二つの光の末裔
「さて。いよいよ封印解除だな」
宝具は完成し、現在例の魔法陣の前にいる。
ライラの事は気掛かりだが、それはそのうち会える、という事で勘弁してくれ←
「えっと……ここの部分に、『光のセレスティアの末裔が音を奏でよ』って書いてあったんだ」
「ってことは……ブロッサムかセルシアのどちらかか?」
光のセレスティアの末裔。それは=ウィンターコスモスの人間だ。
該当するのは分家のブロッサムと本家のセルシアだけ。
「……で、ブロッサムとセルシア君。どっちが鳴らすの?」
「当然セルシア様でしょう。分家のブロッサムより、本家のセルシア様の方が末裔として近いのですから」
ドスッ。
……デジャヴュか?
フリージアの無慈悲な言葉(しかも即答)が、見えない矢となってブロッサムに突き刺さったのが見えたんだけど←
「……どうせ俺は分家だよ」
「ブロッサム……大丈夫か?」
バロータの声も届かず、俺らから背を向けてその場で体育座りでいじけ出した。
……まあ、気持ちはわかるけどな。
「えっと……とりあえずセルシア君がやってみて、万が一ダメだったらブロッサムがやってみようよ!」
「そ、そうだよ! 同じ家の人間だしね!」
シルフィー、レオ! ナイスフォロー!
「ほら。二人もこう言ってるし」
「……わかったよ。万が一も無い気はするけど」
とりあえずブロッサムは気力を取り戻し、ふて腐れながらも立ち上がった。
「……じゃあ一段落着いたことだし。アユミ、宝具を貸してくれるか?」
「……いいけど」
いいけど……おまえ、実は天然ドSか?
フリージアの報復が怖いので、その言葉を飲み込みながら宝具を渡した。
「ここにシリンダーを組み込んで回せば……」
魔法陣の前に立ち、セルシアが純潔のオルゴールを奏でた。
……だけど。
「……!?」
結果、音は鳴らなかった。
何度やっても音は発しない。
「……ブロッサム。おまえもやってみろ」
「あ、ああ……」
放心状態のセルシアを横目に、今度はブロッサムにオルゴールを渡す。
同じように奏でるが……やはり音は鳴らなかった。
「……やっぱ、俺も無理だ」
「二人ともダメなのかよ……」
バロータの言う通り、完全に手詰まりだな。
オルゴールを鳴らすには光のセレスティアの末裔である二人じゃなきゃダメだ。二人が鳴らせなければ、この先には進めないんだ。
「僕じゃ……ダメなのか……?」
「セルシア……」
ブロッサムはネガティブな方を予想してたか、あまり変わりはしない。
だけどセルシアははっきり落胆している。
自分の血筋、ウィンターコスモスの血筋を信じている彼にとって、相当ショックなのだろうな。
「セルシア……あまり――」
声を掛けようとした俺は、瞬間、ブロッサムとシルフィーと同時に武器に手をかけた。
「アユミ!」
「この気配……っ」
「わかってる! そこ!! 何回もコソコソするんじゃねぇ!」
『!?』
セルシアたちとレオたちが驚きながら俺らと同じ方向を見た。
同時に目の前に二人の人物が現れる。
「ほう……やはりできるな。予言の娘」
「ヌラリ様に気づくとはね……あのエデンが気にかけるはずだわ」
「おまえは……」
目の前に現れたのはジャコツと、見知らぬディアボロス。
……いや、違う。
「おまえ……もしかして、三学園交流戦の時の……」
「そう! この方はヌラリ! 闇の生徒会の真の実力者よ」
闇の生徒会の……上には上がいるんだな。
「……だろうな。エデンも厄介だけど……おまえは違う意味でやばそうだな」
「……なんか、闇すらも操ってる、ていうか……」
「ふっ……予言の娘もそうだが、ディムラピスの弟。そしてウィンターコスモスの分家。おまえたちも良い勘をしている」
「特に」とヌラリはブロッサムに視線を移す。
「ブロッサム=ウィンターコスモス……偽りの輝きを持つ敗北者の家系の分家の割には、本家の者よりマシな目と力をしている」
「え……?」
「……何?」
ウィンターコスモス家が、“偽りの輝きを持つ、敗北者の家系”……?
ヌラリの言葉が衝撃的で、ブロッサムや俺ら――特にセルシアに動揺が走る。
「セルシア君の輝きが偽りとか言ったな! このバカはげ! そんな訳あるか! セルシア君は光り輝いてて、ボクなんかいっつもクラクラなんだぞ!」
ヌラリの言葉にレオが批判する(微妙にずれているが)。
だがヌラリはレオの言葉に「馬鹿者はどちらだ?」と薄く笑う。
「栄光あるウィンターコスモス家。輝きの象徴。大魔道士アガシオンを倒した英雄の家系……貴様らはそう思っているのだろう?」
「それが……どうしたと言うのです」
何が言いたい、と目で問い掛けるフリージアに、ヌラリがニヤリと嫌な笑みを浮かべた。
「その証拠……いったいどこにある?」
「……何が言いたい」
ブロッサムとセルシアを庇うように立ちながら、俺もヌラリに先を促せる。
そして……ヌラリはとんでもないことを口にした。
「――初代ウィンターコスモスはのう……大魔道士アガシオンに敗北しておるのだ」
「え……!?」
「!!」
「! 嘘をつくな!」
ブロッサムとセルシアが驚愕、フリージアはそれにカッとなって怒りを表す。
「本当よ。その子たちがオルゴールを鳴らせないのが何よりの証拠じゃない」
「……っ」
ジャコツは可笑しそうに微笑みながら、挑発的な笑みでブロッサムとセルシアを指さす。
「光のセレスティアの末裔なら……そのオルゴールを鳴らせるはず」
「…………」
悔しそうに唇を噛むセルシア。
そこにヌラリが畳み掛ける。
「現ウィンターコスモス家の当主であり、プリシアナ学院の校長であるセントウレアがその片腕とも言えるネメシアを失った理由……それはネメシアが、初代ウィンターコスモスの敗北を知ったからだ」
「な……に……?」
セルシアの目が、ますます見開かれる。
「光のセレスティアはそなたの祖先――初代ウィンターコスモスでその光を失ったのだ」
「……っ!」
「恥ずべき過去を隠し、偽りの栄光で大陸を統治し続けた……とんだ恥知らずの家系だのう」
「おまえ……っ!」
ブロッサムがヌラリに睨みつける。
反対に、セルシアは真っ青だ。
「それに呆れたネメシアはウィンターコスモス家に見切りをつけたという訳だ」
「嘘をつくな!! セルシア様は……ウィンターコスモスの輝きは偽りなんかじゃない!」
フリージアの叫びが空洞内に響いた。
だけどジャコツはそれをとても愉快そうに見ながら言う。
「ふふ……それなら証明してみなさいよ。そのオルゴールを鳴らせば、あなたは光のセレスティアの末裔よ?」
「……っ、セルシア様! もう一度オルゴールを!」
「あ、ああ……」
ジャコツの口車に乗せられ、フリージアがブロッサムからオルゴールを引ったくって、もう一度セルシアに持たせた。
セルシアは放心しつつもオルゴールを奏でる。
「……くっ!」
「な、なんで……」
……だけど、やっぱりオルゴールは鳴らなかった。
「僕は……僕は、誇りあるウィンターコスモスの……」
「情けない。貴様が重んじる誇りそのものが存在していないのだ」
「……、……ッ!」
「セルシア!?」
「おい、セルシア!」
声にならない悲鳴を上げながら、セルシアが両膝をついた。
ブロッサムと俺がそれぞれ両脇から顔を覗くが――見たことない程に真っ青だった。
「すまない……皆……ブロッサム……アユミ……。僕が……僕が……」
「セルシア様のせいではありません! これは……これは――、そう! 宝具に欠陥があるんです!」
「そ、そうだよ! こんな古っちいオルゴール、壊れてるんだ!」
フリージア、レオも必死にセルシアに声をかける。
が、ヌラリはそれにさえ高笑いしやがった。
「仲間にまで同情される始末……栄えあるウィンターコスモスの子息も真の姿を見せたわけか」
「……っ!!」
「セルシアッ!!」
セルシアの目が泣きそうに歪んだ。
いつもの自信ある表情はなく……怯える子供のように小さく震える。
宝具は完成し、現在例の魔法陣の前にいる。
ライラの事は気掛かりだが、それはそのうち会える、という事で勘弁してくれ←
「えっと……ここの部分に、『光のセレスティアの末裔が音を奏でよ』って書いてあったんだ」
「ってことは……ブロッサムかセルシアのどちらかか?」
光のセレスティアの末裔。それは=ウィンターコスモスの人間だ。
該当するのは分家のブロッサムと本家のセルシアだけ。
「……で、ブロッサムとセルシア君。どっちが鳴らすの?」
「当然セルシア様でしょう。分家のブロッサムより、本家のセルシア様の方が末裔として近いのですから」
ドスッ。
……デジャヴュか?
フリージアの無慈悲な言葉(しかも即答)が、見えない矢となってブロッサムに突き刺さったのが見えたんだけど←
「……どうせ俺は分家だよ」
「ブロッサム……大丈夫か?」
バロータの声も届かず、俺らから背を向けてその場で体育座りでいじけ出した。
……まあ、気持ちはわかるけどな。
「えっと……とりあえずセルシア君がやってみて、万が一ダメだったらブロッサムがやってみようよ!」
「そ、そうだよ! 同じ家の人間だしね!」
シルフィー、レオ! ナイスフォロー!
「ほら。二人もこう言ってるし」
「……わかったよ。万が一も無い気はするけど」
とりあえずブロッサムは気力を取り戻し、ふて腐れながらも立ち上がった。
「……じゃあ一段落着いたことだし。アユミ、宝具を貸してくれるか?」
「……いいけど」
いいけど……おまえ、実は天然ドSか?
フリージアの報復が怖いので、その言葉を飲み込みながら宝具を渡した。
「ここにシリンダーを組み込んで回せば……」
魔法陣の前に立ち、セルシアが純潔のオルゴールを奏でた。
……だけど。
「……!?」
結果、音は鳴らなかった。
何度やっても音は発しない。
「……ブロッサム。おまえもやってみろ」
「あ、ああ……」
放心状態のセルシアを横目に、今度はブロッサムにオルゴールを渡す。
同じように奏でるが……やはり音は鳴らなかった。
「……やっぱ、俺も無理だ」
「二人ともダメなのかよ……」
バロータの言う通り、完全に手詰まりだな。
オルゴールを鳴らすには光のセレスティアの末裔である二人じゃなきゃダメだ。二人が鳴らせなければ、この先には進めないんだ。
「僕じゃ……ダメなのか……?」
「セルシア……」
ブロッサムはネガティブな方を予想してたか、あまり変わりはしない。
だけどセルシアははっきり落胆している。
自分の血筋、ウィンターコスモスの血筋を信じている彼にとって、相当ショックなのだろうな。
「セルシア……あまり――」
声を掛けようとした俺は、瞬間、ブロッサムとシルフィーと同時に武器に手をかけた。
「アユミ!」
「この気配……っ」
「わかってる! そこ!! 何回もコソコソするんじゃねぇ!」
『!?』
セルシアたちとレオたちが驚きながら俺らと同じ方向を見た。
同時に目の前に二人の人物が現れる。
「ほう……やはりできるな。予言の娘」
「ヌラリ様に気づくとはね……あのエデンが気にかけるはずだわ」
「おまえは……」
目の前に現れたのはジャコツと、見知らぬディアボロス。
……いや、違う。
「おまえ……もしかして、三学園交流戦の時の……」
「そう! この方はヌラリ! 闇の生徒会の真の実力者よ」
闇の生徒会の……上には上がいるんだな。
「……だろうな。エデンも厄介だけど……おまえは違う意味でやばそうだな」
「……なんか、闇すらも操ってる、ていうか……」
「ふっ……予言の娘もそうだが、ディムラピスの弟。そしてウィンターコスモスの分家。おまえたちも良い勘をしている」
「特に」とヌラリはブロッサムに視線を移す。
「ブロッサム=ウィンターコスモス……偽りの輝きを持つ敗北者の家系の分家の割には、本家の者よりマシな目と力をしている」
「え……?」
「……何?」
ウィンターコスモス家が、“偽りの輝きを持つ、敗北者の家系”……?
ヌラリの言葉が衝撃的で、ブロッサムや俺ら――特にセルシアに動揺が走る。
「セルシア君の輝きが偽りとか言ったな! このバカはげ! そんな訳あるか! セルシア君は光り輝いてて、ボクなんかいっつもクラクラなんだぞ!」
ヌラリの言葉にレオが批判する(微妙にずれているが)。
だがヌラリはレオの言葉に「馬鹿者はどちらだ?」と薄く笑う。
「栄光あるウィンターコスモス家。輝きの象徴。大魔道士アガシオンを倒した英雄の家系……貴様らはそう思っているのだろう?」
「それが……どうしたと言うのです」
何が言いたい、と目で問い掛けるフリージアに、ヌラリがニヤリと嫌な笑みを浮かべた。
「その証拠……いったいどこにある?」
「……何が言いたい」
ブロッサムとセルシアを庇うように立ちながら、俺もヌラリに先を促せる。
そして……ヌラリはとんでもないことを口にした。
「――初代ウィンターコスモスはのう……大魔道士アガシオンに敗北しておるのだ」
「え……!?」
「!!」
「! 嘘をつくな!」
ブロッサムとセルシアが驚愕、フリージアはそれにカッとなって怒りを表す。
「本当よ。その子たちがオルゴールを鳴らせないのが何よりの証拠じゃない」
「……っ」
ジャコツは可笑しそうに微笑みながら、挑発的な笑みでブロッサムとセルシアを指さす。
「光のセレスティアの末裔なら……そのオルゴールを鳴らせるはず」
「…………」
悔しそうに唇を噛むセルシア。
そこにヌラリが畳み掛ける。
「現ウィンターコスモス家の当主であり、プリシアナ学院の校長であるセントウレアがその片腕とも言えるネメシアを失った理由……それはネメシアが、初代ウィンターコスモスの敗北を知ったからだ」
「な……に……?」
セルシアの目が、ますます見開かれる。
「光のセレスティアはそなたの祖先――初代ウィンターコスモスでその光を失ったのだ」
「……っ!」
「恥ずべき過去を隠し、偽りの栄光で大陸を統治し続けた……とんだ恥知らずの家系だのう」
「おまえ……っ!」
ブロッサムがヌラリに睨みつける。
反対に、セルシアは真っ青だ。
「それに呆れたネメシアはウィンターコスモス家に見切りをつけたという訳だ」
「嘘をつくな!! セルシア様は……ウィンターコスモスの輝きは偽りなんかじゃない!」
フリージアの叫びが空洞内に響いた。
だけどジャコツはそれをとても愉快そうに見ながら言う。
「ふふ……それなら証明してみなさいよ。そのオルゴールを鳴らせば、あなたは光のセレスティアの末裔よ?」
「……っ、セルシア様! もう一度オルゴールを!」
「あ、ああ……」
ジャコツの口車に乗せられ、フリージアがブロッサムからオルゴールを引ったくって、もう一度セルシアに持たせた。
セルシアは放心しつつもオルゴールを奏でる。
「……くっ!」
「な、なんで……」
……だけど、やっぱりオルゴールは鳴らなかった。
「僕は……僕は、誇りあるウィンターコスモスの……」
「情けない。貴様が重んじる誇りそのものが存在していないのだ」
「……、……ッ!」
「セルシア!?」
「おい、セルシア!」
声にならない悲鳴を上げながら、セルシアが両膝をついた。
ブロッサムと俺がそれぞれ両脇から顔を覗くが――見たことない程に真っ青だった。
「すまない……皆……ブロッサム……アユミ……。僕が……僕が……」
「セルシア様のせいではありません! これは……これは――、そう! 宝具に欠陥があるんです!」
「そ、そうだよ! こんな古っちいオルゴール、壊れてるんだ!」
フリージア、レオも必死にセルシアに声をかける。
が、ヌラリはそれにさえ高笑いしやがった。
「仲間にまで同情される始末……栄えあるウィンターコスモスの子息も真の姿を見せたわけか」
「……っ!!」
「セルシアッ!!」
セルシアの目が泣きそうに歪んだ。
いつもの自信ある表情はなく……怯える子供のように小さく震える。