中央大陸到着
「聖印の雪窟の魔獣っていったら、千年に一度姿を現して、大陸中に災いをもたらすって言う、すごーい魔物だよ? 今まで何人もの英雄や勇者が挑んで何とか封印したきたって伝説があるのに、それを5歳で!?」
「マジでか!!?」
5歳でんな奴相手して滅却!? ホント何者なんですか、セントウレア様!?
「ハッ! これがもしや伝記!? ネメシアが校長がちょーかっこよく見えるように作った話なんじゃ!」
「いや、それはねーだろ」
スノー家の真面目っぷりはよく知ってる。
ネメシアがどんな執事かは知らんが、嘘はないだろ嘘は。
「そうです! 失礼なことを言わないでください! セントウレア様のお力ならこの程度……!」
「わかったから落ち着け! フリージア」
やや興奮気味なフリージアに、どうどうと間に割り込むブロッサム。
……強くなったな、おまえも。
「でも……この話が嘘でも本当でも、ネメシアさんが校長先生のことをとても尊敬してるのがわかるわ」
「まあな」
ブーゲンビリアの指摘は間違ってない。
記録帳に書かれた文字から、セントウレア校長への尊敬の念がよくわかるからな。
「うーん……やっぱり校長先生を裏切ってないのかな~? ほら、端から見れば裏切りも、実際は校長の為ーってやつかもだし~」
「まあ、な。ただシルフィー。こりゃ尊敬って言うより、心酔に近いんじゃねぇか? フリージアだって、ここまでセルシアに入れ込んではねぇよなあ」
シルフィーに言うバロータの言葉を「そんなことありません!」とフリージアは否定した。
「セルシア様も、セントウレア様に負けぬお力を持っていると、私は信じています! ブロッサムはともかく!」
「ともかくってどういう意味!? サラっとダメージ与えるのやめてくんない!」
グッサリ心をえぐる言葉に即ツッコミを入れたブロッサム。
つか話ずれてるんだけど。
「あーもう。話進まないんだけど? この洞窟どんだけ広いと思ってんだ貴様ら。つー訳で眼鏡と記録帳貸せや、フーちゃん」
「だからその呼び方止めてくださいと言ってるでしょう!!」
眼鏡と記録帳を無理矢理拝借し、怒鳴るフリージアを無視して調べ始めた。
しかしフリージア……こいつもからかうとイイ反応するな! ブロッサムと同じくらい……よしこれからは度々からかうか←
「……ん?」
なんだろ……最後の方にページとは違う、折り畳まれた紙がある。
「……もしかして、これ……」
「これ……ここの地図?」
シルフィーの言う通り、これは地図に間違いなかった。
三つ記しがついてるし……多分これがヒントじゃないかな?
「三ヵ所か……ちょうど三パーティいるし。それぞれ別れていくか?」
「そうだね。こうしていても仕方がないし。僕たちは東のポイントに向かおう」
「じゃあ俺ら北にするかな? 残ったレオたちは南ってことで」
「オッケー、オッケー!」
方針は決まった。セルシアたちとレオノチスたちが向かったのを見て、俺らも歩き出す。
「さて……うまくことが運ぶといいけどな」
罠の可能性も捨て切れないが、かと言って立ち止まる訳にもいかないからな。
――――
北にあるポイントを目指し、モンスターを倒しながら進む俺ら。
「……ん?」
「あ、あれ? アユミたち……?」
……が、何故かレオノチスパーティと鉢合わせた。
「……何してんだ、テメェら」
「え? だってここはボクたちの分担じゃ……」
「あー、やっぱ方向間違ってたんだー……。レオがこっちこっちって勝手に進むから……」
チューリップががくっと肩を落とした。
つまり……間違ってこっちに来たってことか。
「はあ……まあいいや。また変なとこに迷い込んだらしゃーねーし。せっかくだから一緒に調べるか」
「いいの? アユミさん」
「俺はな……おまえらも異論は無いだろ?」
特に問題は無いと思うが、念のため二人に聞いておく。
「俺は問題無いぜ」
ブロッサムはよし。即返事をいただきました。
「よし。……おいシルフィー」
……返事が無い。そう思って見回した時だった。
「……シルフィー……?」
……シルフィーの姿がなかった。
ブロッサムに視線を移すが、彼はぶんぶんと首を横に振るだけ。
「え? ボク、合流した時からシルフィーの姿が見えなかったんだけど」
「「え゙」」
それはつまり、アレか……?
シルフィーはとっくの昔に離れてて、俺らはそれに気づかず、のほほんと進んでた的な……?
「……ぁんのアホォオオオッ!!!」
何やってんだあいつはァアアアッ!!
空洞内に俺の怒りの咆哮がびりびり響くのを感じながら、シルフィーをどうお仕置きしようか考えるのだった。
――――
シルフィーSide
「ふぇ~ん……アユミちゃあん……ブロッサム~……」
どうじよう……ボク、迷子になっちゃったあ……。
気づいたらアユミちゃんとブロッサムがいなくって、それからモンスターが現れたから逃げて……わかんないところに来ちゃった(泣)。
「ここ……どこ~……?」
マプルで見てもわかんない(地図読めないから……)し、モンスターが来るから余計に怖いし……。
「誰でもいいから助けて~……」
二人やみんながいれば大丈夫になったけど……一人は怖いよ~!!
「ぐずっ……」
これから、どうしよう……。
そう思って、キョロキョロしてた時だった。
「……あれ……?」
目の前に足がある……。
顔をあげると……ベコニアちゃんと同じ、色の違うプリシアナの制服を着た、ノームの女の子が立っていた。
……ってこの子……。
「……ウィンタースノーのお花畑で見た……?」
「…………」
遠くだったからよく見えなかったけど、でも紫の髪のツインテールは見覚えがあるの……。
「えっと……君は、誰?」
「……ライラ」
静かな声で女の子……ライラちゃんが名乗ってくれた。
「何してるの?」
「何をしている……お花を見に行く?」
「……へ?」
花……? ここに、花咲いてるのかな?
あ、でもウィンタースノーの花畑もあったし。
「あるなら見てみたいかも」
「あるなら見てみたい……案内する?」
「うん! 案内してー!」
元気よく言えば、コクンって頷いてくれた。
そのままボクの横を通ってスタスタと先に行っちゃった。
「あ! 待ってー!」
この時アユミちゃんや本来の目的をすっかり忘れたボクは、スタスタと歩くライラちゃんの後を追いかけていった。
――――
「……ライラちゃんはお花好きなの?」
「うん」
「ボクも好きだよー。だからプリシアナに入ったんだー。兄ちゃんの学校だし」
「ふーん」
あれからお花畑目指して進んでます。
ライラちゃんって無表情だけど、質問すれば返事してくれるし、相槌も打ってくれる。
思ったよりも良い人です。
「ここのフロアにあるの?」
「フロアにある……ディームとネメシアが探してくれた広い場所?」
「え? 兄ちゃんとネメシアさんが?」
意外な人達が出てきてびっくり……。
というか、なんで兄ちゃんとネメシアさん?
「ディームは私の恩人……。お花育ててみたいって言ったら、ネメシアと相談して、種と場所をくれた」
「へぇ……」
兄ちゃんが恩人かあ……。
それにわざわざ育てる場所も探してくれたなんて……やっぱりネメシアさんっていい人?
「……着いたよ」
「……わあ……っ♪」
着いた先は予想以上に綺麗だった。
魔法で温度を調節しているのかな? いろいろな花が洞窟の一角に咲いていた。
「綺麗~」
「綺麗……ディームとネメシアが、いろいろな種を用意してくれたから?」
「そうなの? でもこんなに綺麗な花を咲かせるライラちゃんって、すごく優しい子なんだね」
「……優しい……?」
「うんっ♪」
ネメシアさんもそうだけど、じゃなきゃ、綺麗な花は咲かないしっ。
「優しい……ネメシアも言ってた。ライラの心は純粋で美しいって。我々とは不釣り合いな程に……って」
我々……闇の生徒会のこと?
「ライラちゃんは、他の学校からそっちに行ったんじゃないの?」
「ううん。私……学校に行ったことない、と思う」
「……思う?」
「思う……ディームに拾われる前の記憶、ないから?」
それ……記憶喪失? だから兄ちゃんが恩人?
「兄ちゃんから守られてるんだ……やっぱり兄ちゃんは優しいなあ」
そうだよ……兄ちゃんが闇の生徒会にいるのも、きっと他に訳があるんだよ! きっと!
「守られてる……私、自分の身は自分で守ってる?」
「そうじゃなくって~。えっと、精神的な! ライラちゃん、記憶喪失で大変でしょ? 守るにもいろいろあるんだし」
「いろいろ?」
「うん!」
小さく首を傾げてるライラちゃんに頷く。
記憶喪失だからかな? よくわからないって顔してるけど。
「……守るにも、いろいろ……」
「うん。あ! じゃあボクもライラちゃんを守るよ! 兄ちゃんだって助けてるんだし!」
「私を守る……私とあなたは、敵同士?」
ますます混乱してるっぽい。
ライラちゃんが闇の生徒会なのはわかってる。
色の違う制服だし、兄ちゃんとネメシアさんと一緒にいるしね。
「うん。でもライラちゃん優しいし!」
「優しい……?」
「アマリリスちゃんやベコニアちゃんだって、闇の生徒会にいるけど、それでも助けようとしている人だっているんだよ? だから問題無いよ!」
「…………」
そう言うとライラちゃんは目を丸くする。
大丈夫大丈夫! アユミちゃんやブロッサムも事情を話せば――。
「……って、あ~~~ッ!!」
「……?」
そうだ~~~!! ボク、二人とはぐれちゃったんだあ!!
「どうしよう……(泣)」
「……どうかしたの?」
ライラちゃんがキョトンしている……。
そうだね……ライラちゃん知らないんだし……。
「ボク……仲間とはぐれてた……どうしよ~……」
「よしよし」
小さい子をあやすみたいに頭を撫でられました。
……複雑ー……←
「……どこに行く気だったの?」
「えっとぉ……まず、純潔のオルゴールのシリンダーを探そうと北のポイントを回ろうとして……そっからはぐれた(泣)」
「回ろうとしてはぐれた……迷子だった?」
「迷子です……地図読めなくてわかりません……ライラちゃん、助けて……」
「…………」
駄目元でライラちゃんに助けを求めました。
これでダメだったら本当にどうしよう……。
「…………」
「……あ、あの……」
「……東」
「へ?」
東って……?
「……東のポイントで待っていれば、多分会えると思う。そこが北のポイントから一番遠い。……宝具は予言の子が持っているはず。シリンダーは宝具が無いと取れないから」
「そ、そっかぁ!」
そっか! それなら待っているバロータたちの所に行けば――。
「……ってボク……現在地わかんない……」
「…………」
行きたくてもいけないよ~……(泣)。
そう思ってたら、スッと手を差し出された。
「……?」
「……行く?」
「……いいの?」
「いい……特に命令無いから?」
「ライラちゃん……ッ!」
やっぱライラちゃんっていい人だ……!
一気にぱぁっと笑顔が出てきた。
「お願いしますっ!」
「うん」
手を取っててこてこと進む。
早くみんなと合流しなくっちゃ!
「マジでか!!?」
5歳でんな奴相手して滅却!? ホント何者なんですか、セントウレア様!?
「ハッ! これがもしや伝記!? ネメシアが校長がちょーかっこよく見えるように作った話なんじゃ!」
「いや、それはねーだろ」
スノー家の真面目っぷりはよく知ってる。
ネメシアがどんな執事かは知らんが、嘘はないだろ嘘は。
「そうです! 失礼なことを言わないでください! セントウレア様のお力ならこの程度……!」
「わかったから落ち着け! フリージア」
やや興奮気味なフリージアに、どうどうと間に割り込むブロッサム。
……強くなったな、おまえも。
「でも……この話が嘘でも本当でも、ネメシアさんが校長先生のことをとても尊敬してるのがわかるわ」
「まあな」
ブーゲンビリアの指摘は間違ってない。
記録帳に書かれた文字から、セントウレア校長への尊敬の念がよくわかるからな。
「うーん……やっぱり校長先生を裏切ってないのかな~? ほら、端から見れば裏切りも、実際は校長の為ーってやつかもだし~」
「まあ、な。ただシルフィー。こりゃ尊敬って言うより、心酔に近いんじゃねぇか? フリージアだって、ここまでセルシアに入れ込んではねぇよなあ」
シルフィーに言うバロータの言葉を「そんなことありません!」とフリージアは否定した。
「セルシア様も、セントウレア様に負けぬお力を持っていると、私は信じています! ブロッサムはともかく!」
「ともかくってどういう意味!? サラっとダメージ与えるのやめてくんない!」
グッサリ心をえぐる言葉に即ツッコミを入れたブロッサム。
つか話ずれてるんだけど。
「あーもう。話進まないんだけど? この洞窟どんだけ広いと思ってんだ貴様ら。つー訳で眼鏡と記録帳貸せや、フーちゃん」
「だからその呼び方止めてくださいと言ってるでしょう!!」
眼鏡と記録帳を無理矢理拝借し、怒鳴るフリージアを無視して調べ始めた。
しかしフリージア……こいつもからかうとイイ反応するな! ブロッサムと同じくらい……よしこれからは度々からかうか←
「……ん?」
なんだろ……最後の方にページとは違う、折り畳まれた紙がある。
「……もしかして、これ……」
「これ……ここの地図?」
シルフィーの言う通り、これは地図に間違いなかった。
三つ記しがついてるし……多分これがヒントじゃないかな?
「三ヵ所か……ちょうど三パーティいるし。それぞれ別れていくか?」
「そうだね。こうしていても仕方がないし。僕たちは東のポイントに向かおう」
「じゃあ俺ら北にするかな? 残ったレオたちは南ってことで」
「オッケー、オッケー!」
方針は決まった。セルシアたちとレオノチスたちが向かったのを見て、俺らも歩き出す。
「さて……うまくことが運ぶといいけどな」
罠の可能性も捨て切れないが、かと言って立ち止まる訳にもいかないからな。
――――
北にあるポイントを目指し、モンスターを倒しながら進む俺ら。
「……ん?」
「あ、あれ? アユミたち……?」
……が、何故かレオノチスパーティと鉢合わせた。
「……何してんだ、テメェら」
「え? だってここはボクたちの分担じゃ……」
「あー、やっぱ方向間違ってたんだー……。レオがこっちこっちって勝手に進むから……」
チューリップががくっと肩を落とした。
つまり……間違ってこっちに来たってことか。
「はあ……まあいいや。また変なとこに迷い込んだらしゃーねーし。せっかくだから一緒に調べるか」
「いいの? アユミさん」
「俺はな……おまえらも異論は無いだろ?」
特に問題は無いと思うが、念のため二人に聞いておく。
「俺は問題無いぜ」
ブロッサムはよし。即返事をいただきました。
「よし。……おいシルフィー」
……返事が無い。そう思って見回した時だった。
「……シルフィー……?」
……シルフィーの姿がなかった。
ブロッサムに視線を移すが、彼はぶんぶんと首を横に振るだけ。
「え? ボク、合流した時からシルフィーの姿が見えなかったんだけど」
「「え゙」」
それはつまり、アレか……?
シルフィーはとっくの昔に離れてて、俺らはそれに気づかず、のほほんと進んでた的な……?
「……ぁんのアホォオオオッ!!!」
何やってんだあいつはァアアアッ!!
空洞内に俺の怒りの咆哮がびりびり響くのを感じながら、シルフィーをどうお仕置きしようか考えるのだった。
――――
シルフィーSide
「ふぇ~ん……アユミちゃあん……ブロッサム~……」
どうじよう……ボク、迷子になっちゃったあ……。
気づいたらアユミちゃんとブロッサムがいなくって、それからモンスターが現れたから逃げて……わかんないところに来ちゃった(泣)。
「ここ……どこ~……?」
マプルで見てもわかんない(地図読めないから……)し、モンスターが来るから余計に怖いし……。
「誰でもいいから助けて~……」
二人やみんながいれば大丈夫になったけど……一人は怖いよ~!!
「ぐずっ……」
これから、どうしよう……。
そう思って、キョロキョロしてた時だった。
「……あれ……?」
目の前に足がある……。
顔をあげると……ベコニアちゃんと同じ、色の違うプリシアナの制服を着た、ノームの女の子が立っていた。
……ってこの子……。
「……ウィンタースノーのお花畑で見た……?」
「…………」
遠くだったからよく見えなかったけど、でも紫の髪のツインテールは見覚えがあるの……。
「えっと……君は、誰?」
「……ライラ」
静かな声で女の子……ライラちゃんが名乗ってくれた。
「何してるの?」
「何をしている……お花を見に行く?」
「……へ?」
花……? ここに、花咲いてるのかな?
あ、でもウィンタースノーの花畑もあったし。
「あるなら見てみたいかも」
「あるなら見てみたい……案内する?」
「うん! 案内してー!」
元気よく言えば、コクンって頷いてくれた。
そのままボクの横を通ってスタスタと先に行っちゃった。
「あ! 待ってー!」
この時アユミちゃんや本来の目的をすっかり忘れたボクは、スタスタと歩くライラちゃんの後を追いかけていった。
――――
「……ライラちゃんはお花好きなの?」
「うん」
「ボクも好きだよー。だからプリシアナに入ったんだー。兄ちゃんの学校だし」
「ふーん」
あれからお花畑目指して進んでます。
ライラちゃんって無表情だけど、質問すれば返事してくれるし、相槌も打ってくれる。
思ったよりも良い人です。
「ここのフロアにあるの?」
「フロアにある……ディームとネメシアが探してくれた広い場所?」
「え? 兄ちゃんとネメシアさんが?」
意外な人達が出てきてびっくり……。
というか、なんで兄ちゃんとネメシアさん?
「ディームは私の恩人……。お花育ててみたいって言ったら、ネメシアと相談して、種と場所をくれた」
「へぇ……」
兄ちゃんが恩人かあ……。
それにわざわざ育てる場所も探してくれたなんて……やっぱりネメシアさんっていい人?
「……着いたよ」
「……わあ……っ♪」
着いた先は予想以上に綺麗だった。
魔法で温度を調節しているのかな? いろいろな花が洞窟の一角に咲いていた。
「綺麗~」
「綺麗……ディームとネメシアが、いろいろな種を用意してくれたから?」
「そうなの? でもこんなに綺麗な花を咲かせるライラちゃんって、すごく優しい子なんだね」
「……優しい……?」
「うんっ♪」
ネメシアさんもそうだけど、じゃなきゃ、綺麗な花は咲かないしっ。
「優しい……ネメシアも言ってた。ライラの心は純粋で美しいって。我々とは不釣り合いな程に……って」
我々……闇の生徒会のこと?
「ライラちゃんは、他の学校からそっちに行ったんじゃないの?」
「ううん。私……学校に行ったことない、と思う」
「……思う?」
「思う……ディームに拾われる前の記憶、ないから?」
それ……記憶喪失? だから兄ちゃんが恩人?
「兄ちゃんから守られてるんだ……やっぱり兄ちゃんは優しいなあ」
そうだよ……兄ちゃんが闇の生徒会にいるのも、きっと他に訳があるんだよ! きっと!
「守られてる……私、自分の身は自分で守ってる?」
「そうじゃなくって~。えっと、精神的な! ライラちゃん、記憶喪失で大変でしょ? 守るにもいろいろあるんだし」
「いろいろ?」
「うん!」
小さく首を傾げてるライラちゃんに頷く。
記憶喪失だからかな? よくわからないって顔してるけど。
「……守るにも、いろいろ……」
「うん。あ! じゃあボクもライラちゃんを守るよ! 兄ちゃんだって助けてるんだし!」
「私を守る……私とあなたは、敵同士?」
ますます混乱してるっぽい。
ライラちゃんが闇の生徒会なのはわかってる。
色の違う制服だし、兄ちゃんとネメシアさんと一緒にいるしね。
「うん。でもライラちゃん優しいし!」
「優しい……?」
「アマリリスちゃんやベコニアちゃんだって、闇の生徒会にいるけど、それでも助けようとしている人だっているんだよ? だから問題無いよ!」
「…………」
そう言うとライラちゃんは目を丸くする。
大丈夫大丈夫! アユミちゃんやブロッサムも事情を話せば――。
「……って、あ~~~ッ!!」
「……?」
そうだ~~~!! ボク、二人とはぐれちゃったんだあ!!
「どうしよう……(泣)」
「……どうかしたの?」
ライラちゃんがキョトンしている……。
そうだね……ライラちゃん知らないんだし……。
「ボク……仲間とはぐれてた……どうしよ~……」
「よしよし」
小さい子をあやすみたいに頭を撫でられました。
……複雑ー……←
「……どこに行く気だったの?」
「えっとぉ……まず、純潔のオルゴールのシリンダーを探そうと北のポイントを回ろうとして……そっからはぐれた(泣)」
「回ろうとしてはぐれた……迷子だった?」
「迷子です……地図読めなくてわかりません……ライラちゃん、助けて……」
「…………」
駄目元でライラちゃんに助けを求めました。
これでダメだったら本当にどうしよう……。
「…………」
「……あ、あの……」
「……東」
「へ?」
東って……?
「……東のポイントで待っていれば、多分会えると思う。そこが北のポイントから一番遠い。……宝具は予言の子が持っているはず。シリンダーは宝具が無いと取れないから」
「そ、そっかぁ!」
そっか! それなら待っているバロータたちの所に行けば――。
「……ってボク……現在地わかんない……」
「…………」
行きたくてもいけないよ~……(泣)。
そう思ってたら、スッと手を差し出された。
「……?」
「……行く?」
「……いいの?」
「いい……特に命令無いから?」
「ライラちゃん……ッ!」
やっぱライラちゃんっていい人だ……!
一気にぱぁっと笑顔が出てきた。
「お願いしますっ!」
「うん」
手を取っててこてこと進む。
早くみんなと合流しなくっちゃ!