二人の夏祭り
バロータVer.
「バロータ!」
「お、アユミじゃないか」
バロータだった。手には綿飴を持っている。
「あ、楽しんでんだ。よかったよかった」
「まあな。アユミ程じゃねぇけど」
「当然だ。制覇まであと半分近くだし」
「そうか、あと半分……って早ッ!!?」
ぎょっとした表情で見られました。
いいじゃないか、べつに←
「あ。ここで会ったのも何かの縁だし、どうせなら一緒に回ろうぜ」
「お、いいのか? ラッキー♪」
「何よりアイナに手を出しても即抹殺できるしな」
「うわ、怖っ!!?」
――――
「はい、一丁上がり!」
「いや、凄すぎだろ……」
バロータにツッコミを入れられながら、着々と屋台を制覇していった。
今は射的だ。ロングバレルから飛ばすコルクが面白いくらい商品に当たっていく。
「おまえ器用過ぎだろ……どうやったらあんなポンポン落とせんだよ」
「いや祭りだから、事前にサブ学科をガンナーにしてな」
「祭りに本気出し過ぎだろ!? ってかガンナー学科も終わらせてたのか!」
バロータのツッコミが炸裂した。
胡散臭いような風貌のおっさんから商品を受け取りながら聞き流しているけど。
「いやあ、良い腕前だねぇ」
「ふっ……この程度なら朝飯前だよ」
「いや、カッコつけて言うほどでもないだろ」
「あ゙?」
「ごめんなさい! 俺が悪かったです!」
横でグダグダ言ってたバロータを一睨みする。
バロータは即平謝りなのですぐ止めたけど。
「……まあいいや。あ、ありがと、おっさん」
「いいえー。またねー、男前な少年」
「は? 待て、こいつは」
「よし、行くぞ!」
「え? お、おい!」
何か言いたげなバロータの腕を引っ張り、次の屋台へ向かった。
あと数件で制覇だからな!
――――
「よし! 制覇だ!」
全屋台を巡り、完全制覇を果たした。
今は広場に座り込み、かき氷にかじりついてる。
「本当にやりやがったよ、アユミ……」
「当然だ。夏祭りの女帝に不可能はない」
「なんだよ、夏祭りの女帝って!?」
もぐもぐと食べ物に食いつきながら、バロータのツッコミもそれなりにやり過ごす。今は至福に浸っているからな。
「……つーかよ」
「ん?」
「おまえ……なんで訂正しないんだ?」
「何が」
「男じゃなくて女だってこと」
ああ、そのことか。
「べつによくあるこったし。否定して時間費やすのも惜しいし」
「いやいや、よくあるからって……」
「べつに気にしないしな」
俺にとっては些細な問題なんだよ。
そう思いながら再びかき氷を食いはじめる。
「…………」
バロータがため息をつくのが横から聞こえた。
同時にがさがさと何かを取り出す音が。
「おい……」
「ん? なん……」
だ、と言おうとした瞬間、
ぐいっ。
「え……」
いきなり右手を取られた。
それから手首に何か……ブレスレットを着けられた。
「これは……」
「いや、さっき露店で売ってたからさ。結構おまえに似合いそうだなあって」
「へぇ……」
ブレスレットをじっと見つめる。
星の飾りが付いている。派手という訳でもなく、むしろシンプルで良い。
「たしかにデザインは悪くないな」
「だろ? おまえも女だからさ、ちょっとは気を配れよ。せっかく顔は整ってんだからさ」
「おまえの好みはアイナじゃないのか?」
もらっておきながらすごい意地悪い言い方だな、我ながら。
まあバロータは普通な奴だからこそかもしれないけど。
「いや、まあ……アイナちゃんも可愛いけどよ。おまえだって美人だし……」
「ほう? そう思ってたとは思わなかったな」
俺がそう言うと、「はあ……」とため息をつかれた。
……なんで?
「……おまえ。意外と自分に関しては鈍いんだな」
「は? どういう意味?」
「もういいって……」
なぜか呆れた顔をされた。
相変わらず訳わからん男だな、こいつは。
「ま。ブレスレットは気に入ったよ。ありがとな」
「はいよ。どういたしまして」
バロータとブレスレットを交互に見ながら笑いかけた。
バロータはどこか呆れ顔のままだけど、それでもどこか楽しげな表情だった。
星のブレスレット
(黙ってりゃ、こいつも結構可愛い方なんだけどな)
「バロータ!」
「お、アユミじゃないか」
バロータだった。手には綿飴を持っている。
「あ、楽しんでんだ。よかったよかった」
「まあな。アユミ程じゃねぇけど」
「当然だ。制覇まであと半分近くだし」
「そうか、あと半分……って早ッ!!?」
ぎょっとした表情で見られました。
いいじゃないか、べつに←
「あ。ここで会ったのも何かの縁だし、どうせなら一緒に回ろうぜ」
「お、いいのか? ラッキー♪」
「何よりアイナに手を出しても即抹殺できるしな」
「うわ、怖っ!!?」
――――
「はい、一丁上がり!」
「いや、凄すぎだろ……」
バロータにツッコミを入れられながら、着々と屋台を制覇していった。
今は射的だ。ロングバレルから飛ばすコルクが面白いくらい商品に当たっていく。
「おまえ器用過ぎだろ……どうやったらあんなポンポン落とせんだよ」
「いや祭りだから、事前にサブ学科をガンナーにしてな」
「祭りに本気出し過ぎだろ!? ってかガンナー学科も終わらせてたのか!」
バロータのツッコミが炸裂した。
胡散臭いような風貌のおっさんから商品を受け取りながら聞き流しているけど。
「いやあ、良い腕前だねぇ」
「ふっ……この程度なら朝飯前だよ」
「いや、カッコつけて言うほどでもないだろ」
「あ゙?」
「ごめんなさい! 俺が悪かったです!」
横でグダグダ言ってたバロータを一睨みする。
バロータは即平謝りなのですぐ止めたけど。
「……まあいいや。あ、ありがと、おっさん」
「いいえー。またねー、男前な少年」
「は? 待て、こいつは」
「よし、行くぞ!」
「え? お、おい!」
何か言いたげなバロータの腕を引っ張り、次の屋台へ向かった。
あと数件で制覇だからな!
――――
「よし! 制覇だ!」
全屋台を巡り、完全制覇を果たした。
今は広場に座り込み、かき氷にかじりついてる。
「本当にやりやがったよ、アユミ……」
「当然だ。夏祭りの女帝に不可能はない」
「なんだよ、夏祭りの女帝って!?」
もぐもぐと食べ物に食いつきながら、バロータのツッコミもそれなりにやり過ごす。今は至福に浸っているからな。
「……つーかよ」
「ん?」
「おまえ……なんで訂正しないんだ?」
「何が」
「男じゃなくて女だってこと」
ああ、そのことか。
「べつによくあるこったし。否定して時間費やすのも惜しいし」
「いやいや、よくあるからって……」
「べつに気にしないしな」
俺にとっては些細な問題なんだよ。
そう思いながら再びかき氷を食いはじめる。
「…………」
バロータがため息をつくのが横から聞こえた。
同時にがさがさと何かを取り出す音が。
「おい……」
「ん? なん……」
だ、と言おうとした瞬間、
ぐいっ。
「え……」
いきなり右手を取られた。
それから手首に何か……ブレスレットを着けられた。
「これは……」
「いや、さっき露店で売ってたからさ。結構おまえに似合いそうだなあって」
「へぇ……」
ブレスレットをじっと見つめる。
星の飾りが付いている。派手という訳でもなく、むしろシンプルで良い。
「たしかにデザインは悪くないな」
「だろ? おまえも女だからさ、ちょっとは気を配れよ。せっかく顔は整ってんだからさ」
「おまえの好みはアイナじゃないのか?」
もらっておきながらすごい意地悪い言い方だな、我ながら。
まあバロータは普通な奴だからこそかもしれないけど。
「いや、まあ……アイナちゃんも可愛いけどよ。おまえだって美人だし……」
「ほう? そう思ってたとは思わなかったな」
俺がそう言うと、「はあ……」とため息をつかれた。
……なんで?
「……おまえ。意外と自分に関しては鈍いんだな」
「は? どういう意味?」
「もういいって……」
なぜか呆れた顔をされた。
相変わらず訳わからん男だな、こいつは。
「ま。ブレスレットは気に入ったよ。ありがとな」
「はいよ。どういたしまして」
バロータとブレスレットを交互に見ながら笑いかけた。
バロータはどこか呆れ顔のままだけど、それでもどこか楽しげな表情だった。
星のブレスレット
(黙ってりゃ、こいつも結構可愛い方なんだけどな)