共闘
――――
学びが焉る搭
とは言え、一度決めたら絶対やる、所謂ゴーイングマイウェイな二人が折れるわけがない。
というわけで来てしまったよ。例のダンジョンに。
「ここが例のダンジョンね。楽しみだわ」
「気をつけてね~。ここ、ダンジョンの中でもハイレベルなダンジョンだから」
「そこまで危険なんですか!?」
「それはそれで腕が鳴るな」
サラリと告げられた単語に、ライの目が見開いた。反対にイクミは冷静に受け止めている。
……これはこれで、個性豊かだな。うん。
「……で、さ。例の奴はどこに出たの?」
「慌てるな。今連れていく。言っとくが、ここの敵は強いから気をつけろよ」
「それは問題無いわよ。邪魔するなら蹴散らすまで! というわけでイクミ、ライ。サポートよろしくね」
「むろんだ。というか、突っ走り過ぎてダメージ多量になったら敵わないからな」
「今回はボクらだけですからね……まあ結局はいつもの流れなんですが……」
両手に槍を持ちながら意気込むカリナに、それぞれ慣れた様子で武器を手にしていた。
……ちょっと親近感が湧いた気がする←
「まあ……アレだ。とりあえず行ってみようか」
「そうね。待ってなさいよ、宇宙人!」
すでにやる気満々な二人はスタスタと歩き出す。
それにつられ、俺たちも慌てて追いかけるのだった。
――――
経験値を稼ぐという目的で、モンスターを薙ぎ倒しながらテクテクと歩いていく。
ま。地図は完成してて寄り道なくまっすぐ行くから、実際すぐ着くんだけどな。
「敵はエリア4の個室にいた。しかもこのエリア3のすぐ隣だからあと少しだぞ」
「へぇ。詳しいわね。そこのセレスティアと違って」
「悪かったな!!」
さりげなくこっち見てグッサリいく一言やめてくれない!?
何なんだよ、ホントに……。
「まあまあブロッサム。あとちょっとだよ~」
「目標地点……あと少し?」
「そりゃそうだけどよ……」
そうだけど……なんか、腹立つわ、ホント。
なんでこうなるんだよ……。
「……ん?」
二人からの暴言にイライラしていた時だった。
今いる場所の真上から、奇妙な感覚を感じる。
「ブロッサム、どうした?」
「いや……なんか、真上から変なのが……」
「あれ? ブロッサムも~?」
俺が言えば、シルフィーも感じていたらしい。
キョトンと見上げながら、天井を指さす。
「何て言うか~……おどろおどろしい感じがするんだよね~」
「……でもって、なんか以前に感じたことあるような嫌な感覚がするんだよな……」
肌に吸い付くように纏わり付く感覚。
こう言った感覚は(何故か)忘れないから、初めてではない。絶対に。
「以前と似た……前と同じ?」
「ああ。それがこの真上から感じて……」
「……というかさ」
上を見上げ続ける俺らに、ここでアユミがサラっと告げた。
「この上ってさ。ちょうど戦ったところだよな。例のヤツと」
「例のって……もしかして、私が探してる宇宙人?」
「宇宙人というか……『学びの終わりを夢見る落し子』な」
「へぇ。ってか。やけに詳しいわね」
天井を見上げながら呑気に話し合うアユミとカリナ。
……が。爆弾どころか原爆投下された俺らは、石のように固まった。固まってしまった。
「……あのー、すみません。それって……」
「……カリナの言う、宇宙人を倒した『伝説の先輩』とはおまえたちだったのか」
「え? ホント!?」
「いや、すまん……まともに言っても信じないと思って……」
「そーだな。俺なら絶対信じないな」
「いや……いい。ウィンターコスモスやイカリに一理ある」
「そう言ってくれるとありがたいな。イクミ」
「皆さん。それもそうですが、今はそっちじゃないですよね!?」
ライが顔を真っ青にして天井を指さした。
ってそうだ! そうだったよ!
「なあアユミ。いまさらだけど、今、ヤツの魔力を感じるんだけど。それもこの上から!」
「だろうな。この嫌な圧力……あのタコ以外考えられないだろ」
「ホント!? ならば早速行かないと!!」
「無策に突っ込むのは危険です、カリナ!」
「落ち着け。……どうしよう、アユミ」
目を輝かせて駆け出すカリナを押さえつつ、痛くなった首を軽く回しながらアユミに顔を向けた。
正直嫌な予感が拭えない。だけど、当たってたら……大事になる。
「……アレはあの時、ソフィアール先生から渡された魔導器で元の世界に還しただけだ。倒したわけじゃない」
思い出しながら確認するアユミに、一つずつ頷いていく。
「なら……また来る可能性も0%じゃない。……いや、アレの考えからして、むしろまた来る可能性の方が高いな」
「また来る可能性……それが、今現在?」
「ん~……感覚が覚えてる以上、そうかもね~」
「……つーか。絶対そうだよな? 今現在、この真上にいるだろ」
シルフィー、シルフィネストも加えて顔を見合わせる。
そして改めて理解する。……確実にやばいことが起きている、と。
「……ってことは……呑気になってる場合じゃないだろ! どうするんだよ!?」
「どうするもこうするも……放置にするのだけはまずいよね~」
「まずい……先生に知られたら、もっとまずい?」
「当たり前だ。……こうなったら、俺らが取るべき手段は一つ」
慌てる俺と反対に、あくまでも冷静に状況と対策を考えるアユミは刀を強く握りしめた。
「もう一度追い返すか、還付なきまでにたたきのめすか。……どっちかだな」
「やっぱりか……」
予想はしてたが、やっぱりそうなるか……。
まあアレを放置するのもたしかに問題だしな……。
「決まりだな。おーい」
「ん? 決まった? 決まったわね!?」
方針は決まったので、それを伝えるべく三人に向き直る。
「……おい。何があった」
「……いつものことだ」
「カリナ……止めるの、大変なんですよー……」
……が、振り返った先には、カリナが目をキラキラ輝かせ、イクミとライが何故か肩で息をしていた。
話を聞く分、カリナを止めていた。というのはわかったが……どんだけ好きなんだよ、世界外生命体が←
「まあいい。それより話が……ブロッサム」
「またこのパターンかよ……」
いや、慣れてるからもういいけどさ……。
三人に説明をしつつ、それでもやっぱり肩を落とした。
「……つまり、それと戦わなければいけないってことですね?」
「……そうなんだが。おまえらは、大丈夫か?」
アレは戦闘力はもちろん、プレッシャーだけでもやばい。
アゴラモートより強い(『森羅万象の理』の神よりマシだが)のだから、下手に他人を巻き込みたくない。
「ボクらはたしかに、皆さんより弱いかもしれません。……けど」
「……だからと言って、無視はできない」
「宇宙人を見れるんなら戦闘の一つや二つは問題ないわ」
……意志が固いな(一人我の強い奴がいるけど)。
ま。そうじゃなきゃ、冒険者は勤まらないか。
「決まりだな。……なら」
「はいはい……全力で奴を倒せばいいんだろ」
俺の返答に、それはもう満面の笑みで「そっ」と楽しげに頷いた。
……う……反則だろ……。
「よし。とりあえず突撃だ。ただし特攻はするなよ。カリナ」
「わかってるわよ!」
「ならばよし。行くぞ!」
余計な茶々はあったが、全員準備はOKだ。
頷き、一斉に次のフロアへ飛び込んだ。
「……っ!?」
「うーん……こういう時だけ、ホント当たるもんなんだな……」
「やったわ! あの噂はホントだったのね!」
息を飲む俺と反対に、アユミは冷静に目の前の光景を分析している。
カリナに至っては大喜びしていた。
「学びの終わりを夢見る落し子……足だけだけど」
「ああ。足だけな」
空間の一部が歪み、そこからにょるんっ、と黒い触手が出てきている。
魔力からして間違いない。前に倒した『学びの終わりを夢見る落し子』だった。
「ホントにまた来やがった……」
「その執念だけは見事なものだな。こっちからすれば迷惑以外何でもないけど」
「あの、お二方。今はそんなこと言ってる場合ではないと思いますが!?」
「……空間がどんどん広がってるしな」
ライとイクミの指摘に、触手が出てきている空間へ目を向ける。
……たしかに二人の言う通り、空間が徐々に大きくなって、さらにそこからまた触手が一本……。
「……って完全に侵略間近じゃないか!!」
「うん。空間広げてる時点でそうだよね~」
「侵略間近……再び危機?」
「ああ。まだ勝算はあるから、回避可能できっけど」
「……え?」
「……どういう意味だ。イカリ」
目を丸める俺に対し、イクミが目を細めながらたずねた。
眼鏡越しの眼光が鋭くなってやがる……。
「奴は半分しかこっちに来ていない。逆に言えば、出てきてる部分を押し返し、空間を閉じれば問題ないってこと」
「なるほど……って、その空間はどうやって……」
どうやって閉じるんだよそこが一番問題じゃあ……。
と思ったところ、「は~い」と間延びした返事が響いた。
「ボクが封印できるよ~」
「……できるのか!?」
「うん。と言っても、多分数日しかもたないけど」
「あー、問題ないって。そのあとはバ神に再封印させればいいし」
あっけらかんと言ったシルフィーとアユミ。
……もういろんな意味でツッコミ切れねぇよ……。
「じゃあじゃあ……宇宙人と派手に戦っていい?」
「ああ。空間の向こう側へ返す勢いでやってたもれ」
アユミが許可を出せば「やった!」と槍を構えながらカリナが喜んだ。
どんだけ喜ぶんだ……まあ戦ってくれるんならいいけど。
「無茶はすんなよ。向こう側に落ちました――なんて冗談じゃないからな」
「心得た……わかったな? カリナ」
「わかってる、わかってる♪」
「ホントかよ……」
「まあまあ。……それより、来るぞ」
いつもの戦闘スタイルとなったアユミの低い声に、俺を含む全員が無意識に身構えた。
『キュロロロ……』
触手の一本一本が、それぞれ別々に意志があるように動く。
共通してるのは……その全てが俺らに敵意を向けてることかな。
「行くぞ!」
「わかった」
「は~い」
「……ん」
「ライ、カリナ。無理はするな」
「はい!」
「了解!」
それぞれの合図とほぼ同時に、触手たちもこちらへ向かってきた。
……が、互いに相当の死線をくぐり抜けてきた者たち。即行散開し、攻撃を避けた。
「さあて……思いきりいっくよーーーッ!!!」
真っ先に突っ走ったのがカリナだった。
目がキラキラ……どころかギラギラの爛々で何か怖ェェェェッ!!!
「せェの……っ!」
両手に持つ槍を振り回し、同時に竜のようなオーラを出す。
多分……竜騎士学科だけのスキル、『竜魂解放』だと思う。
「よし……とぉうりゃあああッ!!!」
強化した状態で、動く触手を片っ端から攻撃していく。
女と言えどバハムーン……。パワータイプならではの腕力に加え、『竜魂解放』の強化もあるから、攻撃一発で触手に大きな衝撃を与える。
「……強いな、アイツ」
「カリナのパワーと勢いはすさまじいからな。同種族でも勝つのは難しいだろう」
「なるほどな。だがそれを言ったら、ウチの娘も負けてないんだけど」
「……はい?」
「……なんだと?」
イクミと揃って首を傾げると、同時にバシンッ! と打撃音が連続で鳴っていく。
「はぁあっ!!!」
ライラだった。
カリナ同様特攻し、触手を片っ端から拳と蹴りで叩きのめしていく。
「…………。あの。私と同じノーム、ですよね? ライラさんって……」
「あはは。ライラちゃんは特別だからね~」
「まあ……ライラは、な」
元々特殊な生い立ちだし……こればっかりはしょうがない。……よな?←
「とりあえず~……前衛のみんなが戦えるよう、少しでも触手の動きを止めなきゃ。ライちゃん、協力して~」
「え? は、はいっ!」
黄緑色の魔力を練り上げるシルフィーにつられ、ライもまた蒼色の魔力を練り上げはじめた。
で、それを察知したか、二本の触手が二人へ伸びて来る。
「させるか!」
「邪魔だ!」
そこへすかさず割り込んできたのは侍二人――アユミとイクミだ。
それぞれ刀で一撃を与え、地面に叩き落とす。
「よし! やっちまえ、灰色魔術師ども!」
「イエッサーっ!」
触手を斬り伏せつつ、後方へ叫ぶアユミ。
それにシルフィーが余裕たっぷりで頷き、練り上げた魔力を解放させた。
「茨に宿る命。地の底より芽吹け! ドライアード!」
「白銀に染まる凍結の世界。安らかな幕引きをここに……ブリザード!!」
放たれたのは植物と氷の古代魔法。
シルフィーのアレンジによって、ただの植物が鋭い棘を生やした茨となり、それが触手に絡み付いて食い込む。
さらにそこに吹雪が襲いかかるというコンボ。茨は凍結して固まった上、触手の中に食い込んだ棘のおかげで、内部も少しダメージ+凍傷を受けてるらしい。
……なんて恐ろしい連携技だ←
「ほほう……ライ、結構できるじゃないか」
「……オーベルデューレも中々だ。魔法すら自在に変化させる……話は本当だったか」
「天才的だからな。シルフィーは」
今じゃ、攻撃魔法の腕前は他の追随を許さない。
さっきのドライアードみたいに、アレンジで魔法の形も変えるからな。まさに予測不能ってこと。
「……触手の動きが鈍ってきたぞ。イカリ」
「ああ。さすがに氷漬けは聞いたっぽいな」
「……ならば」
「わかってるって、イクミ。……ブロッサム」
刀をくるりと回しながら、アユミが俺の方へ顔を向けた。
「最後の仕上げ……任せていいよな?」
「は? ……ああ。わかった」
たったそれだけの、アユミの少ない言葉。
自分に何をしてほしいのか……すぐにピンときた俺は二つ返事で頷いた。
「さすがブロッサム。頼んだぜ。……じゃあイクミ」
「ああ。触手すべてにトドメに刺す」
刀と鞘を構えるアユミ。両手に刀の二刀流のイクミ。
互いに頷き合うと、それぞれ触手に向かい合う。
「行くぞ!」
「任せろ」
残った無事な触手の攻撃をかわし、そして駆けていった。
「そらッ!」
「はァあああ!!」
そして、そこから二人の猛攻が開始される。
触手を避けながら手にした刀で薙ぎ倒していく。
「邪魔すんな――っと!」
鞘の防御と打撃で怯ませ、そこに刀の一撃を叩き込むアユミ。
天才的判断力かつ驚異的な身体能力に加え、すべての種族に等しく一撃を与える妖刀鬼徹の使い手でもある。
たとえアレでも、ただじゃ済まされないはずだ。
「……失せろ!!」
アユミの近くで、イクミもまた触手をのしていた。
ただアユミと対し、イクミは刀の二刀流なので、より攻撃的って感じだ。
(……何より)
何より、目を引くのはその剣さばきだ。
アユミと同じくペン回しのように刀を回す。さらには刀が弾かれそうになる寸前、わざと宙に放り投げて回避し、回転しながら落ちるそれを器用にキャッチする。
攻撃でも器用に手の平で回して、さらに回転力を利用した攻撃も行う。
……完全にジャグリングだろ、それ。え、何? 刀使いってみんな、ジャグリング得意なの?←
「やるな、イクミ!」
「……イカリもな」
……なんでこんなに意気投合してるの? 俺を差し置いて、なあ、なんで?←
「ブロッサムー、準備は……ってうぉっ!? なんだその溢れ出してる魔力は!!?」
「え?」
触手をあらかた片付けてきたアユミの言葉で、自分が無意識に必要以上の魔力を練っていたことに気づいた。
いつの間に……いやいや、原因なんて知らないぞ。知らない……はず……←
「まあいいや……それだけあれば十分だろ。ブロッサム! 合わせろよ!!」
「あ……ああ! わかった!」
号令をかけ、アユミが先頭切って走っていった。
かけられた俺も、光の魔力をさらに限界まで練り上げる。
「せぇ――のッ!!」
アユミの刀を収め、白刃一閃で触手すべてを叩き斬っていく。
そこへイクミ、カリナ、ライラの三人も続けて攻撃を与えていく。
「イクミ。手伝え!」
「心得た。任せておけ」
最後に(何故か)イクミに声をかけ、同時に刀を構えた。
「「はぁあああーーーッ!!!」」
触手を走り抜け、触手たちに魔力を込めた強固な斬撃で斬り裂いていく。それもほぼまったく同じ動きと速さなので、神懸かったコンビネーションと言える。
……なんか、悔しい←
「よし!」
「こんなものか……」
「ずるい、イクミ! リーダー同士で合体奥義を炸裂させたなんて!」
カリナ……羨ましそうに言うなよ。
いや、べつに俺がどうこう言うわけじゃないが……。
「ブロッサム。その嫉妬は魔力として爆発させちゃえ☆」
「嫉妬を爆発……男の嫉妬は醜いよ……?」
「黙れ、ガキども!!」
違う! 断じて嫉妬なんかじゃないんだからな!!
非常に口の悪くなった妖精霊コンビに怒鳴りながら、溜め込んだ光の魔力を爆発させた。
「(数十)倍加魔法――超強化イペリオンッ!!!」
イライラの溜まってた俺は、魔力とともにそれを触手の中心で解き放った。
……そしたら予想以上の大爆発を起こした。それはもう部屋中を光で埋めつくす勢いでな。
『キュロロローーーッ!!!?』
触手どもがすべて、一斉に空間の向こうへと吹き飛んでいった。凄まじい勢いで。
……まあ、予定通りの結果なんだけど。でもそこまで威力を強くさせた覚えは無いんだが……←
「うわあ、すっご……」
「……壮観だな」
「ブロッサムさんの光魔法、異常に強すぎです……」
「気にするな、そこの三人。……よし、閉じろ! シルフィー」
「了解~♪」
俺のイペリオンの威力に慣れてるアユミとシルフィーは、すぐに行動に出た。
アユミの声にすぐ頷き、シルフィーが古代語で詠唱を始める。
「……そぉ――れッ!!!」
ガチンッ!!! と激しい金属音と光が空間に広がる。
その光が消えた時には、もう触手が出てた空間は無くなっていた。
「うーん……まあ、こんなところかな?」
「あ~……宇宙人、もうちょっと見たかったな~」
「まだ言いますか、カリナ……」
……とりあえず、事態は収まったらしいな。
後はロアにやってもらおう。腐っても神だし←
「よくやった、シルフィー。さすが最強の妖精賢者だ」
「最強……シルフィーがトップ?」
「えへへ♪」
「ブロッサムもな。さすがだよ。俺様の麗しのハニーは♪」
「誰がハニーだ!!」
某赤毛の神子か、おまえは!
いや、たしかにある意味間違っちゃいないけど!!
「あはは……イクミと組んだのは予想以上に効果的だったな」
「……は……? おまえ、今なんつった?」
「知りませーん。俺は何にも言ってませーん」
嘘だ。俺から目を反らしてるじゃないか!! つーか、絶対計算に入れてただろ!?
くそ……こっちがどれだけ不満だった……いや、べつになんでもないけど。全然なんでもないけど!!←
学びが焉る搭
とは言え、一度決めたら絶対やる、所謂ゴーイングマイウェイな二人が折れるわけがない。
というわけで来てしまったよ。例のダンジョンに。
「ここが例のダンジョンね。楽しみだわ」
「気をつけてね~。ここ、ダンジョンの中でもハイレベルなダンジョンだから」
「そこまで危険なんですか!?」
「それはそれで腕が鳴るな」
サラリと告げられた単語に、ライの目が見開いた。反対にイクミは冷静に受け止めている。
……これはこれで、個性豊かだな。うん。
「……で、さ。例の奴はどこに出たの?」
「慌てるな。今連れていく。言っとくが、ここの敵は強いから気をつけろよ」
「それは問題無いわよ。邪魔するなら蹴散らすまで! というわけでイクミ、ライ。サポートよろしくね」
「むろんだ。というか、突っ走り過ぎてダメージ多量になったら敵わないからな」
「今回はボクらだけですからね……まあ結局はいつもの流れなんですが……」
両手に槍を持ちながら意気込むカリナに、それぞれ慣れた様子で武器を手にしていた。
……ちょっと親近感が湧いた気がする←
「まあ……アレだ。とりあえず行ってみようか」
「そうね。待ってなさいよ、宇宙人!」
すでにやる気満々な二人はスタスタと歩き出す。
それにつられ、俺たちも慌てて追いかけるのだった。
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経験値を稼ぐという目的で、モンスターを薙ぎ倒しながらテクテクと歩いていく。
ま。地図は完成してて寄り道なくまっすぐ行くから、実際すぐ着くんだけどな。
「敵はエリア4の個室にいた。しかもこのエリア3のすぐ隣だからあと少しだぞ」
「へぇ。詳しいわね。そこのセレスティアと違って」
「悪かったな!!」
さりげなくこっち見てグッサリいく一言やめてくれない!?
何なんだよ、ホントに……。
「まあまあブロッサム。あとちょっとだよ~」
「目標地点……あと少し?」
「そりゃそうだけどよ……」
そうだけど……なんか、腹立つわ、ホント。
なんでこうなるんだよ……。
「……ん?」
二人からの暴言にイライラしていた時だった。
今いる場所の真上から、奇妙な感覚を感じる。
「ブロッサム、どうした?」
「いや……なんか、真上から変なのが……」
「あれ? ブロッサムも~?」
俺が言えば、シルフィーも感じていたらしい。
キョトンと見上げながら、天井を指さす。
「何て言うか~……おどろおどろしい感じがするんだよね~」
「……でもって、なんか以前に感じたことあるような嫌な感覚がするんだよな……」
肌に吸い付くように纏わり付く感覚。
こう言った感覚は(何故か)忘れないから、初めてではない。絶対に。
「以前と似た……前と同じ?」
「ああ。それがこの真上から感じて……」
「……というかさ」
上を見上げ続ける俺らに、ここでアユミがサラっと告げた。
「この上ってさ。ちょうど戦ったところだよな。例のヤツと」
「例のって……もしかして、私が探してる宇宙人?」
「宇宙人というか……『学びの終わりを夢見る落し子』な」
「へぇ。ってか。やけに詳しいわね」
天井を見上げながら呑気に話し合うアユミとカリナ。
……が。爆弾どころか原爆投下された俺らは、石のように固まった。固まってしまった。
「……あのー、すみません。それって……」
「……カリナの言う、宇宙人を倒した『伝説の先輩』とはおまえたちだったのか」
「え? ホント!?」
「いや、すまん……まともに言っても信じないと思って……」
「そーだな。俺なら絶対信じないな」
「いや……いい。ウィンターコスモスやイカリに一理ある」
「そう言ってくれるとありがたいな。イクミ」
「皆さん。それもそうですが、今はそっちじゃないですよね!?」
ライが顔を真っ青にして天井を指さした。
ってそうだ! そうだったよ!
「なあアユミ。いまさらだけど、今、ヤツの魔力を感じるんだけど。それもこの上から!」
「だろうな。この嫌な圧力……あのタコ以外考えられないだろ」
「ホント!? ならば早速行かないと!!」
「無策に突っ込むのは危険です、カリナ!」
「落ち着け。……どうしよう、アユミ」
目を輝かせて駆け出すカリナを押さえつつ、痛くなった首を軽く回しながらアユミに顔を向けた。
正直嫌な予感が拭えない。だけど、当たってたら……大事になる。
「……アレはあの時、ソフィアール先生から渡された魔導器で元の世界に還しただけだ。倒したわけじゃない」
思い出しながら確認するアユミに、一つずつ頷いていく。
「なら……また来る可能性も0%じゃない。……いや、アレの考えからして、むしろまた来る可能性の方が高いな」
「また来る可能性……それが、今現在?」
「ん~……感覚が覚えてる以上、そうかもね~」
「……つーか。絶対そうだよな? 今現在、この真上にいるだろ」
シルフィー、シルフィネストも加えて顔を見合わせる。
そして改めて理解する。……確実にやばいことが起きている、と。
「……ってことは……呑気になってる場合じゃないだろ! どうするんだよ!?」
「どうするもこうするも……放置にするのだけはまずいよね~」
「まずい……先生に知られたら、もっとまずい?」
「当たり前だ。……こうなったら、俺らが取るべき手段は一つ」
慌てる俺と反対に、あくまでも冷静に状況と対策を考えるアユミは刀を強く握りしめた。
「もう一度追い返すか、還付なきまでにたたきのめすか。……どっちかだな」
「やっぱりか……」
予想はしてたが、やっぱりそうなるか……。
まあアレを放置するのもたしかに問題だしな……。
「決まりだな。おーい」
「ん? 決まった? 決まったわね!?」
方針は決まったので、それを伝えるべく三人に向き直る。
「……おい。何があった」
「……いつものことだ」
「カリナ……止めるの、大変なんですよー……」
……が、振り返った先には、カリナが目をキラキラ輝かせ、イクミとライが何故か肩で息をしていた。
話を聞く分、カリナを止めていた。というのはわかったが……どんだけ好きなんだよ、世界外生命体が←
「まあいい。それより話が……ブロッサム」
「またこのパターンかよ……」
いや、慣れてるからもういいけどさ……。
三人に説明をしつつ、それでもやっぱり肩を落とした。
「……つまり、それと戦わなければいけないってことですね?」
「……そうなんだが。おまえらは、大丈夫か?」
アレは戦闘力はもちろん、プレッシャーだけでもやばい。
アゴラモートより強い(『森羅万象の理』の神よりマシだが)のだから、下手に他人を巻き込みたくない。
「ボクらはたしかに、皆さんより弱いかもしれません。……けど」
「……だからと言って、無視はできない」
「宇宙人を見れるんなら戦闘の一つや二つは問題ないわ」
……意志が固いな(一人我の強い奴がいるけど)。
ま。そうじゃなきゃ、冒険者は勤まらないか。
「決まりだな。……なら」
「はいはい……全力で奴を倒せばいいんだろ」
俺の返答に、それはもう満面の笑みで「そっ」と楽しげに頷いた。
……う……反則だろ……。
「よし。とりあえず突撃だ。ただし特攻はするなよ。カリナ」
「わかってるわよ!」
「ならばよし。行くぞ!」
余計な茶々はあったが、全員準備はOKだ。
頷き、一斉に次のフロアへ飛び込んだ。
「……っ!?」
「うーん……こういう時だけ、ホント当たるもんなんだな……」
「やったわ! あの噂はホントだったのね!」
息を飲む俺と反対に、アユミは冷静に目の前の光景を分析している。
カリナに至っては大喜びしていた。
「学びの終わりを夢見る落し子……足だけだけど」
「ああ。足だけな」
空間の一部が歪み、そこからにょるんっ、と黒い触手が出てきている。
魔力からして間違いない。前に倒した『学びの終わりを夢見る落し子』だった。
「ホントにまた来やがった……」
「その執念だけは見事なものだな。こっちからすれば迷惑以外何でもないけど」
「あの、お二方。今はそんなこと言ってる場合ではないと思いますが!?」
「……空間がどんどん広がってるしな」
ライとイクミの指摘に、触手が出てきている空間へ目を向ける。
……たしかに二人の言う通り、空間が徐々に大きくなって、さらにそこからまた触手が一本……。
「……って完全に侵略間近じゃないか!!」
「うん。空間広げてる時点でそうだよね~」
「侵略間近……再び危機?」
「ああ。まだ勝算はあるから、回避可能できっけど」
「……え?」
「……どういう意味だ。イカリ」
目を丸める俺に対し、イクミが目を細めながらたずねた。
眼鏡越しの眼光が鋭くなってやがる……。
「奴は半分しかこっちに来ていない。逆に言えば、出てきてる部分を押し返し、空間を閉じれば問題ないってこと」
「なるほど……って、その空間はどうやって……」
どうやって閉じるんだよそこが一番問題じゃあ……。
と思ったところ、「は~い」と間延びした返事が響いた。
「ボクが封印できるよ~」
「……できるのか!?」
「うん。と言っても、多分数日しかもたないけど」
「あー、問題ないって。そのあとはバ神に再封印させればいいし」
あっけらかんと言ったシルフィーとアユミ。
……もういろんな意味でツッコミ切れねぇよ……。
「じゃあじゃあ……宇宙人と派手に戦っていい?」
「ああ。空間の向こう側へ返す勢いでやってたもれ」
アユミが許可を出せば「やった!」と槍を構えながらカリナが喜んだ。
どんだけ喜ぶんだ……まあ戦ってくれるんならいいけど。
「無茶はすんなよ。向こう側に落ちました――なんて冗談じゃないからな」
「心得た……わかったな? カリナ」
「わかってる、わかってる♪」
「ホントかよ……」
「まあまあ。……それより、来るぞ」
いつもの戦闘スタイルとなったアユミの低い声に、俺を含む全員が無意識に身構えた。
『キュロロロ……』
触手の一本一本が、それぞれ別々に意志があるように動く。
共通してるのは……その全てが俺らに敵意を向けてることかな。
「行くぞ!」
「わかった」
「は~い」
「……ん」
「ライ、カリナ。無理はするな」
「はい!」
「了解!」
それぞれの合図とほぼ同時に、触手たちもこちらへ向かってきた。
……が、互いに相当の死線をくぐり抜けてきた者たち。即行散開し、攻撃を避けた。
「さあて……思いきりいっくよーーーッ!!!」
真っ先に突っ走ったのがカリナだった。
目がキラキラ……どころかギラギラの爛々で何か怖ェェェェッ!!!
「せェの……っ!」
両手に持つ槍を振り回し、同時に竜のようなオーラを出す。
多分……竜騎士学科だけのスキル、『竜魂解放』だと思う。
「よし……とぉうりゃあああッ!!!」
強化した状態で、動く触手を片っ端から攻撃していく。
女と言えどバハムーン……。パワータイプならではの腕力に加え、『竜魂解放』の強化もあるから、攻撃一発で触手に大きな衝撃を与える。
「……強いな、アイツ」
「カリナのパワーと勢いはすさまじいからな。同種族でも勝つのは難しいだろう」
「なるほどな。だがそれを言ったら、ウチの娘も負けてないんだけど」
「……はい?」
「……なんだと?」
イクミと揃って首を傾げると、同時にバシンッ! と打撃音が連続で鳴っていく。
「はぁあっ!!!」
ライラだった。
カリナ同様特攻し、触手を片っ端から拳と蹴りで叩きのめしていく。
「…………。あの。私と同じノーム、ですよね? ライラさんって……」
「あはは。ライラちゃんは特別だからね~」
「まあ……ライラは、な」
元々特殊な生い立ちだし……こればっかりはしょうがない。……よな?←
「とりあえず~……前衛のみんなが戦えるよう、少しでも触手の動きを止めなきゃ。ライちゃん、協力して~」
「え? は、はいっ!」
黄緑色の魔力を練り上げるシルフィーにつられ、ライもまた蒼色の魔力を練り上げはじめた。
で、それを察知したか、二本の触手が二人へ伸びて来る。
「させるか!」
「邪魔だ!」
そこへすかさず割り込んできたのは侍二人――アユミとイクミだ。
それぞれ刀で一撃を与え、地面に叩き落とす。
「よし! やっちまえ、灰色魔術師ども!」
「イエッサーっ!」
触手を斬り伏せつつ、後方へ叫ぶアユミ。
それにシルフィーが余裕たっぷりで頷き、練り上げた魔力を解放させた。
「茨に宿る命。地の底より芽吹け! ドライアード!」
「白銀に染まる凍結の世界。安らかな幕引きをここに……ブリザード!!」
放たれたのは植物と氷の古代魔法。
シルフィーのアレンジによって、ただの植物が鋭い棘を生やした茨となり、それが触手に絡み付いて食い込む。
さらにそこに吹雪が襲いかかるというコンボ。茨は凍結して固まった上、触手の中に食い込んだ棘のおかげで、内部も少しダメージ+凍傷を受けてるらしい。
……なんて恐ろしい連携技だ←
「ほほう……ライ、結構できるじゃないか」
「……オーベルデューレも中々だ。魔法すら自在に変化させる……話は本当だったか」
「天才的だからな。シルフィーは」
今じゃ、攻撃魔法の腕前は他の追随を許さない。
さっきのドライアードみたいに、アレンジで魔法の形も変えるからな。まさに予測不能ってこと。
「……触手の動きが鈍ってきたぞ。イカリ」
「ああ。さすがに氷漬けは聞いたっぽいな」
「……ならば」
「わかってるって、イクミ。……ブロッサム」
刀をくるりと回しながら、アユミが俺の方へ顔を向けた。
「最後の仕上げ……任せていいよな?」
「は? ……ああ。わかった」
たったそれだけの、アユミの少ない言葉。
自分に何をしてほしいのか……すぐにピンときた俺は二つ返事で頷いた。
「さすがブロッサム。頼んだぜ。……じゃあイクミ」
「ああ。触手すべてにトドメに刺す」
刀と鞘を構えるアユミ。両手に刀の二刀流のイクミ。
互いに頷き合うと、それぞれ触手に向かい合う。
「行くぞ!」
「任せろ」
残った無事な触手の攻撃をかわし、そして駆けていった。
「そらッ!」
「はァあああ!!」
そして、そこから二人の猛攻が開始される。
触手を避けながら手にした刀で薙ぎ倒していく。
「邪魔すんな――っと!」
鞘の防御と打撃で怯ませ、そこに刀の一撃を叩き込むアユミ。
天才的判断力かつ驚異的な身体能力に加え、すべての種族に等しく一撃を与える妖刀鬼徹の使い手でもある。
たとえアレでも、ただじゃ済まされないはずだ。
「……失せろ!!」
アユミの近くで、イクミもまた触手をのしていた。
ただアユミと対し、イクミは刀の二刀流なので、より攻撃的って感じだ。
(……何より)
何より、目を引くのはその剣さばきだ。
アユミと同じくペン回しのように刀を回す。さらには刀が弾かれそうになる寸前、わざと宙に放り投げて回避し、回転しながら落ちるそれを器用にキャッチする。
攻撃でも器用に手の平で回して、さらに回転力を利用した攻撃も行う。
……完全にジャグリングだろ、それ。え、何? 刀使いってみんな、ジャグリング得意なの?←
「やるな、イクミ!」
「……イカリもな」
……なんでこんなに意気投合してるの? 俺を差し置いて、なあ、なんで?←
「ブロッサムー、準備は……ってうぉっ!? なんだその溢れ出してる魔力は!!?」
「え?」
触手をあらかた片付けてきたアユミの言葉で、自分が無意識に必要以上の魔力を練っていたことに気づいた。
いつの間に……いやいや、原因なんて知らないぞ。知らない……はず……←
「まあいいや……それだけあれば十分だろ。ブロッサム! 合わせろよ!!」
「あ……ああ! わかった!」
号令をかけ、アユミが先頭切って走っていった。
かけられた俺も、光の魔力をさらに限界まで練り上げる。
「せぇ――のッ!!」
アユミの刀を収め、白刃一閃で触手すべてを叩き斬っていく。
そこへイクミ、カリナ、ライラの三人も続けて攻撃を与えていく。
「イクミ。手伝え!」
「心得た。任せておけ」
最後に(何故か)イクミに声をかけ、同時に刀を構えた。
「「はぁあああーーーッ!!!」」
触手を走り抜け、触手たちに魔力を込めた強固な斬撃で斬り裂いていく。それもほぼまったく同じ動きと速さなので、神懸かったコンビネーションと言える。
……なんか、悔しい←
「よし!」
「こんなものか……」
「ずるい、イクミ! リーダー同士で合体奥義を炸裂させたなんて!」
カリナ……羨ましそうに言うなよ。
いや、べつに俺がどうこう言うわけじゃないが……。
「ブロッサム。その嫉妬は魔力として爆発させちゃえ☆」
「嫉妬を爆発……男の嫉妬は醜いよ……?」
「黙れ、ガキども!!」
違う! 断じて嫉妬なんかじゃないんだからな!!
非常に口の悪くなった妖精霊コンビに怒鳴りながら、溜め込んだ光の魔力を爆発させた。
「(数十)倍加魔法――超強化イペリオンッ!!!」
イライラの溜まってた俺は、魔力とともにそれを触手の中心で解き放った。
……そしたら予想以上の大爆発を起こした。それはもう部屋中を光で埋めつくす勢いでな。
『キュロロローーーッ!!!?』
触手どもがすべて、一斉に空間の向こうへと吹き飛んでいった。凄まじい勢いで。
……まあ、予定通りの結果なんだけど。でもそこまで威力を強くさせた覚えは無いんだが……←
「うわあ、すっご……」
「……壮観だな」
「ブロッサムさんの光魔法、異常に強すぎです……」
「気にするな、そこの三人。……よし、閉じろ! シルフィー」
「了解~♪」
俺のイペリオンの威力に慣れてるアユミとシルフィーは、すぐに行動に出た。
アユミの声にすぐ頷き、シルフィーが古代語で詠唱を始める。
「……そぉ――れッ!!!」
ガチンッ!!! と激しい金属音と光が空間に広がる。
その光が消えた時には、もう触手が出てた空間は無くなっていた。
「うーん……まあ、こんなところかな?」
「あ~……宇宙人、もうちょっと見たかったな~」
「まだ言いますか、カリナ……」
……とりあえず、事態は収まったらしいな。
後はロアにやってもらおう。腐っても神だし←
「よくやった、シルフィー。さすが最強の妖精賢者だ」
「最強……シルフィーがトップ?」
「えへへ♪」
「ブロッサムもな。さすがだよ。俺様の麗しのハニーは♪」
「誰がハニーだ!!」
某赤毛の神子か、おまえは!
いや、たしかにある意味間違っちゃいないけど!!
「あはは……イクミと組んだのは予想以上に効果的だったな」
「……は……? おまえ、今なんつった?」
「知りませーん。俺は何にも言ってませーん」
嘘だ。俺から目を反らしてるじゃないか!! つーか、絶対計算に入れてただろ!?
くそ……こっちがどれだけ不満だった……いや、べつになんでもないけど。全然なんでもないけど!!←