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とある日の一日

「んー……! 心地良い日だなぁ……」

「ね~。風も気持ちいい~」

「風も気持ち良い……お日様、ぽかぽか……?」

「――あのな」

 ため息を一つつき、アユミ、シルフィー、ライラの三人に一言。

「なんで俺の部屋でくつろぐんだ、おまえら」

 ベッドやらソファやらクッションやらに乗っかる三人にツッコミを入れた。
 この三人、朝からずっとここにいるんだ。何故か。

「ここ俺の部屋なんだけど。なんでここでくつろぐんだよ」

「だってさ。ブロッサムの部屋のベッド、柔らかいし」

「ソファ、ぽむぽむ弾むし~」

「ぽむぽむ弾む……クッションぽふぽふ?」

「…………」

 おまえら……人の部屋をなんだと思ってやがる……。

「あのな……一日中部屋に居座られるのも困んだよ。ゆっくりくつろげねぇだろうが」

「じゃあブロッサムは俺の部屋で休めば? 俺らここにいるから」

「なんでアユミの部屋で休まなきゃなんねーんだよ!!」

 ここ俺の部屋なんだけど!?
 なんで他人に自分の部屋を追い出されなきゃなんねぇんだよ!

「休みたいんだよ! 寝たいんだよ! 補習地獄から解放された俺はベッドで寝たいんだよ!」

「おまえ、やること無いのか? ……ブロッサム……なんて悲しい男なんだ」

「やかましいわ!!!」

 人がどう過ごそうが勝手だろーが!

「と・に・か・く! いてもいいから、静かにしろ! 俺は休むからな!」

「へいへ~い」

「へいへーい」

「真似するな! ライラ!」

 アユミと同じ言い方と仕草をしたライラに注意してからベッドに潜り込んだ(もちろんアユミはベッドから追い出した)。

(くそ……ただでさえ疲れてるっつーのに……)

 頭を使うだけでも疲れんだよ。
 イライラを無理矢理押さえ込み、アユミたちが(一応)静かなのを確認してから、布団の中で目を閉じる。
 そして数秒後、暖かい陽射しを浴びながら、いつしか眠りにつくのだった。

 ――――

「……う……ん……」

 暖かい布団の中で、意識が浮上し始めた。

(あれ……どれくらい寝てたんだろ……?)

 静かだったし、結構深く眠っちまったな……。
 時刻を確認しようと、身体を起こそうとする。

「……あれ?」

 する……が、……何故だ?
 身体が起こせない……? ってか……右足以外動けない!

「なんで……ってちょっと待て」

 はっきり意識が浮かび、そして同時に、違和感があることに気づいた。

「なんだ……これは……」

 異様に身体が重い。暑苦しい。
 ……布団の中に何かいる。

「…………」

 ……嫌な予感がする。
 ひしひしとそれを感じながら、動かせる右足で、思いきって布団を蹴飛ばしてみた。

「なっ……!?」

 最初に目に映ったのはシルフィーだった。
 俺の左足に抱き着きながら乗っかり、ぐうぐうと寝息を発てている。

「お、おい……」

「……すぅ……」

 続いて左に首を傾ければ、俺の左腕を両手で握りながら眠るライラを発見。
 ……だからか。こいつ握力強いもんな。

「ってことは……残る右腕は……」

 シルフィー、ライラときたんだ。
 残る一つはこいつしかいない。

「アユミ! 何やって――」

 グルッと勢いよく首を回し、右側へと向く。

「――え……」

 一瞬、目に映るものが認識出来なかった。
 数秒間、頭の中が停止する。

「――な……」

「ん……んぅ……」

「な……なな――、ななななな!!?」

 はっきり意識し始めた頃、もう頭の中が爆発しそうだった。
 ……なぜなら。

(なんでそんな薄着なんだーーー!?!?!?)

 現在のアユミの状態。胸を隠すサラシとスパッツ。以上。
 白い手足や腹を晒しだし、年相応の寝顔で休んでいる。

「な、なん、なんっで!!?」

「ぅ~……」

「く、来るなって!!」

 よりによってその状態で擦り寄って来ないで!!
 なんか吹っ飛ぶからいろんな何かが!!

「来るな来るな! 頼むから!」

 動けない腕をできる限り動かし、必死に起こそうと足掻いてみる。

「……や……」

「え……」

「さむぃ……」

「ええッ!!?」

 そりゃ、んな格好で寝てるからだろ!
 ってそれはこの際あとで!

(ヤバ……ッ!)

 む、むにって……や、柔らかい大きなのが服越しに伝わってるんだけど!?

「んん……あったかぁ……」

「ひぅ……っ!?」

 な、なんで抱き着いてくるんだよぉ!!?
 押し付けてるし顔近いし寝息が首筋にかかってるし!

「お、起きろ! 起きろってばぁ……!!」

 泣きそう(いろんな意味で)なんだけど。
 やめてほしいような、そうじゃないような……いや、べつにそんな、邪なことを考えてるわけじゃなくって!!

「ぅにゅぅ……」

「すぴ~……」

「くぅ……」

「う……っ」

 超幸せそうな寝顔で寝るなよ、お願いだから。
 俺だけバカみたいじゃないか。

「……はあ……」

 ……とりあえず、布団をかけ直そう。少しはカモフラージュになるだろ。
 動かせるようになった右腕と右足を使い、何とかかけ直す。

「もういい……寝よう。諦めて」

 こんなことされても数分で耐性が付く自分が悲しくなってくる。
 結局流された俺は、もう一度ふて寝することを決め込んだ。



 とある日の一日

 ――――

(うぇ~ん……痛いよぉ、ブロッサム~……)

(まったくだ……起きた途端げんこつって……どうせお仕置きされるなら、激しいキスの方が好みなんだが……)

(……ドメスティックバイオレンス)

(やかましいわ!!)
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