このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

可愛い

 ギャップがあるってすごく良いと思う。

 ……え? 理由?

 ますます可愛く見えるからだよ。

 ――――

「――アユミ? ほら、もう起きて」

「……セル……?」

 毛布に包まりながら、可愛い声で小さく返事を返してきた。
 丸まったその姿は、まるで巨大な芋虫みたい。

「ダメだよ、起きなきゃ。また昼過ぎまで寝る気?」

「んー……」

 いくら休日とは言え、寝るだけの一日はいただけない。
 少々強引に布団を剥ぎ取り、(強奪した従兄弟の彼の)シャツ(とサラシ)にスパッツという、あらゆる意味で破壊力抜群の格好で眠っているアユミを抱え込んだ。
 もちろん眠っている時しかやらせてくれない姫抱きで。

「ほら。朝食食べないと起きられないよ」

「おー……」

 椅子に座らせ、事前に用意していた朝食を用意する。
 アユミが超の付く低血圧で朝起こすのが困難なのは、僕の従兄弟からよく聞かされている。
 いつもはその彼が彼女を起こすが、彼はほぼ週一で補習を受けていて、今日は朝からその補習なので彼女を起こせない。
 だからその日は代わりに僕が起こす。
 少々渋られたけど、そこは強引に脅し……いや、丸め込んで←

「……ます」

「うん、どうぞ」

 短くぼそぼそとつぶやいてから食べ始めた。
 朝食は普通にトーストとブラックコーヒー。
 あいにく僕は料理はできるけど得意というわけではないので、さすがにタカチホ地方の料理までは習得していない。

「……うまい」

「そっか。よかった」

「んー……」

 眠たそうな目を細めておいしそうに食べている。
 意識がまだ覚醒していないか、一口口に入れる度、ふにゃっと喜ぶ笑顔がすごく可愛い。

(普段とは真逆なんだよね……)

 完全に意識が覚醒すればいつものアユミだ。
 むろんいつものアユミも好きだけど。でもこれはこれで可愛いから好き。

「アユミ」

「うー……なに――んっ」

 何より、頭を撫でたり短くキスしても反応してくれる。
 ……寝起きだから覚醒すれば、ほとんど覚えていないことが唯一の悲しいとこかな。

「目、覚めた?」

「……うー……」

「あ、まだ半寝ぼけなんだね」

 今にも眠たそうだ。目を片手でごしごしと擦ってる。
 小柄な体格なだけに、見た感じ小動物に見える。実際は羊の皮被った狼なのに←

「セルぅ……ねむぃ……」

「……寝たい?」

 そう聞けば、コクンと小さな子供みたいな仕種で返事を返してきた。
 ああ、もう。なんでアユミは睡魔付きだとこんなに可愛いのかな?←

「しかたないな……いいよ」

「ん……ありがと……」

 眠気溢れるアユミを抱え込み、再びベッドへ。
 アユミが可愛いからいけないんだよ。なんでもお願い聞きたくなっちゃうんだから←

「おやすみ……」

「うん。おやすみ」

 ぐっすり眠り、規則正しい寝息が聞こえてきた。
 年相応の寝顔にはすごく癒される。

「……うん」

 どんなアユミも、やっぱり可愛い。



 可愛い

 ――――

(……セル)

(あ。起きた?)

(おまえ、俺のベッドで何してやがる)

(え? 添い寝だけど)

(……テメェ……今すぐ出て行けェェェェェェッ!!!)

(いだッ!)
1/2ページ
スキ