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双子とモノノケ

「とりあえず、プリシアナッツの実を取って帰ろうか。邪魔な連中は全員片付いたし」

「えー。俺としてはもうちょっと楽しみたいんだけど」

「ふざけるな、明鬼。これ以上ツキノを危険な目に合わせられるか!!」

「俺がいるから大丈夫だって。……あ。もしかして……月詠、自信無いのかあ?」

「……なんだと?」

 プリシアナッツの実を一個もぎ取りながらも、傍らで言い合いを続ける二人。
 ……って、おい。なんか空気がヤバイ気が……。

「違うのか? だからてーっきりそうなのかと思ったんだけど」

「……ふ、ふふふ……っ。面白いことを……」

 あのー、月詠さん? 目が笑っていないんですけど。そしてスルッと刀を抜かないでほしいんですけど!!?

「いいだろう。今度こそ返り討ちにしてやる!」

「お? とうとうやる気? そう来なくっちゃ♪」

 そう言って、二人は再び刀を構えた。
 いやいやいやいや!! どんだけ仲が悪いんだ、主らは!!

「おい、二人とも!」

「ちょ、ちょっと落ち着いてよ~!!」

 さすがに男子二人もヤバイ空気を感知したらしい。
 が、なんとか止めようとしたいが、二人のオーラと魔力が凄すぎる。という訳で近寄れない←

「明ァァァ鬼ィィィッ!!!」

「よっしゃ、行くぜぇぇぇッ!!!」

 二刀を構え、本気で殺し合いを開始しようとする二人。
 さすがにまずいと感じ、再び刀を抜こうとし、

「――いい加減に」

 ――しようとし、だけどツキノの低い声と強い魔力に手を止めた。

「……しなさああああああいッ!!!」

 ツキノに目を向けるのと同時に、アイツは魔力を解き放った。
 それは今に戦闘を開始しようとしかけた二人に、イペリオンとして爆発した。

「うわあっ!!?」

「……!!?」

 さすがに二人も光の最強攻撃魔法・イペリオンには喰らいたくなかったらしい。

 攻撃を中止し、大慌てでその場から飛びのく。
 それから攻撃を放ったツキノに視線を向ける。

「二人とも! 今日はもう喧嘩禁止って言ったでしょ!? せっかくプリシアナッツの実を見つけたのに、また壊れちゃったらどうするの!」

「うっ……」

「そりゃ、また取ればいいんじゃないか?」

「無茶言うなよ、明鬼」

 無尽蔵じゃないんだぞ。
 その方程式では限りがあるわ。

「そうでなくても周りに大きく被害が出るの! とにかく今日はもうダメ!」

「……すまない」

「はぁ……ミコトが言うならしかたないか。イペリオン連発も喰らいたくないし」

 ツキノの怒りっぷりに、二人もしかたなく武器を収めた。
 ……というか、連発するのか、イペリオンを。……それも周りへ被害与えるんじゃね?←

「えっと~……とりあえず、帰っちゃう~?」

「そうだな。ブロッサム。プリシアナ……いや。やっぱモーディアルへ」

「へ? ……ああ。そうか。わかった」

 さすが勘の良い奴。俺の意図がわかったか、すぐに頷いた。

(モーディアルで先生に渡すまで、またぶっ壊すかもしれないし……)

 そうなれば俺らの苦労も水の泡だ。
 監視(特に明鬼)の意味もかねて、俺たちもモーディアル学園へと向かうのだった。

 ――――

「――はあ。よかったぁ……無事に終わって~」

 ソフィアール先生にプリシアナッツの実を渡し、とりあえず月詠たちの補習クエストは完了した。
 職員室前で待機していた俺たち(一緒にいるとややこしくなりそうなので)は、一安心とした表情のツキノを見て、成功したな。と視線をそれぞれ送り合う。

「よかったな。完了して」

「うん! アユミたちのおかげだよ。ありがとう♪」

「気にするなって」

 うれしそうに笑うツキノに手を伸ばして頭を撫でる。
 手摺りに腰掛けてたため、ちょうどいいところに頭があったからな。
 ……俺の身長について、ツッコミを入れるなよ?←

「…………」

「(…………ピコーン←)……月詠くーん」

「……? なに……!?」

 じーっと撫でられるツキノを見てる月詠に、俺の中の悪魔が疼き出した。
 月詠に、来い来い、と手招きし、首を傾げながらやってきた彼を、同じように頭を撫でる。

「月詠も頑張ったからなー。明鬼との喧嘩も堪えたし」

「な、なっ……ぼ、僕まで子供扱いはやめろ……!」

 まさか自分もやられるとは思わなかったからか、ちょっと赤くなって、ポーカーフェイスを崩してる。
 あららー……可愛い奴←
 そして最初より慣れたかな。表情のバリエーションも少しずつ増えてる。

「おお。月詠が珍しく照れてる。それも表に出して」

「さすがアユミちゃん。プリシアナの姐御だね~」

「姐御……女王様?」

「どうしてそうなる。……たしかに間違っちゃいないが」

 外野となりつつある四人が俺をガン見する。
 ……女王って言ってもアレだぞ? 俺は『断罪の処刑女王』って奴だぞ?

「あー、コホン。んじゃ、終わったこったし……」

「ん? ああ、そろそろ時間?」

 時計を指さしながら言う。
 現在は午後5時半。戻らねば夕食を食べ損ねてしまう。

「あー……そういや、学校終わって、すぐに行ったんだっけ」

「ああ。さすがに戻らないとまずいな」

「そっかぁ……もう時間か……」

 時間があっという間に過ぎていたことに、どこと無くしょんぼりとするツキノ。
 まあ、理由はわかるが……。

「大丈夫だって。べつに二度と会えないわけじゃないし」

「……時間と都合がつけば会える。……だろ?」

「明鬼……月詠……うん」

 二人の言葉で納得したか、コクンと小さく頷く。
 それからくるっと俺らに振り返る。

「ねぇ……また、会いに行ってもいい?」

「ああ。今度は遊びに来い」

 ただし面倒な事件は持ってくるなよ。と心の中でつけたしながら、もう一度頭を撫でる。
 それにぱぁーっと笑みを浮かべ、ツキノは「うんっ!」とうれしそうに頷いた。

「よし! んじゃ、帰るか」

「ああ」

「は~い」

「……ん」

 俺の号令にブロッサムたちが頷く。
 それを見て、もう一度三人に振り返った。

「またな。月詠、ツキノ、明鬼」

「……うん。アユミ」

「またね!」

「はいよ、アユミ」

 それぞれ個性的な三人に笑顔で返す。
 そして俺たちは、プリシアナ学院へと戻るのだった。


 双子とモノノケ

 ――――

(知り合えたなら)

(いつでも会えるさ)
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