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Ifストーリー2

「……え。まさか、魔法壁か?」

「は……? こんな頑丈な魔法壁、あるわけ……」

「ありえないことでも、事実目の前にあるけど」

「はひゅ~……」

 ちょっと呆然気味になりながら、ぺたんと座り込んだフェアリーに目を向ける。

「なかなかやるじゃないか。……えーっと……」

「ボク? ボクはシルフィー♪ 君は?」

「俺はアユミ。……もしなんだったら、ちょっと俺に協力してくれね?」

 そうたずねれば、やっぱりキョトンと目を丸くした。
 ま、当然だよな←

「あれ喰らって死ぬなんて冗談じゃないし。とはいえ仲間はそれぞれ応戦中……協力できるのはおまえしかいない」

「え、え~……」

「嫌ならいいぞ。光線喰らってあの世に行きたいってんなら「それはやだから協力しますぅ~!!」よし、よく言った!」

 涙目で必死に首を振るこいつを見て内心ガッツポーズ←
 ……え? おまえが言わせた? ……そこは気にするな←

「あと一撃加えれば仕留められると思うから……シルフィー。俺があいつまで行けるよう、何とか魔法で援護してくれ」

「うん、いいよ~」

「よし。……それと」

 言って視線を、今度はセレスティアの方へ移す。

「動けるんなら、どっか木の陰とかに隠れてろ」

「え……?」

「その怪我じゃ悪化するかもしれないだろ? 無理すんじゃねぇ。そこでおとなしくしてろ」

 俺を庇ったってのもあるけど、こいつには無理はさせたくなかった。
 いや、だってさ? 背中の怪我尋常じゃないんだもん。俺そこまでドSじゃないし←

「いや、でも俺は……」

「いいから。……まあそこまで気になるってんなら」

 しゃがみ込み、セレスティアと目線を合わせて。

「名前と学科と年齢と、あと部屋番号と好みのタイプとか教えてくれる?」

「ああ、わかっ……いや、待て。最初の三つはともかく、最後の二つはどうする気?」

 ……スルーするかと思ったら止まったか。チッ←

「知りたいから。興味あるから。あと可愛いから。以上」

「いや以上じゃないだろ、以上じゃ!」

 結構ツッコミ入れてくれるんだな。
 ……思った以上に好感アップした←

「まあいいや。とにかくそこに座ってろよ。もうおまえに怪我させねーから」

「えっ、ちょ……」

 声かけもそこそこに、再び刀を握り直す。
 あのポンコツゴーレムも活動限界が近いっつーか、半ば暴走してるからな。
 さっさと終わりにするか。

「さあ……終わりにするか!」

 放っておいたら被害しか増えないからな。
 さっさと終わりにしてやるか!

「グォオオオッ!!!」

「サンダー!」

 再び撃ち込んでくる攻撃も、シルフィーの援護と最低限の動きで何とか避ける。
 擦り傷できようが構うものか!

「この……ッ!」

「コォオオオッ!!!」

 突っ込む直前、再び光が視界を奪う。

(やばっ……またアウトか!?)

 あともうちょいなのに……!
 若干諦めが出た。その瞬間だ。

「シャイガン……っ!」

 俺の真横から光が過ぎった。
 それはまっすぐゴーレムに命中し、覆っていた光が消滅する。

「はあ……はあ……」

「……え。おまえ……」

「……何、やってんだ……! 魔宝石は譲るから、さっさとしろ……ッ!!?」

「お……おお!」

 意外とやる人なのな。カッコイイよ、君←
 せっかくのチャンスも無駄にはしない。再び刀を握り直す。

「――トドメだあああっ!!!」

 思いきりゴーレムの眼球(らしき部分)に刀を突き刺す。
 ビシビシ、と嫌なひび割れ音が響く。

「もらったッ!!!」

 力を込め、刀をぶっ刺す。

 バキィイイインッ!!!

「ぃよっしゃあっ!!」

 ゴーレムは刀を中心にバラバラに砕け、ついでに魔宝石もゲットする。
 うん、ナイスだ俺←

「や、やった、か……?」

「うわぁ。アユミちゃんって、すごいんだね~」

「ザッとこんなもんだな」

 魔宝石が手の平から消えて(学院にワープして)いくのを確かめつつ、頭にかかる瓦礫とか砂とかを払う。
 ……思ったよりジャリジャリするなあ←

「お姉ちゃん!」

「お~……ようやく終わったかあ……」

 振り返れば、乱戦を終えたらしい。アイナとカエデ(カエデは超ボロボロ)と、ドラッケンとプリシアナパーティがやってきた。

「あ、おまえら。生きてたか?」

「何とかな! 斧振るい過ぎて右肩ぶっ壊れそうだけど!」

「まあ、あのディアボロス君とガチでやり合ったからな。無理もないか」

 斧使いと大剣使い。ある意味興味深い戦いを繰り広げたんだろうな。
 そんなことを考えながら、カエデの左肩に手を置く。

「じゃ、次は左手で戦ってくれ」

「できねーよ!! つかおまえ鬼!?」

 カエデのツッコミを聞きつつ、ちらっと横目であのセレスティア君を見る。
 彼はネフライトと一緒に、未だに銃を構えている蒼髪のヒューマンの青年を抑えている。
 シルフィーは気弱なディアボロス君と一緒にエルフの少女を抑えていた。

「…………。明らかにあいつらの方が役立ちそうだな。ツッコミも戦力も」

「なんで俺を見ながら言ってんの!?」

「はいはい、黙ってろや」

 カエデの叫びも聞き流し、「おい」とセレスティアの少年を手招きする。

「え、何……」

「セレスティア君。名前は……」

 手招きと質問にキョトンとしながら、こいつの口が動く。

「……ブロッサムだ」

「そ。さっきはありがとう。助かったよ」

「べ、べつに……目の前で死なれる方が厄介だし……。つか女が無茶すんなよ……」

 ……え、何コレ。
 もしかして……これがプリシアナ名物ツンデレってやつか?
 ――すごい可愛いんだけど!←

「心配してくれたのか? ありがとな」

「な……ッ!? し、心配なんかしてない!! 勘違いすんな、バカ!!」

 わざとしおらしく(っぽく)言えば、そっぽを向きながらブロッサムが赤い顔で言った。
 ……うん。やっぱり可愛いな←

「坊ちゃま、そろそろ行かないと間に合わ――って、あれ? 坊ちゃま。顔赤い的な?」

「!! あ、赤くなってねーし! ふざけんなバカ! タコ! しばらく黙ってろ!」

「ええっ!? なんでそこまで罵倒されなきゃいけない的な!?」

「うるさいうるさいうるさあーーーいッ!!!」

「超理不尽的な!!?」

「ブロッサム様、落ち着いて。ほらネフライト。とっとと来い」

「なんでサファイアも!? ってか坊ちゃま! サファイア君! 置いて行かないでーーーッ!!!」

 愉快な漫才を繰り広げながら、ブロッサム君たちプリシアナパーティは去っていった。
 うーん……ホントに愉快だな←

「あらあら……仕留め損ないましたわ、あのヒューマン」

「ユリちゃ~ん……仕留めなくていいんだってば~……」

「そ、そうですよ、ユリ様。それより、早く行かないと、ま、負けちゃいますよ……」

「わかってますわ。シルフィー、リンツェ。参りますわよ」

 シルフィーらドラッケンパーティも去っていった。
 去り際、エルフ――ユリが横目で俺を見ていたが……いや、なんか嫌な予感がするからやめておこう。

「いやあ……他校の生徒も、愉快な奴らがいるんだな」

「言ってる場合かよ……今回は勝ったけど、他はわかんねぇんだからな」

「わーってるって。んじゃアイナ、カエデ。行こうぜ」

「うん! 行こっ、お姉ちゃん!」

「……ったく。姉の方はなんでこんなに厄介なんだか」

 無邪気なアイナ、ため息をつくカエデを見ながら、俺も歩を進めた。

(また会えるといいな。あの二人には)

 ブロッサムとシルフィー。あいつらにはまた会ってみたい。
 そんな思いを胸に、俺は次なるターゲットへ、足を運ぶのだった。


 交わる邂逅

 ――――

(例え傍にいなくても)

(俺たちは交わる運命だと思う)

(なぜなら――)

(勝手に引かれ合う何かがあるからな!)
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