雪原とクエストと妖精
――そして、現在に至るっつー訳。
「寒ぃ~……寒ぃよ~ブロッサム~」
「知るかよ……つーか動きにくいんだよ!」
……まあ、こんな風に。こいつとじゃれあいつつ、そのプリシアナッツの実とやらを探してるってことです。はい。
あ、戦闘は普通にしてるからな?
「もふもふ……」
「ちょ、やめ……ッ! くすぐった……ぎゃーーーッ!!」
……うん。まだ入口だけどね←
いやぁ、ブロッサムの翼の羽根、すっごいもふもふのふかふかで最高だからさ。
「……何やってんだ、おまえら」
「な゙」
「あ」
あ、後ろからセルシアたち御一行が……。目を丸くしてるけど←
「……ブロッサム。頼みますから、セルシア様の――ウィンターコスモス家の恥になるような行いはやめてください」
「待った、フリージア! 誤解だ! ってかこれは後ろのこの女が勝手に……!」
「ひどい……俺に凍え死ねって言う気か?」
「俺はそこまで言ってねぇだろ!?」
目が一気に(多分この気候より)冷たくなったフリージアの言葉に大焦りするブロッサムがなんか可愛らしいんで辛かってみた。
俺、性根はSだから←
「フリージア。そのくらいに。ブロッサムとアユミ君も、そろそろ本題に入っていいかい?」
「ああ、構わん。ただし俺は寒いんでこのまま「却下ッ!!」……チッ」
寒いからこのもふもふしながら聞こうとしたが本人に全力拒否された。おのれ……。
まあ話が進まないのも事実だから離れるけど。
「プリシアナッツの実はこの先にあるらしい。もちろん簡単にはとらせてくれないだろうが……アユミ君なら心配はいらないかな」
「……俺は?」
「大丈夫だよ。アユミ君がいるから」
「俺の意味は!?」
「え?」
セルシアからも(本人無自覚だろうが)存在無視され、さらなる追撃を受けたブロッサムだった。
「不憫な……あ。セルシア。聞きたいんだけどさ。……プリシアナッツの実がプリシアナ学院創立に関係あるって話、どういう意味なんだ?」
またコンプレックスを感じてるブロッサムを不憫と思うが、この話がめちゃくちゃ気になるからこっちを最優先にする。
だって気になるから←
「ん? プリシアナッツの実と学院の関係? そういえば聞いたことがあったような……」
「何それ。俺はそんなん全然知らねー」
……バロータが(頭が)使えないのがよくわかった。
「プリシアナ学院の創立当初はこの実を加工して、学校のチャイムにしていたという話があります」
「え? そーなの?」
「学院のチャイム? 僕はそんなの聞いたことないぞ」
……たしかにな。
プリシアナ学院のチャイムはセントウレア校長直々に弾くパイプオルガンだ。
俺もそうだと思ってたし……。
「今はそうですが、創立当初はチャイムがあったという話がありますよ」
「……ああ。昔の話か」
それもそうか。セルシアが聞いたことないなら、多分、現学院の生徒も聞いたことないだろうし。
「へぇ。じゃあなんで、校長のオルガンに変わったんだ?」
「兄様のオルガンの音の方が綺麗だからじゃないのか?」
……軽く兄自慢かい← 生徒会長よ。
「さて、おしゃべりはこの辺にして行こうか。何か困ったことがあったら声をかけてくれ」
「はいはーい」
困ることはないだろうけどね。
戦闘ともふもふは。
「んじゃ行こうか、ブロッサム」
「ああ」
「あ、寒くなったらもふもふ……」
「全力で拒否する」
……もふもふは無惨に散ったな。
まあやるけど←
――――
それからしばらくして――。
「……でやぁ!」
「それっ!」
「キャアァ!!」
現在ハープを持った人魚みたいな奴(セイレーンって言うらしい)とバトっています。
この雪原、やっぱ歓迎の森より強いモンスターが多いんだよ……。
「ふぅ……やっぱ前衛職はキツイな……ってかブロッサム、着いてきてるか?」
「当たり前だろ。……おまえこそ、大丈夫かよ」
「ああ。イケるイケる」
「……どっかで聞き覚えあるセリフだな。それ」
まあこんなくだらん会話をしつつもお互いの無事を確かめてる。
さっきのセイレーンや変な歯車――あばれ歯車――なんか『アクア』や『サンダー』と魔法を使ってきたからな。
……大半は俺にも降ってきたが。
「……さすがに二人はキツイかもな」
「……そーだな」
いくら強くても、やっぱ人数的にな……。ブロッサムの魔法だって無限じゃないし。
「前衛、もしくは多彩な芸道できる後衛プリーズ!! ってか今すぐ出てこいやぁ!」
「こんな雪原で見つかるか!!」
あ、つっこまれた。だって欲しいのは欲し……。
ガタンッ!!
「「……え」」
……あれ? 今、物音が……。
「……アユミ。あれ」
「え?」
ブロッサムに言われて目を向けた。
そこにあるのは、一つの――宝箱。
「……これか?」
「じゃないか……?」
なにせ周りは雪原だ。さっきの物音が出せそうなのはこの宝箱くらいしかない。
……ガタタッ!
――とか思ってたらまた物音がしたし! この宝箱から!
「やっぱりこれだ……」
「ど、どうするんだコレ!!」
「とりあえず開ける」
「そうか……って、はぁ!?」
「何だよ」
「おまえ正気か!?」
スゲー驚いてるブロッサム。
そりゃ何がいるかわからないけど――でも無視←
「大丈夫だって。俺はサブ学科と言えど、盗賊力検定合格してるし」
「そういう意味じゃ……って開けるなぁあ!!」
邪魔が入ったけど時既に遅し。
ガバッ!
鍵は開けたから。
「ヒィイイイッ!! ごめんなさぁあああい!!」
――って……え?
「……フェアリー、だよな?」
「ああ……フェアリー、だな」
中に入ってたのは、フェアリーだった。かなり深い緑の髪が印象的な少年だ。
「ボク、食べてもおいしくないです!! 何でもするから許してぇえええ!!」
――そして、スゲーヘタレだ。
「……おい」
「ヒィッ!!」
「食わねぇよ。てか状況見ろ」
「ひ……え?」
そのフェアリーはようやく気づいたのか、涙目で俺らを見た。
……瞳も深緑色をしているんだな、こいつ。
「誰……って可愛い! ねぇねぇ、君だぁれ? ボク、シルフィネスト! でも長いからシルフィーでいいよ」
「「変わり身早ッ!!」」
目に映って五秒でナンパかよ!?
「……俺はアユミ。こっちはブロッサム」
「へぇー。アユミちゃんに、ブロッサムって言うんだ♪」
あ、意外にも男(ブロッサム)を無視しなかった。つかフレンドリーだ。
……何となく、こいつは軽い男って言うより子供っぽいって感じだな。
「シルフィネスト……いや、シルフィーで良いんだっけ。おまえ、こんなところで何やってんだ?」
「ボク? ボクは、仲間と一緒にここに来たんだ」
「……仲間?」
ブロッサムが首を傾げた。もちろん俺も。
何せここまで誰もいなかった。もちろんこの先の『スノードロップ』という街にいるならそうだが、仲間を置いていくほど薄情な連中なのか? それともこいつがはぐれて迷ったのか……。
「『シルフィネストは戦闘できないんなら、コレに入ってずっとおとなしく待ってろ』って言ってたんだ~♪」
……どうやら前者らしい。
モンスターに怯えてたんだから、戦闘では役に立たず、こんなところに置き去り、というところだろうな。
……けど。
「ブロッサム。こういうのってよくあるのか?」
「いや、普通はない。……特にこいつみたいなパターンは」
「……ですよねー」
こんなことが普通に起こってたら劣化だらけの最悪な世界だ。
「……どうしよ。戻る時間が惜しいんだけど」
「戻った分、また倍の疲労が溜まるだけだろ」
「まあな……」
正直敵を一体一体斬り伏せるのは手間がかかる。さらに遅れるなんて冗談じゃねぇよ。
「……連れてく?」
「それしかないよな……」
「ホント~!? わーい♪ ありがとう、アユミちゃん、ブロッサム!」
俺ら二人の心情も知らずシルフィーは喜んでる。
……うん。こいつ、
能天気通り越してただのバカだろ。
――――
まあ、こいつが放っておけないのも戻る暇が無いのも事実なので、結局連れていくしか無い訳で――。
「だからって……」
「ああ――邪魔だ。特に戦闘が」
モンスターには怯えるわ逃げるわ隠れるわ……揚げ句の果てには魔法乱射(信じられないけどこいつ、賢者学科だから)だ。俺もブロッサムも受けてきたダメージの三割はこいつが原因だ。
「このままだと全滅だな、確実に……まずい」
「みゅ~」
シルフィーは逃げ回っているため体力はそんなに削られてない。
けど俺たちは違う。
何せ大半の魔物を斬り捨ててきたのは俺らだからな! 疲労も溜まりまくりだよ!?
「……プリシアナッツの実がある場所はもうすぐそこなんだが……どうする、アユミ?」
悩む俺に恐る恐る話しかけてきたブロッサム。
……そんなこと言われたら、取るべき行動は……。
「……早急に手に入れてずらかるか」
「……だよな」
これしかねぇよ……。
せっかくここまで来たんだしさあ! 引き返すって選択なんて認めねぇよ!
「寒ぃ~……寒ぃよ~ブロッサム~」
「知るかよ……つーか動きにくいんだよ!」
……まあ、こんな風に。こいつとじゃれあいつつ、そのプリシアナッツの実とやらを探してるってことです。はい。
あ、戦闘は普通にしてるからな?
「もふもふ……」
「ちょ、やめ……ッ! くすぐった……ぎゃーーーッ!!」
……うん。まだ入口だけどね←
いやぁ、ブロッサムの翼の羽根、すっごいもふもふのふかふかで最高だからさ。
「……何やってんだ、おまえら」
「な゙」
「あ」
あ、後ろからセルシアたち御一行が……。目を丸くしてるけど←
「……ブロッサム。頼みますから、セルシア様の――ウィンターコスモス家の恥になるような行いはやめてください」
「待った、フリージア! 誤解だ! ってかこれは後ろのこの女が勝手に……!」
「ひどい……俺に凍え死ねって言う気か?」
「俺はそこまで言ってねぇだろ!?」
目が一気に(多分この気候より)冷たくなったフリージアの言葉に大焦りするブロッサムがなんか可愛らしいんで辛かってみた。
俺、性根はSだから←
「フリージア。そのくらいに。ブロッサムとアユミ君も、そろそろ本題に入っていいかい?」
「ああ、構わん。ただし俺は寒いんでこのまま「却下ッ!!」……チッ」
寒いからこのもふもふしながら聞こうとしたが本人に全力拒否された。おのれ……。
まあ話が進まないのも事実だから離れるけど。
「プリシアナッツの実はこの先にあるらしい。もちろん簡単にはとらせてくれないだろうが……アユミ君なら心配はいらないかな」
「……俺は?」
「大丈夫だよ。アユミ君がいるから」
「俺の意味は!?」
「え?」
セルシアからも(本人無自覚だろうが)存在無視され、さらなる追撃を受けたブロッサムだった。
「不憫な……あ。セルシア。聞きたいんだけどさ。……プリシアナッツの実がプリシアナ学院創立に関係あるって話、どういう意味なんだ?」
またコンプレックスを感じてるブロッサムを不憫と思うが、この話がめちゃくちゃ気になるからこっちを最優先にする。
だって気になるから←
「ん? プリシアナッツの実と学院の関係? そういえば聞いたことがあったような……」
「何それ。俺はそんなん全然知らねー」
……バロータが(頭が)使えないのがよくわかった。
「プリシアナ学院の創立当初はこの実を加工して、学校のチャイムにしていたという話があります」
「え? そーなの?」
「学院のチャイム? 僕はそんなの聞いたことないぞ」
……たしかにな。
プリシアナ学院のチャイムはセントウレア校長直々に弾くパイプオルガンだ。
俺もそうだと思ってたし……。
「今はそうですが、創立当初はチャイムがあったという話がありますよ」
「……ああ。昔の話か」
それもそうか。セルシアが聞いたことないなら、多分、現学院の生徒も聞いたことないだろうし。
「へぇ。じゃあなんで、校長のオルガンに変わったんだ?」
「兄様のオルガンの音の方が綺麗だからじゃないのか?」
……軽く兄自慢かい← 生徒会長よ。
「さて、おしゃべりはこの辺にして行こうか。何か困ったことがあったら声をかけてくれ」
「はいはーい」
困ることはないだろうけどね。
戦闘ともふもふは。
「んじゃ行こうか、ブロッサム」
「ああ」
「あ、寒くなったらもふもふ……」
「全力で拒否する」
……もふもふは無惨に散ったな。
まあやるけど←
――――
それからしばらくして――。
「……でやぁ!」
「それっ!」
「キャアァ!!」
現在ハープを持った人魚みたいな奴(セイレーンって言うらしい)とバトっています。
この雪原、やっぱ歓迎の森より強いモンスターが多いんだよ……。
「ふぅ……やっぱ前衛職はキツイな……ってかブロッサム、着いてきてるか?」
「当たり前だろ。……おまえこそ、大丈夫かよ」
「ああ。イケるイケる」
「……どっかで聞き覚えあるセリフだな。それ」
まあこんなくだらん会話をしつつもお互いの無事を確かめてる。
さっきのセイレーンや変な歯車――あばれ歯車――なんか『アクア』や『サンダー』と魔法を使ってきたからな。
……大半は俺にも降ってきたが。
「……さすがに二人はキツイかもな」
「……そーだな」
いくら強くても、やっぱ人数的にな……。ブロッサムの魔法だって無限じゃないし。
「前衛、もしくは多彩な芸道できる後衛プリーズ!! ってか今すぐ出てこいやぁ!」
「こんな雪原で見つかるか!!」
あ、つっこまれた。だって欲しいのは欲し……。
ガタンッ!!
「「……え」」
……あれ? 今、物音が……。
「……アユミ。あれ」
「え?」
ブロッサムに言われて目を向けた。
そこにあるのは、一つの――宝箱。
「……これか?」
「じゃないか……?」
なにせ周りは雪原だ。さっきの物音が出せそうなのはこの宝箱くらいしかない。
……ガタタッ!
――とか思ってたらまた物音がしたし! この宝箱から!
「やっぱりこれだ……」
「ど、どうするんだコレ!!」
「とりあえず開ける」
「そうか……って、はぁ!?」
「何だよ」
「おまえ正気か!?」
スゲー驚いてるブロッサム。
そりゃ何がいるかわからないけど――でも無視←
「大丈夫だって。俺はサブ学科と言えど、盗賊力検定合格してるし」
「そういう意味じゃ……って開けるなぁあ!!」
邪魔が入ったけど時既に遅し。
ガバッ!
鍵は開けたから。
「ヒィイイイッ!! ごめんなさぁあああい!!」
――って……え?
「……フェアリー、だよな?」
「ああ……フェアリー、だな」
中に入ってたのは、フェアリーだった。かなり深い緑の髪が印象的な少年だ。
「ボク、食べてもおいしくないです!! 何でもするから許してぇえええ!!」
――そして、スゲーヘタレだ。
「……おい」
「ヒィッ!!」
「食わねぇよ。てか状況見ろ」
「ひ……え?」
そのフェアリーはようやく気づいたのか、涙目で俺らを見た。
……瞳も深緑色をしているんだな、こいつ。
「誰……って可愛い! ねぇねぇ、君だぁれ? ボク、シルフィネスト! でも長いからシルフィーでいいよ」
「「変わり身早ッ!!」」
目に映って五秒でナンパかよ!?
「……俺はアユミ。こっちはブロッサム」
「へぇー。アユミちゃんに、ブロッサムって言うんだ♪」
あ、意外にも男(ブロッサム)を無視しなかった。つかフレンドリーだ。
……何となく、こいつは軽い男って言うより子供っぽいって感じだな。
「シルフィネスト……いや、シルフィーで良いんだっけ。おまえ、こんなところで何やってんだ?」
「ボク? ボクは、仲間と一緒にここに来たんだ」
「……仲間?」
ブロッサムが首を傾げた。もちろん俺も。
何せここまで誰もいなかった。もちろんこの先の『スノードロップ』という街にいるならそうだが、仲間を置いていくほど薄情な連中なのか? それともこいつがはぐれて迷ったのか……。
「『シルフィネストは戦闘できないんなら、コレに入ってずっとおとなしく待ってろ』って言ってたんだ~♪」
……どうやら前者らしい。
モンスターに怯えてたんだから、戦闘では役に立たず、こんなところに置き去り、というところだろうな。
……けど。
「ブロッサム。こういうのってよくあるのか?」
「いや、普通はない。……特にこいつみたいなパターンは」
「……ですよねー」
こんなことが普通に起こってたら劣化だらけの最悪な世界だ。
「……どうしよ。戻る時間が惜しいんだけど」
「戻った分、また倍の疲労が溜まるだけだろ」
「まあな……」
正直敵を一体一体斬り伏せるのは手間がかかる。さらに遅れるなんて冗談じゃねぇよ。
「……連れてく?」
「それしかないよな……」
「ホント~!? わーい♪ ありがとう、アユミちゃん、ブロッサム!」
俺ら二人の心情も知らずシルフィーは喜んでる。
……うん。こいつ、
能天気通り越してただのバカだろ。
――――
まあ、こいつが放っておけないのも戻る暇が無いのも事実なので、結局連れていくしか無い訳で――。
「だからって……」
「ああ――邪魔だ。特に戦闘が」
モンスターには怯えるわ逃げるわ隠れるわ……揚げ句の果てには魔法乱射(信じられないけどこいつ、賢者学科だから)だ。俺もブロッサムも受けてきたダメージの三割はこいつが原因だ。
「このままだと全滅だな、確実に……まずい」
「みゅ~」
シルフィーは逃げ回っているため体力はそんなに削られてない。
けど俺たちは違う。
何せ大半の魔物を斬り捨ててきたのは俺らだからな! 疲労も溜まりまくりだよ!?
「……プリシアナッツの実がある場所はもうすぐそこなんだが……どうする、アユミ?」
悩む俺に恐る恐る話しかけてきたブロッサム。
……そんなこと言われたら、取るべき行動は……。
「……早急に手に入れてずらかるか」
「……だよな」
これしかねぇよ……。
せっかくここまで来たんだしさあ! 引き返すって選択なんて認めねぇよ!