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Ifストーリー

 偶然にして必然な出会い。

 けど、もし、その出会いがちょっと違ったら――。

 ――俺たちは、どうなっていたのかな?

 ――――

 Ifな出会い・アユミ1
【転校せずタカチホ義塾生のままだったら】

「……あれ? おまえ……誰?」

 見慣れない一団が校門の前に立っている。
 和服を基準にした制服……タカチホ義塾か?

「ん? ……ああ、おまえ、プリシアナの生徒だな」

「お姉ちゃん! 初対面なのに失礼だよ!」

 その中で長い黒髪を持つ小柄な、ある意味一番目立つ奴が俺に気づいた。
 ……男、かと思ったら違うらしい。同じ顔の女の子の発言からして姉=女のようだ。

「俺らは見ての通り、タカチホ義塾のモンだよ。プリシアナ学院の校長がどこにいるか知らねぇ?」

「もうっ、アユミったら……ごめんなさい。私たち、事情があって、校長先生に用があるの」

「ああ……そういうこと……」

 ああ……クエスト絡みかな?
 エルフの女子生徒の言葉に納得する。

「来いよ。案内するから」

 大きな用のなかった俺は、大聖堂の方まで案内してやった。
 ……あるのは補習くらいだけだし……←

「校長はたいていここにいるからな。今もチャイムのオルガン弾いているし」

「そうか。いやあ、ホンマ助かったわ。おおきにな」

「ありがとうなの!」

「いや……べ、べつに……礼を言うほどじゃないし……」

 礼を言われるのは慣れていない。
 そのせいか素直になれず、つい素っ気ない返事を返してしまう。

「ホントにありがとう! ほら、お姉ちゃんも」

「はいはい」

 妹に言われ、姉――アユミが前に出てくる。

「ありがと。セレスティア君?」

 上目遣い、そしてニコッと柔らかい笑顔。

(あ……笑うと、結構可愛いかも……)

 男っぽいけど、どっちかと言うと中性的って感じで、それがまた……。

「……じゃ、じゃあなッ!!!」

 そう言って脱兎の如く走り去る俺。
 ……ってさっきは何を考えたんだ、俺は!?

「アララ~、行っちゃった。……かーわいーっ♪」

 去り際、あいつ――アユミが何か言った気がしたが、今の俺は自分の早まる心臓を抑えるのに精一杯だった。

 ――――

「やれやれ……偉い目にあった」

「変な人だったね~……なんだったんだろ」

 とりあえずプリシアナッツの実は確保できたので、俺たちは(いろいろ回り道しながら)一旦プリシアナ学院に戻ってきた。
 いやあ……面倒なクエストだったなあ……。

(……あ。そう言えば)

 校舎を振り返り、ふとあることを思い出した。

「そろそろ行くで……ってアユミ、どないしたん?」

「先に行ってろ。ちょっと忘れもの思い出した」

「え? お、お姉ちゃん?」

 目を丸くする一同を無視し、すたこらと学院に戻った。
 ……ん? もちろん忘れ物はしていないぞ。
 ……忘れ“者”ならしたけど←

 ――――

「……あ。みーつけたー」

「……くぅ……」

 校庭を歩き、一際大きな木の下にいた、あのセレスティアを見つけた。
 ……どうやらぐっすり眠りこけているらしい。
 あどけなさの残る(可愛い)寝顔でスヤスヤと眠っている。

「うーん……さすが最先端を行くプリシアナ学院。――ロクロじゃないけど、俺好みの可愛い男が結構いるな~」

 力溢れるモノノフたちの土地柄か、何かとガタイのいい奴ばっかりなんだもん。
 そうじゃなくても志の高い、純粋で真面目な奴とか……。

「俺の好みはかっこよくも可愛い、素直になりたくてもなれない捻くれ者みたいな奴で、尚且つからかって初な反応する可愛い系の男の子がいいからなー」

 セレスティア君の髪をちょいちょいと引っ張って弄りながら、誰に聞かせるわけでもなくつぶやく。
 ……え? 声が大きい? 何、気にすることはない←

「……見た限り一年生だな。天性のツンデレの素質、誘うようなあどけなさ。……うーむ、実に素晴らしい」

 セレスティア君の頬を突きながらのコメント。
 ……あ? 変態っぽい? 何、気にす(以下略)。

「……すぅ……」

「…………」

 ……なんだろう。
 も・の・す・ご・く。襲いたくなるような顔は。
 元々、俺はSだとは自覚していたが、こいつ相手だと、なんか、こう……襲いたくなる←

「……見てないし寝ているし、いいよな?」

 こんな可愛い奴を放置している奴がいけないんだ←
 わけわからない理屈を並べながら、そっと彼の頬に手を添えた。

「ぅ~……」

 くすぐったさに身をよじったが、またスヤスヤと眠りはじめる。
 ……ホントにこいつは男か? いや、それ言ったら俺も性別疑われるんだけど←

「……可愛い、だけじゃないな」

 小さく笑いながら、顔を上げさせて……。

「……ん」

 起こさないよう、触れるだけのキスをした。
 ……あ。意外と病み付きになりそう。

「ん……っ……ふぁ……?」

 柔らかいソレに堪能していると、透き通った青と目が合った。
 始めはぼーっとしていたが、目をぱちぱちとしばたたき、そして目が盛大に見開かれた。

「な……!? 何やって……!」

「ちっ。もうちょっと楽しみたかったのに」

 舌打ちするが、顔を真っ赤にしつつ後退りするセレスティア君に、ついにやけてしまう。
 ……やっぱり可愛い♪

「おまえ……い、今……っ」

「あ、キスか。何? 初めてだった?」

「な……ッ!!?」

 意地悪く笑いながらたずねれば、もう耳まで赤くなっている。
 ……わー……可愛すぎる←

「お、おまえ……アユミ、だったっけ。なんで……」

「んー? そいつは「おー、アユミ! そこにおるんか?」…………」

 迫ろうとした瞬間――カータロの声が聞こえた。
 ……おい。空気読めや、バカータロ。

「……あれ? 何しとるんや?」

「べつに。時間か?」

「せや。まったく……忘れ物一つに何分かけとるんやか……」

「はよ行くでーっ」とカータロが俺を催促した。
 渋々だが、俺も立ち上がる。

「時間だからもう行くわ。じゃあな」

「あ、ああ……」

「……あ。それと……」

 カータロが向こう向いている隙に、再びしゃがみ込み、彼の耳に素早く耳打ちする。

「え……っ」

「じゃあな。可愛いセレスティア君」

 ニコッと最後に笑いながら、カータロの跡を追った。
 ちらっと視線をたどれば、赤みある顔で俺を見ている。

「うん、うん。……楽しみにしとくか」

 ぺろりと舌なめずりをしながら、俺はいつかとなる約束にニヤつくのだった。

『――今度会ったら、名前教えろよ』

 ――――

「カータロ」

「ん? なんや?」

「……おまえ。――後で覚えてろよ♪」

「な、なんで、首を切る仕草しとんねん……!?」

 ――――

「な、何なんだよ……なんで、俺……こんなにドキドキしてんだよ……っ?」
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