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二人の休日

 バロータVer.

「バロータ」

「悪い。待たせたか?」

 現れたのはバロータ。
 今日の休日の相手は、なんだかんだで常識人なこいつなのだ。

「……で。行きつけの店ってどこだ?」

「慌てんなって。ローズガーデンにあるから、まずはそっちに行くぞ」

「はいよー」

 間延びした返事を返し、バロータの歩調について行く。
 …………、おい。早歩きとかするなよ。リーチの差がいくつあると思ってんだ←

「……あー……大丈夫、か?」

「平気だ。いいから案内しろ」

 とはいえ、指摘するのもなんか敗北感ありありだし。
 意地と根性と気合いで行けば成せば成るわ! 多分!←

「…………(スゲー必死だな。……なんか、可愛いかも……)」

 ――――

「……ぜぇ……ぜぇ……」

「おい……大丈夫か?」

「へ……いき……だ……」

 あのあと。早歩きするバロータに必死で食らいつき、何とかバロータ行きつけの店に着いた。
 とはいえ……バロータ、テメェ早過ぎだろうが!
 足の長さ考えろや!!

「疲れた……」

「お、俺が悪かったよ……ほら。ケーキ奢ってやるから、元気出せって」

 言って差し出されたのはメニュー表。それも様々なケーキが載ったページだ。

「よし、じゃあスフレチーズケーキとベイクドチーズケーキとレアチーズケーキと――」

「って早ェよ!! しかもチーズケーキばっか!」

「いや、最近チーズケーキがブームでして」

 と言いつつ、他にもチョコレートケーキやモンブラン、ティラミスなど着々と注文しておく。
 ……バロータの財布の中? 知ったことか←

「……あーあ……」

 ――――

「んー……ベイクドもなかなか良いなあ♪」

「ああ……そうか」

 出されたケーキを頬張りながら、最高に至福の時を満喫している。
 反対にバロータのオーラは真っ黒だ。多分ケーキオーダーしまくったからかな←

「いつまで沈んどんのじゃい。おまえも食えば?」

「はいはい……そーさせていただきますよ……」

 半ばやけくそのように言い、自分のケーキを食べ始めた。ちなみにケーキはベリーのタルト。
 ……うわぁお。宝石みたいに綺麗。

「……食いたいのか?」

「え」

「いや……すっげーじーっと見てっからよ」

 え、俺そんなに見てた?
 ごめん。全然そんな自覚なかった←

「いや、でももうケーキ山ほど頼んだし」

「一口なら大丈夫だろ? おまえ、無駄に胃がでかいし」

「刺す」

「冗談だよ! フォーク向けるなって!」

 両手でガードするバロータに苛立ちながらもフォークを下ろす。
 バロータはそれを見ると、ホッと一息を着く。

「ったく……一言多い奴め」

「悪かったってば……」

「ケーキ一口寄越してくれる?」

 俺が黒い笑みを浮かべて言えば、バロータはコクコクと頷いた。
 うん、素直な子は大好きだよ?

「じゃあ遠慮なく……んっ」

「……え」

 バロータから許可は得た。
 という訳で、身を乗り出して一口。

「ん~……これも美味いな……」

「え……あ、うん……」

「……どうした?」

 バロータが固まっている。
 ……ただフォークに刺してあったケーキ食っただけだぞ?

(これ……か、間接キス……ってヤツ、だよな? 絶対……)

 バロータが俺とフォークを交互に見る。
 え。マジで何なの?

「……食べないのか?」

「あ……いや、食べ、るよ……」

 ……あれ。なんか顔が赤いような……?

 ――――

「んー……楽しかった♪」

「……あー……そうか……」

 一通りケーキを食べつくし、プリシアナへ帰還する。
 道中バロータの浮き沈みが激しかったが……まあ、俺は特に気にしなかった。だってバロータなら大丈夫だし。

「ん。あー言う店なら大歓迎だ」

「そうか……まあ、喜んだならいいけど」

「? うん、楽しみましたよ?」

 バロータにそう言えば、何故か渇いた笑みを向けられた。
 ……やれやれ。

「バロータ」

「あ? なんだ――」

 校舎が近くなってきたのでバロータを手招きした。
 他の野郎どもに見られるとまずいので……。

「……っ!?」

 ぐいっ、と引っ張り頬に軽くキス。
 そしてすぐに手を離す。

「美味いケーキの店の礼ってことで。見つかるといろいろアレだから」

「礼って……」

 小さく笑い、片手を上げる。

「じゃあな。セルシアに殺されるなよー」

 そう言って颯爽と校舎に引き返していく。
 紅潮したバロータを残して。


 揺さぶる笑顔

 ――――

(みんなが惚れんのもわかった気がする)

(あのギャップは反則だろ……)
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