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ひねくれバレンタイン

 俺はちゃんとわかってるからさ。

 無理に素直にならなくたっていいんだぜ?

 ――――

 バタンッ!!!

「コハクーーーッ!!!」

「……何よ。うるさいわね、モーリア」

 学校が休みの日。いつも通りコハクの部屋に突撃すると、いつも通り辛辣な目のコハクがいた。

「学校は休みなのよ。なのに部屋に来るなんて。何? 暇なの? 暇人?」

「相変わらず辛辣だな……。まあそれがコハクだから、可愛いだけだけど」

「……ッ!? ば、バカじゃないの!!? ってか、抱き着かないでよ!」

 笑いながら抱き着けば、真っ赤になりながら俺から顔を背けていた。
 けど俺を引き離さない辺り、満更でもないと思う。

「だ、だいたい! 一体何の用でここに来たのよ!」

「そうだった。コハク、コレやるよ」

 バタバタと暴れ出したコハクにそう言いながら、ポケットに入っていた物を机に置く。

「……チョコレート?」

「おう。俺が買える中で最大限のな」

 ポケットから出したのはチョコレート。
 それもコハクの好みそうなミルクチョコレート味。

「バレンタインって奴だろ? 俺、コハクのこと大好きだからさ。思いきって逆チョコしてみたんだ」

「な……なな、な……何を言って……!」

「いーじゃんかよ。コハク大好きなんだからさ」

 予想通り真っ赤になった♪
 混乱して暴れだそうとするのを押さえながら、頭を撫でてみる。

「だってさ。コハクは昔っから一生懸命だし。俺の事も色々助けてくれただろ? コハクにとっちゃ、バレンタインはただの行事かもしれないけど、俺にとっては、コハクに想いを告げる日で……」

「も、モーリア! ストップ! ストップーーーッ!!!」

「ぐげぼっ!!?」

 早口で伝えていたらコハクに照れ隠しの拳で殴られた。
 うぉ、相変わらずスゲー痛ぇ……。

「痛ぇな、コハク~……。事実なんだからしょうがないじゃん」

「だ、だからって……」

 顔を見られないように、と言わんばかりにクッションに埋もれるコハク。
 いや、照れ隠しも可愛いけどな←

「好きって気持ちも感謝するって気持ちも、全部ひっくるめてコハクに伝えたいからさ~。……そんくらい、コハクの事が好きなんだし」

「…………っ」

「いや、まあ。押しすぎたって言うならひくけど……」

 コハクが顔を俯いてブルブル震えてる。
 やべ……あんまり押しすぎたか?

「あのー、コハクさん?」

「……る」

「へっ?」

 恐る恐る声をかけると、服の裾を掴まれた。
 目を真ん丸に見開ければ、ずいっと胸元に何かを押し付けられる。

「チョコ……あげるわよ」

「……え? マジで?」

 ま、まさか……まさかのコハクからのチョコ!?
 え? 嘘、現実か!?

「だから……あげるってば! その……モーリアからもらってばっかなの、悪いからっ!」

「コハク……」

「私だって、モーリアの事は…………、……好きだし」

「コハク……マジで嬉しい!」

 普段から素直にならないコハクからの言葉に、思わずはにかむ。
 必死で伝えてくるこの姿は、まさに俺だけの特権だからな。

 ひねくれバレンタイン

 ――――

(ホント可愛いよなあ、コハクは)

(こ、今回だけ……よ。……モーリアは特別だから)

(ん……サンキュー)
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