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二人の休日

 セルシアVer.

「セルシア」

「ごめんね。待たせちゃって」

 やってきたのはセルシアだ。
 ……え? 意外だって? まあ……それは、偶然な。ぐーぜん←

「……で? 場所はおまえに任せたんだけど……いったいどこに連れてってくれるんだ?」

 先日の打ち合わせで、行き先はセルシアが連れて行きたい場所があるって言うから任せたが……些か不安が拭えない。

「うん……僕の、小さい頃からお気に入りの場所」

「……ガキの頃から?」

 俺が首を傾げれば「うん」と頷き、同時に俺の手を取る。

「早く行こう。……うるさい奴らに見つかる前に」

「……はいはい。わーりやした」

 久々の黒セルシアの出現にちょっと驚きながらも、そのまま手を引かれて行くのだった。

 ――――

「ここがそうだよ」

「おお……」

 学院にある藪を抜け、平たい場所に出る。見渡せば一面の大・草・原。
 学院郊外にこんな場所があったとは……。

「小さい頃、フリージアと一緒にバロータに連れられてね。ここで横になりながら空を見上げたり、話をしたりしたんだ」

「なるほど……ま、穴場探しなら奴の十八番っぽいし」

「うん。違いないね」

 一般ピーポーらしいバロータなら、たしかにお坊ちゃんたちが知らないような場所や遊び方を知ってそうだしな。
 よく知ってるからか、セルシアも小さく笑っている。

「とりあえず座ろうか。立ったままは疲れるし」

「はいはい」

 セルシアに手を引かれ、草原の中に座り込む。
 ……うん。風が気持ちいいな。

「……たしかに良い場所だ」

「……アユミも気に入ってくれた?」

 セルシアの問いに「ああ」と頷いておく。

「こういうのは嫌いどころか、むしろ好きだし」

「そっか……うん、よかった」

 そう答えると、急にセルシアに腕を取られた。そのまま肩に頭も乗せられる。

「……んだよ、セル」

「ううん。ただ嬉しいだけだよ。アユミが僕とこうして一緒にいることが」

 ……天然め。それ、すっごく恥ずかしいんだけど。

「おまえな……」

「嘘じゃないよ」

 言われ、今度は抱きしめられた。
 そのまま耳元でセルシアが言い続ける。

「だって、アユミってばブロッサムにばっかり構っているじゃないか。……僕だって、君が好きなのに」

「……自分で言うのもなんだが……物好きな奴」

「かもね。それでも、僕はアユミが好きだよ」

「…………」

 にっこり、と笑顔を向けられる。
 それを見て俺は……小さくため息をついた。

(ある意味最強だよ……アゴラモートより手にかかるわ……)

 天然属性が手伝い、こいつには恋愛観がぶっ飛んでいる。
 しかも下手に否定すれば、瞬時にシャドウセルシアの出来上がりだ。
 ……たまにエデン並にキツイ。

「……ま。べつにいいけど」

 プリシアナの生徒会長。
 ウィンターコスモス家の次期当主。
 プリシアナ学院校長の弟。
 目の前のこいつは様々な期待を向けられ、つねにそれに応えようと努力を惜しまずにいる。

(ホントは意外と腹黒くてごり押しな部分もあるんだけどな……)

 そう思いながらセルシアに視線を向ける。
 俺を抱きしめ、うれしそうに擦り寄ってくるセルシアは紛れも無く“セルシア自身”。
 つまり素のセルシア……と言ってもいいだろうな。こいつは純粋が具現化したような奴だからな。

「……セル」

「ん? 何?」

 すっかり固定化した略称で呼べば、すぐにこちらに振り向いた。
 とびっきりの笑顔付きで。

「(学院のセルシアファンに恨まれそうだな……)……ん」

「……え」

 いつぞやのネコマみたく、セルシアの髪越しに額にキスを贈る。
 セルシアの目が真ん丸に見開かれる。

「……景色の礼だ」

「礼って……こんな可愛い礼の仕方……」

「ヘッドロックかますぞ」

「ごめんなさい。……でも嬉しい」

 そう言って満面の笑みでさらに抱き着いてきた。
 その笑顔は年相応どころか無邪気な子供だ。

「やれやれ……」

「……うん」


 ホントの自分

 ――――

(君にだけ見せるよ)

(ありのままの“僕”を)
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