英雄観察日記・第二巻
現代に生きる我がプリシアナの英雄たち。
そして……、その英雄を取り巻く仲間たち。
今回は我が弟とその友、そして彼らの日常をお教えしましょう。
――――
△月□日
AM7:30
食堂
「……おい、セルシア」
「なんだい? アユミ」
「今日は俺の勝ちだ。ロイストフラ」
「ロイヤルストレートフラッシュね。……残念。僕はストレートフラッシュ」
朝食時の食堂。隅のテーブルでセルシアとアユミさんがカードで今週の奢り役を決めています。
ちなみにこれはフリージアが朝の図書委員の仕事に出かけている時に行われます。
ばれたらきっとお説教ですからね←
「よっしゃ! 今週はセルシアが奢りな♪」
「まあいいけど……負けたし(というかアユミを独り占めできるから)」
普段はブロッサムやフリージアといるアユミさん。
さすが私の弟。チャンスは逃しません←
――――
同時刻
シルフィネスト君の居室
「んー! ちょーうまーい!!」
「超うまい……甘くてふわふわ……♪」
「やった~♪ 会心の出来だよ~♪」
部屋でいつも通り朝食を取るシルフィネスト君とライラさん。
今回はレオノチス君も一緒です。どうやらぐっすり眠りすぎて、朝食を食べそびれたとか……。
「シルフィーって、ホッント料理うまいよな~。ホットケーキとか、店のよりおいしいし」
「料理うまい……ふわふわで、スキ……♪」
「うーん。楽しいからやってるだけなんだけどね~」
仲良く談笑しながら食べている三人。
しかしシルフィネスト君の料理や菓子作りの才能も本当に素晴らしいものです。
実際差し入れいただいたリリィ先生も、パティシエ学科の推薦も希望されてましたし。
――――
AM9:00
教室(授業)
「う~……もう……食べられねぇって……ぐぅ……」
「おいアユミ! 起きろって!」
「アユミさん! 起きてください、アユミさん!」
教室にて各クラス授業中の時間。
そこではやはり……といいますか、アユミさんが即刻眠ってしまいました。
たまたま彼女の隣の席に座っていたブロッサムとフリージアが躍起になって(小声で)起こしています。
……確かその日の先生がリリィ先生だからでしょう←
「くすっ……眠ってる顔も可愛いね。アユミは」
「いや、言ってる場合かよ……」
「アユミちゃん、一度寝たら、よほどの事がない限り起きないもんね~」
「よほどの事……それほど、ぐっすり熟睡?」
三人のひとつ後ろの列にいたセルシアたち。
しかしさすがセルシア。どんな時でもアユミさんから目を離しませんね。
「うーん……もう食えねぇよぅ、フリージア……」
「なっ……」
「ブロッサム……勘弁……」
「えっ」
二人揃って硬直する。
アユミさんの寝顔+寝言がよほど効果的だったんですね←
「んー……」
「「…………」」
「――そこの三人」
「「! は、はい!?」」
硬直する二人の前で、なにやらドスの効いた低い声が。
慌てて前を向けば、いついたのでしょうね。リリィ先生が立っていました。
「二人とも……起こすなら、しっかり起こしていただかないと困ります……」
「「す、すみません……」」
「……それと……」
リリィ先生の威圧感が恐ろしかったようで、この時二人の顔は蒼白だったらしい。
そしてリリィ先生が未だに眠っているアユミさんに身体を向けます。
「アユミさん……いい加減、起きなさい……!!」
言葉を怒りに震わせながら片手を上げ――。
ズガァアアアンッ!!!
……彼女の頭部に、魔力を込めた一撃を叩き込みました← クレーターが出来上がり、それに頭部が沈んでいたとか……。
その破壊力は、学院全体が小さな地震を起こすほどです←
「……んぁー……? ……あれ……リリィ先生……?」
「……お目覚めですか?」
「はい。そりゃもうバッチリと」
机上にクレーターが出来上がる破壊力にも関わらず、アユミさんは至って普通に……いえ、頭部から血を流しながら目覚めました。
本人はケロッとしてますが←
「……毎回この方法を使わせないでください……」
「へーい」
そう言って戻るリリィ先生。
アユミさんもそれからは普通に授業を受けました。
『…………』
恐ろしい目をしているクラスメートたち(セルシア、ライラさん以外)を除いて、ですが。
――――
AM10:30
校庭(戦術系学科)
「……もらった!」
――キンッ!
「うわ、あっぶねー。……容赦ないな、セルシア」
「殺す気でいかなきゃ、君には勝てないからね」
「たしかにそれは事実だが……おまえが言うとエデンと被って見える」
「やだなあ。僕をあのヤンデレと一緒にしないでよ」
「腹黒いくせによく言うわ――っと!」
刀と剣の剣舞撃を繰り広げるアユミさんとセルシア。
この二人の戦い。いつ見ても三学園交流戦の決勝戦を思い出します。
「さー、賭けた賭けた! アユミVSセルシア! プリシアナ二大ボスの決闘だあああッ!!!」
『ウォオオオオオオッ!!!』
校庭の端の方では、二人以外の生徒全員と教員が、バロータ、レオノチス君主催の即席賭博を満喫していました。
二人の提案に彼らは全員乗り気です。基本皆さんはお祭り好きですからね。
「赤コーナー! 正義と罪は紙一重! 断罪の処刑女王、アユミ!! 勝率高めだよー!」
「青コーナー! プリシアナの天然御曹司、難攻不落の最強天使! セルシアァァァッ!!!」
二人の声に賭ける生徒が急上昇しています。
……それにしてもその呼び名。いったい何から決められたんでしょう?
「おい、レオ! アユミさんに千ゴールド!」
「僕もアユミさん!」
「私はセルシア様よ!」
「バロータ! アタシはアユミに!」
「セルシア生徒会長!」
こんな勢いで生徒たちは、賽銭箱を持つライラさんとブーゲンビリア君にお金を渡しながら盛り上がっています。
まあ……いつぞやのアユミさんとライラさんみたく、校庭のほぼ全域で死闘を繰り広げているからしかたないかもしれませんけど。
さて……これを書き終わったら、私もセルシアに200万を賭けに行きましょうか←
――――
同時刻
教室(術師系学科)
「えーっと……この術式ははこうなって……あれ? なんか違うような……」
「ブロッサム」
フリージアはブロッサムと一対一で勉強しています。
この日の術師系学科の皆さんは自習です。
だから皆さん好き勝手やっていますが……この二人は真面目に勉強中のようです。……雲行きは怪しいですね。
「あなたは……何故こんな簡単な問題も解けないんですか、本当に」
「うっ……す、すみません……」
「……謝るならまず教科書を見なさい。私も教えてあげますから」
口では厳しくとも、なんだかんだでブロッサムに甘いですね、フリージアも。
同じ光術師学科だから、というのもあるのでしょう。
「しかし……なんでまた勉強を教えてほしいと? あなたが高得点を取れるとは思えないのですが」
「ひどいな、おまえも!!」
フリージアにツッコミを入れたあと、「あー……」とどこか言いずらそうにしています。
「べつに深い理由はないんだけど……ただ、追いつきたいなー、って……」
「…………。それは、彼女に?」
フリージアの問いに、小さく頷くブロッサム。
「その……あいつは基本サボり魔だけどさ。なんだかんだで勉強できるし戦闘強いし、日常だって何でもできるし……」
「たしかに……どういうわけか、無駄にステータスが高いですしね。漫画の主人公並に」
「なんか……釣り合うもんがなくてアレかなーって……悔しい気もするし」
「魔法も呪いを外せば、爆発的に威力が上がりますからね。……要するにブロッサム。あなたはいつものネガティブモードを発動、というわけですか?」
フリージアが容赦なく指摘しますと、「うっ……」と再び言葉を尖らせるブロッサム。
……彼のネガティブモードは未だに健在ですね。
「まったく……卑屈根性だけは立派ですね。あなたという人は」
「『だけ』は余計だっつの!! ……しょうがないだろ。不安なものは不安なんだし」
ブロッサムはゴン、と机に頭を乗せ、そのまま突っ伏してしまいました。
「ホントに何でもできるし、黙ってればかっこよくも可愛くも見えるし……だから本当に自分でいいのかなって……俺より他の奴の方がいいんじゃないか、ってたまに思うし」
「…………。まあ、多少は理解できなくもないですが……」
「だろ? そうでなくてもセルシアとかエデンとか……レベル高い奴まで虜にさせる奴なんだし」
「う……それは……」
「ないってわかっていても不安になるだろ。つかアユミの場合、好き過ぎて不安にならない方がおかしい」
「それは……まあ、確かに……」
「独占欲駆られる度にこんなこと考えてさ……我慢する方が辛いんだけど」
「…………(じ、事実過ぎて否定できない……)」
二人は揃ってネガティブモードになってしまった。
ブロッサムは疎かフリージアすらも後ろ向きになるとは……アユミさん、どれほど愛されているんでしょうか?
……単に二人が恋愛下手、というのが最大の要因でしょうが←
そして……、その英雄を取り巻く仲間たち。
今回は我が弟とその友、そして彼らの日常をお教えしましょう。
――――
△月□日
AM7:30
食堂
「……おい、セルシア」
「なんだい? アユミ」
「今日は俺の勝ちだ。ロイストフラ」
「ロイヤルストレートフラッシュね。……残念。僕はストレートフラッシュ」
朝食時の食堂。隅のテーブルでセルシアとアユミさんがカードで今週の奢り役を決めています。
ちなみにこれはフリージアが朝の図書委員の仕事に出かけている時に行われます。
ばれたらきっとお説教ですからね←
「よっしゃ! 今週はセルシアが奢りな♪」
「まあいいけど……負けたし(というかアユミを独り占めできるから)」
普段はブロッサムやフリージアといるアユミさん。
さすが私の弟。チャンスは逃しません←
――――
同時刻
シルフィネスト君の居室
「んー! ちょーうまーい!!」
「超うまい……甘くてふわふわ……♪」
「やった~♪ 会心の出来だよ~♪」
部屋でいつも通り朝食を取るシルフィネスト君とライラさん。
今回はレオノチス君も一緒です。どうやらぐっすり眠りすぎて、朝食を食べそびれたとか……。
「シルフィーって、ホッント料理うまいよな~。ホットケーキとか、店のよりおいしいし」
「料理うまい……ふわふわで、スキ……♪」
「うーん。楽しいからやってるだけなんだけどね~」
仲良く談笑しながら食べている三人。
しかしシルフィネスト君の料理や菓子作りの才能も本当に素晴らしいものです。
実際差し入れいただいたリリィ先生も、パティシエ学科の推薦も希望されてましたし。
――――
AM9:00
教室(授業)
「う~……もう……食べられねぇって……ぐぅ……」
「おいアユミ! 起きろって!」
「アユミさん! 起きてください、アユミさん!」
教室にて各クラス授業中の時間。
そこではやはり……といいますか、アユミさんが即刻眠ってしまいました。
たまたま彼女の隣の席に座っていたブロッサムとフリージアが躍起になって(小声で)起こしています。
……確かその日の先生がリリィ先生だからでしょう←
「くすっ……眠ってる顔も可愛いね。アユミは」
「いや、言ってる場合かよ……」
「アユミちゃん、一度寝たら、よほどの事がない限り起きないもんね~」
「よほどの事……それほど、ぐっすり熟睡?」
三人のひとつ後ろの列にいたセルシアたち。
しかしさすがセルシア。どんな時でもアユミさんから目を離しませんね。
「うーん……もう食えねぇよぅ、フリージア……」
「なっ……」
「ブロッサム……勘弁……」
「えっ」
二人揃って硬直する。
アユミさんの寝顔+寝言がよほど効果的だったんですね←
「んー……」
「「…………」」
「――そこの三人」
「「! は、はい!?」」
硬直する二人の前で、なにやらドスの効いた低い声が。
慌てて前を向けば、いついたのでしょうね。リリィ先生が立っていました。
「二人とも……起こすなら、しっかり起こしていただかないと困ります……」
「「す、すみません……」」
「……それと……」
リリィ先生の威圧感が恐ろしかったようで、この時二人の顔は蒼白だったらしい。
そしてリリィ先生が未だに眠っているアユミさんに身体を向けます。
「アユミさん……いい加減、起きなさい……!!」
言葉を怒りに震わせながら片手を上げ――。
ズガァアアアンッ!!!
……彼女の頭部に、魔力を込めた一撃を叩き込みました← クレーターが出来上がり、それに頭部が沈んでいたとか……。
その破壊力は、学院全体が小さな地震を起こすほどです←
「……んぁー……? ……あれ……リリィ先生……?」
「……お目覚めですか?」
「はい。そりゃもうバッチリと」
机上にクレーターが出来上がる破壊力にも関わらず、アユミさんは至って普通に……いえ、頭部から血を流しながら目覚めました。
本人はケロッとしてますが←
「……毎回この方法を使わせないでください……」
「へーい」
そう言って戻るリリィ先生。
アユミさんもそれからは普通に授業を受けました。
『…………』
恐ろしい目をしているクラスメートたち(セルシア、ライラさん以外)を除いて、ですが。
――――
AM10:30
校庭(戦術系学科)
「……もらった!」
――キンッ!
「うわ、あっぶねー。……容赦ないな、セルシア」
「殺す気でいかなきゃ、君には勝てないからね」
「たしかにそれは事実だが……おまえが言うとエデンと被って見える」
「やだなあ。僕をあのヤンデレと一緒にしないでよ」
「腹黒いくせによく言うわ――っと!」
刀と剣の剣舞撃を繰り広げるアユミさんとセルシア。
この二人の戦い。いつ見ても三学園交流戦の決勝戦を思い出します。
「さー、賭けた賭けた! アユミVSセルシア! プリシアナ二大ボスの決闘だあああッ!!!」
『ウォオオオオオオッ!!!』
校庭の端の方では、二人以外の生徒全員と教員が、バロータ、レオノチス君主催の即席賭博を満喫していました。
二人の提案に彼らは全員乗り気です。基本皆さんはお祭り好きですからね。
「赤コーナー! 正義と罪は紙一重! 断罪の処刑女王、アユミ!! 勝率高めだよー!」
「青コーナー! プリシアナの天然御曹司、難攻不落の最強天使! セルシアァァァッ!!!」
二人の声に賭ける生徒が急上昇しています。
……それにしてもその呼び名。いったい何から決められたんでしょう?
「おい、レオ! アユミさんに千ゴールド!」
「僕もアユミさん!」
「私はセルシア様よ!」
「バロータ! アタシはアユミに!」
「セルシア生徒会長!」
こんな勢いで生徒たちは、賽銭箱を持つライラさんとブーゲンビリア君にお金を渡しながら盛り上がっています。
まあ……いつぞやのアユミさんとライラさんみたく、校庭のほぼ全域で死闘を繰り広げているからしかたないかもしれませんけど。
さて……これを書き終わったら、私もセルシアに200万を賭けに行きましょうか←
――――
同時刻
教室(術師系学科)
「えーっと……この術式ははこうなって……あれ? なんか違うような……」
「ブロッサム」
フリージアはブロッサムと一対一で勉強しています。
この日の術師系学科の皆さんは自習です。
だから皆さん好き勝手やっていますが……この二人は真面目に勉強中のようです。……雲行きは怪しいですね。
「あなたは……何故こんな簡単な問題も解けないんですか、本当に」
「うっ……す、すみません……」
「……謝るならまず教科書を見なさい。私も教えてあげますから」
口では厳しくとも、なんだかんだでブロッサムに甘いですね、フリージアも。
同じ光術師学科だから、というのもあるのでしょう。
「しかし……なんでまた勉強を教えてほしいと? あなたが高得点を取れるとは思えないのですが」
「ひどいな、おまえも!!」
フリージアにツッコミを入れたあと、「あー……」とどこか言いずらそうにしています。
「べつに深い理由はないんだけど……ただ、追いつきたいなー、って……」
「…………。それは、彼女に?」
フリージアの問いに、小さく頷くブロッサム。
「その……あいつは基本サボり魔だけどさ。なんだかんだで勉強できるし戦闘強いし、日常だって何でもできるし……」
「たしかに……どういうわけか、無駄にステータスが高いですしね。漫画の主人公並に」
「なんか……釣り合うもんがなくてアレかなーって……悔しい気もするし」
「魔法も呪いを外せば、爆発的に威力が上がりますからね。……要するにブロッサム。あなたはいつものネガティブモードを発動、というわけですか?」
フリージアが容赦なく指摘しますと、「うっ……」と再び言葉を尖らせるブロッサム。
……彼のネガティブモードは未だに健在ですね。
「まったく……卑屈根性だけは立派ですね。あなたという人は」
「『だけ』は余計だっつの!! ……しょうがないだろ。不安なものは不安なんだし」
ブロッサムはゴン、と机に頭を乗せ、そのまま突っ伏してしまいました。
「ホントに何でもできるし、黙ってればかっこよくも可愛くも見えるし……だから本当に自分でいいのかなって……俺より他の奴の方がいいんじゃないか、ってたまに思うし」
「…………。まあ、多少は理解できなくもないですが……」
「だろ? そうでなくてもセルシアとかエデンとか……レベル高い奴まで虜にさせる奴なんだし」
「う……それは……」
「ないってわかっていても不安になるだろ。つかアユミの場合、好き過ぎて不安にならない方がおかしい」
「それは……まあ、確かに……」
「独占欲駆られる度にこんなこと考えてさ……我慢する方が辛いんだけど」
「…………(じ、事実過ぎて否定できない……)」
二人は揃ってネガティブモードになってしまった。
ブロッサムは疎かフリージアすらも後ろ向きになるとは……アユミさん、どれほど愛されているんでしょうか?
……単に二人が恋愛下手、というのが最大の要因でしょうが←