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Ifストーリー

 Ifな出会い・シルフィー
【雪原で他パーティに入ったままだったら】

「さみー……さみーよー……」

「だからって引っ付くなよ……」

 ここは約束の雪原。
 プリシアナッツの実を確保せよ、というクエストのためにやってきた。
 ……が、さすが雪原。ものっそい寒いです。ブロッサムの羽毛は欠かせません←

「寒い。死ぬ。凍える」

「だからってくっつくな! 歩きづらいわ!」

「いいじゃん。べつによー」

 未だ抵抗続けるブロッサムに必死で食いつく俺。
 だって寒いのは嫌いなんだよ!

「……ん?」

「……? どうした?」

「声が聞こえる」

「は……?」

 必死で食らいついていると、風に乗って声が聞こえてた。
 ……と言っても、辺りはだだっ広い雪原地帯な為、多分別のエリアだろうけど←

「この先の方。……1……2……6、かな?」

「別のパーティか……? ……にしてもおまえ、よくわかったな」

「まあな」

 なにせ侍や盗賊は疎か、忍者、格闘家、カンフー、トリックスター。その他諸々(術師系以外)ほとんど修了済みだからな←
 忍者学科で培った経験が、自然と備わってるってわけ。

「なーんか穏やかっぽくないけど……どうする? 行くか?」

「……とか言いながら足を動かすなよ」

 いや、いつの間にか自然と動いちゃって←

「……わかったよ。行けばいいんだろ」

「うんうん♪」

 完全に諦めたらしいな。
 まあ……ダメだったら強制連行するだけだけどネ☆←

 ――――

 ――で。声を追ってきた俺とブロッサムは、隣のエリアへ。

「……ちょうどプリシアナッツの実がある方向だったな」

「一石二鳥だな。クエストもクリアして、とっとと騒ぎの野次馬もこなしますか」

「後半は違うだろ……」

 ブロッサムに呆れながらつっこまれたが、それすらも無視して先に進む。
 だって気になる以前に寒いからさ←

「……ん?」

 と、ここで俺の耳にいくつか音も流れ込んできた。
 金属音、風を切る音、打撃音――そして、獣の咆哮。

「……え?」

 最後の咆哮のすぐあと、水を激しくたたき付ける音が聞こえた。
 それと同時に聞こえる、いくつもの悲鳴。

「ブロッサム、まずい! どうやら連中は襲われている!」

「はあ!?」

「急がないとやばいな……駆けるぞ!」

「わ、わかった!」

 さすがブロッサム。適応力が高いな。
 順応の良さに感謝しつつ、俺は騒ぎの元へと走っていく。

「……! アユミ!」

「おお!? いたか!」

 どうやらさほど遠い距離じゃなかったらしいな。ブロッサムの指さす方向に顔を向ける。

「うげっ、デカッ!」

「……これはまた見事にやりあってんな」

 ブロッサムは獣を見て、俺はその獣とやり合うプリシアナの生徒を見てつぶやく。

「騒ぎの連中はあいつらか……」

 獣とやり合うパーティを見ながらつぶやく。
 赤い長髪のヒューマンと黒髪のフェルパーの男子が剣を持って戦い、その脇からセレスティアの女子が殴ったり蹴り技をお見舞いしている。
 その後ろではクラッズの男子がぱちんこで地味に援護し、緑髪のエルフの男子が風の魔法で回復したりしていた。

「レベル足りないのか、不利だな……あれ?」

 アララ? あれ? ……5人しかいない的な?←

「ブロッサム。もう一人どこかにいないか? たしかに6人いるはずなんだが……」

「それなら……多分、アレじゃないかな……?」

 ブロッサムはすぐ近くの枯木――の下を指さした。

「……あ」

 いたのは、パピルスを抱えて立ち尽くす、深緑色の髪のフェアリー。

「怖いよ~……あう~……っ」

 ……間違いない。声からして6人目だ。
 しかしまあ何と言うか……ヘタレで弱気だなー←

「おい」

「ぅっふぇいッ!!? ごめんなさあああいッ!!!」

「いや、まだ何も言ってねぇだろ!?」

「ふぇ……?」

 ブロッサムのツッコミに気づいたか、フェアリーの男子は俺らに恐る恐る視線を向けた。
 ……しかし、「ぅっふぇい」はないだろ←

「だ……誰…?」

「俺らは通りすがりの、クエスト達成のためにプリシアナッツの実を捕獲しにきたプリシアナ学院の転入生とそのお世話役だ」

「誰が世話役だ!! ってか結局全部説明してるし!」

「で? おまえらは何者だ」

「聞けよ!!」というブロッサムのツッコミを軽く受け流し、怯えが治まりつつある彼にたずねた。
 いや、モンスターのこともあるし、時間ないから。

「ボクはシルフィー……。リコリス先生に言われて、プリシアナッツの実を取りに来たんだ~」

「なんだ、一緒か……。ってことは、アレが……」

 俺が今も尚戦っているパーティを指させば「仲間だよ~」と肯定した。

「入学の時から一緒に組んでるの。みんなすっごく強いんだ~」

「……の割にはすげえ苦戦してっけど。おまえの援護がないから」

 俺がそう言えば「あう……」と何とも言えなさそうに俯く。

「ボク……モンスターとか怖くて……立ち尽くしてたの」

「怖くてって……おまえ、それでよく冒険者になろうとしたな」

「み~……」

 ブロッサムからもつっこまれた。
 ……まあツッコミせざるを得ないわな、うん。

「とはいえ。目の前で死なれるのも困るし……シルフィー」

「み?」

「学科はなんだ?」

「え? け、賢者学科……」

「良し。なら魔法は使えるな?」

「う、うん」

「さらに良し。ブロッサム」

「あ?」

「二人でトドメ。よろしく」

 俺が簡潔にそう言えば、目を丸くし、だけど次には嫌そうな顔をした。

「おまえ……まさか……」

「大丈夫。おまえらがしっかりすれば死にはしないから」

「あ! コラ!!」

 制止も無視し、走りながら抜刀する。
 あの五人もそろそろ限界らしい。連携が途切れ、全滅寸前っぽい。

「グォオオオッ!!!」

「きゃっ……!」

 獣が前足を上げ、ヒューマンに爪を振り下ろそうとした。

「……はあぁッ!!!」

 バシュッ!

「グォオオオッ!!?」

 寸前、俺がその前足を斬り落した。
 痛みのせいか、獣がじたばた暴れ出す。

「え……?」

「あなたは……」

「俺は通りすがりの、クエスト達成の為「しつこいわ!!」チッ……わーってるよ。トドメよろしく!」

 ブロッサムに遮られた……まあいいや。
 トドメのチャンスを逃すほどアホでもないし。

「落ちろ、光の鉄槌! シャイン!!」

「逆巻く火炎、すべてを飲み込め~! ファイガン~!」

 ブロッサムの光魔法とシルフィーの炎魔法が獣に炸裂した。
 ……思ったより強いな。獣はあっという間に燻ってしまう。

(魔力は高そうだなっては思ったけど。まさかこれほどとは……)

 ヘタレ性格はともかく……あの魔力は捨て難いな。

「うへぇ……た、助かった……」

「だ、大丈夫か? すごいダメージだらけだけど……」

「んー、疲れたけど平気。死んでる人もいないし」

 倒れ込んだクラッズに慌てて駆け寄りながら問うブロッサム。
 それに身体の関節の調子を確かめながら、セレスティアが答えた。
 ……どうやら無事らしいな。

「しっかし……ずいぶん苦戦してたけど。おまえらには荷が重たかったんじゃないか?」

「はあ? 違ェよ! こいつがもっとちゃんと魔法を使えば、ここまで苦戦すること……ッ!!」

 俺の言葉にフェルパーが、わめき散らしながらシルフィーに指さした。
 それにシルフィーがしょぼんと俯く。

「ちょ、ちょっと。いくらなんでも言い過ぎじゃ……」

「そうね。言い過ぎだわ」

「シルフィー、大丈夫か?」

「う、うん……」

「……完全にアンタの負けだね」

「う、ぐぐ……!!」

 ……こいつ(フェルパー)嫌われてんのか?
 散々な言いようなんだが。

「け、けどよ! 普段の戦闘すらロクにこなせないんだぞ!? いや、それはまだいい。ただ今回みたいに厄介な奴が相手だったらどうするんだよ!?」

 フェルパーのその言葉に「うっ……」と四人が言葉を詰まらせた。
 ……なるほど。奴は普段でも問題児ってわけか。
 ……こ・れ・は、チャーンス♪

「ご、ごめんなさい……」

「もう、それは聞き飽きたっつの! チッ……肝心な時にはしっかりしろよ……」

「……っ」

 フェルパーの言葉が相当きつかったらしいな。
 俯いたまま、鼻を啜るような音を出し始める。

「……おい。いくらなんでも言い過ぎだろ」

「な、なんだよ。じゃあおまえら組んでみろよ! こいつのことがよくわかっから!」

「じゃあ組んで相性よかったら貰っていい?」

「こんな奴で良ければ貰っていい……え?」

 返答を聞き、ここで俺はフェルパーの肩をガシッ! と掴みながら笑った。
 フェルパーとブロッサムが振り向いたあと、「じゃあ」とすぐににやりと目を光らせる。

「よっしゃ! じゃ。遠慮なく俺らがいただいちゃおーっと♪」

『え?』

 全員がフリーズした。シルフィーもキョトンとしながら俺を見る。

「ちょ、ちょっと待て! なんでそうなる「だってシルフィーと組んで、これで良ければ貰っていいんだろ?」うっ……!?」

 そう言えばフェルパーの言葉が詰まった。
 ……よし、勝った!

「よかった~♪ あいにく二人だけじゃ厳しいからな。性格はともかく、こいつの魔法の力は百人力だ♪」

「……アユミ。おまえ、まさかこの為に……?」

「やだなあ。貰っていいって言ったのはこいつだよ? ……ダメならサシで決闘して無理矢理ゲットするところだったけど」

「何サラっと恐ろしいこと言ってんの!!?」

 ブロッサムが盛大にツッコミを入れるが、むろん気にせず無視し、シルフィーの手を引っ張る。

「じゃあ、これからよろしくな、シルフィー」

「へ? う、うん……」

「よしよし♪ ……あ。おまえらコレやっから、気をつけて帰れよ」

 プリシアナッツの実と帰還札を渡し、「じゃあなー」とその場から立ち去る。

「じ……じゃ……さようならーーーッ!!!」

 いたたまれなくなったか、ブロッサムも逃げるように追いかけてきた。
 残された彼らはしばし呆然としていたが、しばらくしてフェルパーに呆れたりどう責任取るかを訴えていた。

 ――――

(しかしまあ見事に略奪したな……)

(漁夫の利ってやつだね~)

(ふふふ……ターゲット、確保! ……なんてな♪)

 ――――

(どうすんの? 仲間一人減っちゃったんだけど)

(しかもアンタお気に入りのシルフィーが取られちゃったしね)

(う、うるせーぞ! そこのセレスティアとエルフ!)

(あなたが原因だからしかたないじゃない。ってかホントにどうするの?)

(ふん! 何とかすりゃいいんだろ!? シルフィーの代わりとか………見つかるのか……?)

(ボソッと弱気なこと言わないでよ……)

(……ツンデレ学科って面倒)
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