このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

甘く、甘く

 甘くて、甘くて。

 なんか甘く酔いしれる。

 今日はちょっぴり特別な日。

 ――――

「…………」

「ライラ。そんなにそわそわしなくてもできるって」

「うん……でも、待てない……」

「おまえなあ……」

 ライラがため息ついてる。
 私が、オーブンの前でうろうろしているから。

「心配しなくてもできる。俺が手伝ったんだからな」

「うん……」

「というか、できないと困るんだよ。俺もな」

「ブロッサムにあげるから?」

「おう」

 あ……すごいうれしそう。なんか、チョコレートみたいに真っ黒いような笑顔だ←
 アユミ、ブロッサムが好きだからかな?

「ほら。焼き上がる前にラッピングの準備をしちゃうぞ。空いた時間は有効に使わないとな」

「うんっ」

 今日は特別な日。
 だから、頑張る。

 ――――

 シルフィーSide

 コンコン。

「シルフィー、いる?」

「あれ? ライラちゃん?」

 声からわかった。
 あれ? 何か約束してたっけ?

「入っていい?」

「うん。いいよ~」

 特に用事も無いからドアを開けた。
 開けて、目に映ったのはうれしそうなノームの女の子。

「どうしたの~」

「うん、あのね。今日はバレンタインだから、ガトーショコラ作ってきたの」

「ふぇ?」

 思わず目を丸くする。
 ライラちゃんが知ってるって思わなかったから。

「ライラちゃん、バレンタイン、知ってたの?」

「うん。今日学院の女の子がうきうきしてたり、男の子がガーンってなってたでしょ? それでアユミに聞いたら、『今日は好きな人にチョコレートを渡す日』だって」

「うん。間違いじゃないよ」

 あ、アユミちゃんにしてはまともかも←

「だから、私もシルフィーにあげたいって言ったの。そしたらロッカーから出てきたエデンが、『それなら手作りのチョコレートを渡せ!』って。一番好きな人には手作りのチョコレートを渡すんだね」

「……それも、間違いじゃないけど~……」

「で、そのあと、『そして僕にもチョコを、いや、アユミのすべてを!』って言ったエデンを、アユミが三階から一階へ、窓からたたき落とした」

「…………」

 エデン君、なんで毎回ロッカーから出てくるのかな~。
 そしてアユミちゃん、毎回ながら容赦ないね~。

「……で。アユミにお願いして、一緒に手伝ってもらった」

「あー、そっか~」

 まあ……アユミちゃんなら大丈夫かな~。
 少なくとも、まともに教えてくれる時はまともだから。

「……で。作ってきたの。ガトーショコラ」

「そうなんだ。おいしそ~」

 いいな~。ライラちゃんのガトーショコラ……。
 そう思ってると、「はい」と差し出された。

「あげる」

「……へ? ボク?」

 自分に指さしながらつぶやくと「うん」と手渡された。

「一番好きな人には手作りのチョコレート渡すんでしょ? 一番好きなのシルフィーだからあげる」

「いいの?」

「うん」

「……えへへ。ありがと~♪」

 ライラちゃんのチョコレートだ~♪
 最高のバレンタインだよ~♪


 甘く、甘く、

 ――――

(そう言えばアユミちゃんも作ったんだよね~。なんか珍しい~)

(うん。なんか、“その気”にさせちゃう新作のシロップかけて食べさせるって)

(…………。そのシロップ、見た?)

(うん。桃色っぽかった)

(……そっか~♪ ライラちゃん、それは忘れようね~)

(……? うん)
1/2ページ
スキ