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黒の少女

 セルシア様とは正反対で、なのに何故か目が離せない彼女は、色で例えるならきっと『黒』でしょう。
 何にも染まらず、自分を貫く彼女にはピッタリの色――。

 ――――

「……ア。フリージア!」

「……! なんですか?」

 不覚にもぼうっとしていたらしい。
 彼女――アユミさんの呼び声に我に返る。

「なんですか……は俺のセリフなんだけど。さっきからおまえの視線が突き刺さるんだよ」

「……気のせいでは? ああ。ですが、冷房目的で図書室に入り浸るのは止めていただきたいですね」

 そう言えば彼女は「減るもんじゃあるまいし」と言いながら机に足を乗せ、椅子に寄り掛かる。

「またそのような真似を……」

「壊れるわけじゃないんだからいいじゃないか」

「……はあ」

 セルシア様ならばこんなことはしない。というか女性のやる仕草ではない。
 だがアユミさんは気にしないと言わんばかりにやっている。

(言ったところで無駄でしょうしね……)

 私はどうもアユミさんは苦手だ。
 予想もつかない言葉遣いも、女性とは思えない行動も。

「機嫌直せって。な?」

「……ッ! 誰のせいで……!」

「つれないなあ……まあ、そういうとこ、可愛いけど」

「なっ……!?」

 何より、言い返せばからかって、面白がるところが。

「ん? フリージア? 顔が赤いけど」

「~~~ッ! 気のせいです!」

 なのに、それも悪くないとも思ってしまう。
 自分でもわからない。

(何故私は……)

 こんなにも、あなたに目を奪われるんですか――?


 黒の少女

 ――――

(この気持ちが何なのか)
(今はまだわからない)
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