思い出を焼き付けて
一分一秒も無駄にしたくない。
どんな時でも、思い出に変えたい。
――――
「……んー。ナイスな豚玉の味。これは85点」
「おまえ……どこのグルメマニアだよ」
人込みから外れたとこの段差に座り、すぐそばの屋台で買ったお好み焼きを口にしたアユミにツッコミを入れる。
今日はタカチホ地方・トコヨの夏祭り。(自称)夏祭りの女帝であるアユミは当然出撃し、俺ことブロッサムもそれに着いてきた。……決してデートとかそういうのじゃないかんな!
そして始まったのがアユミの屋台制覇。端から端までフルコンプするこの女にはいろんな意味で言葉がでねぇよ……。
「おまえ……その身体のどこに食い物が入るんだ……」
「胃袋だ」
「いや、それはそうだけど……」
たしかに胃袋だけどな。たしかに食い物は全人類そこに収まるけどな!
「もういい……ツッコミ入れるのも疲れてきた……というか無駄に思えてきた……」
「よくわかってるじゃないか。さすが俺のパートナー」
「ふん……」
くくっ、と噛み殺した笑顔で言われた。
アユミらしさがあるそれが妙に恥ずかしくて、ごまかすようにそっぽ向いて、手にしたクレープを口にする。
「……よくそんな甘ったるいもんが食えるな。ブロッサム」
「おまえの味覚が渋過ぎるだけだろ」
生チョコとクリームの味を楽しみながら、アユミが手にした串焼き(ハマグリとサザエと焼鳥とイワシ)とお好み焼きに視線を送る。
……どんだけ好きなんだ。串焼き類←
「あ。ブロッサム。手」
「え? ……あ」
やばっ……強く握りすぎてた?
手の平や指先にチョコとクリームがくっついてた。食うのに夢中で気がつかなかったな。
「食い終わってよかった……とりあえずハンカチ……」
「…………」
「……アユミ?」
汚れていない手でハンカチを取ろうとすると、急に手を掴まれた。
「……んっ」
「ッ!!?」
なんだ、と思っていると、べとべとの手の平を舐められた。
ちょ……何やってんだ!?
「なっ……何を……!」
「コラ……動くんじゃねぇって」
「っ……!」
手の平、しかもど真ん中を舌先で舐められ、思わずビクッ! と身体が跳ね上がった。
なんで変態みたいな真似が平気でできんだ、コイツは!
「やめろって……っ!」
「はいはい。……うげっ、げろ甘……」
甘いクレープに、舌を出して唸る。
……こっちは心臓バクバクいってんのに……っ。
「……な、何やってんだよ」
「だって俺の舌で感じるブロッサムとか見れるし。あとクリームがもったいないのと、ハンカチがべとべとになる」
「せめて最初のを最後に回せ!」
変態発言なくしてくれ。頼むから!
そんな思いを盛大に出すかのように、代わりに花火がドでかい音を発てて空に咲いた。
「お。たーまやー、てか?」
「……そうだな……」
呑気に空を見上げながら、打ち上がった花火を見つめる。
……去年同様、この女はマイペースだな。ホント。
(まあ……去年よりもっと楽しいけど)
去年より、俺らの距離は縮まった……と思う。
知らないことを知ったし、これからもそれは増える。
(一緒にいる限り、ずっと……)
ヒューマンとセレスティア。
どう足掻いたって、アユミが先に死ぬ。俺は取り残される。
だから、俺は一分でも一秒でも長くいたい。
……こんなこと。恥ずかしいから絶対口にしないけど。
「…………」
ちらっと隣に目を向ける。
目に映るのは、花火を見上げるアユミ。打ち上がった花火の光で、その顔がより綺麗に見える気がした。
「――アユミ」
「あ? なんだ――」
視線が俺に移った瞬間、顔を近づけた。
「……ぇ……」
目を閉じてもわかった。
いきなりの、不意打ちのキスに驚いてる。
いつもはアユミから仕掛けるし、触れるだけのものでも、いつもの俺ならしない。
「……さっきの仕返し」
自分がしたとは言え……顔が熱い。
とっさに嘘をつくが……苦し紛れに過ぎないな、これ。
「仕返しって……」
「うるさい。……つっこむなよ」
「……ふふっ。いいよ」
楽しそうに言いながら、アユミが擦り寄ってくる。
それがうれしくて、思わずその身体を抱き寄せた。
「積極的だな……どうかした?」
「べつに……」
うれしいから。離れたくないから。甘えたいから。
思い合うのがうれしいから。
理由なんて、上げたらキリがない。
「……まあいいか。うれしいし。……花火が終わるまで少し休もうか」
「……そうだな」
少女らしい、可愛い笑顔をアユミは浮かべる。
花火の音を耳にしながら、幸福とともに、もう一度キスをした。
――――
思い出を焼き付けて
――――
(とりあえず今は)
(この幸せを素直に感じよう)
どんな時でも、思い出に変えたい。
――――
「……んー。ナイスな豚玉の味。これは85点」
「おまえ……どこのグルメマニアだよ」
人込みから外れたとこの段差に座り、すぐそばの屋台で買ったお好み焼きを口にしたアユミにツッコミを入れる。
今日はタカチホ地方・トコヨの夏祭り。(自称)夏祭りの女帝であるアユミは当然出撃し、俺ことブロッサムもそれに着いてきた。……決してデートとかそういうのじゃないかんな!
そして始まったのがアユミの屋台制覇。端から端までフルコンプするこの女にはいろんな意味で言葉がでねぇよ……。
「おまえ……その身体のどこに食い物が入るんだ……」
「胃袋だ」
「いや、それはそうだけど……」
たしかに胃袋だけどな。たしかに食い物は全人類そこに収まるけどな!
「もういい……ツッコミ入れるのも疲れてきた……というか無駄に思えてきた……」
「よくわかってるじゃないか。さすが俺のパートナー」
「ふん……」
くくっ、と噛み殺した笑顔で言われた。
アユミらしさがあるそれが妙に恥ずかしくて、ごまかすようにそっぽ向いて、手にしたクレープを口にする。
「……よくそんな甘ったるいもんが食えるな。ブロッサム」
「おまえの味覚が渋過ぎるだけだろ」
生チョコとクリームの味を楽しみながら、アユミが手にした串焼き(ハマグリとサザエと焼鳥とイワシ)とお好み焼きに視線を送る。
……どんだけ好きなんだ。串焼き類←
「あ。ブロッサム。手」
「え? ……あ」
やばっ……強く握りすぎてた?
手の平や指先にチョコとクリームがくっついてた。食うのに夢中で気がつかなかったな。
「食い終わってよかった……とりあえずハンカチ……」
「…………」
「……アユミ?」
汚れていない手でハンカチを取ろうとすると、急に手を掴まれた。
「……んっ」
「ッ!!?」
なんだ、と思っていると、べとべとの手の平を舐められた。
ちょ……何やってんだ!?
「なっ……何を……!」
「コラ……動くんじゃねぇって」
「っ……!」
手の平、しかもど真ん中を舌先で舐められ、思わずビクッ! と身体が跳ね上がった。
なんで変態みたいな真似が平気でできんだ、コイツは!
「やめろって……っ!」
「はいはい。……うげっ、げろ甘……」
甘いクレープに、舌を出して唸る。
……こっちは心臓バクバクいってんのに……っ。
「……な、何やってんだよ」
「だって俺の舌で感じるブロッサムとか見れるし。あとクリームがもったいないのと、ハンカチがべとべとになる」
「せめて最初のを最後に回せ!」
変態発言なくしてくれ。頼むから!
そんな思いを盛大に出すかのように、代わりに花火がドでかい音を発てて空に咲いた。
「お。たーまやー、てか?」
「……そうだな……」
呑気に空を見上げながら、打ち上がった花火を見つめる。
……去年同様、この女はマイペースだな。ホント。
(まあ……去年よりもっと楽しいけど)
去年より、俺らの距離は縮まった……と思う。
知らないことを知ったし、これからもそれは増える。
(一緒にいる限り、ずっと……)
ヒューマンとセレスティア。
どう足掻いたって、アユミが先に死ぬ。俺は取り残される。
だから、俺は一分でも一秒でも長くいたい。
……こんなこと。恥ずかしいから絶対口にしないけど。
「…………」
ちらっと隣に目を向ける。
目に映るのは、花火を見上げるアユミ。打ち上がった花火の光で、その顔がより綺麗に見える気がした。
「――アユミ」
「あ? なんだ――」
視線が俺に移った瞬間、顔を近づけた。
「……ぇ……」
目を閉じてもわかった。
いきなりの、不意打ちのキスに驚いてる。
いつもはアユミから仕掛けるし、触れるだけのものでも、いつもの俺ならしない。
「……さっきの仕返し」
自分がしたとは言え……顔が熱い。
とっさに嘘をつくが……苦し紛れに過ぎないな、これ。
「仕返しって……」
「うるさい。……つっこむなよ」
「……ふふっ。いいよ」
楽しそうに言いながら、アユミが擦り寄ってくる。
それがうれしくて、思わずその身体を抱き寄せた。
「積極的だな……どうかした?」
「べつに……」
うれしいから。離れたくないから。甘えたいから。
思い合うのがうれしいから。
理由なんて、上げたらキリがない。
「……まあいいか。うれしいし。……花火が終わるまで少し休もうか」
「……そうだな」
少女らしい、可愛い笑顔をアユミは浮かべる。
花火の音を耳にしながら、幸福とともに、もう一度キスをした。
――――
思い出を焼き付けて
――――
(とりあえず今は)
(この幸せを素直に感じよう)