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狼ちゃんと魔女っ娘君

 10月31日。世間ではこの日をハロウィンと呼ぶ。

「良いねぇ、ハロウィン。菓子はただでもらえるし。本気でコスプレ楽しめるし」

 狼男(女?)のコスプレをしている俺は、悠々と座りながらパンプキンパイを頬張ってる。
 素朴な甘味が絶品なのです←

「おまえもそう思うだろ?」

「……し、知らない……」

「んだよ。まだ食ってないのか? 楽しめっての」

「た、楽しめるかよぉ……っ」

 そう言って涙目させながら小さく涙声で訴えた。
 同時にとんがり帽子を深く、顔を隠すように被り直す。

「ふふ……恥じらう姿も可愛いよ? “チェリー”ちゃん?」

「その名前で呼ぶなぁ!」

 ぎゅっと身を縮こませ、必死で首を横に振りながらグスッ、と泣きかけている。

(可愛いなあ……絶対性別間違って生まれてきただろ――“ブロッサム”ってば)

 そう思いつつ、目の前の魔女っ娘チェリー――もといブロッサムににやけてしまう。

 ――――

 今日はハロウィンという訳で、プリシアナ学院はハロウィンパーティーを開催中という訳なのです。
 仮装もあるし、せっかくだから俺らも心の底から楽しもうということで参加している。……が。

『仮装なんか……に、似合わないし――恥ずかしいだろ……』

 例の如くブロッサムの乙女属性発生した←
 真っ赤になって唇噛み締め、頭を横にふるふる振って――そこで俺のドSスイッチが点いた。

『――大丈夫。ブロッサムに似合うの、ちゃーんと用意しているから♪』

 そして俺が用意したのは――魔女っ娘衣装。

『絶っ対着るかぁあああ!!!』

 もちろん全力で拒否するブロッサム。だがそこで諦める俺じゃありません。
 つまり早い話、ブロッサムの恥ずかしい秘密(え? 聞きたい? それはダメだ←)をネタにし、それで諦めたブロッサムは泣く泣く着たってワケ←

 ――――

 そして現在に至る。

「ふふふ……可愛いなあ……」

「ぅぅぅ……」

 魔女衣装に念のためカツラを被っている。術士学科だからか、元々しなやか系だし……見た目は完璧に女の子だ。
 ……うん。自分でもヤバイくらいの仕上がりだな。

「可愛い過ぎるんだけど……」

「言うな! ……なんでこんな格好なんか……」

 ローブのスカート(ちなみにミニスカ←)を引っ張り、できる限り身を縮こませる。

「俺の部屋なんだから良いじゃないか」

「良くない……」

 あ。ちなみに現在地は俺の部屋である。

「でもホントに見た目は女の子なんだよな……足も綺麗だからなおさらだし」

「ギャーーーッ!!!」

 ちょいとスカートを摘めば「めくるなーーー!!!」と赤面で押さえながら怒鳴った。
 ヤバイ……可愛い過ぎるんだけど。

「もうヤダ! 帰る!」

「ちょっ! 待て待て!」

 言い方可愛い……じゃなくて!

「良いだろ! 俺の部屋なんだし!」

「そういう問題じゃない! 女装もうヤなんだよ!」

「見せるわけじゃないんだから! 可愛いからせめて写真一枚!」

「いーやーだーーーッ!!!」

 ばたばたと大暴れするのを肩を掴んで止めた。
 ……が、体格の差か、バランスが保てず……。

「わ……っ!?」

「うわ……!!」

 見事後ろに倒れ込みました。
 ボフッ、と音が部屋に響く。

「いてて……後ろがベッドでよかった……」

「あ、ああ……って」

 ブロッサムの声が変なところで止まった。
 何事かと思って見ると……。

「あ……」

 これは……体制的に俺が押し倒して、る?
 下を見れば赤面してるブロッサムが目をあっちゃこっちゃうろうろさせながら、手足の置場に迷っているのが見えて――。

(――まずい……すごーく……)

 い じ り た い。

「おい……その……早く……」

「…………」

「……? アユミ――」

 首を傾げるブロッサムに、ほとんど欲望の赴くままにキスした。
 目が真ん丸に見開いたままブロッサムが固まっている。

「ん……!? は……っ」

 我に返ったブロッサムは抵抗するが、力がでないのか、背中に手を回して服を掴むだけだった。
 抵抗できないのをいいことに、ブロッサムの口内を好き勝手に屠っていく。

「んっ……は、ぁ……っ」

「やっばい……可愛すぎ……」

 魔女姿で背中の翼が震えながら感じてるのを見ると……やばい、ものすごい食いたくなる。

「ふ……ぅっ、ら……め……」

 鼻が抜けるような甘い声と悩ましげな吐息。

「ぷは……っ」

 好き勝手屠り、一旦唇を離した。
 顔は紅潮し、息は荒く、手足が時々びくびくと震えている。

(……なんなんだ)

 この加虐心煽る姿は。誘ってる訳じゃないのはわかってる。
 わかってる……けど……。

「……な、なあ……アユミ……?」

「……ん」

「ひゃんっ!!?」

 ビクッ、とブロッサムの身体が震えた。
 そのまま舌先で彼の首筋を舐める。

「ひ……や、やめ……ッ!」

「無理。……声、可愛い」

「あ……っ、は、ぁ……ん」

 震えながら逃げ出そうとする身体を押さえつつ、耳の中や首筋、鎖骨を舐める。

「魔女さん、美味しい。敏感肌なんだなあ……」

「意味……っ、ち、が……ぁっ……は、はな……れ……っ」

「嫌だ」

 完全に狼になった俺は気にせず、腕や腹、太股なんかも手の平で擦るように摩っていく。

「ぅあ……っ!!!」

 より一層ビクンと跳ね上がった。
 ……ダメだな、うん。

「もう限界。……喰っていい?」

「ぇ……?」

 紅潮しながら涙目で俺を見る。
 ますます俺を煽る真似やめてくれないか?

「可愛すぎて我慢できない」

「な……! や、やめ……!!」

 抵抗も無視して、欲望のままに服を巻くし上げようと掴んで――。

「――お楽しみのところ申し訳ありませんが」

「「!!?」」

 掴んで――良いところで邪魔が入った。
 バッと離れて横を見れば……。

「げっ!!?」

「……ずいぶんと都合良いタイミングですね。セントウレア校長」

「偶然ですよ、アユミさん」

 ベッドの横ではセントウレア校長が立っていた。その顔はニコニコと読めない笑顔を浮かべている。
 ……油断ならねぇ校長だな。

「つーかどういうタイミングで現れてんですか。せっかくの第一線が台なしじゃないですか」

「邪魔する気はなかったんですが、さすがに学院内ではよろしくありませんので」

「(目が笑ってねぇ……)じゃあ学院外なら良いんですな」

「構いませんよ」

「校長ぉおおお!!?」

 見捨てられたな←
 まあ俺としては許可が下りたからどうでもいいけど。

「では失礼しました。……アユミさん。完全に健全とはいいませんが、ほどほどにお願いしますね」

「善処はします」

 それだけ言い返すと、校長は出て行った。
 ……油断ならないな。

「ま。それはともかく……せっかく校長から許可いただいたし~」

「ギクッ……」

 にっこり笑い、ブロッサムに抱き着く。

「とりあえずまずはパーティーを楽しもうか。……後ですき放題いただくから」

「い、いただくってなんだよ!? 待てよ、早過ぎるだろ!」

「まあまあ。先にそっちをいただいてからでもゴールは遅くない的な?」

「何のゴール!?」


 狼ちゃんと魔女っ娘君

 ――――

(ふざけんな! まだそこまでいかなくていい!!)

(えー? おまえだって、さっきはノリ気だったのに……)

(の、乗ってない!)
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