マッドサイエンティストの恐怖?
プリシアナ学院・実験室
「ふ……ふふふ……ついに――ついに完成です……!」
真夜中の実験室。月明かりしか光源が無い教室で、一人の男が不気味な笑いを浮かべていた。
「これさえ完成すれば、私の今度の研究は成功! ああ……薔薇色の未来が見えますねぇ……」
発光する魔法陣の中心で、紫色に煮えたぎった、危険物以外の何物でもない物体を掻き混ぜながら笑う。
その姿は完全に悪役魔術師そのものだ。
「さあ! 待っていなさい……! ブロッサム……!!」
そして最後の仕上げとして、薬品を一滴垂らした――。
――――
アユミSide
「……んー……」
うー……頭痛い……。
なんだろ……ブロッサムで遊び過ぎたかな?←
「ふわあ……今何時――」
妙にズキズキと痛む頭を抱えながら、時計を見ようと起き上がった。
「……え?」
起き上がって……違和感に気づいた。
「え、あ、え。あれ?」
俺の身体が……違うんだけど。
本来女にあるはずのものが無くて、無いはずのものがある。
……つーか今気づいたが、声も低いのでしかでない。
「…………」
無言で頬を捻るが痛い。夢じゃない。
「……う」
馬鹿な話だけど……でも……夢じゃないんじゃ、現実しかないんだ!!!
「う――嘘だろォオオオオオオッ!!!」
俺……男になっちゃってるゥゥゥ!!?
――――
「ブロッサム、起きろ! 起きてくれ! つーか起きやがれ!!」
「うひゃあッ!!?」
即行でブロッサムの部屋に突撃し、ボフッ! と思いきり布団にダイブした。
布団の中にいるらしいブロッサムは驚いて、だけど何故か布団の中から出てこなかった。
「……ブロッサム? なあ、出てこいよ」
「……や……やだ……っ」
布団の中で首を横に振ってるらしい。
理由は知らんが、拒否って出てこない。
「おい、ブロッサム。出てきてくれって」
「や、やだよ! やだってばあ!!」
「こっちだって緊急事態なんだよ! いいから出てこい!」
「いーやーだーーーっ!!!」
布団を剥ぎ取る、取られまいとの、必死の攻防戦開始。
いつになくわがままだな、おい!
「コラ! 出てこいって……このっ!」
あまりにも強情なもんなので、イラついて布団越しにブロッサムの首絞めにかかった。
どこが首か見えないけど←
「ひぁ……っ!」
「……え」
「はっ……」
え……何、今の甘ったるい声。
しかも声も……なんか、ホントに女みたいな――。
「――ブロッサム。まさか、おまえ……」
「あ、ち、違っ……今のは……」
「…………。えいっ」
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ッ!!!」
うろたえて狼狽しているのを気に、ブロッサムの布団を剥ぎ取った。
「ちょ、バカッ! 見るな! 俺を見るなってばあ!!」
必死で頭と身体を隠そうと縮こまるのを両手で防いだ。
そしてジーッとブロッサムの全身を見る。
「…………」
目の前に映るのは間違いなくブロッサム。
……ブロッサムの女装・チェリーちゃんに『性別』ごとなってるけど。
髪はセミロングまで伸びていて、身体も柔らかいし、胸にも膨らみが見れる。
……まんまチェリーちゃんそのものだな←
「……ってか、おまえも性別変わってるのかよ」
「おまえ、『も』……? って……」
そこでようやくブロッサムも俺の変化に気づいたらしい。
目を真ん丸にしたあと、ぎょっと驚愕した。
「アユミ、おまえ、男になってるのかよ!?」
「そーなんだよ。頭痛がして、それで起きたら男になってたんだよ」
「アユミも? 俺と一緒だ」
「マジでか」
うわー……ブロッサムもかよ……。
こいつも性転換で女に……。
「……女? ってことは……」
「な、なん――きゃあああああああッ!!!!!」
思いきり胸を掴みあげれば、いつもよりも身体が反応しまくった。
……しかし『きゃあ』って……完全に女だろ、それ。
「たしかに女だな。柔らかいし」
「ちょ……ッ!!? なんで揉んで……、ん……っ!」
「反応まで女だし……あ、まずい。このまま襲いたい」
「!? やめ……ダメ! ダメだってば!!」
「いや、一回でいいから!」
「状況読め! ってやめろ! いや!!」
無理。止めらんない。男の本能って実にケダモノなんだなあ……←
呑気にそんなこと考えながら、シャツに手を入れようとした。
「えいっ」
「とーう」
「あだッ!!?」
入れようとした。時に邪魔が入った。
ボカッ、と頭に二撃、まともに喰らった。
「アユミちゃん。こんな時までいちゃつくのはやめようよ。殺しちゃうよ?」
「緊急事態……空気読め?」
「おまえら……これからって時に――」
二撃を加えた人物を睨もうと振り返った。
……そして、またしても目が点になった。
「……シルフィーとライラ……だよな?」
「うん」
「当たり」
一見天然系でぽややんとした深緑の短髪を持つフェアリーの女子と、無表情だがすっきりした顔立ちのイケメンなノームの男子が頷く。
性別は違うが、シルフィーとライラに間違いなかった。
「おまえらもか!?」
「っていうか、学院にいる人全員だね~。性転換したの」
「全員……教員含む?」
「マジでか!!」
シルフィーのマジ情報に、思わずのけ反ってしまった。
学院全体で性転換って……明らかに怪しさMAXじゃないか!
いや、性転換だけでもややこしいんだけどね!←
「……とりあえず、ややこしい事態ってのはたしかなんだな」
「まあね~……」
学院全体ともなると、ただ事じゃない。
絶対何か事件に巻き込まれているに決まってる。
「……どうする?」
「……校長たちに話を聞いてみるか。絶対何かあるに決まってる」
「だよな……でもこれで外に出たくない……」
またも布団に包まって縮こまるブロッサム。
……何故だ。小動物みたいでものすごく可愛いんだが←
「まあまあ、ブロッサム君。学院全体が性転換しちゃってるんだから、大丈夫だよ~」
「性転換……みんな一緒なら怖くない?」
「初等部のガキかよ……」
ぶつぶつと文句を言いながらも「わかったよ……」と、のそのそとブロッサムも出てくるのだった。
――――
とりあえず制服に着替え(ちなみにライラはシルフィーの借りてる)、早速職員室にレッツ・ゴーだ。
「うわ、ホントにみんな逆転しちゃってるな」
「カオスってるな……」
部屋から出て周りを見渡す俺とブロッサム。
いつもは騒がしいプリシアナ学院が、今日は閑散としていて、辺りには男子の制服の女子と私服の男子が数名しかいない。
「たいていが部屋に閉じこもっちゃってるっぽいよ~」
「転換中……引きこもり?」
「うん、よくわかる……」
ついさっきまで引きこもり中だったからな。
ブロッサムも力無く頷いた。
「今は言ってる場合じゃないけどな……あ、着いた」
世界が平和になった今、さっさと元に戻りたいからな。
職員室に着くと、真っ先にドアを開いた。
「あ、アユミたち」
「やあ。君たちも来たんだ」
「ああ。……やっぱりおまえらもか」
話しかけてきたレオ、セルシアに片手を上げる。彼らの後ろにいる、それぞれのパーティメンバーも俺らを見た。
「うわー! 四人も変わってるー! シルフィー、かーわーいーいーっ!」
「まあ! ライラさんもかっこよくって素敵!」
「ぶふぉっ……! ちょ、ブロッサム……! や、やばい……可愛い……!」
「バロータ……あなたって人は……」
……四人とも、中身は変わらないな。
もちろん彼らも、今は性別が逆だ。
ブーゲンビリアはたいして変わらないけど←
……それにしても。
「おい。俺にはコメントはないのか」
『…………』
俺がそう言えば、全員が一斉に俺を見た。
見た、が……しばらく無言が続く。
「……性別以外」
「変わりませんね……あまり」
「元々、中性的だったもの。アユミさん」
「つーかアユミの場合は男か女か以前に、子供か大人かすらわからない身長……ギャーーーーッ!!! ギブ! ギブ!!」
セル、レオを除いた四人のコメント。バロータにはアイアンクローを決めたけど←
「大丈夫だよ。アユミは男でもすごく麗しいじゃないか」
「セル。それ、まったくうれしくないんだが」
「もちろん僕はアユミが男でも問題無いよ」
「大有りだろ。逆なんだぞ」
「僕は同性とかそういう垣根は気にしないから大丈夫」
「いや、その前に人の話を聞いてる?」
ダメだ……こいつは女になっても中身はそのままだ。
顔は良いのに、なんで頭はコレなんだ←
「…………」
「あれ? ブロッサム、どしたの?」
さっぱり赤毛ショートの女レオ(こいつもあまり変わらないな……)が、何故か無言でセルたちと自分を見比べているブロッサムに話しかけた。
瞬間、ブロッサムの肩が跳ね上がる。
「べ、べつに……何も……」
「えー? ちらちらとセルシア君たちを見てたじゃん」
「見てない! べつに……――なんか見てねぇよ!!」
真っ赤な顔で否定するブロッサム。
途中言葉が途切れた……というか聞こえなかったが。
「ふ……ふふふ……ついに――ついに完成です……!」
真夜中の実験室。月明かりしか光源が無い教室で、一人の男が不気味な笑いを浮かべていた。
「これさえ完成すれば、私の今度の研究は成功! ああ……薔薇色の未来が見えますねぇ……」
発光する魔法陣の中心で、紫色に煮えたぎった、危険物以外の何物でもない物体を掻き混ぜながら笑う。
その姿は完全に悪役魔術師そのものだ。
「さあ! 待っていなさい……! ブロッサム……!!」
そして最後の仕上げとして、薬品を一滴垂らした――。
――――
アユミSide
「……んー……」
うー……頭痛い……。
なんだろ……ブロッサムで遊び過ぎたかな?←
「ふわあ……今何時――」
妙にズキズキと痛む頭を抱えながら、時計を見ようと起き上がった。
「……え?」
起き上がって……違和感に気づいた。
「え、あ、え。あれ?」
俺の身体が……違うんだけど。
本来女にあるはずのものが無くて、無いはずのものがある。
……つーか今気づいたが、声も低いのでしかでない。
「…………」
無言で頬を捻るが痛い。夢じゃない。
「……う」
馬鹿な話だけど……でも……夢じゃないんじゃ、現実しかないんだ!!!
「う――嘘だろォオオオオオオッ!!!」
俺……男になっちゃってるゥゥゥ!!?
――――
「ブロッサム、起きろ! 起きてくれ! つーか起きやがれ!!」
「うひゃあッ!!?」
即行でブロッサムの部屋に突撃し、ボフッ! と思いきり布団にダイブした。
布団の中にいるらしいブロッサムは驚いて、だけど何故か布団の中から出てこなかった。
「……ブロッサム? なあ、出てこいよ」
「……や……やだ……っ」
布団の中で首を横に振ってるらしい。
理由は知らんが、拒否って出てこない。
「おい、ブロッサム。出てきてくれって」
「や、やだよ! やだってばあ!!」
「こっちだって緊急事態なんだよ! いいから出てこい!」
「いーやーだーーーっ!!!」
布団を剥ぎ取る、取られまいとの、必死の攻防戦開始。
いつになくわがままだな、おい!
「コラ! 出てこいって……このっ!」
あまりにも強情なもんなので、イラついて布団越しにブロッサムの首絞めにかかった。
どこが首か見えないけど←
「ひぁ……っ!」
「……え」
「はっ……」
え……何、今の甘ったるい声。
しかも声も……なんか、ホントに女みたいな――。
「――ブロッサム。まさか、おまえ……」
「あ、ち、違っ……今のは……」
「…………。えいっ」
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ッ!!!」
うろたえて狼狽しているのを気に、ブロッサムの布団を剥ぎ取った。
「ちょ、バカッ! 見るな! 俺を見るなってばあ!!」
必死で頭と身体を隠そうと縮こまるのを両手で防いだ。
そしてジーッとブロッサムの全身を見る。
「…………」
目の前に映るのは間違いなくブロッサム。
……ブロッサムの女装・チェリーちゃんに『性別』ごとなってるけど。
髪はセミロングまで伸びていて、身体も柔らかいし、胸にも膨らみが見れる。
……まんまチェリーちゃんそのものだな←
「……ってか、おまえも性別変わってるのかよ」
「おまえ、『も』……? って……」
そこでようやくブロッサムも俺の変化に気づいたらしい。
目を真ん丸にしたあと、ぎょっと驚愕した。
「アユミ、おまえ、男になってるのかよ!?」
「そーなんだよ。頭痛がして、それで起きたら男になってたんだよ」
「アユミも? 俺と一緒だ」
「マジでか」
うわー……ブロッサムもかよ……。
こいつも性転換で女に……。
「……女? ってことは……」
「な、なん――きゃあああああああッ!!!!!」
思いきり胸を掴みあげれば、いつもよりも身体が反応しまくった。
……しかし『きゃあ』って……完全に女だろ、それ。
「たしかに女だな。柔らかいし」
「ちょ……ッ!!? なんで揉んで……、ん……っ!」
「反応まで女だし……あ、まずい。このまま襲いたい」
「!? やめ……ダメ! ダメだってば!!」
「いや、一回でいいから!」
「状況読め! ってやめろ! いや!!」
無理。止めらんない。男の本能って実にケダモノなんだなあ……←
呑気にそんなこと考えながら、シャツに手を入れようとした。
「えいっ」
「とーう」
「あだッ!!?」
入れようとした。時に邪魔が入った。
ボカッ、と頭に二撃、まともに喰らった。
「アユミちゃん。こんな時までいちゃつくのはやめようよ。殺しちゃうよ?」
「緊急事態……空気読め?」
「おまえら……これからって時に――」
二撃を加えた人物を睨もうと振り返った。
……そして、またしても目が点になった。
「……シルフィーとライラ……だよな?」
「うん」
「当たり」
一見天然系でぽややんとした深緑の短髪を持つフェアリーの女子と、無表情だがすっきりした顔立ちのイケメンなノームの男子が頷く。
性別は違うが、シルフィーとライラに間違いなかった。
「おまえらもか!?」
「っていうか、学院にいる人全員だね~。性転換したの」
「全員……教員含む?」
「マジでか!!」
シルフィーのマジ情報に、思わずのけ反ってしまった。
学院全体で性転換って……明らかに怪しさMAXじゃないか!
いや、性転換だけでもややこしいんだけどね!←
「……とりあえず、ややこしい事態ってのはたしかなんだな」
「まあね~……」
学院全体ともなると、ただ事じゃない。
絶対何か事件に巻き込まれているに決まってる。
「……どうする?」
「……校長たちに話を聞いてみるか。絶対何かあるに決まってる」
「だよな……でもこれで外に出たくない……」
またも布団に包まって縮こまるブロッサム。
……何故だ。小動物みたいでものすごく可愛いんだが←
「まあまあ、ブロッサム君。学院全体が性転換しちゃってるんだから、大丈夫だよ~」
「性転換……みんな一緒なら怖くない?」
「初等部のガキかよ……」
ぶつぶつと文句を言いながらも「わかったよ……」と、のそのそとブロッサムも出てくるのだった。
――――
とりあえず制服に着替え(ちなみにライラはシルフィーの借りてる)、早速職員室にレッツ・ゴーだ。
「うわ、ホントにみんな逆転しちゃってるな」
「カオスってるな……」
部屋から出て周りを見渡す俺とブロッサム。
いつもは騒がしいプリシアナ学院が、今日は閑散としていて、辺りには男子の制服の女子と私服の男子が数名しかいない。
「たいていが部屋に閉じこもっちゃってるっぽいよ~」
「転換中……引きこもり?」
「うん、よくわかる……」
ついさっきまで引きこもり中だったからな。
ブロッサムも力無く頷いた。
「今は言ってる場合じゃないけどな……あ、着いた」
世界が平和になった今、さっさと元に戻りたいからな。
職員室に着くと、真っ先にドアを開いた。
「あ、アユミたち」
「やあ。君たちも来たんだ」
「ああ。……やっぱりおまえらもか」
話しかけてきたレオ、セルシアに片手を上げる。彼らの後ろにいる、それぞれのパーティメンバーも俺らを見た。
「うわー! 四人も変わってるー! シルフィー、かーわーいーいーっ!」
「まあ! ライラさんもかっこよくって素敵!」
「ぶふぉっ……! ちょ、ブロッサム……! や、やばい……可愛い……!」
「バロータ……あなたって人は……」
……四人とも、中身は変わらないな。
もちろん彼らも、今は性別が逆だ。
ブーゲンビリアはたいして変わらないけど←
……それにしても。
「おい。俺にはコメントはないのか」
『…………』
俺がそう言えば、全員が一斉に俺を見た。
見た、が……しばらく無言が続く。
「……性別以外」
「変わりませんね……あまり」
「元々、中性的だったもの。アユミさん」
「つーかアユミの場合は男か女か以前に、子供か大人かすらわからない身長……ギャーーーーッ!!! ギブ! ギブ!!」
セル、レオを除いた四人のコメント。バロータにはアイアンクローを決めたけど←
「大丈夫だよ。アユミは男でもすごく麗しいじゃないか」
「セル。それ、まったくうれしくないんだが」
「もちろん僕はアユミが男でも問題無いよ」
「大有りだろ。逆なんだぞ」
「僕は同性とかそういう垣根は気にしないから大丈夫」
「いや、その前に人の話を聞いてる?」
ダメだ……こいつは女になっても中身はそのままだ。
顔は良いのに、なんで頭はコレなんだ←
「…………」
「あれ? ブロッサム、どしたの?」
さっぱり赤毛ショートの女レオ(こいつもあまり変わらないな……)が、何故か無言でセルたちと自分を見比べているブロッサムに話しかけた。
瞬間、ブロッサムの肩が跳ね上がる。
「べ、べつに……何も……」
「えー? ちらちらとセルシア君たちを見てたじゃん」
「見てない! べつに……――なんか見てねぇよ!!」
真っ赤な顔で否定するブロッサム。
途中言葉が途切れた……というか聞こえなかったが。