二つの光の末裔
「そなたたちの気持ちはどうじゃ? 祖先の真実を知る前と知った今とでは」
「僕は……アガシオンを倒さなくては、という気持ちが強くなってるよ」
キルシュの問いに真っ先に反応したのはセルシアだった。
さっきと違う……ブロッサムと同じ、迷いない瞳だった。
「今まではプリシアナ学院の生徒として役目を果たさなくてはと思っていたけど、今はそれだけじゃない。ウィンターコスモスの血を受け継ぐ者として、初代が成し遂げられなかったことを果たしたい」
「セルシア……」
もはや迷いはない。
するとセルシアに反応するかのようにオルゴールがわずかに輝き出す。
「俺は……さっきと同じだ。ただ自分にできることをする。……そして、勝手な運命と今も戦ってるアユミを助けたい」
「……サンキュ、ブロッサム」
ブロッサムの意思も強かった。
オルゴールの輝きがまた一段と強くなる。
「……けど、さ。俺にしろセルシアにしろ、やっぱ一人は無理……なんだよな」
「ああ。それらを成し遂げるには、みんなの力が必要だ」
二人が順に俺らを見る。
「俺は……俺らは自分の我が儘……望みを叶えたい」
「これはもうプリシアナの生徒の使命ではない。僕の望みだ。……それでもみんな、一緒に来てくれるか?」
二人の問いに否定する者はいない。全員が笑顔で頷いた。
「私はいつも、セルシア様のお側におります」
「悪い奴がいたらぶっ飛ばすに決まってるよ! だってボクは英雄なんだから!」
「英雄見習い、でしょ? でも、私もレオの意見に賛成。ここまで来て最後まで付き合わなきゃ、付き合い悪すぎでしょ」
「もちろん私も一緒に行くわ! アマリリスちゃんを不良の道に誘った人は――許せないわ!」
「俺だってフリージアみたいに仕えてるわけじゃねぇけど、大事な親友だ。どこまでも付き合うぜ!」
「ボクだって同じだよ? だってお友達だもん♪」
「みんな……ありがとう……!」
全員の心はひとつ。
セルシアは笑顔で礼を言った。
「……アユミ」
そして最後……俺に視線を向けられる。
「君の背負ってる物がどれだけのもので、それが何なのか……悔しいけど僕はわからない」
「……ん」
「だけど――僕らには、君の力も必要なんだ」
「守りたい奴に力を借りるって、なんか本末転倒な気もするけど……俺も、おまえに一緒に来てほしい、な」
「……ふふっ。当たり前なこと言うなって」
二人のセレスティアの同時の問いに……俺は大きく頷く。
カッ――!!
「うぉ!!?」
するとオルゴールがまばゆい光を放った。
眩しい――というより、強く淡く光るって感じだな。
「あら。どうやら、宝具が目覚めたみたいですわね」
「目覚めた、だって?」
ユリの言葉に目を丸くする。
キルシュが本を開き、「うむ」と頷く。
「真の輝き……それは真実を知り、それを受け入れ、そして仲間たちとともに苦難を乗り越えること……この本の最後に光のセレスティアの言葉として書き残されておる」
「光のセレスティアの……?」
ブロッサムのつぶやきに相槌を打ちながら、キルシュは本を閉じた。
「そうじゃ。……初代ウィンターコスモスにも、よき仲間がおったのじゃろう」
「……? なんで、俺とアユミを見ながら言うんだよ?」
「キルシュ?」
自分とブロッサムを見ながら小さく微笑んだキルシュに、俺は首を傾げ、ブロッサムがたじろぐ。
「いや……アユミも、凡人とは違う何かを持っているやも、と思ってな。だからブロッサムは、わずかながら鳴らせたのかもしれぬ」
「へ? どういう意味?」
目を丸くしながらレオがたずねた。
みんなも頭に疑問符を浮かべている。
「ブロッサムはすでに、アガシオンらからアユミを守るという望みで動いていたのじゃろう? あの時、自分自身のありったけの気持ちを吐き出したから、鳴ったのではないのか?」
「そうですわねぇ。守ると言って、あんな大胆に愛の告白をなさるなんて」
「たしかにブロッサムにしては感動的だったな」
「な゙ッ!!?」
あ。ユリの“愛の告白”という言葉に真っ赤になった。
まあ、こいつ純情だからな。うん←
「あ、そっか。ブロッサムの強くなった理由ってアユミだもんね」
「ウィンターコスモス家分家の大恋愛!? これってすっごいヒミツかもね!」
「二人とも、ラブラブで羨ましいわ!」
「ち、違う!! 俺はそういう意味で言ったんじゃなくて!!」
レオパーティに耳まで赤くなりながら必死でブロッサムは否定している。
さすがツンデレ属性。否定しても可愛い奴だな←
「うわ~~~ん! なんかボク、お邪魔虫みたいな感じだよぅ、バロータ~~~!」
「あーよしよし。俺んとこでよければいつでも来ていいから。な?」
「悪いな、シルフィー……俺、めいいっぱい幸せになるから」
「ぐすっ……うん、寂しいけど、ボクじゅくふぐじまず……」
「よく言った! 偉いぞ、シルフィー!」
「そこ! 悪乗りするんじゃねぇ! ややこしくなるだろうが!!」
同時にツッコミ属性も発動してるな。
顔を赤くしながらもご苦労なこった。
「「…………」」
「……あの。なんでセルシアとフリージアは怖い顔してるんデスカ……?」
反対にセルシアとフリージアは無表情だった。
正確にはセルシアは微笑を浮かべているが、目が笑っていない。
フリージアは……なんか、不満そうな感じだ。
「いや? べつに? 何もないけど?」
「……なんでもありませんっ」
セルシアはにこにこと……あくまでもにこにこと笑顔で言う。それが逆に怖い。ブロッサムどころかバロータもものすごく怖がってるし。
フリージアは……眼鏡を上げながらツンとそっぽを向く。アレ? 第二のツンデレ?
「……もうやだ。このメンツ」
「あ、あの……お気をたしかに……」
あ。ブロッサムの心のライフが0になった。
それをリンツェがオロオロしながら慰めてる。
「やれやれ……シリアスがぶち壊しじゃのう」
「しかたなくてよ、キルシュ。男の嫉妬は醜いけど、アユミがいる以上しかたありませんわ」
「なんで俺?」
どういう意味だ、貴様←
「む、無自覚か……ま、まあよい。なんであれ、わらわの役目はもう終わりじゃ」
「ん? ……ああ。クラティウスを追うのか?」
俺がたずねると「うにゅ」とキルシュは大きく頷いた。
「わらわもノイツェシュタインの王女としてせねばならぬことが山積みじゃ。アユミ。そして光のセレスティアの末裔よ。また会おうぞ」
「私も失礼しますわ。リンツェ、参りますわよ」
「は、はいっ! ユリ様! あ、し、失礼しました!!」
全員に軽く挨拶したあと、キルシュはパーティに戻っていった。
続いてユリ、呼ばれたリンツェも慌てて追っていく。
「……へぇ。キルシュ、良い感じじゃん?」
「きっとクラティウスちゃんのおかげだよね~」
あの我が儘自己中が嘘のようだ。
俺はシルフィーとうんうんと頷きあった。
「ね。それで、オルゴールはどうなったの? 宝具が目覚めたとか言ってたけど……」
ここでレオがオルゴールを指さしながらたずねた。
……あ、いけね。すっかり忘れてた←
「そうだったな。セルシア、ブロッサム。もう一度鳴らしてみろよ」
「わかった」
「え……あ、ああ」
ブロッサムがあっさり頷いたのに対し、セルシアは微妙に戸惑う。
やっぱりまだ少し怖いのかな。
「セルシア」
「? なんだ。アユミ」
「信じろ。俺らとおまえ自身を」
「……!」
「……な?」
「……そうだな……。やってみよう!」
大きく頷き、ブロッサムと一緒に魔法陣の前に立つ。そして一緒に純潔のオルゴールを奏でた。
「……!」
すると俺たちから光の粒が現れ、それがオルゴールに吸収されていった。
オルゴールは美しい音を出し、光とともに魔法陣を消し去った。
「やったあ!」
「先に進めるね~! ……でも」
レオと一緒にシルフィーも喜ぶが、すぐに顔を歪ませた。
それは他の面々も一緒だ。
「なんか……さっきまでと全然違うかも……」
「……だな。アユミを狙ってきた、闇の力と似てる」
「……アガシオン。それにエデンもいる。きっと」
纏わり付く闇は俺らだけじゃない。
レオやセルシアたちも敏感に感じていた。
「……何が起こるかわからない。慎重に行こう」
「ああ……」
俺の言葉に全員が頷く。
そして闇の気配が漂う道を、俺たちは進んでいった。
「僕は……アガシオンを倒さなくては、という気持ちが強くなってるよ」
キルシュの問いに真っ先に反応したのはセルシアだった。
さっきと違う……ブロッサムと同じ、迷いない瞳だった。
「今まではプリシアナ学院の生徒として役目を果たさなくてはと思っていたけど、今はそれだけじゃない。ウィンターコスモスの血を受け継ぐ者として、初代が成し遂げられなかったことを果たしたい」
「セルシア……」
もはや迷いはない。
するとセルシアに反応するかのようにオルゴールがわずかに輝き出す。
「俺は……さっきと同じだ。ただ自分にできることをする。……そして、勝手な運命と今も戦ってるアユミを助けたい」
「……サンキュ、ブロッサム」
ブロッサムの意思も強かった。
オルゴールの輝きがまた一段と強くなる。
「……けど、さ。俺にしろセルシアにしろ、やっぱ一人は無理……なんだよな」
「ああ。それらを成し遂げるには、みんなの力が必要だ」
二人が順に俺らを見る。
「俺は……俺らは自分の我が儘……望みを叶えたい」
「これはもうプリシアナの生徒の使命ではない。僕の望みだ。……それでもみんな、一緒に来てくれるか?」
二人の問いに否定する者はいない。全員が笑顔で頷いた。
「私はいつも、セルシア様のお側におります」
「悪い奴がいたらぶっ飛ばすに決まってるよ! だってボクは英雄なんだから!」
「英雄見習い、でしょ? でも、私もレオの意見に賛成。ここまで来て最後まで付き合わなきゃ、付き合い悪すぎでしょ」
「もちろん私も一緒に行くわ! アマリリスちゃんを不良の道に誘った人は――許せないわ!」
「俺だってフリージアみたいに仕えてるわけじゃねぇけど、大事な親友だ。どこまでも付き合うぜ!」
「ボクだって同じだよ? だってお友達だもん♪」
「みんな……ありがとう……!」
全員の心はひとつ。
セルシアは笑顔で礼を言った。
「……アユミ」
そして最後……俺に視線を向けられる。
「君の背負ってる物がどれだけのもので、それが何なのか……悔しいけど僕はわからない」
「……ん」
「だけど――僕らには、君の力も必要なんだ」
「守りたい奴に力を借りるって、なんか本末転倒な気もするけど……俺も、おまえに一緒に来てほしい、な」
「……ふふっ。当たり前なこと言うなって」
二人のセレスティアの同時の問いに……俺は大きく頷く。
カッ――!!
「うぉ!!?」
するとオルゴールがまばゆい光を放った。
眩しい――というより、強く淡く光るって感じだな。
「あら。どうやら、宝具が目覚めたみたいですわね」
「目覚めた、だって?」
ユリの言葉に目を丸くする。
キルシュが本を開き、「うむ」と頷く。
「真の輝き……それは真実を知り、それを受け入れ、そして仲間たちとともに苦難を乗り越えること……この本の最後に光のセレスティアの言葉として書き残されておる」
「光のセレスティアの……?」
ブロッサムのつぶやきに相槌を打ちながら、キルシュは本を閉じた。
「そうじゃ。……初代ウィンターコスモスにも、よき仲間がおったのじゃろう」
「……? なんで、俺とアユミを見ながら言うんだよ?」
「キルシュ?」
自分とブロッサムを見ながら小さく微笑んだキルシュに、俺は首を傾げ、ブロッサムがたじろぐ。
「いや……アユミも、凡人とは違う何かを持っているやも、と思ってな。だからブロッサムは、わずかながら鳴らせたのかもしれぬ」
「へ? どういう意味?」
目を丸くしながらレオがたずねた。
みんなも頭に疑問符を浮かべている。
「ブロッサムはすでに、アガシオンらからアユミを守るという望みで動いていたのじゃろう? あの時、自分自身のありったけの気持ちを吐き出したから、鳴ったのではないのか?」
「そうですわねぇ。守ると言って、あんな大胆に愛の告白をなさるなんて」
「たしかにブロッサムにしては感動的だったな」
「な゙ッ!!?」
あ。ユリの“愛の告白”という言葉に真っ赤になった。
まあ、こいつ純情だからな。うん←
「あ、そっか。ブロッサムの強くなった理由ってアユミだもんね」
「ウィンターコスモス家分家の大恋愛!? これってすっごいヒミツかもね!」
「二人とも、ラブラブで羨ましいわ!」
「ち、違う!! 俺はそういう意味で言ったんじゃなくて!!」
レオパーティに耳まで赤くなりながら必死でブロッサムは否定している。
さすがツンデレ属性。否定しても可愛い奴だな←
「うわ~~~ん! なんかボク、お邪魔虫みたいな感じだよぅ、バロータ~~~!」
「あーよしよし。俺んとこでよければいつでも来ていいから。な?」
「悪いな、シルフィー……俺、めいいっぱい幸せになるから」
「ぐすっ……うん、寂しいけど、ボクじゅくふぐじまず……」
「よく言った! 偉いぞ、シルフィー!」
「そこ! 悪乗りするんじゃねぇ! ややこしくなるだろうが!!」
同時にツッコミ属性も発動してるな。
顔を赤くしながらもご苦労なこった。
「「…………」」
「……あの。なんでセルシアとフリージアは怖い顔してるんデスカ……?」
反対にセルシアとフリージアは無表情だった。
正確にはセルシアは微笑を浮かべているが、目が笑っていない。
フリージアは……なんか、不満そうな感じだ。
「いや? べつに? 何もないけど?」
「……なんでもありませんっ」
セルシアはにこにこと……あくまでもにこにこと笑顔で言う。それが逆に怖い。ブロッサムどころかバロータもものすごく怖がってるし。
フリージアは……眼鏡を上げながらツンとそっぽを向く。アレ? 第二のツンデレ?
「……もうやだ。このメンツ」
「あ、あの……お気をたしかに……」
あ。ブロッサムの心のライフが0になった。
それをリンツェがオロオロしながら慰めてる。
「やれやれ……シリアスがぶち壊しじゃのう」
「しかたなくてよ、キルシュ。男の嫉妬は醜いけど、アユミがいる以上しかたありませんわ」
「なんで俺?」
どういう意味だ、貴様←
「む、無自覚か……ま、まあよい。なんであれ、わらわの役目はもう終わりじゃ」
「ん? ……ああ。クラティウスを追うのか?」
俺がたずねると「うにゅ」とキルシュは大きく頷いた。
「わらわもノイツェシュタインの王女としてせねばならぬことが山積みじゃ。アユミ。そして光のセレスティアの末裔よ。また会おうぞ」
「私も失礼しますわ。リンツェ、参りますわよ」
「は、はいっ! ユリ様! あ、し、失礼しました!!」
全員に軽く挨拶したあと、キルシュはパーティに戻っていった。
続いてユリ、呼ばれたリンツェも慌てて追っていく。
「……へぇ。キルシュ、良い感じじゃん?」
「きっとクラティウスちゃんのおかげだよね~」
あの我が儘自己中が嘘のようだ。
俺はシルフィーとうんうんと頷きあった。
「ね。それで、オルゴールはどうなったの? 宝具が目覚めたとか言ってたけど……」
ここでレオがオルゴールを指さしながらたずねた。
……あ、いけね。すっかり忘れてた←
「そうだったな。セルシア、ブロッサム。もう一度鳴らしてみろよ」
「わかった」
「え……あ、ああ」
ブロッサムがあっさり頷いたのに対し、セルシアは微妙に戸惑う。
やっぱりまだ少し怖いのかな。
「セルシア」
「? なんだ。アユミ」
「信じろ。俺らとおまえ自身を」
「……!」
「……な?」
「……そうだな……。やってみよう!」
大きく頷き、ブロッサムと一緒に魔法陣の前に立つ。そして一緒に純潔のオルゴールを奏でた。
「……!」
すると俺たちから光の粒が現れ、それがオルゴールに吸収されていった。
オルゴールは美しい音を出し、光とともに魔法陣を消し去った。
「やったあ!」
「先に進めるね~! ……でも」
レオと一緒にシルフィーも喜ぶが、すぐに顔を歪ませた。
それは他の面々も一緒だ。
「なんか……さっきまでと全然違うかも……」
「……だな。アユミを狙ってきた、闇の力と似てる」
「……アガシオン。それにエデンもいる。きっと」
纏わり付く闇は俺らだけじゃない。
レオやセルシアたちも敏感に感じていた。
「……何が起こるかわからない。慎重に行こう」
「ああ……」
俺の言葉に全員が頷く。
そして闇の気配が漂う道を、俺たちは進んでいった。