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三学園交流戦・後編

 プリシアナでシルフィーが逃げ回り、ドラッケンでブロッサムが一体ずつゴーレムを仕留め、タカチホでアユミがシキガミの首の斬り取りを行って数時間後――。

 ヒュー……バァァァンッ!!

 交流戦終了の合図である花火が打ち上がった。

「む、終わりか」

 三体目のシキガミを意気揚々とぶった斬り、魔宝石を学校に転送した後、終了の花火がなったのを耳にした。
 くそっ……意外と数が少なかったな。

「シルフィー……は期待出来そうにないから、ブロッサムが頑張ってくれるとありがたいな」

 シルフィーは性格さえ何とかすりゃ、バッチリなんだがなあ……。
 ブロッサムは結構信頼してる。なんだかんだで真面目だし、やる時はやってくれる。

「……ま、結果は学院だな」

 どのみち戻らなきゃ単位はいただけないし。
 そう思いながら、飛竜召喚札を高く掲げた。

 ――――

 プリシアナ学院

「アユミ!」

「うぇ~ん! アユミちゃあん!」

「ぐほっ!?」

 学院に着くと、俺に気づいたブロッサムと俺にタックルかましたシルフィーに会った。
 つか……なんで俺、毎回タックルされんの?

「……、離れろシルフィー」

「あぅぅぅ~」

 首根っこを引っつかみ、ベリッと俺からシルフィーを引きはがしたブロッサム。
 ……微妙に不機嫌な顔で。

「ふぅ、助かった……しかし何故怒ってるんだ?」

「う……べ、別に怒ってる訳じゃ……」

 俺が聞けば何故か言い淀んだ。
 ……んー……怒ってないなら……。

「……ああ。ヤキモチってか」

「な……!!?」

 わぉ、すんげー真っ赤に。
 それはもう、見ていて面白いくらいに←

「だ……っ、誰が、シルフィーなんかに……ッ!」

「くっふふふ……っ♪ 目ェ反らしながら言ったって説得力ゼロだぜ?」

「やかましい!」

 ホント可愛い男だなぁ……ツンデレ学科行けば超優秀な成績もらえんじゃね?

「んなことあるかッ!! つか行くかッ!」

「なんでわかった!?」

「声に出てんだよ!」

 おっと……俺とした事がうっかり……。

「ほら! もう閉会式始まるから行くぞ!」

「へーい」

「はーい!」

 真っ赤に染まるブロッサムの顔を面白く見ながら、俺とシルフィーは大聖堂へと駆け込んでいった。

 ――――

 大聖堂じゃ、ほとんどの生徒がすでに揃っていた。
 それぞれ思い思いの表情でパイプオルガンを弾く校長を見ている。

「相変わらず見事だなあ……」

「まあな……」

 つか、よくもまあ毎回毎回……感服するよ、ホント。

「校長。実行委員会からターゲット達成のデータが送られて来ました!」

「そうですか。今年の栄冠はどの学校の手に?」

 そんな実行委員会あったのか、と思いつつ、「今年の優勝校は……!」歓喜に満ち溢れたグラジオラス先生に注目する。

「……我ら、プリシアナ学院です!」

 その報告に「素晴らしい……皆さん、本当によく頑張りましたね!」と校長の顔にも慈悲溢れる笑みが浮かんだ。

「同時に、最高得点パーティの発表です」

「あいあーい! おめでたい席なのに、そーんな暗い声じゃダメですよ~っ」

 言ったな、リコリス先生……。
 リリィ先生、ショックで半泣き状態じゃん……。

「張り切って発表しまーす! 今年の最高得点パーティは~……なんと! 3組あります! 8体倒したので同点です!」

 8体倒して3組も!? おいおい。どんだけ少なかったんだよ、ターゲット。

「まず1組目は! セルシア君パーティ!」

 先生が優勝パーティの書かれたメモを読むと、スポットライトがセルシアたち3人を照らした。
 つかそんなのいつ点けたんだよ。そしてよくセルシアたちの座ってる場所がわかったな、おい。

「おめでとうございます! セルシア様!」

「さすがだな、セルシア」

「僕一人の力じゃない。二人とも、ありがとう!」

 立ち上がりながら二人の歓声を笑顔で受け止めるセルシア。
 ……年相応で可愛らしい笑顔をするな、セルシアも。

「そして2組目は~……! レオノチス君パーティ!」

「これには先生もちょっと驚きです!」とまたも率直な意見を言うリコリス先生。
 ……まあ、俺も少し驚いてるけどな。

「や、やったー! 1回お腹壊したけど、そのあとちょー頑張った甲斐があったー!」

「主に戦ってたのは、レオに尻叩かれてたブーゲンビリアだけどね~」

「無我夢中だったけど……最高得点だなんて、嬉しい!!」

 同じくスポットライトに照らされながら、レオたちも立ち上がって喜んでいた。

「そして! 最後の3組目ーは~~~っ……!!」

 勿体振るように溜めて言うリコリス先生。
 それを見ながら、俺は両脇にいる野郎二人に話し掛ける。

「あと1組か……。3種類のターゲットの合計で言ってんだよな? 俺はシキガミを3体倒したが……おまえたちは?」

「あー……結構ゴーレム少なかったから、俺も3体だ。シルフィーは?」

「えーっと、いつの間にか2体のモンスターに囲まれちゃったけど、気づいたら2体とも倒しちゃった!」

 合計8体か……ん? って事は、まさか……。

「最後は……なんと! 転入早々見事な成績を修めたアユミさんのパーティですーーーッ!!!」

 リコリス先生のマイク越しの大声とともに、俺らを照らし出すスポットライト。
 ……ってマジで俺ら!?

「ま、マジかよ……?」

「やったー! 優勝だ~♪」

「え、何? マジで優勝?」

 呆然とするブロッサム、跳ねて喜ぶシルフィー。そして至ってドライな俺。
 ある意味不協和音な俺らをスポットライトが照らし出した。

「アユミ君ならやると思っていたよ」

「同点って悔しいかと思ってたけど、セルシア君とアユミと一緒だと、なんだか楽しいなー!」

 セルシアとレオからも賞賛をいただいた。
 ……まあ。たしかに、悪くはないな。うん。

「これはこれで悪くはない、かな?」

 俺自身で納得し、うんうんと頷く。

「……楽しそうにしているところ悪いけど……そのままじゃ済まないのよ」

 ――時だった。
 リリィ先生がいつもの声音で、一気に俺らを奈落に突き落としたのは。

「り、リリィ先生……!? ま、まさか、地獄のトライアスロンがこのあと待ってるとか……」

「まあ……全然違うとも言えないけど……」

「ひぃぃ! ブーゲンビリア、怖い!」

 青ざめたレオの言葉にこくりと頷く先生。それに震えるブーゲンビリア。
 俺はおまえの方が怖いけどな、ブーゲンビリア。

「リリィ先生。生徒たちをあまり脅かさないでください」

「ぐ、グラジオラス先生。あの……どういう意味で?」

 苦笑するグラジオラス先生に安堵したか、ブロッサムが恐る恐る先生に話し掛けた。
 先生はリリィ先生から俺ら優勝パーティたちに視線を向ける。

「同点のパーティが出た時には優勝決定戦を行い、最優秀パーティを決めることになっているんだ」

「……要するに。俺ら3パーティのバトルロワイヤルに移行って訳な」

 その言葉に、レオ、セルシアたちが息を飲んだのは言うまでもない。

「本来は1対1で行われる優勝決定戦だが、今回は3パーティだ。この場合、総当たり戦は行わず、1パーティをシードとする慣例になっている」

「しっつも~ん! それだと、そのパーティは有利じゃないんですか~?」

 ぴょこぴょこと跳ねるシルフィーが笑顔でたずねた。
 たしかにそれだと、一回戦の勝者は無傷のシードパーティとやり合うってことになるんだが。

「いや。一回戦の勝者は完全に回復してから二回戦となる。べつにシードだから特に有利、という訳でもないんだ」

「精神的に疲れそうだが……やるしかないか」

 ここまで来たんだ。ならば優勝はこの際いただくのが妥当だよ。

「ちなみに組み合わせはどうやって決めんだ?」

「それは私の占星術で決めるのが伝統となっています。少々待ってください」

 俺のつぶやきに答えたのは校長だった。
 校長はいつの間に出したのだろう、水晶玉に両手を翳し、呪文を詠唱し始める。

「始原の学園に開きし学びの神々よ……この聖なる戦いに貴き教鞭を!」

 聞き慣れない呪文を唱えると、水晶玉から輝きが放たれた。
 眩しい……何も見えないんだが。

「……決まりました。一回戦は――アユミ君パーティ対レオノチス君パーティ。その勝者がセルシアパーティと対戦し、最優秀パーティを決定することとします」

 水晶玉から顔を上げ、校長が俺らに告げた。
 その言葉を皮切りに、俺ら3パーティの三つ巴バトルの幕開けが起こる。

「よし! 負けないからな!」

「ああ。僕も全力を尽くそう」

「ここまで来たんだ。優勝は俺らが掻っ攫うからな」

 セルシアたちはすでに退避していた生徒や先生とともに下がった。
 ……つか、ここで戦うのか?

「……先生。ぶっ壊れる可能性大なんですけど」

「大丈夫。校長が今、空間魔法を発動させた。派手に暴れても仮想空間内でのことだから問題無い」

「いつの間に……つかそれ、俺ら閉じ込めたってこと?」

 校長……ある意味スパルタだ……。
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