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ドS侍少女VSストーカー忍者少女

 ああ……今日もブロッサム様は麗しいですわ……。
 あの蒼の瞳、美しい金髪。今日も一段とお美しい……。
 ……なのに……。

「おーい、ブロッサムー」

「あ……アユミ……」

 ――あの、チビジャリは誰ですのよーーーッ!!!

 ――――

 アユミSide

「……ん」

「? どうした」

「いや……最近、妙な視線を感じるなあって」

「視線?」と首を傾げるブロッサム。男のくせになんて可愛い仕草をするんだ。
 ……いや、それは今はどうでもいい。

(視線と気配は感じるんだが……肝心の姿がないんだよな……)

 視線くらいならなんでもない。交流戦が終わってからは嫌ってくらい見られてるし。
 ただ、突き刺さるような視線を向けられて、気配はあるのに姿が見えないってのが気にいらない。

「まあいいか(いずれ尻尾を掴むから)。ブロッサム、次の授業に行くか」

「ああ。たしか……冥府の迷宮に行くんだっけ。……一体何やるんだろ」

「さあな」

 軽くため息をついてから席を立ち上がり、教室から出ていった。
 もちろん視線は向けられたままな。

 ――――

 冥府の迷宮

「はーい、皆さん集まりましたね~」

 本日の教員、リコリス先生が生徒たちを見回しながら、どでかい箱を「よいしょっ」と抱えて前に置いた。

「今回の授業は、50パーティ対抗戦です! 一番優秀なパーティには豪華な商品がありますので、皆さん頑張ってね~」

 リコリス先生の言葉に「うぉおおおッ!!!」と歓喜するみんな。
 いや、喜び過ぎじゃね?

「ルールを説明しますね~。まずこの箱の中にあるバッジをつけてください。そしてメンバー全員が同じバッジを、最深部でグラジオラス先生に渡せば、合格です!」

 なるほど。ようはバッジをつけたメンバーが全員一緒にいなきゃいけないってわけだな。

「ちなみに~。相手を出し抜くためにバッジを強奪して、そのパーティを失格させる! ってのもアリらしいですよ~!」

『マジッスかあああッ!!?』

 それを聞いて再び目の色を変える皆さん。
 だから、本気出し過ぎだってじゃね?

「それでは皆さん、健闘を祈ります!」

『イェッサー!!』

 そう言ってバッジを箱から取り出し、すさまじい勢いで迷宮の奥へ走っていった。
 ……皆さーん。キャラが違いますよー?←

「……とりあえず、行くか」

「そうだな……」

「イェ~イ、優勝~♪」

 とりあえず俺らも残ったバッジ(ちなみに色は紫)を着ける。
 そして激戦中(遠くから何か破壊音やら打撃音が聞こえる)であろう迷宮の奥へと向かうのだった。

 ――――

「しかし凄まじいな……」

「ああ……報酬一つでここまで変わるとはな」

「怖いよ~……」

 迷宮をさくさくと進む俺らは、周りの惨劇に少々……いや、ものすごく恐怖していた。

「ドクターや術士学科の救護班がいるわけだよ……」

 そう……進んでそんなに奥を進んでもないのに、同級生たちが救護班たちに手当てを受け、さらに次々と脱落者が続出している。
 おまえら、欲を出し過ぎだろ。

「はたして一体何人が生き残っているやら……」

「こ、怖いこと言わないでよ~……」

 俺の不吉な一言にシルフィーがガクガクと震える。
 しょうがないだろ、これが事実なんだし。

「……っ……」

「…………!」

 瞬間、後ろから気配がした。
 振り返るけど……やっぱり姿がない。

「え……ど、どうしたんだよ?」

「……いや。気のせいだ」

 嘘だけど。でも見えない以上、どうしろって話だ。

(まあ同じ授業受けてるっぽいし……何かあったら潰せばいいか)

 邪魔するならば叩きのめす。むろんきっちり理由を聞いてからな。

 ――――

「やーれやれ……めんどくせぇ……まだかよ」

「知るかよ……」

 30分後、俺らはまだ到着してなかった。
 道標(他のパーティの骸)がない為、ホントどこがどこだがさっぱり……。

「はあ……ん?」

「どうした?」

「いや……あれ……」

 言って俺は指をさす。

「……え?」

 俺の指の先には、一人のバハムーンの青年だ。
 立ちはだかるように仁王立ちしている。

「おまえは……?」

「俺は竜騎士学科所属のアンズ! よろしくな、姉ちゃん!」

 アンズ……ね。

「男のくせにかわいらしい名前だな」

「それは言うなあ!! 気にしてるんだよお!!」

 言ったら涙目で叫ばれた。
 ……予想通り良い反応するじゃないか!

「ドSめ……」

「なんだ?」

 俺が言うと「いや……」と目線を外した。
 相変わらず素晴らしい勘をお持ちのようで。

「……それで? アンズは何の為にここに?」

「ああ、そうそう。目的果たさないとな」

 言ってアンズが取り出したのは……転移札。

「じゃ、悪いんだけど、これも運命だと思って諦めて?」

「は? ……って」

「なっ……!!」

 あれ? いつの間に、俺、こいつに担がれてんの!?

「ホントごめんな! じゃ!」

「おま……!!」

 アンズは言い、そして転移札に魔力を篭める。
 次の瞬間、自分の身体が魔力を包まれるのを感じたのだった。

 ――――

 ブロッサムSide

 ズガンッ!!!

「あの野郎……ッ!!」

「怖いよ~、ブロッサム~……」

 ギリギリと歯ぎしりしながら、俺は拳で壁を殴り付けた。
 怒りの魔力が篭められているせいか、壁一面にひびが入る。

「よりによってアユミを掻っ攫いやがってぇぇぇ……!!」

「あわばばば……っ(アユミちゃんみたい~……!)」

「行くぞ、シルフィー! 見つけだして、あいつをボコボコにしてやらないと気が済まねぇ!!」

「ひぇ~~~!!? ブロッサムがお怒りだ~~~!!!」

 何が目的かはもう関係ねぇ……!!
 見つけ次第八つ裂きにしてやらぁ!!!

 ――――

 アユミSide

(ち・く・しょ・うッ!!!)

 油断した。俺ともあろうものが油断した!
 まさかあんな単純、かつ堂々と誘拐されるとは……!
 現在は縄で縛られ、さるぐつわで口は閉ざされ、さらに桶の中に頑丈に封印されていた。

(しかもご丁寧にパラライズまでかけられたし……)

 ビリビリと痺れているから身体がうまく動かない。なのであっさり拘束を許してしまった。
 このアンズって野郎、弟学科にも所属してるらしい。

(このバカドラ……後で覚えてやがれ……!!)

 縄切ってさるぐつわ取ったらボコボコにしてやる。
 んで俺に盾突いたらどうなるか、その身にじっくり味合わせてやる……!!

「……あ。シノブさん!」

「!」

「アンズ。ご無事ですか?」

 どうやらこいつの仲間らしい。
 桶の中だから外は見えないが、声からして男だな。

「シノブさ~ん。この娘、一体どうするんですか? 俺は誘拐しろって聞いただけで、具体的な作戦聞いてないんですけど」

「それはあのお方の御意向。あなたに説明したらどこかに漏れてしまう場合がありますし……万が一ばれた場合、あなたを生贄にして差し出せば、時間稼ぎくらいにはなるでしょう」

「ひでぇ!!?」

 ……ふむ。アンズに聞いても無駄か。このシノブという男を叩きのめさないとわからないらしい。
 俺を誘拐した目的と、黒幕が。

「あー、はいはい……で。この娘はホントどうするんですか?」

「あの方が悲願を達成するまで、それまで監視ですね。……これには少々賛成しかねませんが」

 ん? 乗り気じゃない……?
 こいつ……一体何が目的で。

「…………。あー、そうでしょうね~。シノブさん、ロリコ「ロリータ系が好きなだけです」いや、どっちも変わらないでしょ」

 ……ロリ、コン?
 どんな顔か知らんが……ロリコンだと?

「この娘、ウチのお嬢くらいしかありませんもんね~。初めて見た時、クラッズじゃないの? って俺も思いましたし」

「だからこそ、ストライク……ああ、いや、なんでもありません」

 クラッズ扱い……? それにロリコンって……俺、もしかして幼女扱いされてる?

「……………………」

 そう認識した途端、理性の糸が切れた音がした。

 ――――

 ブロッサムSide

「……くそっ。あいつどこ行きやがった!?」

 捜し始めてから数分後。
 あのバハムーンを未だに見つけられずにいた。
 広いのはわかってたが……くそっ。

「お、落ち着いてよ、ブロッサム~……。考え無しに行っても見つからないよ~……」

「……わ、わかってるよ……」

 シルフィーに言われるとは……けど、たしかに事実だよな。

(……どうすれば……)

 あいつなら大丈夫だと思うが……ただ、エデンのことがある。
 もし俺の目の届かないところで何かあったら……。

「……ッ」

 ……嫌だ。そんなこと……。

「……捜さないと」

 いや大丈夫……大丈夫だ。きっと。

「……あ、あの!」

「あ?」

 誰だよ、こんな時に……。
 そう思いながら振り返る。

「あれ? おまえは……」

「あ、同じクラスのナデシコちゃんだ~」

「は、はい! ナデシコ・ルル・エルマータですわ!」

 紫の髪のクラッズの女子――ナデシコだった。

「何か用か? あいにく俺、今忙しいんだけど」

「は、はい! じ、実は私のパーティメンバーの方が、あなたのリーダーを見かけた、という情報がありまして」

「マジかよ!?」

 アユミが見つかった!?
 こんなラッキーがあっていいのか!?

「あ、案内してくれるか!?」

「は、はい!」

 よかった……! 早いとこ合流しないとな!

 ――――

 ナデシコSide

(やりましたわ! 第二段階もクリアですわーーー!!)

 ふふ……憧れのブロッサム様とお話できるなんて……。
 あの小娘を助け、私の良さをアピールしていけば――。

『すごいな、ナデシコ……おかげで助かったぜ』

『おまえがいなかったらどうなってか……ホントにありがとう』

『もしよかったら、俺と――』

 ――ってな、ことになっちゃったりもするかもですわーーー!!!

(ふふふ……♪ とにかく……)

 そのためにはまずシノブと合流して、アンズをボコボコにしませんと――。

 ズドォオオオンッ!!!

「きゃっ!?」

「わっ!!」

「はうっ!」

 な、なんですの!? 今の破壊音は!
 この先から聞こえましたけど――。

(ってこの先は……)

 シノブとアンズがいるはず……!
 慌てて曲がり角を曲がって見る。

「なっ……」

「は……?」

「ひぇ~……」

 な……なぜ……。

「テメェェェ……死ぬ覚悟できてんだろうなぁ? あ゙あ゙!?」

「ちょっ……お姉さん、タイム! タイム!! もうこっち限か……ぎゃあぁああああああ!!!」

「待って! 私が悪かったです! だから許し「許すかぁあああッ!!!」ぎゃふん!!」

 な――なんで封印破って二人がボコられてますの!!?
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