二つの光の末裔
「……うるさいっ! セルシアは……セルシアは違う! 偽りの輝きなんかじゃない!!」
「ブロッサム……?」
それを必死で否定したのは……ブロッサムだった。
俯いていたセルシアも、顔を上げてブロッサムに向ける。
「オルゴールを鳴らせなかったのに何言ってんのよ。アンタは悔しくないの? アンタもウィンターコスモス「……いい」……え?」
「……どうでもいいんだよッ!! ウィンターコスモスとか誇りとか……過去の栄光なんて、関係ない!!」
「なに……?」
「ブロッサム!?」
予想外の言葉にヌラリもジャコツも、セルシアたちも驚いた。
ブロッサムは顔を上げ、まっすぐヌラリとジャコツを睨み返す。
「俺は……ずっとセルシアが羨ましかった。どんなに頑張っても、俺はセルシアみたくなれなくて……ウィンターコスモスの血筋も、重荷にしかならなくて、ずっと苦しかった……」
「だけど」とブロッサムが続ける。
「アユミと会って……こいつに課せられたものを知って……俺の悩みが、どれだけちっぽけなものか思い知った。同時に思った。自分しか考えてなかった、自分を変えたいって……アユミやセルシアみたく強くなりたいって」
「……ブロッサム」
「セルシアみたく自信も無いし、素直に受け入れられなかったけど……今は違う」
慎重に言葉を選びながら立ち上がる。その顔にあるのは、強い決意の表情。
「たとえウィンターコスモスの家が敗北者の家系でも、過去が違ってでも、関係ない」
宝具とセルシアを一瞥し、そして断言する。
「俺は――“俺”だから」
「ブロッサム……」
あの時と――変わりたい、と願っていた時と同じ瞳。
不安だけど、それでも確かな思いのある瞳だった。
「! アユミちゃん! オルゴールとブロッサムが……!」
「……!!」
オルゴールから光だし、それに共鳴するかのようにブロッサムから光の粒子が現れる。
――♪ ーーー♪
「! お、オルゴールが……」
「鳴った……!?」
同時にオルゴールが小さく鳴った。音色はとぎれとぎれで、半分程しか鳴らなかったけど、それでも俺たち全員、驚きが浮かび上がる。
「ヌラリ様……これって……」
「……ふ、はははっ! まさか分家の人間が、未完成と言えど、そのオルゴールを鳴らすとは……! ……エデンやスティクス、あの方の言う通り……分家の方が厄介な存在、という訳か!」
……どうやらこいつらも半分的中、半分予想外ということらしいな。
ヌラリが楽しそうに、だが忌ま忌ましげにブロッサムを睨んでいる。
「ブロッサム……君、は……」
「セルシア」
何とも言えない驚きに満ちたセルシアに、ブロッサムは片膝をつき、同じ目線で語りかける。
「あいつの言うことは本当かもしれない。ウィンターコスモスの栄光は、信じていたものと違うかもしれない。……だけど」
そして力強く頷きながら、セルシアに手を差し延べる。
「セルシアはセルシアだ。おまえ自身の輝きは、決して偽物なんかじゃない……! 俺とまた違う、本物の光だ。――ウィンターコスモスの真実なんて、関係ない」
「ブロッサム……」
「セルシアの光は――セルシア自身の光だから」
「……ブロッサム……!」
ブロッサムの言葉に、再びセルシアの顔に希望が生まれる。
「その従兄弟の申す通りじゃ! ウィンターコスモスのボンボン……いや、セルシアよ!」
「! おまえは……!」
背後から声が響く。
振り返ると……いたのはドラッケン学園のキルシュトルテ一行とユリとリンツェだった。
「キルシュ! ユリにリンツェも!?」
「うふふ♪ 元気で何よりだわ。アユミ?」
「……ぶ、無事で、よかった、です……」
杖を片手に優雅に微笑むユリに、安堵の表情を浮かべるリンツェ。
その横からキルシュが前に出て、ヌラリを強く睨みつける。
「ヌラリとやら……貴様もとんだ曲者じゃの。同じ手を使い、ウィンターコスモスのボンボンまで闇に落とそうとは」
「同じ手? ……というと、もしかしてクラティウスも?」
俺がたずねると「にゅ……そうじゃ」と歯切れ悪くキルシュが頷く。
「わらわも今クラティウスを失っておる。そのヌラリとやらの汚い計略でな!」
「まったくですわあ。当初は大変でしたのよ? クラティウスがいないせいでキルシュが悲しくシクシク泣いて……」
ユリ……笑いながら言うなよ←
ばらされたキルシュは「そ、それは言うでない!」と真っ赤な顔でユリに怒鳴る。
「これはとんだ邪魔が入ったものだ。……スティクス!」
ヌラリが叫ぶと「はいはい」と素っ気ない返事とともにスティクスが奥から現れた。
ついでになんかやばそうな闇の精霊も一緒にな←
「おぬしの精霊で一飲みにしてやれ」
「偉そうに……結局は僕に助けてほしいんだろう?」
うわ、仲悪ぅ……←
とは言え、向こうは殺る気十分だ。何せ……闇の精霊の目が、俺らを食う気満々だからな!
「やれやれ……向こうは皆さん果てしなく殺る気だなぁ」
「まあ。ではどうしますの?」
薄く笑うユリ。それに「決まってるだろ」と言い返しながら刀を構える。
「イケるか!? ブロッサム! シルフィー!」
「無論だ!」
「こ、怖いけど! 頑張るよ!」
二人も戦う気は十分だ。
それに横からユリとリンツェも並ぶ。
「そう来なくては。リンツェ。用意は良くって?」
「はい!」
「キルシュ。闇の精霊は引き受けていただけるかしら?」
「む……しかたあるまい。わらわに任せるのじゃ!」
少々不満そうだが、キルシュもやる気だ。連れてきた精鋭に命を出し、狂暴化した闇の精霊に立ち向かっていく。
「ドラッケン学園ばっかりいい格好はさせないぞ!」
レオパーティもキルシュたちを手伝うべく、戦いに参戦する。
プリシアナ&ドラッケンが手を貸し合う……なんて良い絵面なんだ。
「……ふっ。これならさっくり終われるな! 行くぞ、ユリ!」
「当然ですわ!」
ユリと頷き合い、俺は颯爽とヌラリに斬りかかる。
「甘いわっ!」
杖で防がれ、さらに闇魔法の反撃が加わってきた。ユリの補助魔法ダークガードでダメージは受けなかったけど。
戦士系……かと思ったが、どうやら一通りこなせる万能型みたいだ。
加えて言えばエデンより強い。さすが真の実力者ってとこか。
「やるな……!」
「ふっ……貴様もな!」
杖と刀が打ち合い、五分の戦いが繰り広げる。
「この……!」
「……アユミさんの邪魔はさせない……!」
ジャコツはリンツェと相手していた。
飛び道具を駆使するが、リンツェのナイトとしての剣さばき。そして死霊魔法による連携攻撃がじわじわと追い詰められている。
リンツェは性格の割に戦いは強いからな。
「行けっ! ウィスプ!」
「させないよ。ジェイド!」
ブロッサムはスティクスと精霊魔法対決のようだ。
スティクスはブロッサムに興味ある節があったが、それがますます拍車がかかったらしい。
戦ってるのが楽しんでるみたい。
「悪いがじり貧は好きじゃない。精霊もろとも貴様ら全員やられてもらおうか!」
「ふん! どうやって……」
そう言って、瞬間、ハッと目を見開いた。
あいにく先を急ぎたいので、少々強引に戦いを終わらす。
「シルフィー! やっちまえ!」
「イエッサー! 出でよ! 虚無の破滅!」
俺のパーティの、破滅の妖精賢者の魔力が最大限に膨れ上がる。
「ビックバム!」
各術師学科には扱えない、賢者学科の無属性の攻撃魔法。
それはヌラリたちを防御させ、闇の精霊をぶっ飛ばした。
「ぐうぅ!!?」
「きゃあ!!」
「くっ……! あやつ……あれほどの力があろうとは!」
……結構ダメージを受けたらしいな。
倍加魔法無しでここまでやるとは……さすがフェアリー、と言ったところか。
「よし! よくやったシルフィー!」
「えへへ♪ みんなが死なないよう加減したけど、うまくいってよかった~」
「……あれで、加減したのか?」
ブロッサムが微妙に驚きながらつっこむ。
俺はもう言わない。こいつの能力は多分最強クラスだからな。
「ブロッサム……?」
それを必死で否定したのは……ブロッサムだった。
俯いていたセルシアも、顔を上げてブロッサムに向ける。
「オルゴールを鳴らせなかったのに何言ってんのよ。アンタは悔しくないの? アンタもウィンターコスモス「……いい」……え?」
「……どうでもいいんだよッ!! ウィンターコスモスとか誇りとか……過去の栄光なんて、関係ない!!」
「なに……?」
「ブロッサム!?」
予想外の言葉にヌラリもジャコツも、セルシアたちも驚いた。
ブロッサムは顔を上げ、まっすぐヌラリとジャコツを睨み返す。
「俺は……ずっとセルシアが羨ましかった。どんなに頑張っても、俺はセルシアみたくなれなくて……ウィンターコスモスの血筋も、重荷にしかならなくて、ずっと苦しかった……」
「だけど」とブロッサムが続ける。
「アユミと会って……こいつに課せられたものを知って……俺の悩みが、どれだけちっぽけなものか思い知った。同時に思った。自分しか考えてなかった、自分を変えたいって……アユミやセルシアみたく強くなりたいって」
「……ブロッサム」
「セルシアみたく自信も無いし、素直に受け入れられなかったけど……今は違う」
慎重に言葉を選びながら立ち上がる。その顔にあるのは、強い決意の表情。
「たとえウィンターコスモスの家が敗北者の家系でも、過去が違ってでも、関係ない」
宝具とセルシアを一瞥し、そして断言する。
「俺は――“俺”だから」
「ブロッサム……」
あの時と――変わりたい、と願っていた時と同じ瞳。
不安だけど、それでも確かな思いのある瞳だった。
「! アユミちゃん! オルゴールとブロッサムが……!」
「……!!」
オルゴールから光だし、それに共鳴するかのようにブロッサムから光の粒子が現れる。
――♪ ーーー♪
「! お、オルゴールが……」
「鳴った……!?」
同時にオルゴールが小さく鳴った。音色はとぎれとぎれで、半分程しか鳴らなかったけど、それでも俺たち全員、驚きが浮かび上がる。
「ヌラリ様……これって……」
「……ふ、はははっ! まさか分家の人間が、未完成と言えど、そのオルゴールを鳴らすとは……! ……エデンやスティクス、あの方の言う通り……分家の方が厄介な存在、という訳か!」
……どうやらこいつらも半分的中、半分予想外ということらしいな。
ヌラリが楽しそうに、だが忌ま忌ましげにブロッサムを睨んでいる。
「ブロッサム……君、は……」
「セルシア」
何とも言えない驚きに満ちたセルシアに、ブロッサムは片膝をつき、同じ目線で語りかける。
「あいつの言うことは本当かもしれない。ウィンターコスモスの栄光は、信じていたものと違うかもしれない。……だけど」
そして力強く頷きながら、セルシアに手を差し延べる。
「セルシアはセルシアだ。おまえ自身の輝きは、決して偽物なんかじゃない……! 俺とまた違う、本物の光だ。――ウィンターコスモスの真実なんて、関係ない」
「ブロッサム……」
「セルシアの光は――セルシア自身の光だから」
「……ブロッサム……!」
ブロッサムの言葉に、再びセルシアの顔に希望が生まれる。
「その従兄弟の申す通りじゃ! ウィンターコスモスのボンボン……いや、セルシアよ!」
「! おまえは……!」
背後から声が響く。
振り返ると……いたのはドラッケン学園のキルシュトルテ一行とユリとリンツェだった。
「キルシュ! ユリにリンツェも!?」
「うふふ♪ 元気で何よりだわ。アユミ?」
「……ぶ、無事で、よかった、です……」
杖を片手に優雅に微笑むユリに、安堵の表情を浮かべるリンツェ。
その横からキルシュが前に出て、ヌラリを強く睨みつける。
「ヌラリとやら……貴様もとんだ曲者じゃの。同じ手を使い、ウィンターコスモスのボンボンまで闇に落とそうとは」
「同じ手? ……というと、もしかしてクラティウスも?」
俺がたずねると「にゅ……そうじゃ」と歯切れ悪くキルシュが頷く。
「わらわも今クラティウスを失っておる。そのヌラリとやらの汚い計略でな!」
「まったくですわあ。当初は大変でしたのよ? クラティウスがいないせいでキルシュが悲しくシクシク泣いて……」
ユリ……笑いながら言うなよ←
ばらされたキルシュは「そ、それは言うでない!」と真っ赤な顔でユリに怒鳴る。
「これはとんだ邪魔が入ったものだ。……スティクス!」
ヌラリが叫ぶと「はいはい」と素っ気ない返事とともにスティクスが奥から現れた。
ついでになんかやばそうな闇の精霊も一緒にな←
「おぬしの精霊で一飲みにしてやれ」
「偉そうに……結局は僕に助けてほしいんだろう?」
うわ、仲悪ぅ……←
とは言え、向こうは殺る気十分だ。何せ……闇の精霊の目が、俺らを食う気満々だからな!
「やれやれ……向こうは皆さん果てしなく殺る気だなぁ」
「まあ。ではどうしますの?」
薄く笑うユリ。それに「決まってるだろ」と言い返しながら刀を構える。
「イケるか!? ブロッサム! シルフィー!」
「無論だ!」
「こ、怖いけど! 頑張るよ!」
二人も戦う気は十分だ。
それに横からユリとリンツェも並ぶ。
「そう来なくては。リンツェ。用意は良くって?」
「はい!」
「キルシュ。闇の精霊は引き受けていただけるかしら?」
「む……しかたあるまい。わらわに任せるのじゃ!」
少々不満そうだが、キルシュもやる気だ。連れてきた精鋭に命を出し、狂暴化した闇の精霊に立ち向かっていく。
「ドラッケン学園ばっかりいい格好はさせないぞ!」
レオパーティもキルシュたちを手伝うべく、戦いに参戦する。
プリシアナ&ドラッケンが手を貸し合う……なんて良い絵面なんだ。
「……ふっ。これならさっくり終われるな! 行くぞ、ユリ!」
「当然ですわ!」
ユリと頷き合い、俺は颯爽とヌラリに斬りかかる。
「甘いわっ!」
杖で防がれ、さらに闇魔法の反撃が加わってきた。ユリの補助魔法ダークガードでダメージは受けなかったけど。
戦士系……かと思ったが、どうやら一通りこなせる万能型みたいだ。
加えて言えばエデンより強い。さすが真の実力者ってとこか。
「やるな……!」
「ふっ……貴様もな!」
杖と刀が打ち合い、五分の戦いが繰り広げる。
「この……!」
「……アユミさんの邪魔はさせない……!」
ジャコツはリンツェと相手していた。
飛び道具を駆使するが、リンツェのナイトとしての剣さばき。そして死霊魔法による連携攻撃がじわじわと追い詰められている。
リンツェは性格の割に戦いは強いからな。
「行けっ! ウィスプ!」
「させないよ。ジェイド!」
ブロッサムはスティクスと精霊魔法対決のようだ。
スティクスはブロッサムに興味ある節があったが、それがますます拍車がかかったらしい。
戦ってるのが楽しんでるみたい。
「悪いがじり貧は好きじゃない。精霊もろとも貴様ら全員やられてもらおうか!」
「ふん! どうやって……」
そう言って、瞬間、ハッと目を見開いた。
あいにく先を急ぎたいので、少々強引に戦いを終わらす。
「シルフィー! やっちまえ!」
「イエッサー! 出でよ! 虚無の破滅!」
俺のパーティの、破滅の妖精賢者の魔力が最大限に膨れ上がる。
「ビックバム!」
各術師学科には扱えない、賢者学科の無属性の攻撃魔法。
それはヌラリたちを防御させ、闇の精霊をぶっ飛ばした。
「ぐうぅ!!?」
「きゃあ!!」
「くっ……! あやつ……あれほどの力があろうとは!」
……結構ダメージを受けたらしいな。
倍加魔法無しでここまでやるとは……さすがフェアリー、と言ったところか。
「よし! よくやったシルフィー!」
「えへへ♪ みんなが死なないよう加減したけど、うまくいってよかった~」
「……あれで、加減したのか?」
ブロッサムが微妙に驚きながらつっこむ。
俺はもう言わない。こいつの能力は多分最強クラスだからな。