英雄観察日記・第二巻
――――
PM13:00
生徒会室
「……それでは。今週の生徒会会議を始める」
『はい』
今日はすでに授業は終了した為、セルシアは生徒会を執行しています。
生徒会長という役柄、やはりやることが山積みなのでしょう。
「来月はクリスマスに向け、パーティーの準備があるが……そのパーティーについて疑問とかはあるか?」
「……生徒会長」
「なんだい?」
「あの、そこにいる彼女は……」
「ああ。彼女は本日生徒会に入った「俺は通りすがりのただの必殺仕事人だ」」
セルシアの言葉を遮ったのはアユミさんです。
必殺仕事人とは、何の仕事人でしょうか?
「アユミ……やはり生徒会には入らないのかい?」
「入るワケねーだろ!! なんで俺がテメーと一緒に仕事せにゃならんのだ!」
「単に僕が君と片時も離れたくないだけだけど」
「なおさら嫌だ! 今月だけで三回目だぞ!」
「やめてほしかったら入ろうよ。生徒会に」
「断固拒否する!!」
……どうやら生徒会入りは今回もダメだったようです。
何回か試みてますが……いやはや、道のりは遠いようです←
(((生徒会長もいつになったら諦めるんだろう……)))
――――
PM14:00
空き教室
「……誰も……いない、よな?」
「……みたいですね」
ブロッサムとフリージアは慎重に扉を開け、誰もいないことを確認すると素早く入り込みました。
各学科による課外授業も行われる時間帯、彼らは“ある学科”から、学院内を必死に逃げ回っているのです。
「疲れたー……どんだけタフなんだよ、あいつら……」
「まあ……それが彼らの習性とも言えますから」
「あそこまで行くと猛獣より怖ぇよ……」
ブロッサムやフリージアはこの時点でかなりお疲れ気味のようです。
……まあ、学院内を全力疾走しているのですからしかたないかもしれないですが。
ガタッ、ガタンッ。
「「!」」
「あれー? ここ開かないよ?」
「ってことは……二人はこの中か!!」
「げっ!?」
……隠れて約10分後。彼らはすぐに見つかったようです。
「早く来~~~いっ!! 二人が逃げるぞ~~~!!」
「嘘……しつこいぞ!?」
「早く逃げますよ、ブロッサム!」
「わかってる!」
彼らの追撃から逃れるべく、二人は窓(ちなみに三階です)から逃げ出しました。
捕まったら面倒ですしね←
バァンッ!!!
「開いた!! ……っていないぞ!?」
「先輩! 窓が開いてます!」
「しまった……逃げられた!」
「まだ近くにいるはずだ! 見つけ次第捕まえて取材だ!」
『おーーーっ!!!』
彼ら……ジャーナリスト学科の皆さんは意気込むとすぐに彼らを追いかけました。
多分アユミさん絡みでしょう。その手のスキャンダル好きは世界共通ですからね←
――――
PM15:30
音楽室
「……アマリリス。ブーゲンビリア。今日のレッスンはここまでにしておこう」
「あら? もうそんな時間?」
「時間が過ぎるのってあっという間だね」
音楽室ではアイドル学科のアマリリス君とブーゲンビリア君がディムラピス君の指導の下、レッスンに励んでいました。
「お腹空いたんだけど。なんかない? マネージャー」
「だから俺はマネージャーじゃねぇ!! 待ってろ、今用意が……」
「はーい。デリバリーサービス隊、とーちゃーっく♪」
「到着ーっ」
音楽室にやってきたのはシルフィネスト君とライラさんです。
休憩の菓子を持って届けに来てくれるのです。
「きゃあっ♪ 待ってました!」
「うわあいっ♪ シルフィーのお菓子~♪ 今日は何なの?」
「えへへ~。今日は紅茶のシフォンケーキだよ~♪」
「やった! シルフィーのお菓子、そこらのパティシエより美味しいんだよね~」
「む……前までは俺の方がいいって言ってたくせに」
悔しそうに唇を尖らせるディムラピス君。
弟に負けることを人一倍気にしていますからね。アマリリス君とは闇の生徒会時代からの付き合い、というのもありますし。
「んー……ディーム先輩のお菓子も美味しいけど……」
「マネージャーのお菓子は工夫がないっていうか……アレンジとかがない?」
「なっ……」
「ディーム……美味しく作らなきゃ、意味がない?」
「ライラもか!?」
「その点シルフィーのお菓子はアレンジとかあるし、毎日違う工夫も凝らしてあるから飽きないんだよね~♪」
「えへへ~♪」
「ぐぐ……っ」
うれしそうなシルフィネスト君と正反対なディムラピス君。
……和解したと聞きましたが、どうやら軽い嫉妬心などは消せないみたいです。
「ディーム……ドンマイ?」
「うるさいやい……」
――――
PM18:00
図書室
「……アユミさん。そろそろ帰りますよ」
「んー、了解」
何とかジャーナリスト学科との追跡から逃れたフリージアは再び図書委員の仕事をしています。
18時以降は図書室は閉められますから、彼もこの時間と同時に仕事を終えます。
「ココアありがと。しかもマグカップまでいただいちゃったし」
「べつに……約束は約束ですし。それにたまたまお金も余ってましたので」
「それでも飲食禁止の図書室で飲ませてくれる辺り、律儀で良い奴だよな。リージーは」
「……約束を保古したくないだけですよ」
「耳真っ赤なんだけど「気のせいです!!」えー?」
赤い顔のフリージアに小さく笑うアユミさんは、やはり相当意地悪なんでしょうね。
「ちょ……っ、なんで手なんか握るんですか!!?」
「いいじゃないか、べつに。悪いことしてるわけじゃないんだし」
「全然良くありませんよ!!」
――彼女が以下に手強いか……よくわかった気がする一瞬です。
――――
PM20:00
食堂
「あー……今日もジャーナリスト学科はしつこかった……」
「彼らは話題探しに必死だからね。僕からもほどほどにしておくように伝えておくよ。……何より変な噂が起ったら僕(とアユミ)が困るし」
「セルシア……おまえなんか、邪念みたいな何かを」
「セルシア様に邪念などありません!!!」
「ふん。どうだがな」
「……なんでおまえもいるの?」
食堂の一角ではブロッサムとセルシアたち。そして何故かエデン君がいました。
エデン君……相変わらず神出鬼没ですね。
「僕がいて悪いか」
「いや、悪いとかじゃなくて……つーかなんでプリシアナの制服着込んでんの!?」
「俺……背景に馴染み過ぎてて、気づかなかった……」
「アマリリスさんならともかく何故あなたが……多分アユミさん絡みでしょうけど」
「愚問だな。アユミを狙って何が悪い」
「大いに問題あるよ。先に言うけど、もしアユミに手を出したら……」
ガッ!!
言って直後、エデン君の手元付近にナイフが突き刺さりました。
テーブルから鈍い金属音が悲鳴をあげています。
「――月夜ばかりと思わないでね?」
とてつもない笑顔で腕を組みながらセルシアが言い放ちました。
ちなみにネメシアの報告によりますと、笑顔はかなり真っ黒だったとか、周りの皆さんの顔面が蒼白だったとかありましたが……。
……セルシアだから良しとしましょうか←
「……貴様、生徒会長のくせに他校の生徒会長を脅す気か」
「やだな。僕は僕の大切な人が心配なだけだよ? その人は勝手に決められた運命とヤンデレな誰かさんに狙われてたんだから」
「それに関しては反省している。だからこそ罪滅ぼしに僕はアユミと運命をともに!!」
「しなくていいから黙っててくれる? 追い出す前に、うっかり斬っちゃいそうだから」
とか言いますが、うっかりを強調しながらすでにセルシアは剣を抜いています←
「お、おい……セルシア……?」
「セルシア様……剣が……」
「おい、来たぞ……黒セルシアが……!」
ブロッサム、フリージア、バロータが揃って怯える中、ガタリと音を発てながらセルシアとエデンは立ちました。
「……決着着けるから表に出ろ。難攻不落の『黒』天使が」
「構わないよ。常識捨てた肉食獣さん?」
互いに真っ黒な笑みを浮かべて睨み合いながら、二人はそのまま外へ。
ネメシアの報告によると、近くにいたクラスメートたちは一斉に逃げ出したやら、人だかりが一斉に二つに割れたとか……生徒会長二人の威圧感がそれほど恐ろしいのでしょうか。
――――
PM21:00
アユミさんの居室
「……で。生徒会長同士による真夜中グランプリが開催されたって訳で……」
「ブロッサム! 意味わからない名前を出さないで、回復魔法をかけなさい!」
「そうだな。グランプリっつーか、むしろ決闘だし」
「バロータ! そういう問題ではありません!」
「――あのさ。言い合いもそうだが……なんで俺の部屋で集まるんだ?」
疑問を口にするアユミさん。
たしかに何故彼女の部屋で治療しているのか。
「僕はアユミの傍にいるんだッ!!!」
「ちっとも反省しないんだねぇ……?」
「おまえらもいい加減離れろや」
答え。アユミさんに引っ付いているからです。
「フリージア……おまえ、御主人様の教育をしているのか? ますます間違った方向に育ってないか?」
「セルシア様をペットみたいに言わないでくださ「でも方向性は間違っているよな」う……っ!」
アユミさんの言うことに返す言葉がないフリージアです。
「まあまあアユミちゃん。怒ると身体に悪いよ」
「怒ると身体に悪い……つまり、血圧上昇?」
「ジジイか。そもそも俺は平均100以下の低血圧だぞ」
「あなたホントに人間ですか?」
シルフィネスト君、ライラさんの言葉に返すアユミさん。
しかしフリージアの言う通り、歳の割に少々心配な血圧ですね。
「ねぇ、アユミ。僕にも構ってよ」
「僕にも構ってくれ」
「なんでおまえら二人に構わないといけないんだよ。そもそも何時だと思ってやがる」
「ブロッサムとは不純な交遊しているのに?」
「俺の都合で遅れるのは構わん!!」
「んなことは力説せんでよろしいッ!!!」
こんな大人数前でよく恥ずかしげもなく言えますね。
ブロッサムの羞恥心も限界を超えそうです←
「あーあー、お熱いねぇ。なあフリージア……」
「……………………」
「……? フリージア?」
「っ!? な、なんですか? バロータ」
「いや何も……ってかおまえこそアユミとブロッサムをじっと見て……」
「えっ、違っ……私はべつにブロッサムなんかうらやましくなんか……」
「……え? うらやましいって……?」
「あああッ!!! もう黙りなさい、バロータ!!!」
「理不尽過ぎだろ!!? って痛ェ!! ちょ……本の角で殴るなってーーーッ!!!」
逆ギレを起こしたフリージアに本の角で殴られるバロータ。
……なるほど。やはりフリージアもアユミさん絡みになると、冷静ではいられなくなるようです。
「ねぇ。いつまでアユミに引っ付いているの? ねぇ、いい加減離れてくれない?」
「ふん。断る。おまえこそアユミから離れろ」
「それこそ嫌だよ。……それとも何? 2ラウンド目に移行するかい?」
「望むところだ」
「オイィィィ!! やめろォォォ!! 生徒会長が揃って問題起こすな!」
アユミさんを挟んで再び火花を散らすセルシアとエデン。
ブロッサムのツッコミも、もはや悲鳴のようだったとか。
「…………、なあ、シルフィー。ライラ」
「「なあに~(何)?」」
「……この馬鹿共に囲まれて暮らす俺の悩みは、いったい誰に相談すればいい?」
「…………、難しーね~」
「……わからない……ノーコメント?」
アユミさんは揃って首を振るシルフィネスト君とライラさんに、再びため息をつきました。
……今夜は深夜まで暴走しそうです。
――――
さて……今日の日記はここまでにしましょう。
プリシアナ学院は今日も朝から深夜まで賑やかです。
――――
英雄観察日記・第二巻
――――
(……セントウレア様)
(なんでしょう、ネメシア)
(……まだまだ続きますか?)
(もちろんです(即答))
((これでセルシア様メモリアルがとうとう300巻越え……うっ……胃痛が……))
PM13:00
生徒会室
「……それでは。今週の生徒会会議を始める」
『はい』
今日はすでに授業は終了した為、セルシアは生徒会を執行しています。
生徒会長という役柄、やはりやることが山積みなのでしょう。
「来月はクリスマスに向け、パーティーの準備があるが……そのパーティーについて疑問とかはあるか?」
「……生徒会長」
「なんだい?」
「あの、そこにいる彼女は……」
「ああ。彼女は本日生徒会に入った「俺は通りすがりのただの必殺仕事人だ」」
セルシアの言葉を遮ったのはアユミさんです。
必殺仕事人とは、何の仕事人でしょうか?
「アユミ……やはり生徒会には入らないのかい?」
「入るワケねーだろ!! なんで俺がテメーと一緒に仕事せにゃならんのだ!」
「単に僕が君と片時も離れたくないだけだけど」
「なおさら嫌だ! 今月だけで三回目だぞ!」
「やめてほしかったら入ろうよ。生徒会に」
「断固拒否する!!」
……どうやら生徒会入りは今回もダメだったようです。
何回か試みてますが……いやはや、道のりは遠いようです←
(((生徒会長もいつになったら諦めるんだろう……)))
――――
PM14:00
空き教室
「……誰も……いない、よな?」
「……みたいですね」
ブロッサムとフリージアは慎重に扉を開け、誰もいないことを確認すると素早く入り込みました。
各学科による課外授業も行われる時間帯、彼らは“ある学科”から、学院内を必死に逃げ回っているのです。
「疲れたー……どんだけタフなんだよ、あいつら……」
「まあ……それが彼らの習性とも言えますから」
「あそこまで行くと猛獣より怖ぇよ……」
ブロッサムやフリージアはこの時点でかなりお疲れ気味のようです。
……まあ、学院内を全力疾走しているのですからしかたないかもしれないですが。
ガタッ、ガタンッ。
「「!」」
「あれー? ここ開かないよ?」
「ってことは……二人はこの中か!!」
「げっ!?」
……隠れて約10分後。彼らはすぐに見つかったようです。
「早く来~~~いっ!! 二人が逃げるぞ~~~!!」
「嘘……しつこいぞ!?」
「早く逃げますよ、ブロッサム!」
「わかってる!」
彼らの追撃から逃れるべく、二人は窓(ちなみに三階です)から逃げ出しました。
捕まったら面倒ですしね←
バァンッ!!!
「開いた!! ……っていないぞ!?」
「先輩! 窓が開いてます!」
「しまった……逃げられた!」
「まだ近くにいるはずだ! 見つけ次第捕まえて取材だ!」
『おーーーっ!!!』
彼ら……ジャーナリスト学科の皆さんは意気込むとすぐに彼らを追いかけました。
多分アユミさん絡みでしょう。その手のスキャンダル好きは世界共通ですからね←
――――
PM15:30
音楽室
「……アマリリス。ブーゲンビリア。今日のレッスンはここまでにしておこう」
「あら? もうそんな時間?」
「時間が過ぎるのってあっという間だね」
音楽室ではアイドル学科のアマリリス君とブーゲンビリア君がディムラピス君の指導の下、レッスンに励んでいました。
「お腹空いたんだけど。なんかない? マネージャー」
「だから俺はマネージャーじゃねぇ!! 待ってろ、今用意が……」
「はーい。デリバリーサービス隊、とーちゃーっく♪」
「到着ーっ」
音楽室にやってきたのはシルフィネスト君とライラさんです。
休憩の菓子を持って届けに来てくれるのです。
「きゃあっ♪ 待ってました!」
「うわあいっ♪ シルフィーのお菓子~♪ 今日は何なの?」
「えへへ~。今日は紅茶のシフォンケーキだよ~♪」
「やった! シルフィーのお菓子、そこらのパティシエより美味しいんだよね~」
「む……前までは俺の方がいいって言ってたくせに」
悔しそうに唇を尖らせるディムラピス君。
弟に負けることを人一倍気にしていますからね。アマリリス君とは闇の生徒会時代からの付き合い、というのもありますし。
「んー……ディーム先輩のお菓子も美味しいけど……」
「マネージャーのお菓子は工夫がないっていうか……アレンジとかがない?」
「なっ……」
「ディーム……美味しく作らなきゃ、意味がない?」
「ライラもか!?」
「その点シルフィーのお菓子はアレンジとかあるし、毎日違う工夫も凝らしてあるから飽きないんだよね~♪」
「えへへ~♪」
「ぐぐ……っ」
うれしそうなシルフィネスト君と正反対なディムラピス君。
……和解したと聞きましたが、どうやら軽い嫉妬心などは消せないみたいです。
「ディーム……ドンマイ?」
「うるさいやい……」
――――
PM18:00
図書室
「……アユミさん。そろそろ帰りますよ」
「んー、了解」
何とかジャーナリスト学科との追跡から逃れたフリージアは再び図書委員の仕事をしています。
18時以降は図書室は閉められますから、彼もこの時間と同時に仕事を終えます。
「ココアありがと。しかもマグカップまでいただいちゃったし」
「べつに……約束は約束ですし。それにたまたまお金も余ってましたので」
「それでも飲食禁止の図書室で飲ませてくれる辺り、律儀で良い奴だよな。リージーは」
「……約束を保古したくないだけですよ」
「耳真っ赤なんだけど「気のせいです!!」えー?」
赤い顔のフリージアに小さく笑うアユミさんは、やはり相当意地悪なんでしょうね。
「ちょ……っ、なんで手なんか握るんですか!!?」
「いいじゃないか、べつに。悪いことしてるわけじゃないんだし」
「全然良くありませんよ!!」
――彼女が以下に手強いか……よくわかった気がする一瞬です。
――――
PM20:00
食堂
「あー……今日もジャーナリスト学科はしつこかった……」
「彼らは話題探しに必死だからね。僕からもほどほどにしておくように伝えておくよ。……何より変な噂が起ったら僕(とアユミ)が困るし」
「セルシア……おまえなんか、邪念みたいな何かを」
「セルシア様に邪念などありません!!!」
「ふん。どうだがな」
「……なんでおまえもいるの?」
食堂の一角ではブロッサムとセルシアたち。そして何故かエデン君がいました。
エデン君……相変わらず神出鬼没ですね。
「僕がいて悪いか」
「いや、悪いとかじゃなくて……つーかなんでプリシアナの制服着込んでんの!?」
「俺……背景に馴染み過ぎてて、気づかなかった……」
「アマリリスさんならともかく何故あなたが……多分アユミさん絡みでしょうけど」
「愚問だな。アユミを狙って何が悪い」
「大いに問題あるよ。先に言うけど、もしアユミに手を出したら……」
ガッ!!
言って直後、エデン君の手元付近にナイフが突き刺さりました。
テーブルから鈍い金属音が悲鳴をあげています。
「――月夜ばかりと思わないでね?」
とてつもない笑顔で腕を組みながらセルシアが言い放ちました。
ちなみにネメシアの報告によりますと、笑顔はかなり真っ黒だったとか、周りの皆さんの顔面が蒼白だったとかありましたが……。
……セルシアだから良しとしましょうか←
「……貴様、生徒会長のくせに他校の生徒会長を脅す気か」
「やだな。僕は僕の大切な人が心配なだけだよ? その人は勝手に決められた運命とヤンデレな誰かさんに狙われてたんだから」
「それに関しては反省している。だからこそ罪滅ぼしに僕はアユミと運命をともに!!」
「しなくていいから黙っててくれる? 追い出す前に、うっかり斬っちゃいそうだから」
とか言いますが、うっかりを強調しながらすでにセルシアは剣を抜いています←
「お、おい……セルシア……?」
「セルシア様……剣が……」
「おい、来たぞ……黒セルシアが……!」
ブロッサム、フリージア、バロータが揃って怯える中、ガタリと音を発てながらセルシアとエデンは立ちました。
「……決着着けるから表に出ろ。難攻不落の『黒』天使が」
「構わないよ。常識捨てた肉食獣さん?」
互いに真っ黒な笑みを浮かべて睨み合いながら、二人はそのまま外へ。
ネメシアの報告によると、近くにいたクラスメートたちは一斉に逃げ出したやら、人だかりが一斉に二つに割れたとか……生徒会長二人の威圧感がそれほど恐ろしいのでしょうか。
――――
PM21:00
アユミさんの居室
「……で。生徒会長同士による真夜中グランプリが開催されたって訳で……」
「ブロッサム! 意味わからない名前を出さないで、回復魔法をかけなさい!」
「そうだな。グランプリっつーか、むしろ決闘だし」
「バロータ! そういう問題ではありません!」
「――あのさ。言い合いもそうだが……なんで俺の部屋で集まるんだ?」
疑問を口にするアユミさん。
たしかに何故彼女の部屋で治療しているのか。
「僕はアユミの傍にいるんだッ!!!」
「ちっとも反省しないんだねぇ……?」
「おまえらもいい加減離れろや」
答え。アユミさんに引っ付いているからです。
「フリージア……おまえ、御主人様の教育をしているのか? ますます間違った方向に育ってないか?」
「セルシア様をペットみたいに言わないでくださ「でも方向性は間違っているよな」う……っ!」
アユミさんの言うことに返す言葉がないフリージアです。
「まあまあアユミちゃん。怒ると身体に悪いよ」
「怒ると身体に悪い……つまり、血圧上昇?」
「ジジイか。そもそも俺は平均100以下の低血圧だぞ」
「あなたホントに人間ですか?」
シルフィネスト君、ライラさんの言葉に返すアユミさん。
しかしフリージアの言う通り、歳の割に少々心配な血圧ですね。
「ねぇ、アユミ。僕にも構ってよ」
「僕にも構ってくれ」
「なんでおまえら二人に構わないといけないんだよ。そもそも何時だと思ってやがる」
「ブロッサムとは不純な交遊しているのに?」
「俺の都合で遅れるのは構わん!!」
「んなことは力説せんでよろしいッ!!!」
こんな大人数前でよく恥ずかしげもなく言えますね。
ブロッサムの羞恥心も限界を超えそうです←
「あーあー、お熱いねぇ。なあフリージア……」
「……………………」
「……? フリージア?」
「っ!? な、なんですか? バロータ」
「いや何も……ってかおまえこそアユミとブロッサムをじっと見て……」
「えっ、違っ……私はべつにブロッサムなんかうらやましくなんか……」
「……え? うらやましいって……?」
「あああッ!!! もう黙りなさい、バロータ!!!」
「理不尽過ぎだろ!!? って痛ェ!! ちょ……本の角で殴るなってーーーッ!!!」
逆ギレを起こしたフリージアに本の角で殴られるバロータ。
……なるほど。やはりフリージアもアユミさん絡みになると、冷静ではいられなくなるようです。
「ねぇ。いつまでアユミに引っ付いているの? ねぇ、いい加減離れてくれない?」
「ふん。断る。おまえこそアユミから離れろ」
「それこそ嫌だよ。……それとも何? 2ラウンド目に移行するかい?」
「望むところだ」
「オイィィィ!! やめろォォォ!! 生徒会長が揃って問題起こすな!」
アユミさんを挟んで再び火花を散らすセルシアとエデン。
ブロッサムのツッコミも、もはや悲鳴のようだったとか。
「…………、なあ、シルフィー。ライラ」
「「なあに~(何)?」」
「……この馬鹿共に囲まれて暮らす俺の悩みは、いったい誰に相談すればいい?」
「…………、難しーね~」
「……わからない……ノーコメント?」
アユミさんは揃って首を振るシルフィネスト君とライラさんに、再びため息をつきました。
……今夜は深夜まで暴走しそうです。
――――
さて……今日の日記はここまでにしましょう。
プリシアナ学院は今日も朝から深夜まで賑やかです。
――――
英雄観察日記・第二巻
――――
(……セントウレア様)
(なんでしょう、ネメシア)
(……まだまだ続きますか?)
(もちろんです(即答))
((これでセルシア様メモリアルがとうとう300巻越え……うっ……胃痛が……))