やインタビューを担当させて頂きましたが、わかりませんでした。
千歳「記者の皆さん、そう仰いますね(笑)それでも昔はちょっと困ったよね」
佐久早「……まだ本当に誰にも気づかれてなかった時とかな」
千歳「ユースの頃かな。付き合ってたから下の名前で呼んでたけど、わざわざ名字呼びに戻したりしてね」
────悩ましい場面もやっぱりおありでしたか。
佐久早「割と柊生頭回るから、そんなには」
千歳「悪知恵働く人みたいな言い方……僕の両親の知名度は言わずもがなですし、どことなく常にお互いそういう意識はあったと思います。でもやっぱり、皆俺達が付き合ってるとは思いもしないわけで」
佐久早「鈍感さに助けられた部分もあった」
千歳「言い方。……でも結局、痴話喧嘩からのプロポーズ事件になりました」
────痴話喧嘩?VNLの最中ですか?
千歳「はい。腹をくくろう聖臣」
佐久早「……結婚する時期が明確にならないことに業を煮やした俺の落ち度」
千歳「VNL終わったらプロポーズしようと思っていたんですが、流石に待ち切れない聖臣にさっさと腹をくくれと怒られまして。プロポーズリングを取り上げられてしまったんです」
─────えっ!?千歳選手に贈った指輪を、佐久早選手自ら奪い取ったんですか?
佐久早「…………(ため息)(おそらく小さく頷いた)」
千歳「結婚する気になったら返してやる、ってことで。そして俺は俺で聖臣宛のプロポーズリングを用意していて……間の悪い話でした。
うーん、でもこれ、他の代表選手から聞いたほうが面白いかもしれないな(笑)百沢くんだったかな?文字通りの痴話喧嘩ってやつ初めて見たって言われた。
自分で話しても今ひとつ面白みにかけちゃうような、そんな痴話喧嘩をチームメイトの前で繰り広げました」
佐久早「もうお前との意地の張り合いは二度としない……」
千歳「何でお前が負けた風になってるの。あれは待たせまくった俺の負けでいい」
────結婚発表の際は驚かれたとのことでしたね。
千歳「お互いの両親への挨拶自体はもう済んでいたのですが、明確に結婚する時期は決まってなかったので」
佐久早「頭を下げようとしたんだけど、謝ることひとつもないでしょう、と。夜桜さんはしゃいでたね」
千歳「母からの祝電に出た時、もうすでにシャンパン開けてて。聖臣に電話変わったら一升瓶が空いていた伝説の通話が裏話ですかね」
佐久早「酒豪すぎる」
────前代未聞の結婚式も多くの方々を巻き込んでのことだったと聞いております。
千歳「はい、チームスタッフとチームメイトをはじめ、そこから一気に話が広がって……JVAや、出身校のOBに至るまで本当に様々な方々からお力を頂きました。
山本さんをはじめマスコミの皆さんにもパネルを贈って頂けて……その節は本当に素敵なお写真、ありがとうございました」
佐久早「(会釈)」
─────いえ、もうとっくに御礼を言われてますし。お二人のお人柄もあってのことですね。
千歳「いえ、そんな」
佐久早「柊生顔が広いなって改めて思った」
千歳「お前も大概、というか、マジで学生時代から年がら年中一緒だったんだなあと思い知ったよ……知り合いの知り合いが聖臣の知り合いみたいなことばっかりだもの!」
佐久早「それは俺のセリフ」
────(笑)ずっとご一緒ですものね。
千歳「はい」
佐久早「(頷く)」
────お二人の結婚生活に欠かせないのは愛犬のお話かなと思うのですが。マシュマロくんを飼おうと思ったのはいつ頃ですか?
千歳「犬を飼いたくなったのは、ジャッカルの寮生活の時です。MSBYの社員さんの飼い犬を預かる機会がありまして……」
佐久早「(写真をこちらへ見せながら)キャンディ。可愛い」
────マシュマロくんそっくり!キャンディちゃんがお姉さん、ですよね。
佐久早「そう。突然預かっててびっくりした」
千歳「いろいろな偶然が重なって俺が預かることになりまして。3日間預かったんですけど、帰り際寂しくて泣いちゃったもの」
佐久早「犬はかわいいし、何なら人間より清潔って思ってたけど、飼うことを考えたことはなかった」
千歳「俺達年中移動ばっかしてるしね」
佐久早「でも柊生となら飼えるかも、って思った」
千歳「俺も。夢が叶って、本当に嬉しいことです」
────やっぱりペットを飼うと生活も変わると思うのですが、お二人も変化がありましたか。
千歳「そうですね。まずは、家族が増えるってこんな楽しいんだ!って思うことがいっぱいです」
佐久早「よく笑わせてくれる」
千歳「俺がギターで速弾きするとヘドバンするんですよ、マシュ。それを見た聖臣がいっつもツボに入ってる」
佐久早「柊生がピアノを弾くと踊るし、歌うし。のんびり屋だけど、面白いやつ」
千歳「歯磨きは聖臣にしてもらうのが好きで、寝る前に歯ブラシ持って聖臣の元へ走ってくのが可愛いです」
佐久早「散歩してほしい時はハーネスくわえて柊生のところに行くし、役割分担をしてる感じある」
千歳「それね。俺達はどれも出来るし平等にやってくつもりだけど、マシュが相手を選んでるような。選ばれると光栄な気分になります」
佐久早「大袈裟」
千歳「お前だっていっつも超嬉しそうだべ!わかってんだよ、マシュも俺も」
佐久早「……総じて、赤ちゃんみたいで可愛いです」
千歳「俺も含めて総じたな?」
────(笑)一家仲良しなご様子、これからもお聞かせ下さい。
お二人共ジャッカルに所属して8年目、今後の展望などをお伺いしたいと思います。
千歳「はい。聖臣と一緒に、もっと面白いVリーグにしていきたいっていう思いがあります」
佐久早「……ロメロやヨッフェみたいな選手が集まってくるような、そんな環境であったらいいと思います」
千歳「(頷く)今は日本の大学に通いながら海外挑戦する選手もいるし、その逆で海外からたくさんの選手がVリーグ目指してやってくるような、そんなバレーがしたいですね」
佐久早「天皇杯や黒鷲旗で対戦したけど、最近はV2V3もかなり力つけてるし。そういう思いを持ってるのは俺達だけじゃないんだなと実感はしてる」
千歳「そうだね。皆それぞれの場所で、全力でバレーを楽しんでる。今、すごく最高の時期だと思う。
だからこそ今の立ち位置で出来ること、やりたいことがたくさんあります。コートの外でも、楽しんでもらえるような、夢のある企画にもフットワーク軽く挑んでいきたいなと思います」
佐久早「また女装?」
千歳「何して蒸し返すの!楽しそうなお話が来たら、勿論やりますけども!具体的なところを言うなら、俺も聖臣も後進……学生の育成などに携わろうと思っています」
────チームでもバレークリニックの企画は多く行われていましたね。オールラウンダーな佐久早選手に、千歳選手のブロックの技術を教わりたい方は多いと思います。
千歳「(頷く)俺も聖臣も今は揃って、自分が持っている情報をよりわかりやすく伝える術を今は磨いているところです」
佐久早「国語の勉強してる気分」
千歳「頑張ろうね」
────これからもお二人の展望を追いかけさせて貰います。今日はありがとうございました。
千歳「ありがとうございます。一緒に楽しみましょう」
佐久早「(小さく一礼)」
展望を語り、頑張ろうねと肩肘張らずさらりと千歳が言うと、佐久早はこくりと小さく頷いた。ただそれだけのやり取りの奥に、膨大に積み重ねられた努力がある。
可愛らしい愛犬を傍に、幸福いっぱいの日々。そして選手としても上を目指す日々の中、様々な方面からバレーボールを盛り上げていこうという志が伺えた。
「したっけ俺も聖臣もずっとバレー馬鹿なんで、山本さんにはずっと追いかけて貰うことになりそうだなあ。今後ともよろしくお願いします」
「ねえ山本さん、若利くんの取材行ってきたんでしょ。元気だった?」
インタビューの後、千歳はそう言って笑いかけてきた。佐久早はと言えば、マイペースに代表チームメイトの話を振ってくる。取材を終えて別れるまで、飾らない笑顔が弾けていた。
彼らの在るところ、きっとすべて眩いのだろう。幸福な彼らに幸あれと願うばかりだ。