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灼熱の戦闘

「そいつはどうでっかな? ゴフォメドー先輩……」

「何ィ?」

 俺らが立ち往生してると、カータロが不敵に笑いだした。
 それにゴフォメドーがピクリと反応する。

「確かにドワーフや人間には、アンタみたいな馬鹿力は出せまへんわ。……せやけど、神さんたちに捧げて、神さんたちからいただく力――スモウの力やったら、どないやろなあ!?」

 カータロは大きく足を上げ、大地に力強い四股を踏んだ。
 おお……頼もしく見えるぞ、カータロよ。ジークより←

「ほほう、スモンか。そういやあ、東の方で神をやっとる先公の何人かが、そんなもんを人間たちに教えとったのう」

「……いたのか」

 予想はしてたが、いたか。スモウを教えてた神様。
 今も伝わってると知るや、「ええじゃろ」とゴフォメドーも頷く。

「始原の学園で編み出された格闘技がどれほど伝わっとるか、確かめたる!」

「よし……どすこいっ!!」

 ゴフォメドーが校章を振りかざしながら笑い出した。
 カータロは気にせず、校章に向かって突撃する。

「ふんぬぬぬっ!!!」

「ガッハハハ! ゆーあーべりべりストロングじゃのう、こわっぱ! 確かにこりゃあ、神々からもらったような力じゃわい!」

「せやろ……ぬぐぐぐ!!」

 ゴフォメドーの笑いに、カータロは空元気だけは見せる。
 ……が、校章は何にも反応を示さない。

「まずいな……カータロの奴、押されてやがる……」

「やっぱ、とんでもない力の持ち主だな……あの魔貴族」

 見守る俺らにも焦りが生じた。
 カータロの得意技すら効かないとは……正直、打つ手がない。

「大したもんじゃが……所詮はドワーフの子! ワシの怪力は、先公やっとった神々本人でも止められなかったんじゃあ!!」

 ゴフォメドーは腕を思いきり振り、カータロを洞窟の壁に叩きつけた。

「んぎゃあああっ!!!」

「カータロ!」

「ヌシぁ度胸のある後輩じゃ! それに免じて、楽ゥに死なせてやろう!」

「テメェ……ッ!」

 強力な一撃で身動きが取れないカータロにゴフォメドーが近づく。
 それにとっさに割り込もうとする。

「待ちなあ!!」

「ふんぬっ!?」

 が、その前に立ちはだかったのはジークだった。

「見よう見まねだが、オレだってスモウくらい……!」

「こいつを助けたかったか? 友情じゃのう! じゃが弱いッ!」

「ぐはっ!!」

 カータロのために間に入り込むが、ジークもカータロの上に投げ飛ばされた。
 ……まあ、見よう見まねでできるほど、スモウは甘くないがな。

「さあて、コイツらから殺すか……それともアガシオンが言うとった、アユミたちとやらからがいいかのう?」

「……!」

 ギロリと片目がこちらを向いた。
 向けられる殺気に、反射的に身構える。

「待てぇい!!」

「何奴っ!?」

 だがしかし、ここでもまた誰かが現れた。
 突然の乱入者に、ゴフォメドーも俺らも声の方へ振り向く。

「始原の学園の番長だがなんだか知らないけど、おまえみたいに偉そうにしてるヤツは大嫌いさ!」

「お、おまえは……!」

「ボクは英雄・レオノチス! 次期、始原の学園の番長だー!」

 やってきたのはレオだった。
 ……ああ。期待するだけ無駄だったな←

「威勢のいいチビっ子が出てきたのう。その心意気は面白いが、力ではワシの足下にも及ぶまい!」

 ゴフォメドーもレオを見て、豪快にゲラゲラと笑った。
 ま、そうなるわな。

「フフフ……それはどうかな?」

 ……が、策でもあるのか、レオは不敵な笑みで笑っている。

「レオ~。何か考えでもあるの~?」

「もちろんさ! いでよ! ブーゲンビリア山!」

「れ、レオ! こんな格好、恥ずかしいわ!」

「大丈夫、大丈夫! 頑張って、ブーゲンビリア!」

「すまん……ホントにすまん……」

 そう言ってレオの後ろから現れたのは……まわしを着けたブーゲンビリアと、それを押すアイナ。そして合掌しているカエデだった。
 ……ああ。要するにいつものブーゲンビリア頼りですね。そしてまわしは誰かからから借りた、と。よくわかりました←

「こ……これはいくらなんでも……さっきゴフォメドーから受けた攻撃よりひどいわ……」

「うう……ますます気持ちが悪く……」

「こら、そこ! 変な反応しないの!」

「ひ、ひどいわ、みんな! だからこんな格好したくないって言ったのにっ」

「スモウって言ったら、ブーゲンビリアが一番強そうなんだから、文句言うな!」

 カータロとジークの反応を見て、ブーゲンビリアが泣きそう(というか半泣き)になった。
 あー……けど、しかたないか。ブーゲンビリアの外見的に。

「さあ! ブーゲンビリア山と勝負しろ! ……って、あれ?」

 レオがきょとんとなった。
 つられて俺らも向ける。

「な、なんちゅう、めんこいおなごじゃあ……」

 ……どうやらゴフォメドーはブーゲンビリアに見とれているようだ。
 おい……こいつ、目は大丈夫なのか? 魔貴族にも眼科は必要ですかね?

「なっ!? あんさん、いったいどんな目してるんでっか!?」

「しかも女じゃないし!」

「……アユミの考え通り、眼科でも紹介するか?」

 カータロ、ジーク、ブロッサムも同じことを考えだったらしい。
 ってか、ブロッサム君。考え読むなよ。隠し事できない過ぎる。

「ヤダ……そんなに見つめられたら、私、困っちゃう……」

「こんなにめんこいおなごは見たことがない! 名はなんと言うんじゃ?」

「ブーゲンビリアよ……」

「ブーゲンビリア! 名前も美しいのう!! わ、ワシぁ……惚れてしもうたぞ……」

「はあ!?」

「ええ!!?」

「こんな展開アリかよ!?」

 初々しい反応する二人とそれにツッコむ三人。
 どうしよう、この展開。半分呆然となるけど、面白いから見てみたい気もする←

「あ、あれ? なんでスモウとらないの? なんで二人でモジモジしてるの!?」

「あれ……予想外の展開になっちゃったかな?」

「なんでだよ!? どうしてこうなった!?」

 予想外の展開に、レオはわかってないらしいな。アイナも首をかしげながら、わかってるのかわかってないのかわからない発言をする。
 反対に「有り得ねぇえええっ!!!」と渾身のシャウトをするカエデ。俺も激しくそう思うよ……。

「私……こんなに誉められたの初めてだわ……ど、どうしましょう」

「ブーゲンビリアさん……どうかこのワシと、そ、その……つ、付き合って……」

「ボク抜きで勝手に話を進めるなー!!」

 初々しい(外見はアレだが)雰囲気を出す二人に、レオが地団駄を踏んだ。
 こいつはやっぱわかってないか……まあレオだからかもしれないが。

「ええい! 腹が立った! 校章なんか、こうしてやる!」

 キレたレオが剛力の校章を殴った。

 ビキッ。

 で、ヒビが入った。
 あれ? なんで?

「ぬ、ぬおお……! い、いかん……ブーゲンビリアさんの美しさに見とれて、本来の力が出せん!」

「それで弱体化するのか、おまえは」

「それで弱体化……惚れた弱味?」

 なんとも容易い弱点だなあ。
 ライラの言う通り、惚れた弱味とはよく言ったもんだな。

「よし!なんかわかんないけど、踊れ! ブーゲンビリア!!」

「ええっ!? おスモウをとるんじゃなかったの!?」

「作戦変更だ! おまえのセクシーダンスでメロメロにしてやれ!」

「せ、セクシーダンス!? そ、そんなものいかん!」

 レオの出した指示に、ゴフォメドーに(別の意味で)焦りが見えた。

「そんなものを見せられたらワシは……ワシは……ああ! だが見たい!」

 ジレンマに悩まされてるな。
 ……まあ、気持ちはわかるが。俺もブロッサムの(半泣き)女装写真と引き換えにされたら、迷うかもしれん←

「そ、それじゃあ、ステージ用のダンスをするわね!」

 なんだかんだしてるうちに、ブーゲンビリアはくねくねと意味不明な踊りを始めた。
 ……これ、ステージ用に使えんの?

「な、なんか、大変なことになってるけど……」

「あ、あれは漢の世界よ! 私たちはここから見守っていましょう!」

 ロクロは関わりたくないか、呆然としているベルタと後方に逃げた。
 あー、でも女子なら当然の反応かもな。

「おいおい……なんなんだよ、このカオスな状況……」

「お、おえー……なんちゅう踊りを……なんでアイツも見とれてんねん……」

 カエデとカータロは揃って頭を抱える。
 ……ブーゲンビリアの外見的に無理もないか。

「いや、だけど、今なら剛力の校章を壊せるかもしれないぞ!」

「あ! そうやな!」

 いち早く我に返ったジークの声に、カータロも前を向く。
 強度に関してはレオが実証済みだからな。三人ならぶっ壊れるかも。

「行くぞ! せーのっ!!」

 レオ、カータロ、ジークが息を合わせ、校章にぶつかった。
 さすがに男子三人の力は凄まじいな。ガラスが砕けるような音を発てながら、剛力の校章は砕け散った。

「ぐおおおっ!? わ、ワシの剛力の校章が! なんちゅうこっちゃ!」

「やったあ!」

 ゴフォメドーも驚きは隠せないようだな。
 壊せたことに、レオは無邪気に跳ねて喜ぶ。

「ちょっ、ちょお待てや! この盾、抑えておかんと再生するで!」

「オレたちでコレは抑えている! アユミたち! 今のうちに頼む!」

「やっぱりか」

 予想はできてたけどな。
 というか、そんなに俺に経験値を積ませたいんですか?

「……ガッハハハ! ブーゲンビリアさんの美しさの前では、剛力の校章も形無しじゃわい!」

 美しさ、なあ……。ま、美意識は人それぞれなので、それに関してツッコミはやめておこう←

「じゃがなあ……ワシぁ校章で無敵にならずとも……ヌシらなぞ、片手で十分じゃあ! ヌシらを片付けてから、ブーゲンビリアさんとハッピーエンドを迎えてやるわい!」

「生憎おまえがこれから迎えるのはハッピーエンドじゃなくて、地獄への旅行だ!!」

 校章という防御がなくなった今、手に入れたチャンスは活かすものだ。
 刀を抜き、ゴフォメドーと対峙する。
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