Birthday present
「――なあ……ホントにどうすればいいんだよっ!」
「だから俺に当たるなっつの!」
真昼の食堂にて、バロータの頭を思いきり揺さぶりながら俺は頭を悩ませていた。
(よりによって……今日誕生日だなんて……)
俺らのパーティのリーダーである少女、侍学科のアユミ。
あいつが今日、誕生日だからだ。
――――
本来なら事前に用意するべきだろうが、交流戦前故テストやら勉強やらと個々最近忙しかった。
そもそも知ったきっかけはあいつとした食堂の前の会話だ。
「どうした? 何をじっと見ていて……」
「ああ。これ美味そうだなって思って」
食堂前のショーケースで立ち尽くしているアユミの姿があったから声をかけてみた。
気になって見てみれば、珍しくケーキやお菓子の欄を見ていたんだ。
「珍しいな。普段低カロリーの飯を大食いするおまえがケーキとか……」
「あー。俺、今日誕生日だからな。たまには羽目外してケーキ買って食おうかなって」
「あー、なるほどなるほど……」
一瞬スルーし、そして気になる単語を聞き、すぐに聞き返す。
「……おい。今なんつった?」
「ケーキ買って食おうかなって」
「いや、その前」
「たまには羽目外して」
「そ・の・ま・え!」
「俺、今日誕生日だから」
「はいそこォ!!」
ビシィッ! と音が鳴るくらい指をアユミに向けた。
「おまえ、誕生日って……しかもよりによって今日!!?」
「ああ、今日だ。とにかく今日だ」
「はああああ!!?」
……開いた口が塞がらなかったな。
いやだって……まさか今日誕生日だって言われても……!
「なんで言わなかったんだよ!?」
「言う必要があるのか?」
グサッ!
……キッツイ一言が返ってきた。
いや……たしかにその通りなんだが……アユミはちゃんと祝ってやりた――あ、いや、深い意味はないぞ!?←
「ただでさえ忙しかったのに、俺個人の事情に振り回せるかよ」
「おまえ……仮にも自分の誕生日なのに、ざっくり過ぎるだろ……」
「うるせーな。やっぱ言わなきゃよかった。おまえとりあえず次の授業行け」
「せめて前半聞こえない声で言えよ!!」
全部聞こえてんだよ! という俺の叫びも虚しく、アユミは着々とケーキを買いはじめた。
「……誕生日、か」
ケーキを買っていくあいつを見てボソッとつぶやく。
さっきも言ったが、アユミの誕生日は祝ってやりたい。
……が、実を言うと俺はどう祝ってやればいいかわからなかった。
女(性格はアレだが)の誕生日なんて縁がなかったし、自分の誕生日に至ってはウィンターコスモスやスノー家の人達にニコニコと愛想笑いをして長いスピーチやった、という記憶がある。正直自分の誕生日なのに疲れたな。
……とにかく自分自身の祝い方じゃ当てにならない。
「……聞くか」
時間もないし、一人で悩んでてもしかたない。
こうして俺は誰かに聞きに行くことにした、という訳だった。
――――
「……なのに、これじゃあな」
「おまえな……人がせっかく相談にのってやったっつーのに……」
前の席に座っているバロータがため息をついた。
……なぜバロータか? シルフィーやレオじゃまともな案がないだろうし、チューリップやブーゲンビリアではいろいろ噂が広まりかねない。
セルシア……にはなんか頼みたくない。つか頼めない。いろいろな意味で。フリージアは怖いから絶対嫌だ。
となると、頼めるのはこいつ以外いないんだ。
「普通にプレゼント贈って、誕生日祝えばいいじゃないか」
そして相談した結果、バロータの案が出てきて採用した。
……が。
「……プレゼントが思い浮かばない」
そう、これだ。
何を贈ればいいのかわからないんだ。
最初は刀か刀の転生書と言ったが。
「おまえ馬鹿だろ。誕生日にそんなもん贈るなよ」
と、バロータに一蹴されてしまった。
「ケーキや菓子とかは?」というのもあったが、それは俺から却下した。
なぜならアユミがケーキを大量に買ったのを見たし、そうでなくても手先が器用なあいつはケーキくらい美味く焼けるだろう。
それこそヘタなパティシエ学科や店より美味いから反則(絶対パティシエ学科も終わらせてるだろ)だ!
ちなみに加えると、あいつは一人でやっていた経歴もある為か、料理はもちろん洗濯や掃除、裁縫だってできる。家事全般オールOKという訳だ。
「いやあ。いい嫁ゲットしたな、おまえ」
「ち・が・う!! つーか手先器用にも程があるっつーの!」
「まあ贈る側としては悩むな、たしかに」
バロータの言う通り、悩みが尽きなかった。
つか頼むから何か良い案ないのか。
「……あ」
「どうした」
「良い案あった」
「マジでか!!」
悩ませていたらバロータが良い案を出したらしい。
身を乗り出して聞こうとすると「飛びっきりのな」と笑みを浮かべている。
「これは絶対、確実、100%アユミは喜ぶぞ」
「ま、マジかよ……それはいったい……」
「ああ、待て待て。それは俺が用意しておく。おまえじゃ調達できないものだからな」
「そう……なのか?」
俺じゃ調達できないって……何なんだ?
……ハッ! まさかこいつ、セルシアに買わせる気じゃ……。
「あ、言っとくがセルシアに買わせるとかじゃないぞ。つかそんなことしたらフリージアの説教タイム&光魔法喰らっちまうから」
……それもそうか。
「とにかく。俺が用意しとくから、おまえはアユミに夜、部屋にいるよう伝えとけ」
「ああ、わかった」
この時ほどバロータが頼もしいと思ったことはないな。
バロータの考えなど露ほど気にしてなかった俺は、何の疑いもなくアユミの元へと走っていった。
――――
アユミSide
深夜。プリシアナ学院・寮。
「……ふう。疲れた……」
戦士系学科たちによる集団組み手で見事勝ち星を得た後、食堂でイワシをたらふく食べ、そして部屋に帰ってきた。
ソファに持たれかかり、目の前の箱を見る。
「誕生日、か……今年はあいつのおかげで迎えることができたな」
数日前、冥府の迷宮でエデンに殺されかけた。けど今も生きている。
あいつ……ブロッサムのおかげで。
「後で何か御礼しないとなー。って、祝われる側のセリフじゃないか」
自分にツッコミを入れるが、虚しいだけだな。
そう思いながら箱に手を伸ばした。
コンコン。
「……? 誰だ……はいはーい」
何だよ、こんな時間に……。
そう思いながら俺はドアを開けた。
「……え」
「よ、よぅ……」
いたのはブロッサムだった。
ちょっと頬を赤らめて目を少し反らし、そしてどういう訳か首におしゃれなリボンを綺麗な蝶々結びで着けていた。
……あれ? でもおしゃれなリボンって頭用の防具じゃね?
「その……中に入っていいか?」
「あ、ああ。構わないが」
少々面を喰らいつつもこいつを中に入れた。
玄関先で話はするものじゃないからな。
「……で。何か用か? ついでにそのリボンはなんだ」
「これはバロータがおしゃれにと着けられて……あ、いや、んなことより」
……何を企んでんだ、あいつ。
そう思いながらモゴモゴと言いにくそうにしているブロッサムを見る。
「そ、その……」
「うん」
「……っ、た……誕生日、おめでとう……っ」
「え」
……我ながら間抜けな声が出たな。
まさかブロッサムから祝い(それも夜間部屋に来て)の言葉を言われるとは……。
「あ……ありが、とう?」
「ぎ、疑問形で返すなよ……っ」
す、すまん……こういうパターン今までなかったから。
なんか気恥ずかしくて、お互い目が合わせられなかった。
「あ……せっかくだから、ケーキ食べてくか? 紅茶も入れるし……」
「じゃあ……お言葉に甘えて」
自分らしくない気の回し方だと思うが、早いとここの空気を入れ換えたい。
なんか恥ずかしいし。
――――
ケーキを食い始め、それからたわいない話をすれば何とかいつもの空気に戻ってきた。
正直俺はブロッサムを照れさせてツンデレさせたいからあの空気はちょっと苦手なんだ←
「……あ、その」
「んー?」
「……コレ」
言ってずいっ、と俺の目の前に出したのは小さめの箱。
「これは」
「た、誕生日プレゼントに決まってるだろ! ……気に入るかはしんねぇけど」
マジかよ……プレゼントも?
「開けていいか?」
「あ、ああ……」
緊張した面立ちで頷く彼を見ながら、シュルリと箱のリボンを解き、蓋を開けてみた。
「…………ん?」
「え……?」
入ってたのは……一枚のカード。これだけ。
どういうことかと聞こうとするが、ブロッサムも目を見開いて戸惑っている。
……マジでどういうこと?
「なんで……あいつ、何考えて……」
……なるほど。誰かの入れ知恵か。
大方バロータ辺りだな。リボンの時点できっとそうだ。
「……まあいいや。何書い、て……」
「……なっ!?」
とりあえずカードを見て……そして絶句。
『えー、コホン。誕生日プレゼントが思い浮かばなかったので、思いきって俺をプレゼントします! 煮るなり焼くなり好きにしてください☆ ブロッサム』
「…………」
……あいつ、マジでバカだろ。筆跡明らかに違うだろうが。つかブロッサムがこんな大それたことをするとでも?
「アユミ、誤解だ! 俺はこんなつもりじゃ……!」
「わかってるって。こんな悪知恵はバロータだろ」
残りの野郎どもはきっとしないからな。
「そ、そうか……よかった」
「……とは言え」
言って、俺はニヤリと笑う。
「たしかにこれは、俺が一番喜ぶプレゼントだな……」
「……え……?」
ボソッとつぶやき、目を丸く見開くブロッサムを上目遣いで見る。
「バロータも中々良いチョイスをするな……ご丁寧に首輪まで用意してくれて……」
「な、なんでそんなハイエナみたいな目……つか首輪って!?」
「せっかく用意してくれたんだ。好きにさせてもらおうか……今晩」
「今晩って……うわあっ!!?」
逃がさないよう先手必勝、ソファに座っている彼に飛び掛かって馬乗りになる。
「逃げられると思うなよ」
「な、何をする気だ!?」
「ほう、口に出して言ってほしいのか。なら「やっぱりいい!」チッ」
まあいいか。慌てふためくこいつを見られれば。
「さて……いただいちゃうか」
「あ――や、やめろおおおおおお!!!」
Birthday present
――――
(ふふふふ……♪)
(鬼……悪魔……ドS……うう……っ(泣))
(……アユミ……おまえ、ブロッサムに何を……)
(何をしたかは想像に任せる。良いプレゼントありがとう、バロータ♪)
((マジで気になるーーー!))
「だから俺に当たるなっつの!」
真昼の食堂にて、バロータの頭を思いきり揺さぶりながら俺は頭を悩ませていた。
(よりによって……今日誕生日だなんて……)
俺らのパーティのリーダーである少女、侍学科のアユミ。
あいつが今日、誕生日だからだ。
――――
本来なら事前に用意するべきだろうが、交流戦前故テストやら勉強やらと個々最近忙しかった。
そもそも知ったきっかけはあいつとした食堂の前の会話だ。
「どうした? 何をじっと見ていて……」
「ああ。これ美味そうだなって思って」
食堂前のショーケースで立ち尽くしているアユミの姿があったから声をかけてみた。
気になって見てみれば、珍しくケーキやお菓子の欄を見ていたんだ。
「珍しいな。普段低カロリーの飯を大食いするおまえがケーキとか……」
「あー。俺、今日誕生日だからな。たまには羽目外してケーキ買って食おうかなって」
「あー、なるほどなるほど……」
一瞬スルーし、そして気になる単語を聞き、すぐに聞き返す。
「……おい。今なんつった?」
「ケーキ買って食おうかなって」
「いや、その前」
「たまには羽目外して」
「そ・の・ま・え!」
「俺、今日誕生日だから」
「はいそこォ!!」
ビシィッ! と音が鳴るくらい指をアユミに向けた。
「おまえ、誕生日って……しかもよりによって今日!!?」
「ああ、今日だ。とにかく今日だ」
「はああああ!!?」
……開いた口が塞がらなかったな。
いやだって……まさか今日誕生日だって言われても……!
「なんで言わなかったんだよ!?」
「言う必要があるのか?」
グサッ!
……キッツイ一言が返ってきた。
いや……たしかにその通りなんだが……アユミはちゃんと祝ってやりた――あ、いや、深い意味はないぞ!?←
「ただでさえ忙しかったのに、俺個人の事情に振り回せるかよ」
「おまえ……仮にも自分の誕生日なのに、ざっくり過ぎるだろ……」
「うるせーな。やっぱ言わなきゃよかった。おまえとりあえず次の授業行け」
「せめて前半聞こえない声で言えよ!!」
全部聞こえてんだよ! という俺の叫びも虚しく、アユミは着々とケーキを買いはじめた。
「……誕生日、か」
ケーキを買っていくあいつを見てボソッとつぶやく。
さっきも言ったが、アユミの誕生日は祝ってやりたい。
……が、実を言うと俺はどう祝ってやればいいかわからなかった。
女(性格はアレだが)の誕生日なんて縁がなかったし、自分の誕生日に至ってはウィンターコスモスやスノー家の人達にニコニコと愛想笑いをして長いスピーチやった、という記憶がある。正直自分の誕生日なのに疲れたな。
……とにかく自分自身の祝い方じゃ当てにならない。
「……聞くか」
時間もないし、一人で悩んでてもしかたない。
こうして俺は誰かに聞きに行くことにした、という訳だった。
――――
「……なのに、これじゃあな」
「おまえな……人がせっかく相談にのってやったっつーのに……」
前の席に座っているバロータがため息をついた。
……なぜバロータか? シルフィーやレオじゃまともな案がないだろうし、チューリップやブーゲンビリアではいろいろ噂が広まりかねない。
セルシア……にはなんか頼みたくない。つか頼めない。いろいろな意味で。フリージアは怖いから絶対嫌だ。
となると、頼めるのはこいつ以外いないんだ。
「普通にプレゼント贈って、誕生日祝えばいいじゃないか」
そして相談した結果、バロータの案が出てきて採用した。
……が。
「……プレゼントが思い浮かばない」
そう、これだ。
何を贈ればいいのかわからないんだ。
最初は刀か刀の転生書と言ったが。
「おまえ馬鹿だろ。誕生日にそんなもん贈るなよ」
と、バロータに一蹴されてしまった。
「ケーキや菓子とかは?」というのもあったが、それは俺から却下した。
なぜならアユミがケーキを大量に買ったのを見たし、そうでなくても手先が器用なあいつはケーキくらい美味く焼けるだろう。
それこそヘタなパティシエ学科や店より美味いから反則(絶対パティシエ学科も終わらせてるだろ)だ!
ちなみに加えると、あいつは一人でやっていた経歴もある為か、料理はもちろん洗濯や掃除、裁縫だってできる。家事全般オールOKという訳だ。
「いやあ。いい嫁ゲットしたな、おまえ」
「ち・が・う!! つーか手先器用にも程があるっつーの!」
「まあ贈る側としては悩むな、たしかに」
バロータの言う通り、悩みが尽きなかった。
つか頼むから何か良い案ないのか。
「……あ」
「どうした」
「良い案あった」
「マジでか!!」
悩ませていたらバロータが良い案を出したらしい。
身を乗り出して聞こうとすると「飛びっきりのな」と笑みを浮かべている。
「これは絶対、確実、100%アユミは喜ぶぞ」
「ま、マジかよ……それはいったい……」
「ああ、待て待て。それは俺が用意しておく。おまえじゃ調達できないものだからな」
「そう……なのか?」
俺じゃ調達できないって……何なんだ?
……ハッ! まさかこいつ、セルシアに買わせる気じゃ……。
「あ、言っとくがセルシアに買わせるとかじゃないぞ。つかそんなことしたらフリージアの説教タイム&光魔法喰らっちまうから」
……それもそうか。
「とにかく。俺が用意しとくから、おまえはアユミに夜、部屋にいるよう伝えとけ」
「ああ、わかった」
この時ほどバロータが頼もしいと思ったことはないな。
バロータの考えなど露ほど気にしてなかった俺は、何の疑いもなくアユミの元へと走っていった。
――――
アユミSide
深夜。プリシアナ学院・寮。
「……ふう。疲れた……」
戦士系学科たちによる集団組み手で見事勝ち星を得た後、食堂でイワシをたらふく食べ、そして部屋に帰ってきた。
ソファに持たれかかり、目の前の箱を見る。
「誕生日、か……今年はあいつのおかげで迎えることができたな」
数日前、冥府の迷宮でエデンに殺されかけた。けど今も生きている。
あいつ……ブロッサムのおかげで。
「後で何か御礼しないとなー。って、祝われる側のセリフじゃないか」
自分にツッコミを入れるが、虚しいだけだな。
そう思いながら箱に手を伸ばした。
コンコン。
「……? 誰だ……はいはーい」
何だよ、こんな時間に……。
そう思いながら俺はドアを開けた。
「……え」
「よ、よぅ……」
いたのはブロッサムだった。
ちょっと頬を赤らめて目を少し反らし、そしてどういう訳か首におしゃれなリボンを綺麗な蝶々結びで着けていた。
……あれ? でもおしゃれなリボンって頭用の防具じゃね?
「その……中に入っていいか?」
「あ、ああ。構わないが」
少々面を喰らいつつもこいつを中に入れた。
玄関先で話はするものじゃないからな。
「……で。何か用か? ついでにそのリボンはなんだ」
「これはバロータがおしゃれにと着けられて……あ、いや、んなことより」
……何を企んでんだ、あいつ。
そう思いながらモゴモゴと言いにくそうにしているブロッサムを見る。
「そ、その……」
「うん」
「……っ、た……誕生日、おめでとう……っ」
「え」
……我ながら間抜けな声が出たな。
まさかブロッサムから祝い(それも夜間部屋に来て)の言葉を言われるとは……。
「あ……ありが、とう?」
「ぎ、疑問形で返すなよ……っ」
す、すまん……こういうパターン今までなかったから。
なんか気恥ずかしくて、お互い目が合わせられなかった。
「あ……せっかくだから、ケーキ食べてくか? 紅茶も入れるし……」
「じゃあ……お言葉に甘えて」
自分らしくない気の回し方だと思うが、早いとここの空気を入れ換えたい。
なんか恥ずかしいし。
――――
ケーキを食い始め、それからたわいない話をすれば何とかいつもの空気に戻ってきた。
正直俺はブロッサムを照れさせてツンデレさせたいからあの空気はちょっと苦手なんだ←
「……あ、その」
「んー?」
「……コレ」
言ってずいっ、と俺の目の前に出したのは小さめの箱。
「これは」
「た、誕生日プレゼントに決まってるだろ! ……気に入るかはしんねぇけど」
マジかよ……プレゼントも?
「開けていいか?」
「あ、ああ……」
緊張した面立ちで頷く彼を見ながら、シュルリと箱のリボンを解き、蓋を開けてみた。
「…………ん?」
「え……?」
入ってたのは……一枚のカード。これだけ。
どういうことかと聞こうとするが、ブロッサムも目を見開いて戸惑っている。
……マジでどういうこと?
「なんで……あいつ、何考えて……」
……なるほど。誰かの入れ知恵か。
大方バロータ辺りだな。リボンの時点できっとそうだ。
「……まあいいや。何書い、て……」
「……なっ!?」
とりあえずカードを見て……そして絶句。
『えー、コホン。誕生日プレゼントが思い浮かばなかったので、思いきって俺をプレゼントします! 煮るなり焼くなり好きにしてください☆ ブロッサム』
「…………」
……あいつ、マジでバカだろ。筆跡明らかに違うだろうが。つかブロッサムがこんな大それたことをするとでも?
「アユミ、誤解だ! 俺はこんなつもりじゃ……!」
「わかってるって。こんな悪知恵はバロータだろ」
残りの野郎どもはきっとしないからな。
「そ、そうか……よかった」
「……とは言え」
言って、俺はニヤリと笑う。
「たしかにこれは、俺が一番喜ぶプレゼントだな……」
「……え……?」
ボソッとつぶやき、目を丸く見開くブロッサムを上目遣いで見る。
「バロータも中々良いチョイスをするな……ご丁寧に首輪まで用意してくれて……」
「な、なんでそんなハイエナみたいな目……つか首輪って!?」
「せっかく用意してくれたんだ。好きにさせてもらおうか……今晩」
「今晩って……うわあっ!!?」
逃がさないよう先手必勝、ソファに座っている彼に飛び掛かって馬乗りになる。
「逃げられると思うなよ」
「な、何をする気だ!?」
「ほう、口に出して言ってほしいのか。なら「やっぱりいい!」チッ」
まあいいか。慌てふためくこいつを見られれば。
「さて……いただいちゃうか」
「あ――や、やめろおおおおおお!!!」
Birthday present
――――
(ふふふふ……♪)
(鬼……悪魔……ドS……うう……っ(泣))
(……アユミ……おまえ、ブロッサムに何を……)
(何をしたかは想像に任せる。良いプレゼントありがとう、バロータ♪)
((マジで気になるーーー!))