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共闘

「ブロッサム。嫉妬は素直に言った方が楽だよ」

「素直が楽……飛び切り極上のご褒美が待ってる?」

「ホント、黙ってて。おまえら」

 何なんだ、こいつら。なんでこんなに口が悪いんだ?

「……話し込んでるところ悪いのだが」

 ここでイクミが話しかけてきた。
 口の悪い二人から、彼へ顔を向ける。

「これからどうする? ウィンターコスモス。封印とやらは完了したから、俺たちにできることは無いだろう?」

「ああ……」

 そういやそうだな。敵は還したし、再封印に関してはロアがやる。
 カリナの頼みも完了したし、他にやること無いしな。

「どうする? アユミ」

「んあ? あー……たしかにやること消えたしな」

 俺に棒を振られたアユミは、その場でしばらく考える。

「とりあえずイクミたちはプリシアナに帰ろうか。リーロ先生にも報告したいし。再封印を頼むロアには、妖精霊コンビに行かせるから」

「……おまえはタカチホに行かないのか?」

「行きたくないからヤダ」

 ……それは単に、腹立つからか? 行きたくないからか?
 どっちにしても面倒な奴……。

「とにかく帰るか。……こら、カリナ。そろそろ帰るぞ」

「え~!? い~や~! まだ帰らないよ~!」

「おいおい……」

「カリナ」

 まだいたいのか、カリナは座り込んで駄々をこねて座り込んだ。
 そんなカリナに、ライが笑顔で近づく。……怖いオーラとともに。

「――それ以上わがまま言うなら、上級魔法撃ち込みますよ?」

「…………ごめんなさい」

「はい♪」

 にっこりと、武器である魔本を片手にライが言い切った。
 そんなライに、カリナはガクブルと震え出す。反対に素直に謝ったカリナに、ライはオーラを消して微笑む。

「では皆さん。帰りましょうか」

『……はい』

「…………」

「あうう……」

 にこりと癒しある笑顔のライ。
 それを見た俺らは、彼女を怒らせるべからず。と誓い、ライをよく知るイクミはため息をつき、同じくカリナはいまだにガクブルと震えていた。
 ……やはりライも個性的なんだな。怒ると目茶苦茶怖い……。

 ――――

 とりあえずすべてが終わり、プリシアナ学院に帰ってきた。
 リーロ先生に報告(アユミはそのついでに殴ろうとしたが、もちろん全力で止めた)し、ロアに報告しに行った妖精霊コンビも戻ってきた。
 これで今度こそ終わり。カリナはまだ居たがったが、ライの黒笑顔で黙り込んだ。
 ……まあ、帰り際まで賑やかなのは俺らっぽいよな。

「やれやれ……しっぽりした別れって無いのかね」

「別れって…その気になればいつでも会いに行けるだろうが」

 ただ学校と学年が違うだけ。
 名前を知ったなら、俺らはいつでも会いに行けるし。

「まあな。だけど、やっぱり名残惜しくね?」

「名残惜しい……友達だから?」

「あはは。ライラってば、うれしいこと言っちゃって~」

「はい! 友達になれて、ボク、うれしいです!」

「……それは……たしかに否定しないが」

 なんだ、女子のこの結託力。

「イクミ、中々やるよな。今度勝負してみないか?」

「ふむ……面白い。イカリ――いや、アユミは俺の知ってる奴らの中でもかなり強いからな」

「うれしいこと言ってくれるな。イクミ」

 こっちはこっちで意気投合し合う。剣士同士だから……かもしれないが、だからって一日で? つーか今、名前で呼んでなかった?

「あれ? イクミ……」

「アユミのことを認めたんだ。たしかに強かったしね」

「はい。すごく頼もしかったですよ!」

 え゙え゙え゙え゙え゙え゙ッ!!?
 なんか人望高まってませんかあああ!!?
 相変わらずアユミらしいっちゃアユミらしいが……。

「カリナ、ライ。そろそろ帰らないとまずいぞ」

「そうですね。今回はカリナに付き合って動いてましたから、正規のクエストではありませんし」

「あううう~~~……」

 二人の追撃に、カリナがますますしょげていく。
 ……この二人相手では弱気だな。
 そんなことを思いながら、こっちに振り向いた三人と目を合わせる。

「じゃあな。今日は助かった。……いずれ勝負できるといいな。アユミ」

「おう、そうだな。またな、イクミ」

「シルフィーさん、ライラさん。本日はありがとうございました。もしよろしければ今度、魔法についてもいろいろ手ほどきしてください」

「うん。いいよ~」

「ん……いつでも来い?」

「ブロッサム! 今度アンタの最強ラックでお化けや宇宙人を喚んで――」

「やらねーぞ、俺は!!」

「そうだ。やる時は俺を呼べ。もしくはレンタル料払え。あ、料金は一時間一万な」

「高ッ!! ってそうじゃなくて!」

 それぞれ思い思いに一言挨拶。
 ……けど最後の最後(しかも俺)で何故ボケる。
 しかもレンタル料払えって……俺は物じゃない!

「むー……つれないな」

「ブロッサムは俺の物だからな。借りるならそれ相応の代価を払わんと」

「腰に抱き着くな!」

 がっし! と勢いよく抱き着いたアユミを引き離そうとするが、力が強くて離れない。
 相変わらず馬鹿力だな! 競えばバハムーン、ドワーフと食いつくんじゃないか!?

「はあ……レンタル料掛かるならしかたないか」

「しかも高いぞ。借りるにも命懸けだ」

「カリナ、イクミ。そういう問題じゃないと思いますが……」

 ライの控えめなツッコミも、この二人(&俺らのパーティメンバー)の前ではあまり効果が無いようだ……。
 まあ俺らの場合、言って聞くような相手でも無いけど。

「まったく……ほら。いい加減、そろそろ行くぞ」

「はい。さあ、カリナも」

「はいはーい。じゃ、何かあったら、またよろしくねー!」

 一区切りつけ(ボケ続けないように)、イクミたちは俺達に手を振り、プリシアナ学院を去っていった。
 残された俺らも手を振り返し、イクミたちが見えなくなった頃に顔を見合わせる。

「……はあ。疲れた……」

「まさか黒タコさんが、またこっちに来るなんてね。さすがに予想外だったよ~」

「さすがに予想外……普通は、ない?」

「……ま。逆に言えば、」

 疲労感の溜まった身体を軽くほぐしながら、アユミがぽつりとつぶやいた。

「イクミたちと知り合ったからアレを楽に還せたし、侵略も防げた。じゃなかったらアレと再戦だし、イクミたちも無事じゃ済まなかったかもしれない」

 不敵に笑いながら「だろ?」と聞き返してきた。
 それを聞き、自然と顔を見合わせる俺たち。

「……まあ、たしかにね~」

「たしかに……不幸中の幸い?」

「一理はあるか……」

 たしかにアユミの言うことももっともだ。
 イクミたちと会って付き合わされたからこそ、あの黒タコを来る前に還らせんたんだし。

「それに、強い奴と知り合えることはいいことだ。組み手の相手が増えるし」

「それはおまえしか喜んでいないが……まあいいや」

 下手に凶悪なモンスターに突っ込まれるよりはマシ(アユミならやりかねない)か。
 そう納得し、学院へと戻るアユミの後ろを追いかけた。

「腹減った……塩焼きが山盛り食いたい!!」

「ぶれないな、アユミは……俺は紅茶が飲みたい」

「ボクは洋食系~」

「……甘いもの?」

「……ホント、俺たちらしいな」

 ――――

「あー、楽しかった!」

「そうですね。ボクたちにも、気さくに声をかけてくださいましたし」

「……ああ」

 同時刻。モーディアル学園に帰還するイクミたちも三人も、各自本日の出来事を思い起こしていた。

「やっぱ『伝説の先輩』という肩書きがあるだけのことはあるわね! 特にアユミ……アイツなんて一番面白いじゃない!」

「たしかに……リーダーだけあって強い奴だ。刀と体術……同じヒューマンとして負けられない」

「あんな状況を前にしても、すごく冷静に分析と対策していましたしね……」

「負けられないわ。――よし! 学校に戻ったら特訓よ!」

「先輩・女と言えど負けられないな。俺も鍛えねば」

「たしかに同感ですが……カリナ、イクミ。それは明日からお願いします」

 アユミたちの強さに、各自思うところを持ちつつ、目標を見出だす。

(アユミ=イカリ、か……。負けられないな)

 刀を握り、イクミも決意を固める。
 今度会う時まで、強くなって見せると。

「とりあえず……まずは帰るぞ」

「はい」

「了ー解ー」

 その時を楽しみにしながら、イクミたちはモーディアル学園へと戻るのだった。

 共闘

 ――――

(また会える日が来るのを)

(ゆっくり心待ちしよう)
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