ネクロマンス・イン・ザ・ルーム
「____兄さんの遺伝子を俺の身体組織から取った未分化細胞に入れたんだ。クローンだ。兄さんの遺伝子が俺の身体に入って生まれた子供だ。こいつらは偽物だけど、でも俺たちの子供なんだよ兄さん! 兄さんはパパになったんだよ。嬉しいよな。ほら、3号も喜んでる。良かったなあ、ようやくパパに会えたなあ〜?」
「は……?」
「兄さんと俺だけで作られた肉が、兄さんと俺の糧になるんだ。俺たちは真に一つになった。セックスなんかよりずっと、こっちの方が兄さんを感じられる。大豆から作った肉だなんて嘘ついてすまなかった。俺が兄さんを信頼しきれてなかったのが悪いんだ。兄さんは俺のことを何でも受け止めてくれるのに。俺はいつも疑ってばかりだ。素直になれなくて、ひねくれてて、ごめん、兄さん。愛してる。愛しています、兄さん。誰よりあなたを信仰してる。兄さんの弟に生まれただけで、俺は一生分の運を使い切ったんだ。だから、周りに認められなくても、親に縁を切られても、仕方なかった。兄さんが死んでから、一つも楽しくなかったのだって、試練だったんだ。兄さんが俺に与えたんだ。俺はそれを乗りこなした。兄さんを復活させたんだ。これほど大きな愛があるか? ないよな。ああ、愛しているんだ」
「だから、俺を、褒めてくれ」
俺は目を瞬いた。言われていることが何一つわからなかった。
「えっと、啓二? 悪い、よく聞こえなかった。もう1回……」
「だから、俺は…………」
啓二がもう一度説明しようとしたとき、遠くからチャイムが聞こえた。え? 俺が戸惑っていると、啓二が舌打ちした。
「悪いが、今は無理だ。隠れててくれ」
「どういう……」
問いは許されず、俺はそのまま取り残された。まただ。あいつもたいがい勝手なやつだよな。
寒いなあ。そう思いながら体育座りをする。体育、懐かしいな。またやりたい。死んでるんだし、もう学校には行けないだろうけど。さっき啓二、なんて言ってたっけ。なんか子供? とか、クローンとか言ってた気がする。よく分からないけど難しいことなんだろう。俺は理科も苦手だし、クローンなんて漫画でしか知らない。ああでも、褒めてほしいとも言ってたな。弟が頑張ってるなら、褒めてやらないと。
「にしても、本当に、寒いな…………」
ちょっとおかしいくらいに寒い。体の芯から冷えていくような気がした。この部屋出ちゃおうかな。でも隠れてろって言われたしな。だんだんと意識が遠のいてくる。耳の奥で、ドクンドクンと血が流れる音が聞こえた。
そういえば、啓二は寒くなかったのかな? 半袖だったのに震えてなかった。
この部屋って本当に寒いのか? 俺がおかしいんじゃなくて?
「あれ」
体が傾いていく。地面にぶつかる寸前、透明な箱の中の目玉と目が合った。なんだ。肉塊じゃなかった。
これ、俺だ。失敗作の。
「は……?」
「兄さんと俺だけで作られた肉が、兄さんと俺の糧になるんだ。俺たちは真に一つになった。セックスなんかよりずっと、こっちの方が兄さんを感じられる。大豆から作った肉だなんて嘘ついてすまなかった。俺が兄さんを信頼しきれてなかったのが悪いんだ。兄さんは俺のことを何でも受け止めてくれるのに。俺はいつも疑ってばかりだ。素直になれなくて、ひねくれてて、ごめん、兄さん。愛してる。愛しています、兄さん。誰よりあなたを信仰してる。兄さんの弟に生まれただけで、俺は一生分の運を使い切ったんだ。だから、周りに認められなくても、親に縁を切られても、仕方なかった。兄さんが死んでから、一つも楽しくなかったのだって、試練だったんだ。兄さんが俺に与えたんだ。俺はそれを乗りこなした。兄さんを復活させたんだ。これほど大きな愛があるか? ないよな。ああ、愛しているんだ」
「だから、俺を、褒めてくれ」
俺は目を瞬いた。言われていることが何一つわからなかった。
「えっと、啓二? 悪い、よく聞こえなかった。もう1回……」
「だから、俺は…………」
啓二がもう一度説明しようとしたとき、遠くからチャイムが聞こえた。え? 俺が戸惑っていると、啓二が舌打ちした。
「悪いが、今は無理だ。隠れててくれ」
「どういう……」
問いは許されず、俺はそのまま取り残された。まただ。あいつもたいがい勝手なやつだよな。
寒いなあ。そう思いながら体育座りをする。体育、懐かしいな。またやりたい。死んでるんだし、もう学校には行けないだろうけど。さっき啓二、なんて言ってたっけ。なんか子供? とか、クローンとか言ってた気がする。よく分からないけど難しいことなんだろう。俺は理科も苦手だし、クローンなんて漫画でしか知らない。ああでも、褒めてほしいとも言ってたな。弟が頑張ってるなら、褒めてやらないと。
「にしても、本当に、寒いな…………」
ちょっとおかしいくらいに寒い。体の芯から冷えていくような気がした。この部屋出ちゃおうかな。でも隠れてろって言われたしな。だんだんと意識が遠のいてくる。耳の奥で、ドクンドクンと血が流れる音が聞こえた。
そういえば、啓二は寒くなかったのかな? 半袖だったのに震えてなかった。
この部屋って本当に寒いのか? 俺がおかしいんじゃなくて?
「あれ」
体が傾いていく。地面にぶつかる寸前、透明な箱の中の目玉と目が合った。なんだ。肉塊じゃなかった。
これ、俺だ。失敗作の。
