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黒伝説

 セントウレア校長っていろいろ謎過ぎるんだけど……。

 過去とかいったい何をやってたワケ!?

 ――――

「……なあブロッサム。ちょっと聞きてぇんだけどよ」

 ある日のこと。
 それはバロータ、レオノチスのとある一言から始まった。

「セントウレア校長ってさ……謎過ぎじゃない?」

「……は?」

 ……意味がわからないんだが。
 何が言いたいんだ?

「……えーっと……?」

「あ、いや……ちょっとこれを見てな……」

 そう言ってバロータが出したのは……ネメシアの日記とスノー家の眼鏡。
 ……おい、それは確か、校長に渡したはずだが?

「なんでおまえが……」

「あ、これは第二巻の方な。眼鏡共々、盗んだワケじゃないから」

「いや、第二巻もどこで手に入れたんだよ!?」

 そもそも第二巻なんてあるのか!?

「たまたま大洞窟に宝探しにいったんだけどさ。その時に発見したんだ」

「はあ……つーかおまえら、なんで二人で」

「いや、暇だったから。で探索してたら」

「壁の隅っこに落ちてたんだよね!」

「落ちてたって……」

 これ、スノー家の記録帳だろ? なんでそんな雑に捨てられてんだよ!?

「気持ちはわかるけどよ……でもこれ、相当いわくつきっぽいんだよな」

「は……?」

 またも意味不明なことを……。
 そう思っていると「中を見てみろよ」と言われた。

「ったく……何なんだよ、いったい……」

 しかたないので眼鏡をかけ、日記帳を開いて見てみる。

「……え?」

 開いたページに書かれる……血のように赤い文字、所々に散った鮮、血……。

 バンッ!!!

「……え? 何、今の……」

 両手で叩きつけるように強く閉じ、もう一度、恐る恐る先程のページを見る。
 ……やっぱり先程と同じだ。再び日記を閉じ、二人に視線を移す。

「……何? この殺人の証拠品みたいに血みどろな日記帳は!?」

 なんで鮮血が着いてるの!? なんで赤い字なの!?
 ものすごく怖いんだけど!!?

「うん、ボクらも開いたらびっくりした」

「まったくだ……ちなみによく調べたら、八割は赤インクだった」

「インクかよ! って残りの二割は本物か!?」

 なんなんだよ、いったい!
 どっちにしろ怖いけど!←

「……まあ、とにかく読んでみろよ。いろいろとすごいから」

「えー……」

 いろんな意味で読みたくねぇ……。
 ……とはいえ気になるから読むけど←

『――今日も家庭教師の一人(嫌みな人物)がやめた。やはり原因はセントウレア様だろう』

『ウィンターコスモスの当主であらせられるセントウレア様の才能は素晴らしく伸び続けている』

『……が。何故だろうか。それと同時に黒い何かまで育ってる気が……いや、相手はセントウレア様。そんなことはない……はず』

 ……それ、もう黒属性が付いてたんじゃ……。
 そんなツッコミを胸に、次のページをめくる。

『なんてことだ……使用人の一人が、セントウレア様の大切なブローチを破壊してしまった……。さらには隠蔽工作までしようとしている』

『私に見つかったが運の尽き……後日呼び出して公開処け……じゃなくて、制裁を加えようと思う』

「え? なんでそんなこと書いてんの? これ日記だよね?」

 しかも明らかに処刑って書こうとしているよな?
 ちゃんと最後まで消せよ!

『後日呼び出し、いざその人物に鉄槌を落とそうと……ところがだ。その時、セントウレア様が現れたのは』

 え? ここで校長……?

『いつのまにか現れたセントウレア様は笑顔だ。……なのに何故だろうか。あの方の背後に――魔王が存在しているように見える』

『セントウレア様は笑顔で近づき、そして彼の肩に手を掛け』

 書ききれなかったか、ここで文章が終わっている。
 嫌な予感をしつつ、隣のページをめくり……。

『絶対禁則事項』

 と、残りのページを無理矢理すべて破り取り、最後のページに赤インク&流血をイメージさせる書体ででかでかと書かれている。
 ……って……。

「こ、怖ァァァァァァッ!!!」

 な、何このめっちゃくちゃ怖ェ日記!! なんで殺人のダイイングメッセージみたいに書かれているワケェェェッ!!?
 つーか、ネメシアの身に何があった!?

「おい! ホント、これいったい何なんだ!?」

「いや、見ての通り引きちぎられているからわからないし」

「少なくても、意味深な何かはあった。ってことだな」

 少なくねぇだろ、絶対!
 あと意味深で済まされるレベルじゃない気がする!

「……とまあこんな風に、スゴイヤバめの日記なんだけど」

「気にならないか? その……セントウレア校長がその使用人に何をしたのか」

「気になる以前の問題じゃね?」

 あのネメシアが流血沙汰(流血じゃないけど)で禁句と唱えているんだぞ?
 ……校長にばれたら絶対ヤバイわ!!

「どうすんだ、コレ……。殺人鬼になった気分なんだけど」

「だからブロッサムも共犯にしたんだけどね。二人じゃ怖いし。やっぱり、校長怒ってその人を地獄送りにしたのかな?」

「おい、レオ。今サラっととんでもないこと言ったよな!?」

 完全に俺、とばっちりじゃねーか!!
 なんで俺、こんな目に!!?

「俺の予想は……やっぱセルシアみたいに黒笑顔で精神的な攻撃をかけたと思うな」

「えー。文面から察して、強力な魔法で倒したんじゃないの? ブロッサムはどう思う?」

「え、俺も!? あー……想像も絶するようなヤバめのお仕置き……とか?」

 急に話を振られ、とりあえず答えとく。
 ……うん、まあ俺も気になってはいたし←

「ブロッサム、校長に限ってそれはありえないだろ」

「でも、セルシア君の行動の九割は許しているし……案外有り得ると思うけど」

「……そういや、セルシアがべたついてる時は止めないな。校長……」

 なんだかんだで校長の行動パターンを思い出してつぶやく。
 この辺りからバロータ、レオ、俺の話はだんだんエスカレートし――。

「やっぱ黒笑顔と黒属性で相手の心をぽっきり折ったんだと俺は思うな!」

「でも校長だって人間だし、相手を力ずくでボコボコにしたんじゃない? それだとボク、笑えそうなんだケド」

「セルシアの兄だから、可能性はなくもないが……つーかセルシアの黒属性は、確実に兄譲りだろ」

「あ。それは間違いないな!」

「セルシア君、なんだかんだでお兄ちゃんっ子っぽいしねー」

「くっついてる内にすべて遺伝した、か……腹黒いところさえなければ良いのに……」

「……ハッ! セルシア君も将来は、セントウレア校長みたいな腹黒魔王になるんじゃない!?」

「おお、たしかに!」

「やめろ! 冗談じゃない!!」

 ヒートアップする二人にツッコミを入れながら、いずれは校長並に恐ろしくなるだろう、セルシアの未来像に背筋に寒気を感じた。

「――ほう。皆さんは私やセルシアのことをそんな風に見ていましたか」

 ――刹那、寒気を通り越し、背筋が凍りついた。
 三人一斉に石化状態になる。

「皆さん、タカチホに伝わるこの諺を知ってますか? 壁に耳あり、障子に目あり――背後に本人あり、と」

 マジで軋む首を動かし、恐る恐る背後に振り返る。

「皆さん、冒険者たる者……そんなことではいけませんよ?」

 背後にいたのは、やはり校長だった。
 すみません、一言いいですか? ……いったいいつ来たんですかァァァ!!!←

「こ、校長先生……」

「い、いったい、いつ来たんですか……?」

 レオとバロータも顔を青ざめている。
 校長はにこにこと……だけど背後に魔王アゴラモート(幻影)を召喚しながら答える。

「ええっと……ブロッサムにネメシアの日記を渡した辺りからですね」

「それ、ほとんど最初からですよね!?」

 どれだけ最初の方にいたんですか!? ホントに!!

「ええ。最初からいました。だからあなたたちの会話はすべて聞いているのですよ?」

 ピシッ……。

 笑顔で言われ――俺たちは空気がひび割れたような音が聞こえた。

「ふふふ……私はおろか、セルシアにまであんな風に言うとは……少し、教育的指導をしなければなりませんね?」

「あ、あの……俺ら、悪気があった訳じゃ……」

「言い訳無用です」

 即答で遮られ、校長は俺たちに黒い笑顔を向けた。

「では皆さん……動いてはいけませんよ?」

「え? ちょ、校長待っ――」

 ――数秒後、プリシアナ学院に雷鳴と俺たちの悲鳴が響き渡った。


 黒伝説

 ――――

((校長怖い校長怖いコウチョウコワイ……))

(……おい。バロータとレオがすごいうなされているんだが)

(聞かないでくれ……頼むから……)
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