ゲームしよう?
「アユミ。なんでそんなにギャンブル好きなの?」
「あはははは」
「笑い事じゃねぇっつの!」
俺は呑気に笑ってるアユミの襟首を掴みながら、掴んでる手と反対の手を差し出す。
「出せ! 金を! また借金を増やす気か!?」
「おまえこそ俺の楽しみを奪う気か!? ひどいぞ、ブロッサム!」
「おまえだろうが!」
毎回事あるごとに難易度の高いクエストに付き合わされてんだぞ!?
こっちだって我慢の限界があるわ!
「絶対行かせないからな! 付き合わされる身にもなれや!」
「むー……どうしても、ダメ?」
う、上目使いにキョトンと首傾げ……!?
「そ、そんな目で見たって、ダメなものはダメ!!」
「チッ……ダメか」
あ、危なかった……! あと少しで流されるところだった……。
「わ、わかったら行かない! 金も置いてけ!」
「んー……でもタダで退きたくないなあ……」
なんでこういう時だけ粘るんだよ。
俺の部屋をキョロキョロと見渡すアユミに、心の中でそうツッコミを入れる。
「……あ。ちょうどいいの発見」
「は?」
そう言ってアユミが手に取ったのは……細い焼き菓子にチョコをかけたお菓子。
「なあ。これでゲームしよう?」
「……はい?」
ますます目を丸くさせた。
何の変哲もないお菓子でどうゲームしろと……?
「ほら。これ、手持ちの部分はチョコがかかってないだろ? 俺がこっちの部分を支えるから、おまえはチョコのかかった部分を食ってけ。途中で落としたり、食うのを止めたら負けな?」
「……まあ、それくらいなら」
なんだ……たいして難しくなさそうだな。
難易度も低そうなので、特に疑いもなく頷いた。
「よしよし。……あ、いまさらやめる、は不戦勝ってことで俺の勝ちだからな?」
「わかってる」
「ならば良し。じゃ、はい、どーぞ」
にっこり笑いながらアユミは座り、チョコがかかってない部分を口にくわえた。
……え? くわえた?
「ちょ!? 何やってんだよ!」
「何って……これ、こういうゲームなんだよ?」
「はあ!?」
「知らなかった?」と笑いながら、楽しそうに俺を見るアユミ。
そんなの知らない……! というか、俺、騙された!?
「な、なな……こ、この状態で俺、食ってくのか!?」
「うん。……早く食べないと、不戦勝にすっぞ」
「ううっ……!」
ぐっ……それは困る。
また借金が増えるのは避けたい。
「い、行くぞ……?」
「うぃ」
逃げ場が無くなった俺はアユミと向かい合い、意を決して食うことにした。
「……っ」
サクサクと、菓子が砕ける音が妙に大きく聞こえる。
だんだん近くなるアユミの顔のせいで、味なんかわかったもんじゃない。
(あと、ちょっと……)
少しずつ噛み砕き、ようやく半分近く食べ終わる。
……なんて疲れるゲームなんだろう。
「ほらほら、早くー」
「わ、ひゃっ、てる」
今やろうと思ってただけだ!
にやにやと笑って催促するアユミを睨みながら再開する。
「可愛いなあ。……キスして喰いたいくらい」
「ギ……ッ!?」
……が、3分の2くらいかな。
アユミの発言で、ボキッ! と、一際強く菓子を噛んだ音が響いた。
「な、ななな、何言って!!」
「あんまりしゃべると落っこって負けるぞ?」
「うぐっ……!!」
思わず動揺して菓子を落としそうになったが、なんとか耐えた。
こいつ、なんつータイミングで爆弾落としてんだよ!
「ブロッサム? もう少しなんだけど」
「……わかってます」
ちらっと見ると、残り一口くらい。
一口、なんだけど……。
(ち、近すぎ……っ)
もう鼻がくっつくくらい近いのに、これ以上やったら……ホントに触れそうなんだけど。
こいつの発言もあって、これ以上は中々進まない。
「う……っ」
目の前には超間近で、にやにやと笑ってるアユミ。
……今思えば、絶対この展開を計算してただろうな。
「ブロッサム。この体勢、疲れたんだけど」
「わっ……!?」
な、なんで抱き着くんだよ! それも真っ正面から! ただでさえ吐息も感じるのに、そんな真似されたら……!
「……り」
「ん?」
「も……、無理ぃ……っ」
恥ずかしさが強くなって、目を強くつぶる。これ以上は直視できなかった。
あと一口なのに、これ以上無理……っ!
「……しょーがないなあ」
「え……?」
言葉の割には楽しそうな声。
思わず目を開けば、同時に口に何か突っ込まれ、唇には柔らかい感触。
「あ……!」
「ま、今回は特別に許してやるよ。可愛かったし♪」
すぐに離れたその顔は楽しそうで、金を置いて残りの菓子を食いはじめた。
「……意地悪」
「可愛いブロッサムが悪いんだよ」
ぼふっとクッションに顔を埋める。
顔の熱のせいで、しばらく上げることができなかった。
ゲームしよう?
――――
(それからしばらく)
(俺はあの菓子を無意識に避けるようになった)
「あはははは」
「笑い事じゃねぇっつの!」
俺は呑気に笑ってるアユミの襟首を掴みながら、掴んでる手と反対の手を差し出す。
「出せ! 金を! また借金を増やす気か!?」
「おまえこそ俺の楽しみを奪う気か!? ひどいぞ、ブロッサム!」
「おまえだろうが!」
毎回事あるごとに難易度の高いクエストに付き合わされてんだぞ!?
こっちだって我慢の限界があるわ!
「絶対行かせないからな! 付き合わされる身にもなれや!」
「むー……どうしても、ダメ?」
う、上目使いにキョトンと首傾げ……!?
「そ、そんな目で見たって、ダメなものはダメ!!」
「チッ……ダメか」
あ、危なかった……! あと少しで流されるところだった……。
「わ、わかったら行かない! 金も置いてけ!」
「んー……でもタダで退きたくないなあ……」
なんでこういう時だけ粘るんだよ。
俺の部屋をキョロキョロと見渡すアユミに、心の中でそうツッコミを入れる。
「……あ。ちょうどいいの発見」
「は?」
そう言ってアユミが手に取ったのは……細い焼き菓子にチョコをかけたお菓子。
「なあ。これでゲームしよう?」
「……はい?」
ますます目を丸くさせた。
何の変哲もないお菓子でどうゲームしろと……?
「ほら。これ、手持ちの部分はチョコがかかってないだろ? 俺がこっちの部分を支えるから、おまえはチョコのかかった部分を食ってけ。途中で落としたり、食うのを止めたら負けな?」
「……まあ、それくらいなら」
なんだ……たいして難しくなさそうだな。
難易度も低そうなので、特に疑いもなく頷いた。
「よしよし。……あ、いまさらやめる、は不戦勝ってことで俺の勝ちだからな?」
「わかってる」
「ならば良し。じゃ、はい、どーぞ」
にっこり笑いながらアユミは座り、チョコがかかってない部分を口にくわえた。
……え? くわえた?
「ちょ!? 何やってんだよ!」
「何って……これ、こういうゲームなんだよ?」
「はあ!?」
「知らなかった?」と笑いながら、楽しそうに俺を見るアユミ。
そんなの知らない……! というか、俺、騙された!?
「な、なな……こ、この状態で俺、食ってくのか!?」
「うん。……早く食べないと、不戦勝にすっぞ」
「ううっ……!」
ぐっ……それは困る。
また借金が増えるのは避けたい。
「い、行くぞ……?」
「うぃ」
逃げ場が無くなった俺はアユミと向かい合い、意を決して食うことにした。
「……っ」
サクサクと、菓子が砕ける音が妙に大きく聞こえる。
だんだん近くなるアユミの顔のせいで、味なんかわかったもんじゃない。
(あと、ちょっと……)
少しずつ噛み砕き、ようやく半分近く食べ終わる。
……なんて疲れるゲームなんだろう。
「ほらほら、早くー」
「わ、ひゃっ、てる」
今やろうと思ってただけだ!
にやにやと笑って催促するアユミを睨みながら再開する。
「可愛いなあ。……キスして喰いたいくらい」
「ギ……ッ!?」
……が、3分の2くらいかな。
アユミの発言で、ボキッ! と、一際強く菓子を噛んだ音が響いた。
「な、ななな、何言って!!」
「あんまりしゃべると落っこって負けるぞ?」
「うぐっ……!!」
思わず動揺して菓子を落としそうになったが、なんとか耐えた。
こいつ、なんつータイミングで爆弾落としてんだよ!
「ブロッサム? もう少しなんだけど」
「……わかってます」
ちらっと見ると、残り一口くらい。
一口、なんだけど……。
(ち、近すぎ……っ)
もう鼻がくっつくくらい近いのに、これ以上やったら……ホントに触れそうなんだけど。
こいつの発言もあって、これ以上は中々進まない。
「う……っ」
目の前には超間近で、にやにやと笑ってるアユミ。
……今思えば、絶対この展開を計算してただろうな。
「ブロッサム。この体勢、疲れたんだけど」
「わっ……!?」
な、なんで抱き着くんだよ! それも真っ正面から! ただでさえ吐息も感じるのに、そんな真似されたら……!
「……り」
「ん?」
「も……、無理ぃ……っ」
恥ずかしさが強くなって、目を強くつぶる。これ以上は直視できなかった。
あと一口なのに、これ以上無理……っ!
「……しょーがないなあ」
「え……?」
言葉の割には楽しそうな声。
思わず目を開けば、同時に口に何か突っ込まれ、唇には柔らかい感触。
「あ……!」
「ま、今回は特別に許してやるよ。可愛かったし♪」
すぐに離れたその顔は楽しそうで、金を置いて残りの菓子を食いはじめた。
「……意地悪」
「可愛いブロッサムが悪いんだよ」
ぼふっとクッションに顔を埋める。
顔の熱のせいで、しばらく上げることができなかった。
ゲームしよう?
――――
(それからしばらく)
(俺はあの菓子を無意識に避けるようになった)