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三学園交流戦・後編

「そっかぁ。それなら遠慮なくできるね!」

「壊しちゃうかと思ってたけど……そういうことなら、ブーゲンビリア、暴れるわ!」

「待て待て待て! 暴れすぎも勘弁してくれ!」

 張り切るレオ、意気込むブーゲンビリアを制するブロッサム。
 たしかにわかる。この二人怖いし……特にブーゲンビリアの腕力が←

「……とりあえず、始めていいのか?」

「構いませんよ。思う存分戦いなさい、プリシアナの子らよ」

「はあ……」

 校長が頷いたのを確認し、俺らは互いに武器を構える。
 ……どっちかと言うと、思う存分暴れなさいって感じなんだが……まあいいや。

「アユミ! おまえには負けないからな!」

「はいはい。ま、せいぜい泣きわめくなよ」

 刀を構え、剣を構えるレオと対峙する俺。
 レオのサポートに移れるよう両脇にいるチューリップとブーゲンビリア。
 いつでも魔法を使えるよう、俺の後方にいるブロッサムとシルフィー。

「では……一回戦、開始!」

 校長が空間の外から高らかに宣言した。

「いっくぞぉー!」

「来い!」

 真っ正面からやってきたレオ。

 ガッキィイイイン!!

 大振りに振るってきた剣を刀で受け止めると、辺りに響く金属の悲鳴。

「……ッ! 結構やるな……!」

「ボクだってやる時はやるよ!」

 意外と一撃が重たい……。
 優勝パーティに選ばれるだけあるってか。

「く……ブロッサムッ!!」

「わかってる! 行け、シャイガン!」

 さすがにこれ以上来られるのも困る。
 ブロッサムに目配せし、彼にシャイガンを使っていただく。

「うわぁ!?」

「あ」

「レオ!? ――こんのォオオオ!!」

「ちょ、ブーゲンビリア! ――ああ、もう!」

「うわぁあああんっ!!」

 ……イレギュラー&恐れていた事態が起こったな。
 レオの足止めの為のシャイガン。が、それは見事レオに当たり結果ブーゲンビリアの特攻とチューリップの攻撃を促すという効果が。そしてそれにシルフィーが怯え、逃げ出す羽目に。

「……どうする?」

「俺はなんでおまえがそんなに冷静なのか聞きたいんだが!!」

 いや、命がかかってる訳じゃないからつい……。
 それに冷静さを失ったらアウトだろう?

「……ふむ。そうだな、ブロッサム」

「なんだよ?」

「囮、よろしく」

「え?」

 戸惑う彼を無視し、俺は餌(ブロッサム)を前に突き飛ばした。

「お、一人! ラッキー♪ 行くぞ! ブーゲンビリア!」

「わかったわ、レオ!」

「ちょ、二人とも!」

「え、違っ……! 来るなァアアアッ!!!」

 案の定、海老で鯛が二匹も釣れました。
 ブロッサムは全力疾走で逃げ出し、レオとブーゲンビリアの二名が彼を追いかける。

「かかったな!」

 すぐに刀を納刀、二人に向かって駆け出す。

「はぁッ!!」

 ガッ! ドゴッ!

「がふッ!?」

「あぁあん!」

 レオの後頭部に鞘を、ブーゲンビリアの膝に回し蹴りを叩き入れた。
 突然の攻撃にバランスを崩した二人は、すぐに床に倒れ込む。

「――ブロッサム!」

「~~~ッ! 後で覚えてろよ!? いでよ、ウィスプ!」

 さすがブロッサム。
 一回呼んだだけで俺の望んだ行動をしてくれた。

「嘘……きゃあ!?」

 ブロッサムのウィスプがチューリップに放たれた。もちろん狙いの軌道はずらしている。
 ……が、ブロッサムのウィスプは強力だからな。
 周りへの爆風であっさり吹っ飛んだ。

「――はい。おしまい」

 チェックメイト。そう言いながらレオに刀を突き立てる。
 剣は遠くに吹っ飛ばしたので、レオの武器はない。

「はうあっ! ま、負けたー……」

 さすがに勝機が見つからなかったのか。
 あっさり負けを認めるレオだった。

「さすが……強いわね!」

「いったた……。手加減無しなのはいいけど、痛いなあ……」

 ブーゲンビリアとチューリップも無理な戦いは控えたらしい。
 そりゃあな。伊達でやってきた俺たちじゃないし。

「今回はボクたちの完敗だ……でもでも! 伝説の武器無しでここまで戦えた自分を、ボクは誉めたいと思うんだ!」

「まあ、たしかに頑張ったな」

 レオにしては、が頭に付くけどよ。

「そうよ! レオも、自分の力だけで英雄になれるはずよ!」

「えへへ、そう? ……うん。ちょー強いアイテムを手に入れて英雄になるのもいいけど、自分の力で最強になるのも悪くないかも」

 ブーゲンビリアの言葉に思うところがあったのか、レオがぶつぶつとつぶやく。

「はあ……ま。何とか勝てたな」

「ああ……アユミのおかげで死にそうになったがな」

「まあまあ。怒ると身体に悪いよ~」

「何もやってねぇおまえが言うな!!」

 勝利の後にも関わらず、ブロッサムのツッコミは絶えることがなかった。
 いや、さすが我らのツッコミ大将!←

「おまえ、今ムカつくこと考えただろ!?」

「はて、何のことやら」

 そしてどうしてこいつはこんなに勘が鋭いんだ。適当に聞き流したけど。

「うわぁ、おまえら元気だな」

「主にブロッサムがな」

 たしかに、とレオが頷いた。
 そのあと、俺ら三人を見回しながら言う。

「セルシア君たちはめちゃくちゃ強いと思うけど、ここまできたからには頑張れよ!」

「ふっ……当然だ。優勝がこの俺らが掻っ攫うからな!」

 仮想空間から出るレオに向かって叫んだ。
 直後、俺らの身体に変化が起きる。

「あれ? なんか疲れが減ったような……」

「先生が言ってたやつか? シードのパーティと戦う前に全回復するって……」

「……つーことは……」

 ブロッサムとシルフィーの言葉に、ふと後ろに振り返った。
 そこには――予想通り、セルシアパーティの姿があった。

「よ、シルフィー。逃げたかったら逃げてもいいぜ?」

「に、逃げないよ~! ――一緒に、優勝するもん!」

 からかうバロータ、それにむきになるシルフィー。

「……あなたと決勝で戦うとは思ってもみませんでしたよ。ブロッサム」

「うっ……ふ、フリージア……」

 相変わらず氷点下一直線の視線で睨むフリージア。それに一歩後ずさるブロッサム。

「……やはり、君が勝ち上がってきたね。アユミ君」

「ああ。ここまできて負けるなぞ、俺自身が許さんからな。セルシア生徒会長?」

 そして――どこか納得した表情のセルシア。
 余裕の表情で頷き返す俺。
 決勝ということもあり、周りのギャラリーどものボルテージも上がっていく。

「シルフィー。おまえはバロータとやってこい。……ああ、でも無茶はするな。引き付けるだけでいい。やつもノってくれるだろ」

「い、イエッサー!」

「……ブロッサムはフリージアとやってこいよ。お互い、なんか思うところあるんだろ?」

「アユミ……ありがとう」

「気にするな。……そのかわり、大物は俺がいただくぜ?」

 ふっと笑いながら真っ正面――セルシアと目を合わせる。

「フリージア。バロータ。……僕は、彼女と戦う」

「セルシア様の御心のままに。……私も、少々用のある人物がいますので」

「やり過ぎるなよ、フリージア。……ってことは俺はシルフィーか。少しやりづらいな……」

 言いながら三人、それぞれの相手に向き合った。
 自然と、周りに緊張感が走る。

「……言っとくがセルシア。俺はガチでやり合うからな。……腕一本足一本折れても文句言うなよ」

「僕はむしろ嬉しいよ。……それだけ本気で、全力で僕と戦ってくれるってことだろう?」

 俺の言葉にも動じず言うセルシア。
 それにふっと笑みをこぼす。

「後悔しても――恨むんじゃねぇぞッ!!」

「君には――負けないよ!!」

 ――瞬間、俺の刀とセルシアの剣が交わった。
 それと同時に残りの彼らもまた、戦いに入った。
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