英雄観察日記
プリシアナにいる四人の我が生徒。
現代に生きる英雄とも呼ばれる四人にも……それぞれ日常があります。
本日は私とネメシアが見聞きした彼女たちの様子をお教えしましょう。
――――
○月×日
AM7:00
ブロッサムの居室
「……お……ま、えは~~~ッ!!!」
「んん……っ。寒い~……」
「ば、バカッ! 擦り寄るな!」
布団の中でブロッサムに抱き着くアユミさん。純情なブロッサムはそれにすら顔を真っ赤にさせています。
冬が近づくこの時期、寒さが苦手なアユミさんはほとんど毎日彼のベッドに忍び込んでいます。
「んぅ……っ」
「ちょ……っ! は、恥ずかしいって……!」
腹立たしい程に(おっと、ついうっかり←)アユミさんに好意を抱くブロッサムは、猫のように擦り寄る彼女にはなんだかんだで許しています。
毎日よく飽きないものですね。
――――
同時刻
シルフィネストの居室
「すぴ~……」
マイペースなシルフィネスト君はまだ眠っています。
彼らしいと言えば彼らしいですね。
「……ん。ふわあ……」
と、ここで彼の隣で、半年前我がプリシアナ学院に転入しましたライラさんが目を覚ましました。
シルフィネスト君に懐いてる彼女は、ほとんど彼とは片時も離れずにいるみたいです。
「シルフィー、起きて」
「……み~……ん……? ライラちゃん?」
「うん。シルフィー、お腹すいた」
今ではシルフィネストさんを起こす役目となっている彼女。
シルフィネストさんも彼女なら一発で起きるみたいです。
「み~……ライラちゃん、おはよ~……」
「おはよう。ねぇシルフィー、お腹すいた」
「うん、わかった。何食べる?」
「ホットケーキ」
「いいよ~」
料理が得意なシルフィネスト君は、部屋でライラさんと朝食を取ってます。
昔はマイペースに遅刻していましたが……今では彼女のおかげで遅刻無しです。
――――
AM10:00
校庭(戦術系学科)
「よ……っと。ライラ、相変わらず早ェな」
「……アユミも。やっぱり強い」
「ダテにアガシオンと戦ったワケじゃないから、な!」
戦術系学科の二人はよくペアを組みます。何故なら彼らの強さについてこれる生徒が他にいないからです。
アユミさんの一撃、ライラさんの速さは当学院でもトップですからね。
ついでに付け加えますと、二人は力に優れたバハムーンやドワーフ。速さに優れたフェルパーやクラッズより強いですから、並の生徒では敵いません。
「ぎゃあッ!! 流れ弾(居合)が飛んできた!!」
「うぉおおお!! 蹴りで飛んできた石があああ!!!」
「やべえ、逃げろ! 巻き添え喰らうぞ!!」
英雄二人の攻撃は校庭の大規模に及びます。
なにせアユミさんの抜刀術、ライラさんの格闘技はアゴラモートすらも怯ませる威力ですから。
……さて。ロアディオス君に校庭の修理を頼みませんと。
――――
同時刻
教室(術士系学科)
「……では……各自、調合に入ってください……」
この日はリリィ先生による調合の授業。
簡単な魔法薬の作り方ですが、一歩間違えれば不良品ですので注意が必要な授業です。
「るんるる~ん♪」
「えっと……ホワイトヒール草とマジックレッド草と……あれ? これ……なんだっけ……?」
知識、実力ともにトップなシルフィネスト君は鼻歌交じりで余裕です。
反対にブロッサムは毎回教科書と睨み合います。さらに頭に疑問符を山のように出して。
「えっと量はこれで……あれ。順番どうだったっけ? ……う~~~……ッ!!!」
教科書、ノートを見ても頭を抱えるブロッサム。
……実技は申し分ありませんのに、何故知識が一考に身につかないのでしょうか?
(……どうせ全部混ざるし、大丈夫だろ。……多分)
――――
それから約数分後。
「リリィ先生~。できました~」
一番早くできたのはシルフィネスト君です。
まあこれは毎回のことなので、今では驚くことではありません。
「……たしかにできていますね……。分量……質……すべて、完璧ですよ……」
「やった~♪」
「よくできました……」
リリィ先生に褒められ、シルフィネスト君はうれしそうでした。
彼は素直で良い子ですからね。
「ただ~いま~♪」
テクテクと歩いて(実験中ですから、飛んで埃でも入るといけませんからね)席に戻ります。
……が、魔術カリキュラムの優等生たる彼は怪訝な顔をします。
「……ブロッサム君。何してるの……?」
「何って……ち、調合だけど?」
「……ブロッサム君」
言って、シルフィネスト君はブロッサムの持つ毒々しい赤紫色の液体を指さします。
ちなみにフリージアの情報によりますと、すでに気泡が溢れ出し、さらに奇怪な音もしていたとか←
「……明らかに、全部間違ってるよね?」
「……えっと……いや、これは……」
「ブロッサム君~……君だけ毒薬になってる気がするんだけど~」
「ど……毒薬じゃねぇよ!!」
シルフィネスト君の言葉に反論し、その拍子で持っていた薬品を(危険性MAXの)魔法薬に落としてしまいました。
――ドォオオオンッ!!!
……結果。ブロッサムの魔法薬(という名の第一級危険物)は彼を巻き込んで爆発しました。
怪我人が彼一人だけで済んだことはもはや奇跡ですね。
「……ゲホッ、ゲホッ……」
「あー……」
制服や髪、顔は煤だらけ。
しかし爆発に巻き込まれてそれだけで済んだのですから良い方でしょう←
「だから言ったのに~……」
「だ、だって……」
「――ブロッサム君……」
「うぉおおお!!?」
背後に近寄っていたリリィ先生に驚くブロッサム。
ですが一番驚いたのは、リリィ先生から魔王並に黒いオーラが見えたこと、だとか……。
「あなた……何回同じ過ちを繰り返せば気が済みますか……?」
「ち、違っ……あ、いや、すみません! はい!」
リリィ先生の殺気に孕んだ瞳が恐ろしかったらしく、ガタガタと震えていたとか←
「……後で、補習の知らせのプリントを渡しますね……」
「……はい」
もはや彼に逃げ場はありません。ブロッサムはその時、がくりと肩を落としていたとか。
ちなみにこの日、来年度の新入生がプリシアナ学院に見学に来ていた為、全員の感想文に彼のことが書かれていたようです。
――――
PM12:30
学生寮・食堂
「リージー、チューリップ……こいつ、またやったのか?」
「ええ……まあ……」
「まあ毎度のことだしね~」
「そうだね。それにブロッサムの成績、もう学校中に知れ渡ってるし」
「セルシア、うるさい……」
「シルフィー、ホットケーキ」
「はいは~い♪」
「あ! ライラ、ずるいぞ! バロータ、ブーゲンビリア。なんかない?」
「いや、俺持ってねぇって」
「私も持ってないわよ」
「チェ~」
この時間、大半の生徒は昼食を取ります。
アユミさん、セルシア、レオノチス君たちも、どういう訳かいつも一緒に固まって食べます。
多分セルシアがアユミさんを発見、半ば強引に割り込み、そこをレオノチス君たちが駆け込んでいるのでしょう。
「はあ……しかし、おまえ……マジで不器用なのな」
「まあクッキーを5分で炭に変えてしまう、ある意味負の錬金術を扱ってるからね」
「錬金じゃねぇよ!」
学生らしく、たわいない話で盛り上がります。
……たまにアユミさん絡みでややこしくなりますが←
――――
PM16:00
「ブロッサムー。暇だから部屋に行っていいか?」
「暇だからってなんだよ、そりゃ!?」
授業がすべて終了し、この時間帯は生徒の皆さんがそれぞれ自由に過ごします。
アユミさんはたいていブロッサムと一緒です。
……私としては、たまにはセルシアと一緒にいていただけませんでしょうか?←
「……で? 俺の部屋でいったい何をする気だ?」
「ブロッサムに甘えたい。以上」
「それだけ!? いくらなんでもそんな……」
「……わかった。んじゃフリージアに甘え「お、俺はそんな用事ねーし!! べつに来るくらいならいいぞ!?」よっしゃ!」
ブロッサムの扱いに慣れているアユミさんはあっさり彼の決意を変えます。
……相変わらず人を手玉に取るのがお得意な様です。
「ふっ♪ じゃ、行こうか。早く体温感じさせてくれ♪」
「ご、誤解を招く発言をするんじゃない!!」
周りを気にせず相思相愛なお二人。
……しかし私としてはセルシアと結ばれていただきたいのですが←
「じゃあ行こうか♪」
「はいはい……はあ……」
ため息をつきながら、ブロッサムはアユミさんと部屋に戻ります。
……後で部屋の様子を見に行きませんと←
――――
同時刻
「はい、ライラちゃん。今日はチーズケーキにしてみました~♪」
「わあ……♪」
シルフィネスト君(とライラさん)の部屋では、彼がライラさんといつものお茶会をしています。
ほとんど毎日やっていますから、この部屋は毎日甘い香りがする(リコリス先生いわく)みたいです。
「……おいしいっ♪」
「わ~い♪ よかったよかった~♪」
甘い物好きのライラさんはシルフィネスト君のケーキやお菓子がお気に入りみたいです。
……今度パティシエ学科の推薦状を渡しておきましょうか。
「ライラちゃんのいれる紅茶もおいしいよ~。僕じゃ、こうはいかないし」
「そう、かな? 私は、シルフィーのケーキの方がおいしいよ? シルフィーのお菓子……一番、スキ」
「そう? えへへ~♪」
周りから見てもわかるくらい幸せそうに笑っています。
聞くだけでも非常に微笑ましいお二人です。
――――
PM21:00
夕食もセルシアたちと召し上がり、その後各自居室に戻ります。
ちなみに学院は基本22時には消灯です←
「……ん、ふぅ……もうちょっとくっついてくれよ」
「あのな……泊められるだけマシと思えよ」
冬が近いこの季節。アユミさんはブロッサムのベッドで、彼を抱き枕にして寝ています。
ブロッサムも根負けしたのか、最近じゃ特に否定もしないで招き入れています。
「あったかぃ……やっぱり、ブロッサムの傍が一番落ち着く……」
「……。言っても何もでないぞ……」
……そうは言いますがブロッサム。あなた内心うれしいのでしょう?←
「ほら、もう寝るぞ。……くっついても、べつに嫌じゃないし」
「……ん。じゃあ遠慮なく……」
アユミさんが抱き着き、寝静まったのを確認しますと、ブロッサムもつられるように目を閉じました。
なんだかんだはありますが、最終的結論としましては二人は仲がよろしいです。
私としましてはセルシアと結ばれて欲しいですが(個人的に大変重要なことなのでもう一度)。
――――
同時刻
シルフィネストの部屋
「……あふぅ……」
「ライラちゃん、眠い?」
「うん……」
「じゃあそろそろ寝よっか~♪」
こちらはこちらで就寝準備にかかっています。
アユミさんとブロッサム同様、仲良く一緒に眠ります。
「眠い……ふわぁ……」
「ん……シルフィー……」
「ん~……?」
「おやすみ……くぅ……」
「うん……おやすみ~……すぅ……」
二人は横になりますと、すぐにぐっすりと休み始めました。
やはり二人はいつも微笑ましいですね。
――――
さて……とりあえず彼らの一日は終了しました。
ですがこの先どう転ぶかわかりませんからね。
彼らの行く先に、始原の神々の加護があらんことを……。
英雄観察日記
――――
(……セントウレア様)
(どうしました、ネメシア)
(……いつまでこの観察日記は続きますか?)
(……いつまででしょう?)
(…………(ああ……偵察続きとセントウレア様の視線と笑顔で胃が痛い……))
現代に生きる英雄とも呼ばれる四人にも……それぞれ日常があります。
本日は私とネメシアが見聞きした彼女たちの様子をお教えしましょう。
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○月×日
AM7:00
ブロッサムの居室
「……お……ま、えは~~~ッ!!!」
「んん……っ。寒い~……」
「ば、バカッ! 擦り寄るな!」
布団の中でブロッサムに抱き着くアユミさん。純情なブロッサムはそれにすら顔を真っ赤にさせています。
冬が近づくこの時期、寒さが苦手なアユミさんはほとんど毎日彼のベッドに忍び込んでいます。
「んぅ……っ」
「ちょ……っ! は、恥ずかしいって……!」
腹立たしい程に(おっと、ついうっかり←)アユミさんに好意を抱くブロッサムは、猫のように擦り寄る彼女にはなんだかんだで許しています。
毎日よく飽きないものですね。
――――
同時刻
シルフィネストの居室
「すぴ~……」
マイペースなシルフィネスト君はまだ眠っています。
彼らしいと言えば彼らしいですね。
「……ん。ふわあ……」
と、ここで彼の隣で、半年前我がプリシアナ学院に転入しましたライラさんが目を覚ましました。
シルフィネスト君に懐いてる彼女は、ほとんど彼とは片時も離れずにいるみたいです。
「シルフィー、起きて」
「……み~……ん……? ライラちゃん?」
「うん。シルフィー、お腹すいた」
今ではシルフィネストさんを起こす役目となっている彼女。
シルフィネストさんも彼女なら一発で起きるみたいです。
「み~……ライラちゃん、おはよ~……」
「おはよう。ねぇシルフィー、お腹すいた」
「うん、わかった。何食べる?」
「ホットケーキ」
「いいよ~」
料理が得意なシルフィネスト君は、部屋でライラさんと朝食を取ってます。
昔はマイペースに遅刻していましたが……今では彼女のおかげで遅刻無しです。
――――
AM10:00
校庭(戦術系学科)
「よ……っと。ライラ、相変わらず早ェな」
「……アユミも。やっぱり強い」
「ダテにアガシオンと戦ったワケじゃないから、な!」
戦術系学科の二人はよくペアを組みます。何故なら彼らの強さについてこれる生徒が他にいないからです。
アユミさんの一撃、ライラさんの速さは当学院でもトップですからね。
ついでに付け加えますと、二人は力に優れたバハムーンやドワーフ。速さに優れたフェルパーやクラッズより強いですから、並の生徒では敵いません。
「ぎゃあッ!! 流れ弾(居合)が飛んできた!!」
「うぉおおお!! 蹴りで飛んできた石があああ!!!」
「やべえ、逃げろ! 巻き添え喰らうぞ!!」
英雄二人の攻撃は校庭の大規模に及びます。
なにせアユミさんの抜刀術、ライラさんの格闘技はアゴラモートすらも怯ませる威力ですから。
……さて。ロアディオス君に校庭の修理を頼みませんと。
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同時刻
教室(術士系学科)
「……では……各自、調合に入ってください……」
この日はリリィ先生による調合の授業。
簡単な魔法薬の作り方ですが、一歩間違えれば不良品ですので注意が必要な授業です。
「るんるる~ん♪」
「えっと……ホワイトヒール草とマジックレッド草と……あれ? これ……なんだっけ……?」
知識、実力ともにトップなシルフィネスト君は鼻歌交じりで余裕です。
反対にブロッサムは毎回教科書と睨み合います。さらに頭に疑問符を山のように出して。
「えっと量はこれで……あれ。順番どうだったっけ? ……う~~~……ッ!!!」
教科書、ノートを見ても頭を抱えるブロッサム。
……実技は申し分ありませんのに、何故知識が一考に身につかないのでしょうか?
(……どうせ全部混ざるし、大丈夫だろ。……多分)
――――
それから約数分後。
「リリィ先生~。できました~」
一番早くできたのはシルフィネスト君です。
まあこれは毎回のことなので、今では驚くことではありません。
「……たしかにできていますね……。分量……質……すべて、完璧ですよ……」
「やった~♪」
「よくできました……」
リリィ先生に褒められ、シルフィネスト君はうれしそうでした。
彼は素直で良い子ですからね。
「ただ~いま~♪」
テクテクと歩いて(実験中ですから、飛んで埃でも入るといけませんからね)席に戻ります。
……が、魔術カリキュラムの優等生たる彼は怪訝な顔をします。
「……ブロッサム君。何してるの……?」
「何って……ち、調合だけど?」
「……ブロッサム君」
言って、シルフィネスト君はブロッサムの持つ毒々しい赤紫色の液体を指さします。
ちなみにフリージアの情報によりますと、すでに気泡が溢れ出し、さらに奇怪な音もしていたとか←
「……明らかに、全部間違ってるよね?」
「……えっと……いや、これは……」
「ブロッサム君~……君だけ毒薬になってる気がするんだけど~」
「ど……毒薬じゃねぇよ!!」
シルフィネスト君の言葉に反論し、その拍子で持っていた薬品を(危険性MAXの)魔法薬に落としてしまいました。
――ドォオオオンッ!!!
……結果。ブロッサムの魔法薬(という名の第一級危険物)は彼を巻き込んで爆発しました。
怪我人が彼一人だけで済んだことはもはや奇跡ですね。
「……ゲホッ、ゲホッ……」
「あー……」
制服や髪、顔は煤だらけ。
しかし爆発に巻き込まれてそれだけで済んだのですから良い方でしょう←
「だから言ったのに~……」
「だ、だって……」
「――ブロッサム君……」
「うぉおおお!!?」
背後に近寄っていたリリィ先生に驚くブロッサム。
ですが一番驚いたのは、リリィ先生から魔王並に黒いオーラが見えたこと、だとか……。
「あなた……何回同じ過ちを繰り返せば気が済みますか……?」
「ち、違っ……あ、いや、すみません! はい!」
リリィ先生の殺気に孕んだ瞳が恐ろしかったらしく、ガタガタと震えていたとか←
「……後で、補習の知らせのプリントを渡しますね……」
「……はい」
もはや彼に逃げ場はありません。ブロッサムはその時、がくりと肩を落としていたとか。
ちなみにこの日、来年度の新入生がプリシアナ学院に見学に来ていた為、全員の感想文に彼のことが書かれていたようです。
――――
PM12:30
学生寮・食堂
「リージー、チューリップ……こいつ、またやったのか?」
「ええ……まあ……」
「まあ毎度のことだしね~」
「そうだね。それにブロッサムの成績、もう学校中に知れ渡ってるし」
「セルシア、うるさい……」
「シルフィー、ホットケーキ」
「はいは~い♪」
「あ! ライラ、ずるいぞ! バロータ、ブーゲンビリア。なんかない?」
「いや、俺持ってねぇって」
「私も持ってないわよ」
「チェ~」
この時間、大半の生徒は昼食を取ります。
アユミさん、セルシア、レオノチス君たちも、どういう訳かいつも一緒に固まって食べます。
多分セルシアがアユミさんを発見、半ば強引に割り込み、そこをレオノチス君たちが駆け込んでいるのでしょう。
「はあ……しかし、おまえ……マジで不器用なのな」
「まあクッキーを5分で炭に変えてしまう、ある意味負の錬金術を扱ってるからね」
「錬金じゃねぇよ!」
学生らしく、たわいない話で盛り上がります。
……たまにアユミさん絡みでややこしくなりますが←
――――
PM16:00
「ブロッサムー。暇だから部屋に行っていいか?」
「暇だからってなんだよ、そりゃ!?」
授業がすべて終了し、この時間帯は生徒の皆さんがそれぞれ自由に過ごします。
アユミさんはたいていブロッサムと一緒です。
……私としては、たまにはセルシアと一緒にいていただけませんでしょうか?←
「……で? 俺の部屋でいったい何をする気だ?」
「ブロッサムに甘えたい。以上」
「それだけ!? いくらなんでもそんな……」
「……わかった。んじゃフリージアに甘え「お、俺はそんな用事ねーし!! べつに来るくらいならいいぞ!?」よっしゃ!」
ブロッサムの扱いに慣れているアユミさんはあっさり彼の決意を変えます。
……相変わらず人を手玉に取るのがお得意な様です。
「ふっ♪ じゃ、行こうか。早く体温感じさせてくれ♪」
「ご、誤解を招く発言をするんじゃない!!」
周りを気にせず相思相愛なお二人。
……しかし私としてはセルシアと結ばれていただきたいのですが←
「じゃあ行こうか♪」
「はいはい……はあ……」
ため息をつきながら、ブロッサムはアユミさんと部屋に戻ります。
……後で部屋の様子を見に行きませんと←
――――
同時刻
「はい、ライラちゃん。今日はチーズケーキにしてみました~♪」
「わあ……♪」
シルフィネスト君(とライラさん)の部屋では、彼がライラさんといつものお茶会をしています。
ほとんど毎日やっていますから、この部屋は毎日甘い香りがする(リコリス先生いわく)みたいです。
「……おいしいっ♪」
「わ~い♪ よかったよかった~♪」
甘い物好きのライラさんはシルフィネスト君のケーキやお菓子がお気に入りみたいです。
……今度パティシエ学科の推薦状を渡しておきましょうか。
「ライラちゃんのいれる紅茶もおいしいよ~。僕じゃ、こうはいかないし」
「そう、かな? 私は、シルフィーのケーキの方がおいしいよ? シルフィーのお菓子……一番、スキ」
「そう? えへへ~♪」
周りから見てもわかるくらい幸せそうに笑っています。
聞くだけでも非常に微笑ましいお二人です。
――――
PM21:00
夕食もセルシアたちと召し上がり、その後各自居室に戻ります。
ちなみに学院は基本22時には消灯です←
「……ん、ふぅ……もうちょっとくっついてくれよ」
「あのな……泊められるだけマシと思えよ」
冬が近いこの季節。アユミさんはブロッサムのベッドで、彼を抱き枕にして寝ています。
ブロッサムも根負けしたのか、最近じゃ特に否定もしないで招き入れています。
「あったかぃ……やっぱり、ブロッサムの傍が一番落ち着く……」
「……。言っても何もでないぞ……」
……そうは言いますがブロッサム。あなた内心うれしいのでしょう?←
「ほら、もう寝るぞ。……くっついても、べつに嫌じゃないし」
「……ん。じゃあ遠慮なく……」
アユミさんが抱き着き、寝静まったのを確認しますと、ブロッサムもつられるように目を閉じました。
なんだかんだはありますが、最終的結論としましては二人は仲がよろしいです。
私としましてはセルシアと結ばれて欲しいですが(個人的に大変重要なことなのでもう一度)。
――――
同時刻
シルフィネストの部屋
「……あふぅ……」
「ライラちゃん、眠い?」
「うん……」
「じゃあそろそろ寝よっか~♪」
こちらはこちらで就寝準備にかかっています。
アユミさんとブロッサム同様、仲良く一緒に眠ります。
「眠い……ふわぁ……」
「ん……シルフィー……」
「ん~……?」
「おやすみ……くぅ……」
「うん……おやすみ~……すぅ……」
二人は横になりますと、すぐにぐっすりと休み始めました。
やはり二人はいつも微笑ましいですね。
――――
さて……とりあえず彼らの一日は終了しました。
ですがこの先どう転ぶかわかりませんからね。
彼らの行く先に、始原の神々の加護があらんことを……。
英雄観察日記
――――
(……セントウレア様)
(どうしました、ネメシア)
(……いつまでこの観察日記は続きますか?)
(……いつまででしょう?)
(…………(ああ……偵察続きとセントウレア様の視線と笑顔で胃が痛い……))