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変わる周り

 三学園交流戦が終わり、つかの間の平穏を楽しむ……。
 同時にこの頃から、俺らの変化も見られていた……。

 ――――

 アユミ&セルシア

「やあ、アユミ」

「さよならセルシア。俺忙し」

 ガシッ。

「今日も手伝ってくれるかい? 返答はハイかイエスで」

「拒否権無しかよ! この横暴生徒会長ーーーッ!!!」

 肩と手首を捕まれ逃走できず、揚げ句の果てには笑顔で強制連行される。
 ……セルシア。最近キャラ違くね?←

 ――――

「『執事の勧め』……執事……し……さ行……」

「ふぅ……こんなに本の乱れや乱雑があるとは……。毎日整理しているフリージアも大変だな」

「フリージア君の御主人様に付き回される俺には何かないのか? つかコメントしろや」

「その本は左から三番目の棚、それの一番上の段だよ」

「んなコメントじゃねぇえええ!!!」

 プリシアナ学院図書室。
 夕食が始まる少し前なので、現在ここには利用者はいない。
 ……三学園交流戦でブロッサムとともに負傷した図書委員のフリージアに代わり、仕事をしている俺とセルシアを除いて。

「最近のセルシア、マジでわからねぇ……」

 言われた棚を探しながらため息をつく。
 言っとくが俺は好きでやってる訳じゃない。
 冒頭のようにこの生徒会長様に無理矢理拉致られ、それでやっているだけだ。強制的にな。

「なんで俺がこんな目に……あー、くそっ。届かねぇ……」

 お目当ての場所は見つかったが、背伸びしても届かなかった。
 ……なんでこんなに大きいんだ。そうだ、棚がでかいんだ! 決して俺が小さい訳じゃねぇ!!←

「畜生……面倒だ」

 仕方なく脚立を使って上に登ることにした。
 マジでいらつく……。

「……ったく。えーと、し……し……」

 だいたいなんで俺がやらなあかんのだ。
 そう思いながら本棚の隅から隅まで見る。

「…………あーーーー!! めんどくせぇなあ!!」

 と言っても単純な、それも慣れない作業を何時間もやらされた俺にもそろそろ我慢の限界だ。
 イライラが募り、本棚を拳で何度も叩く。
 ……が、ここは脚立の上。当然暴れれば足場は揺れるわけで……。

「えっ、あれ? ちょっ――嘘!?」

 グラリと揺れたことに気付くがすでに遅く……。

「うわぁあ!」

 見事、身体全体に空気を感じました。
 ああ……俺、完全にアウトだ。

 ガシャーンッ!!

「……っ。……ん?」

 図書室に盛大に響き渡る音。……だがそれだけだった。
 来るはずの痛みがない。

「え……」

「ふう……何とか間に合ったね」

「な……っ」

 ……どういうことだ。これは。
 なんで天然生徒会長の顔がドアップで写っているんだ!?

「……これはどういう……?」

「脚立の上で暴れたら危ないよ。僕がいなかったら、どうなっていたことやら……」

「わ、悪かっ……いや待て。なんで俺が暴れてたことを知っている」

 たしか……こいつも整理してたはずだが?
 と思っていると、セルシアとは思えないセリフが返ってきた。

「ずっと見ていたからね。目当ての棚を見つけてからこうして話をしているところまで」

「……セルシア。それ、テメェ一人だけ楽してたのか……?」

「整理ならもう終わったよ。君の持っている本で最後だ」

 サラっと言い切るセルシア。
 だがそれは俺の怒りを爆発させるには充分だった。

「セルシアァ!! そういうことは先に言えやあああ!!」

「べつにいいじゃないか。終わったんだし」

「良くねぇんだよ! 俺の時間返せゴルァ!」

 じたばたと大暴れ開始。
 だがセルシアは余裕の笑みで。

「いいのかい? 落下するよ」

 ……言われて気づいた。
 俺はセルシアに落下を受け止められた。
 それはつまり、セルシアに横抱きされている訳で。

「……おい。降ろせ」

「驚いたな。すごく冷静だね」

「降ろせっつってんだろ。」

「降ろさなくちゃダメかい?」

「不毛なやり取りもいいんだよ」

「……ふう。しかたないな」

 ため息をつきたいのはこっちだ!
 マジで何なんだよ……。

「はあ……俺は行くからな」

「アユミ」

 ……今度はなんだよ。
 そう思いながら振り返る。

「一人だと味気ないからね。夕食、一緒にどうだい?」

「……奢りか?」

「僕がただで奢ると思うかい」

「ねぇよ」

 言って俺はニヤッと笑い、ポケットからトランプを出す。

「ブラックジャックで勝負だ。負けたら奢りってことで」

「構わないよ」

 よし。話は決定した。
 俺は今晩の夕食を考えながら、セルシアと図書室を出た。

「アユミ」

「ん?」

「イカサマは無しだよ?」

(ばれてた……!?)

 ……やっぱコイツ、苦手だわ。
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