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人と天使

 ――――

 洞窟・最深部

 ぐにゃぐにゃと何度か回り道やら遠回りしながら、俺たちは何とか最深部に到着した。

「わあお。これはこれは……」

「なるほど。魔力がごちゃごちゃしてるはずだ」

 俺らの前にあるのは、色とりどりの水晶の山。
 赤や橙色、黄色から緑など、様々な色がび~っちりとな←

「うわあ……キレイ……」

「だな……あ。これ、ミコトに合うな」

「え? ホント?」

「後で髪飾りにでも加工するか」

「うれしい! ありがとう、スティア!」

 青い水晶をツキノの髪に着けながら、スティアが照れくさそうにはにかんでる。
 いやぁ……初リアクションだなぁ。

「すごい……ホントに着いちゃった」

「だから言っただろう。アユミたちがいれば何かと助かると」

「そうね……さすが月詠さん」

「……“さん”はいらないと、いつも言ってるだろ」

「え? いや、でも、先輩だし……」

「いらない。……セティアと対等になるのに邪魔だ」

「え……あ、う……。け、けど……」

 おっとー。こっちじゃ意外な展開が。
 月詠ってば……セティアの自分へ呼び方を理由に困らせてる。しかもそれにおろおろしてるセティアを小さく笑いながら見てるという、微量なS心が見えますよ? よ!?←

「明鬼さん、明鬼さん。月詠はいつもあんな感じか?」

「ん? ……ああ。セティアに? まあ、な。セティアの反応が可愛いからか面白いのか……たまに軽くいじめてるぜ」

 明鬼から語られる衝撃の新事実。
 月詠って好きな娘はいじめちゃうっていうか……少し意地悪するタイプなのか。

「おい、アユミ」

「ん?」

 そうこうしてる内に、ブロッサムに肩を掴まれた。
 振り返れば、少し拗ねたような表情で俺を見ている。

「どうした。ブロッサム」

「紺碧の水晶……」

「へ?」

「水晶、探すんだろ? こんなにあるんだから、手分けしないと見つからねぇんだけど」

「おお。確かに」

「ったく……ほら、こっちから探すぞ」

「ちょ。痛い、痛いって」

 ぐいぐいと腕を引っ張られながら、でも口角が上がっているのは感じていた。
 だってブロッサムってば……嫉妬してんだもん。可愛すぎてうれしいわ、ホント←

「……アユミー。俺、一人だから寂しいんだけど」

「うるさい、おまえはあっち行け」

「わ! ブロッサム、冷たい! いーじゃんか。俺も仲間に入れてくれよ~」

「引っ付くな! 鬱陶しい!」

 いじりがいのあるブロッサムを標的にしたらしい。明鬼が背中からがっしりと抱きついた。
 ……うーん。こうして見ると、普通の友達って感じで微笑ましいなあ。明鬼はモノノケだけど←

 ……チカ……チカチカ……ッ!

「……ん?」

 と、ここでポーチから光が溢れているのが見えた。
 なんだろう。と、思って見れば、連絡水晶(小型のポータブルタイプ←)が光っていた。

「緑色……ってことは、シルフィーか?」

 俺らパーティ専用のだからな。色でわかる。
 ちなみに俺は黒、ブロッサムが青。ライラは紫だ←

「あー、あー。こちらアユミ。こちらアユミ。応答願います。どーぞ」

『……ちゃ……? 聞こ……る……?』

「……ん?」

 なんだ? ずいぶん通信が悪いな……。

「(魔力を強めるか)シルフィー、聞こえるか? どーぞ」

『……ちゃん!? アユミちゃん? 聞こえる?』

「あ、聞こえる聞こえる」

『あ! やった! やっと通じた!』

 ようやく通じたか……。
 それにホッと一息つき、再び水晶に耳を傾ける。

「シルフィー。どうした。何かあったか?」

『……ってそうだった! ねぇ、アユミちゃん。今どこ!?』

「……? 今、最深部だけど。水晶が群生してる場所」

『ええっ!?』

 現在地を告げると、なぜか焦った声でシルフィーが驚いた。

「どうした? 何かマズイか?」

『マズイって言うか~、むしろチャンスって言うか~……』

「は?」

 どういうことだ? と目を丸めていると『あのね~』とシルフィーが話し出す。

『アユミちゃんたちが今いるフロアなんだけど~……そこ、今空間系の魔力が渦巻いてて、出口が防がれちゃってるの』

「空間系の……?」

 なんだと? このフロアに空間系の魔力が……?

『うん。それで、こっちから何とか探って見たんだけど~……アユミちゃんの今いるフロア、いろんな色の水晶が群生してるんだよね……?』

「ああ。そうだけど」

『…………。アユミちゃん。お願い。冷静に聞いて』

 控えめに、かつ恐る恐ると言った声音で話しかけられる。
 ……嫌な予感がする。でも聞かなきゃもっとマズイ気がする←

『多分……アユミちゃんたちのいる場所に、赤茶色をした水晶があると思うんだ~。とりあえず、それを見つけたら、真っ先に破壊してほしいの』

「赤茶色ォ?」

 なんか汚ならしいような感じの色なんだが……。
 連絡水晶に耳を傾けながら、それらしい水晶を探してみる。

『それが、アユミちゃんたちを一定空間に閉じ込めているんだ~。……で、注意事項がもう一つあるんだけど~』

「ん?」

 注意事項? どういうことだ?

『話を聞いて、その水晶が強力な魔力を秘めているのはわかったでしょ? ……だからなのかな~。その水晶に触れると――』

 かなり歯切れ悪いんですけど←
 そして嫌な予感がMAXなんだが……。

 ドォオオオオオオンッ!!!

「ぎゃああああああッ!!!」

「ひゃああああ~~~!!!」

 ……嫌な予感。当たりました←
 背後を振り返ると、巨大な水晶の柱に取っ捕まったブロッサム、ツキノ、セティアの三人。

『その水晶――魔力のせいか意思を持ってて、触れた相手を丸飲みして、魔力を取り込もうとしちゃうみたいなんだ~。だから、見つけても触れないでね☆』

「もう遅ェよ!! どんな文法の使い方!!?」

 もっと早く言えや!! もうあいつら捕まっとるわ!!
 心の中でキレながら刀を抜き、大急ぎで水晶の柱へ駆け出す。

「月詠! スティア! 明鬼! 何があった!」

「あ、アユミ!」

「いやあ、なんか赤茶っぽい色の水晶に触れた途端、あの三人が取っ捕まりまして」

「呑気に言ってる場合か、明鬼!」

 慌てるスティアを押さえ、明鬼の角を掴みながらたずねる。
 やっぱあの水晶に触れたのか……!!

「シルフィー! あれはなんだ!? ホントに水晶か!?」

『そう言われても~。一つ言えるのは、それは一度活動すると、魔力を持った相手をすべて飲み込むまで追いかけ回すことかな~?』

「すべて!? なら俺らも標的されてる!?」

『同じフロアにいるなら、確実に標的対象に入るよ~』

「え゙え゙え゙え゙え゙え゙!!?」

 マジでかァァァッ!!? なんでそんなモンスターがいるんです!?

「どうすりゃ……」

『アユミちゃん。よく聞いて! 多分、アユミちゃんの前にいるのは“頭脳”だと思うんだ。ボクとライラちゃんは本体。つまり“心臓――コア――”のところにいるから』

「! ホントか!?」

「うん。……ただ、本体の周りは魔力の結界でダメージが与えられなくて……だから、ね?」

 連絡水晶の向こう側で、ニコニコと笑ってるだろうシルフィーの顔が目に浮かんだ。
 含みある言い方にため息をつきつつ、刀を強く握りしめる。

「頭を潰せば、本体も殺りやすくなる。本体を潰せば、俺らも出られる。そういうことか」

『うん! 本体の防御力は高いけど……ライラちゃんの攻撃力とボクの魔法で破壊できるから。とにかくアユミちゃんは、頭脳の水晶に、ダメージを思いきり与えて!』

「了解。ま、こっちのが楽しめそうだしな」

 それに、ブロッサムたちが捕まってるし。
 刀を回しながら、赤茶の水晶柱を睨み付ける。

「聞いての通りだ。あれを潰せば、後はシルフィーとライラが何とかしてくれるらしい」

「ミコトたちも助かるし、俺も暴れられる。まさに一石二鳥!」

「アホか。……だが、叩き潰せば助かるなら、やるしかないな」

「順応早ッ! まあ、やらなきゃミコトが危ないしな……やるしかないか……!」

 明鬼、月詠はすでに刀を構えてる。
 スティアも戸惑いながらも、緊張気味に鎌と剣を取り出し、水晶柱に突き付けた。

「待ってろ、ミコト……! 今、助けてやるからな!」

「というわけで。はい、サクサクっと行きましょー」

「了解ですぜ、アユミ姐さん!」

 ビシッと決めるスティアの横を通り抜け、俺と明鬼は華麗にスルーしながら駆けていった。

「って無視!? なんか俺、恥ずかしいんだけど!」

(……なぜアユミと明鬼は、ああも息と波長がぴったり合うんだ……?)

 それにツッコミを入れながら続くスティア、意味ありげな視線を向けてくる月詠。
 ……不安な感じに見える? でもこれくらいがちょうどいいのだよ。
 下手に力を入れてると、かえって力が出なくなるからな。

「ブロッサム!」

「遅ェよ、バカッ!! ……こっちはどんだけ待ったと思ってんだよ」

 ブロッサムはいつものように駄々っ子みたいな仕草で、泣きたいくらいうれしいくせに照れ隠しに怒鳴ってきた。それはもうツンデレ全開で←
 ……つーかそのセリフさ……。完全に乙女っつーか、むしろ俺よりヒロイン役が似合っているぞ←

「姐さん姐さん。トリップしてる場合じゃねぇぞ」

「おっとっと」

 明鬼に引っ張られ、ハッと我に返った。
 そうだった。三人とも、すでに身体の半分が飲み込まれていたんだった。

「だが、どうすればいい。……下手をすれば、セティアたちが……」

「月詠……」

「んなもん、」

 焦る月詠を横目に、俺は刀を上段に構え。

「コレを潰せばいいだけだろうがッ!!!」

 迷わず、三人を捕まえてる水晶に刀を深く突き刺した。
 その一撃で、三人の周りの水晶もひび割れる。

「……!」

 ビシッ! と割れる音の中で、小さく肉のようなものが切れる感触も伝わってきた。
 それとほぼ同時に、地響きが鳴り、水晶が派手に動き出す。

(そうか……今の、こいつの神経のようなものか!)

 なるほど……水晶って聞いてたが、よく考えてみれば、こいつは異常な魔力をあるから動くんだっけ。
 なら……動かすために、魔力を使ってるはず。

「なら……! おーい、おまえら! こいつの内側を何とか攻撃するぞ!」

「は? 内側?」

 三人の救助に走らせていたスティアたちに、攻撃対象の指示を叫んだ。
 俺の声に驚きながら見上げる彼らの前で、刀で胴体を深く斬り裂く。

「中に神経たる魔力が流れてんだ! それをのめしてダメージを与えれば、後はシルフィーたちが何とかしてくれるってよ!」

「! マジか!?」

「妖精霊コンビかー。さすが最強の賢者と格闘姫」

「希望が見えた……ってことか」

 その報告にスティア、前回に会ったことがある月詠と明鬼の顔が明るくなった。
 ついでにブロッサムたちも、ダメージはなかったか、すぐに立ち上がって武器を構える。

「じゃあ……外壁をぶっ壊して、中身にダメージを与えればいいんだな?」

「ようしっ! なら、私も頑張るよ!」

「やられっぱなしは性に合わないもの……手伝うわ!」

 ツキノとセティアも戦意あるらしいな。
 うむ。その心意気や良し、ってところかな。

「何、弱らせるだけでいいらしいからな」

 無茶はしなくていいんだ。
 それだけ伝え、全員が頷いたのを確認する。

「じゃあ行くぞォ! しっかり受けろよ、デカブツがァッ!!」

 最初に突撃して行ったのは明鬼だ。
 刀を二本構え、血気盛んに突っ込んでいく。

「ッしャあァッ!!」

 もちろん戦い方も豪快だ。
 大振りに叩っ斬って、外壁もろとも神経にダメージを与えてる。

「ミコト、頼むぞ!」

「任せて!」

 次に駆け出すはスティアとツキノ。鎌と剣を構え、スティアが走り出す。

「逃がさないよ! えいっ!」

 ツキノが刀に魔力を送り、その魔力が刀を通じて相手に降り注いだ。
 刀を装備し、それに精通している者だけが使用できる特殊魔法――“天剣絶刀”だ。

「ミコトとセティアを怖がらせた罪……後悔しやがれェェェッ!!!」

 怒りのオーラを撒き散らしながらの、スティアの連撃。
 天剣絶刀によって身体(って言っていいのか?)を縫い付けられた水晶柱は、がらがらと外壁をこぼしていく。

「セティア、行けるか?」

「もちろん!」

 次に行くのは月詠とセティア。スティアの攻撃で崩れた部分に向かっていく。

「「双破刃!!」」

 協力技の一つ、双破刃が炸裂した。外壁が一気に崩れ、中の魔力に強烈な一撃をヒットさせる。
 さすがヒュセレの一組。破壊力抜群だな。

「さて……」

 ここまでやってくれたからには、俺も負けるわけにはいかない。

「ブロッサム。この水晶……どこが一番魔力を渦ませてる?」

「この水晶群を相手に、無茶言うなよ」

 ブロッサムは苦笑しながら、スッと目を細めた。
 なんだかんだ文句を言いながら、有言実行してくれる辺りはさすがだな。

「――てっぺん。一番濃い色をした場所」

「てっぺん……」

 鋭く尖らせた水晶の破片を避けながら上を見上げる。
 色が一段と濃い赤茶色の水晶。
距離は……10メートルってところかな。ちょっと遠いけど、行けない距離じゃない。

「あれなら何とかなるかな……」

「大丈夫か? あの水晶。触れたら、なんか……ズブッて沼に沈むみたいに取り込まれるぞ?」

「沈む、か」

 だから身体を捕まえられたんだな。
 しかしコイツの周りは開けた空間だから壁はない。
 駆け登れそうなのは、この水晶柱しかない。

「……水晶……」

 避けながら思案を巡らして、ふと、ちょっとした名案に気付く。

「アユミ?」

「案外イケるかもな。これ」

「は?」

 少々グロいけど。と、苦笑しながら、水晶に駆け出す。

「おい、アユミ!」

「大丈夫。任せろって」

 驚いているブロッサムに笑みで返す。
 そして水晶に刀を向ける。

「――クエイガン!」

 ドシュッ!

 そして、水晶柱を突き刺すような大きな鋭い刺を出した。
 もちろん、中の魔力にダメージを与えるように出現させている。

「水晶の刺!?」

「ああ。足場がないなら作るだけだ!」

 カコンッ! と透き通る音を出しながら、水晶の刺に乗り移った。
 柱から螺旋状に現れたそれを、階段のように跳び移っていく。

「これで……どうだァアアアッ!!」

 最後の刺から跳躍し、赤茶色の核を刀で貫いた。
 ビシリ、と鈍い音を発て、水晶にヒビが入る。

「これで、トドメ!」

 妖刀鬼徹の力が、水晶の魔力に強烈なダメージを負わせた。
 が、それを抵抗するように、水晶は破片を俺に飛ばしてきた。

「ぐっ……!」

 矢のように鋭いそれに、細かな傷が出来ていく。
 だが、このままダメージを与え、シルフィーとライラがコアを倒せるようにしないと意味がない。

「くそっ……! まだかよ、あいつら……!」

 腕や足から血が溢れる。
 そろそろヤバい。と認識した途端だった。

 ビギィッ!!

「……ッ!?」

 破片の攻撃が止まった。それだけでなく、水晶の柱も一気に砕けていく。

「あいつら……!」

 やったか! と笑みを浮かべた。
 が、それはすぐ引っ込めた。

「うわ、ちょ。まず……!」

 ぐらぐらと崩れる足場にふらついてしまう。
 よく考えたら、ここは10メートルもの高さがある魔力水晶の柱。
 当然、倒せば水晶が崩れるわけで……。

「嘘だろ――ぎゃああああーーーッ!!!」

 結果、柱の崩壊に巻き込まれました。
 ちょ、待て。俺の人生、ここでジ・エンド!?

「ヤバい……!」

 地上が近づくのがわかる。
 衝撃と痛みを覚悟で受け身の体勢を取り、ぎゅっと歯を食い縛る。

「……アユミッ!!」

 本気で痛みを覚悟した瞬間、耳に馴染んだ声が響いた。
 思わず目を開けると、ふわりと白い羽が映る。

「間に、合った……!」

 身体全体を包まれる温もり。安堵した声。

 半分放心状態でいたが、少しして、ブロッサムに抱き抱えられていることに気づいた。

「ブロッサム……」

「大丈夫か? ……って血だらけじゃないか!」

 俺を一瞥するが、攻撃のせいで血だらけの俺を見て、ブロッサムの顔が青くなった。
 ストンッ、と地上に降りると、すぐにヒーリングをかける。

「悪いな。助かった」

「いいけど……頼むから無茶するなよ。……ホントに心配したんだから」

 ちょっと顔を赤らめて視線を反らす。けど片手はしっかり俺の手を握ってる。
 くっ……かわいいじゃないか。このツンデレ天使め!

「アユミ~! 大丈夫~!?」

 ジーッと目に焼き付けてると、少し遠くからツキノたちが走ってきた。
 うん。走れる分なら、まだ元気かな?

「ツキノ。セティア。無事か?」

「うん。平気だよ!」

「私も。頑丈なのも、私の取り柄の一つだからね」

 女子二人は元気だなぁ。この分なら、大丈夫だな。

「いやあ、しかしさすがアユミ。あのモンスターを倒すとは」

「まあな。って、実際に倒したシルフィーとライラだけど」

「シルフィー……そうだ。あいつらは?」

 俺の言葉で思い出したか、ブロッサムがつぶやいた。
 ……そうだ。連絡しないとな。
 そう思い、連絡水晶を取りだした。

 シュン。

「あ。アユミちゃんとブロッサム、発見~」

「はっけーん」

 いざ、連絡しようとした時、テレポルを使ったのだろうが。シルフィーとライラが虚空から現れた。
 おまえら……タイミング良すぎだろ←

「お。妖精霊コンビも来たか」

「シルフィーにライラだ! 二人も来たの?」

「……久しぶり」

「え? 誰、この二人?」

「ってか、コイツらも知ってるのかよ……」

 二人の出現に明鬼とツキノ、月詠は軽く挨拶し、スティアとセティアは首をかしげる。
 とりあえず互いに挨拶し、ついでに状況なんかも伝えておく。

「そうだったんだ~。ある意味来て正解だったかもね~」

「ある意味正解……来なきゃ、大惨事?」

「まあな。ほら、来て良かったろ?」

「ぐっ……」

 シルフィーとライラのセリフのせいか、言葉を詰まらせたブロッサム。
 いやあ、助かったぜ。妖精霊コンビ←

「……ってそうだ! 紺碧の水晶を探さないと!」

「そうだったわ……けど、この水晶の中から……?」

 周りの水晶群を見て、俺とブロッサム、スティアたちは一気にげんなりとなる。
 水晶柱を壊したこともあり、辺りには水晶の欠片やら何やら……探すのメンドイな、もう←

「紺碧の水晶……氷の魔力がたくさん含んだ奴だよね?」

 ため息をつく俺らに、シルフィーが無邪気にたずねてきた。

「ああ。……何。シルフィー。まさか、おまえ持って……」

「持ってはないよ~。……あ、あった~。ライラちゃん、ここ壊して~」

「おー。……はああああっ!!」

 シルフィーがとある一角を指さす。ライラはコクンと頷くと、そこに鋭い蹴りを叩き入れた。

「のわっ!?」

 ガラガラと音を発てながら壁が崩壊する。
 音がある程度治まると、シルフィーが崩壊した壁を手探りし、何かを掴む。

「はい。これだけあれば足りるかな~?」

 そう言ってシルフィーが出したのは……紺碧色の水晶。

「って、あっさり見つけたな、おまえら!!」

「氷の魔力が密集したところを探っただけだけどね~。それだけのことだよ~」

「普通はできないけどな……」

「普通はできない……シルフィーだから、可能?」

 ブロッサムのツッコミもにこにこと笑顔で頷く。
 それに月詠のツッコミが入ったが、ライラが返答した。
 ……ま。魔法や魔力、古代学に関しちゃ、シルフィーは天才だからな。

「……まあ。目的達したから、いいんじゃね?」

「そうだな~。ツッコミ入れてもキリがないし?」

 俺の言葉に明鬼は頷き、他も、「それもそうか……」的な表情になった。
 うん。切り替えの早さはさすがだな。

「じゃあ帰るか。テレポルで来れたってことは、アンチワープゾーン的なのは解除されたんだろ?」

「うん。あの水晶のモンスターが、餌を取るために発していたものだからね~」

「マジかよ……ホント、アユミたちが来なかったら危なかったな」

「……そう、よね。こんな話を聞いた後じゃ」

「何て言うか。おまえら、もう運命的だよな。戦闘フラグ的な意味で」

「やめろ。そんな運命」

 俺らの間になんとも言えない空気が流れ始める。
 嫌だよ。戦闘フラグが俺らの運命と宿命なんて←

「……とりあえず、帰ろうか」

「そ、そうだね、お兄ちゃん! 水晶も手に入ったし!」

「ああ……帰るか」

 一気に脱力感に襲われる俺ら。
 くらくらとする頭(頭痛的な意味で)を押さえながら、ブロッサムのバックドアルに包まれていった。

 ――――

 ダンジョンから抜け出し、俺らはスポットでモーディアル学園まで飛んだ。
 理由? いつぞやみたいに、また明鬼と月詠がバトり、ツキノがイペリオンをぶっ放したら大変だからだ←

「今日はありがとな。おかげで出られたし」

「礼ならそこの妖精霊コンビに言ってくれ。本日のお手柄はコイツらのものだしな」

「えへへ~♪」

「お手柄……私たち、一位?」

 うれしそうな笑顔で頷く二人。
 己が……まあ、根は子供だから許すか。

「スティアにセティア、な。今度こそ、今度こそ何もない時にゆっくり会おうな?」

「わ、わかってるよ。そんな念を押さなくても」

「すごく必死ね……まあ、わかる気もするけど」

 二人は俺の言葉に軽く引き気味な様子。
 しょうがないだろ? こういう時、大抵厄介事に巻き込まれる確率が高いんだから!

「よし。じゃ、俺はもう行くな。……闇市で取引先も探したいし」

「おう! またな!」

 後半はボソッと呟きながら、笑顔を浮かべてるスティアたちに手を振る。
 闇市の魔術師や魔女たちにどれだけ高値で買い取れるか計算しながら、プリシアナ学院へ帰還するのだった。


 人と天使

 ――――

(ヒューマンとセレスティア)

(意外と組合わさるんだな)
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