闇の迷宮
とまあ、そんなこんなでモンスターを薙ぎ倒しつつ、負傷者に薬を配り歩く。
モンスターの動きも慣れたし、このまま救護活動を順調に進めればすぐ終わるだろう。
「……そう。順調だったら、な」
「おまえ……独り言言ってる場合じゃないぞ……」
ボソッとつぶやく俺、呆れと諦めが混じった表情のブロッサム。
シルフィーは涙目ながら魔法の乱射をしている。
「ああ……まさか、最後の最後で出てくるとは、な」
言って俺は目の前の――虫のような大型モンスターを見つめた。
ダンゴムシみたいな外殻、芋虫みたい胴体。極めつけにでっかい口。
さらにのその背後や周りには三角錐状の岩みたいなモンスター・スイが何匹が浮かんでる。
「明らかにゴーレムよりやばそうだな。状況も含めて」
「当たり前だ! こんなんどうやって勝ち抜けと!?」
「セルシアたちはいない。先生方も奥の方。どのみち囲まれてるから助けを呼べない……まさに崖っぷちだな」
「びえぇええん!!」
事実を口にするとさらにシルフィーが泣きわめく。
……まあピンチなのは間違いナッシングなのよ←
「……どのみちボスは潰さないとイカンだろ。元凶は俺がやるから、おまえらは周りのザコをよろしく」
「ザコって……ってかおまえ一人でできるわけないだろ!?」
「できるできないじゃない」
刀を構え、岩虫(俺命名)を睨みつける。
「――やるかやらないか、だ」
「……っ。――わかったよ」
「う、ゔん(泣)」
苦虫潰したような顔をしたが、ブロッサムも杖を構えた。
シルフィーも一応やる気になったっぽい。
「よし! やるぞ!」
言いながら抜刀しつつ、モンスターに突撃していった。
スイが矢のように襲ってきたけど、そこはひょいひょいっと右へ左へ避けていく。
「シャイガン!」
「クエイガン~!」
加えて背後から二人の援護だ。
特にシルフィーの土の魔法がよく効いているみたいだ。
「沈め!」
敵の攻撃をくぐり抜け、岩虫の胴体に刀を突き付けた。そしてそのままズバッ! と間接の一部を斬り捨てる。
「ギャオォオオオ!!?」
真ん中から下の胴体をへし折ってやったせいか、残る上半身がバタバタと暴れ回り出した。
「グォオオオ!!」
「うわっぷ……!?」
突如でっかい口腔から、土の嵐……ってかクエイガンを使ってきやがった!
アレ? 何コレ、デジャブ?
「グォオオオッ!!!」
「ぐあッ!?」
「うわ~ん!」
クエイガンの嵐はスイも巻き添えに襲い掛かり、シルフィーは吹っ飛ばされ、俺は土のかけらでダメージを負わされていく。
「アユミ! シルフィー!」
唯一軽傷なのはブロッサムだけだ。
攻撃魔法を受けないよう、飛んでいたのかもな。
「来るなッ! おまえまで巻き添え受ける!」
「な……ッ!」
シルフィーは壁まで吹っ飛ばされ、頭を打ったのか呻いて床に伏せっている。
それが幸か不幸か、あの岩虫は奴を見ていない。狙われているのは――俺。
「くっ……俺を食うってか……」
「ギギギ……!」
少しずつ、ズルズルとその身体を俺まで這っていく。
俺の気力が先か、奴に食われるのが先か……。
「アユミ……っ」
「だから来るな……おまえは――俺が守ってみせる」
「…………!」
息を飲むブロッサム。
魔物とまであと5メートル――4メートル……。
(ああ……終わり、か……?)
身体に力が入らない……。
ここまでか、と思った――その時だった。
「……!?」
「~~♪ ――♪」
歌が、空間に響き渡る。
そして同時に、身体に少しずつ力が満ちていく。
「これは……まさか――」
「うわあ! ブロッサム、歌魔法使えるんだあ!」
同じく体力が回復したらしいシルフィーが叫ぶ。
これはアイドル学科だけが使える魔法……歌魔法“生命の歌”だ。
たしか……徐々に回復するっつーやつだっけ……?
(アユミ……早く……!)
歌魔法を歌いながら、ブロッサムが俺に視線を向けてきた。
歌魔法はその名の通り、歌っている時しか効果が出ない。徐々にだが、体力が回復している今がチャンスだった。
「グォオオオッ!!!」
「いい気になるんじゃねぇ! この野郎ッ!!」
モンスターの咆哮も恐れず、素早く身体を起こす。
テノールの歌声を支えに、再び刀を握りしめた。
「うぉおおおっ!」
全体重を乗せて、モンスターの頭に刀を突き刺す。
めりめりと気色悪い嫌な音を出しながら、岩のような肌の一部をえぐるように斬り取った。
「シルフィー! やっちまえ!」
「い、イエッサー!」
クエイガンを撃たせないよう、立て続けに刀を奮い続けながらシルフィーに叫ぶ。
「水さ~ん! もうどうにかして~! セイレーン!」
素早く詠唱(呪文はアレだが)した後、水属性の上級魔法が放たれた。
ヘタレだが、シルフィーはやはり魔法に関しては天性の才能があるな。
「これで……トドメだ!!」
津波とも見れる水の嵐に悶えるモンスターに素早い居合の一撃を見舞えた。
モンスターは真ん中から真っ二つに斬られ、納刀と同時に、静かに二つに裂けた。
「はぁ……っ、はぁ……っ。……やった、か?」
「げほっ……。みたいだな」
「た、助かったよぉ~(泣)」
俺は息を切らせ、ブロッサムは咳込みながら、シルフィーはへなへなと床に座り込みながらそれぞれつぶやいた。
「……つか、ブロッサム……おまえ、光術師学科じゃなかったっけ?」
「メインは光術師だ。その……サブ学科が、アイドル学科なんだよ」
「あー、なるほどなるほど。……で。なんで今まで黙ってた訳?」
俺がたずねれば、ピシッと石化したみたいに固まった。
視線をそらしながら「あー……えーっと……」だなんてつぶやいてる。
「言え、ブロッサム」
「う……。……しい、から」
「聞こえねぇよ。ワンスモア!」
「だから! は……!」
聞き返せば、またすぐ小声になって。
「は?」
「…………。恥ずかしいから、だ……」
蚊の鳴くような小声+顔を真っ赤にして、そう言った。
……つか何こいつ? 恥ずかしいからって……ツンデレ学科でも通ってるのか?←
「……の割には良い美声だったが」
「うん♪ ブロッサム、綺麗な歌声だったよ~♪」
「そ、それ以上言うなっ!」
林檎のように真っ赤になって怒鳴るように叫んだ。
何こいつ――男のくせにめちゃくちゃ可愛いんだけど! 同性愛に走る男の気持ちがよくわかるんだけど!←
ドタドタドタ……ッ!!
「おい! なんかものすごい派手な音が聞こえたんだが大丈夫、か……?」
「あれ? バロータだ~」
と、ここでバロータ並びにセルシア、レオノチスたちがやってきた。
周りに転がるたくさんの倒されたモンスターたちを見て、全員目を丸くしていた。
「これ……まさか、三人だけでやっつけちゃったの!?」
「まあな。……一部はそこのデカブツがザコども巻き込んで魔法をぶっ放したせいもあるけど」
目を丸くしているチューリップに俺が答える。
俺らが倒したのは数十匹だけど、嘘は言ってないし。
「すごい……これだけのモンスターを、三人だけで倒したなんて……」
「えへへ♪ ブロッサムがう「待て!」むごっ!」
セルシアのつぶやきにうれしそうに言おうとしたシルフィーの口を、ブロッサムが素早く塞いだ。
そして俺とシルフィーに素早く耳打ちする。
「俺がアイドル学科に入ってることはセルシアたちには黙ってろ! 頼むから!」
「……なんでだよ」
「なんでもだ! 知らねぇんだよ、アイツら!」
答え言っちゃってんだけど。
まあ不毛なやり取りになるのはわかりきっているので黙っておくが。
「う……? 何を言いかけたんだ?」
「いや、気にするな!」
「え……? あ、うん……」
ブロッサムの焦り様に首を傾げるが、とりあえず頷く天然生徒会長。
……真逆、と言っても良いかもな。この二人。
「……あ。負傷者は?」
「時間が掛かりましたが、すべて終わりました。もう大丈夫です」
「そっか」
フリージアの報告に安堵する。
誰かが犠牲に、なんて冗談じゃないからな。
「わわっ、すごっ! 真っ二つだ! ねぇねぇ! 伝説の武器とか手に入れたの!? それだったらボクにちょうだいよ~っ!」
「んな訳ねぇだろ」
「伝説の武器が出るには早過ぎでしょ……」
ここでレオノチスが岩虫を見て興奮し出した。
……どんだけ夢見てんだこいつは。
「すごいわねぇ、アユミさん……強くて綺麗でかっこよくって……。ブーゲンビリア、憧れちゃう!」
「はあ!? おい、ブーゲンビリア! おまえの憧れは、このレオ様じゃないのか!?」
熱烈な視線を向けられると、レオがわめき出した。
どんだけお子様!?
「そ、そうだけど……アユミさんも素敵だから……」
「だからって浮気するのか! この尻軽め~っ!」
「ちっ、違うわ! 私はレオ一筋よっ!」
「…………」
あれ? この浮気現場遭遇みたいな会話は何?
レオノチスが夫役でブーゲンビリアが言い訳染みた妻役で俺が浮気相手で……。
うっ……自分で想像しておいて気持ち悪くなってきた……。
「ちょっと……お二人さん、怪しい会話はやめてよ。変な目で見られるでしょー?」
チューリップが苦笑しながら二人の仲裁に入る。
たしかに傍から聞けば、引いちゃうような会話――。
「いや、僕は愛情に垣根はないと思っている。気にしないでくれ」
「私も、セルシア様のお考えに従っております」
「俺もそういうの気にしないぜ? それに、おまえらならお似合いだと思うし……」
……上からセルシア、フリージア、バロータのセリフ。
おまえら……器が広いな……。そっちの方にびっくりなんだが……。
「そっ、そんな……お似合いだなんて……」
「ばっ、ばか! 気色悪いこと言うなよな! ボクが言ってるのはブーゲンビリアがボクの子分だって意味だよ!」
真っ赤になって照れてるブーゲンビリアに「おまえも照れてるんじゃない!」と言ってレオノチスが殴った。
「きゃあっ! ご、ごめんなさい、レオ!」
「うるさい、うるさい! くらえ! レオ・キーック!!」
「いやああんっ!!」
ドロップキックを決められ、気色悪くくねりながら倒れるブーゲンビリア。
……ある意味ホラーだ。
「……戯れているようにしか見えないんだが……」
真面目な顔して言うな、生徒会長。
「……ブロッサム。生徒会長をマジで脳と眼科の病院に連れて行っていいか?」
「やめろ。……フリージアに殺される……」
……ですよねー←
だって後ろから一瞬殺気が走ったし。
「アユミちゃあん、ブロッサム~。終わったなら帰ろうよ~……」
「そうだな。帰るか」
都合良くシルフィーが話しかけてきたので頷いておく。
そして一斉に頷いた後、この場にいる全員で学校へ戻っていった。
モンスターの動きも慣れたし、このまま救護活動を順調に進めればすぐ終わるだろう。
「……そう。順調だったら、な」
「おまえ……独り言言ってる場合じゃないぞ……」
ボソッとつぶやく俺、呆れと諦めが混じった表情のブロッサム。
シルフィーは涙目ながら魔法の乱射をしている。
「ああ……まさか、最後の最後で出てくるとは、な」
言って俺は目の前の――虫のような大型モンスターを見つめた。
ダンゴムシみたいな外殻、芋虫みたい胴体。極めつけにでっかい口。
さらにのその背後や周りには三角錐状の岩みたいなモンスター・スイが何匹が浮かんでる。
「明らかにゴーレムよりやばそうだな。状況も含めて」
「当たり前だ! こんなんどうやって勝ち抜けと!?」
「セルシアたちはいない。先生方も奥の方。どのみち囲まれてるから助けを呼べない……まさに崖っぷちだな」
「びえぇええん!!」
事実を口にするとさらにシルフィーが泣きわめく。
……まあピンチなのは間違いナッシングなのよ←
「……どのみちボスは潰さないとイカンだろ。元凶は俺がやるから、おまえらは周りのザコをよろしく」
「ザコって……ってかおまえ一人でできるわけないだろ!?」
「できるできないじゃない」
刀を構え、岩虫(俺命名)を睨みつける。
「――やるかやらないか、だ」
「……っ。――わかったよ」
「う、ゔん(泣)」
苦虫潰したような顔をしたが、ブロッサムも杖を構えた。
シルフィーも一応やる気になったっぽい。
「よし! やるぞ!」
言いながら抜刀しつつ、モンスターに突撃していった。
スイが矢のように襲ってきたけど、そこはひょいひょいっと右へ左へ避けていく。
「シャイガン!」
「クエイガン~!」
加えて背後から二人の援護だ。
特にシルフィーの土の魔法がよく効いているみたいだ。
「沈め!」
敵の攻撃をくぐり抜け、岩虫の胴体に刀を突き付けた。そしてそのままズバッ! と間接の一部を斬り捨てる。
「ギャオォオオオ!!?」
真ん中から下の胴体をへし折ってやったせいか、残る上半身がバタバタと暴れ回り出した。
「グォオオオ!!」
「うわっぷ……!?」
突如でっかい口腔から、土の嵐……ってかクエイガンを使ってきやがった!
アレ? 何コレ、デジャブ?
「グォオオオッ!!!」
「ぐあッ!?」
「うわ~ん!」
クエイガンの嵐はスイも巻き添えに襲い掛かり、シルフィーは吹っ飛ばされ、俺は土のかけらでダメージを負わされていく。
「アユミ! シルフィー!」
唯一軽傷なのはブロッサムだけだ。
攻撃魔法を受けないよう、飛んでいたのかもな。
「来るなッ! おまえまで巻き添え受ける!」
「な……ッ!」
シルフィーは壁まで吹っ飛ばされ、頭を打ったのか呻いて床に伏せっている。
それが幸か不幸か、あの岩虫は奴を見ていない。狙われているのは――俺。
「くっ……俺を食うってか……」
「ギギギ……!」
少しずつ、ズルズルとその身体を俺まで這っていく。
俺の気力が先か、奴に食われるのが先か……。
「アユミ……っ」
「だから来るな……おまえは――俺が守ってみせる」
「…………!」
息を飲むブロッサム。
魔物とまであと5メートル――4メートル……。
(ああ……終わり、か……?)
身体に力が入らない……。
ここまでか、と思った――その時だった。
「……!?」
「~~♪ ――♪」
歌が、空間に響き渡る。
そして同時に、身体に少しずつ力が満ちていく。
「これは……まさか――」
「うわあ! ブロッサム、歌魔法使えるんだあ!」
同じく体力が回復したらしいシルフィーが叫ぶ。
これはアイドル学科だけが使える魔法……歌魔法“生命の歌”だ。
たしか……徐々に回復するっつーやつだっけ……?
(アユミ……早く……!)
歌魔法を歌いながら、ブロッサムが俺に視線を向けてきた。
歌魔法はその名の通り、歌っている時しか効果が出ない。徐々にだが、体力が回復している今がチャンスだった。
「グォオオオッ!!!」
「いい気になるんじゃねぇ! この野郎ッ!!」
モンスターの咆哮も恐れず、素早く身体を起こす。
テノールの歌声を支えに、再び刀を握りしめた。
「うぉおおおっ!」
全体重を乗せて、モンスターの頭に刀を突き刺す。
めりめりと気色悪い嫌な音を出しながら、岩のような肌の一部をえぐるように斬り取った。
「シルフィー! やっちまえ!」
「い、イエッサー!」
クエイガンを撃たせないよう、立て続けに刀を奮い続けながらシルフィーに叫ぶ。
「水さ~ん! もうどうにかして~! セイレーン!」
素早く詠唱(呪文はアレだが)した後、水属性の上級魔法が放たれた。
ヘタレだが、シルフィーはやはり魔法に関しては天性の才能があるな。
「これで……トドメだ!!」
津波とも見れる水の嵐に悶えるモンスターに素早い居合の一撃を見舞えた。
モンスターは真ん中から真っ二つに斬られ、納刀と同時に、静かに二つに裂けた。
「はぁ……っ、はぁ……っ。……やった、か?」
「げほっ……。みたいだな」
「た、助かったよぉ~(泣)」
俺は息を切らせ、ブロッサムは咳込みながら、シルフィーはへなへなと床に座り込みながらそれぞれつぶやいた。
「……つか、ブロッサム……おまえ、光術師学科じゃなかったっけ?」
「メインは光術師だ。その……サブ学科が、アイドル学科なんだよ」
「あー、なるほどなるほど。……で。なんで今まで黙ってた訳?」
俺がたずねれば、ピシッと石化したみたいに固まった。
視線をそらしながら「あー……えーっと……」だなんてつぶやいてる。
「言え、ブロッサム」
「う……。……しい、から」
「聞こえねぇよ。ワンスモア!」
「だから! は……!」
聞き返せば、またすぐ小声になって。
「は?」
「…………。恥ずかしいから、だ……」
蚊の鳴くような小声+顔を真っ赤にして、そう言った。
……つか何こいつ? 恥ずかしいからって……ツンデレ学科でも通ってるのか?←
「……の割には良い美声だったが」
「うん♪ ブロッサム、綺麗な歌声だったよ~♪」
「そ、それ以上言うなっ!」
林檎のように真っ赤になって怒鳴るように叫んだ。
何こいつ――男のくせにめちゃくちゃ可愛いんだけど! 同性愛に走る男の気持ちがよくわかるんだけど!←
ドタドタドタ……ッ!!
「おい! なんかものすごい派手な音が聞こえたんだが大丈夫、か……?」
「あれ? バロータだ~」
と、ここでバロータ並びにセルシア、レオノチスたちがやってきた。
周りに転がるたくさんの倒されたモンスターたちを見て、全員目を丸くしていた。
「これ……まさか、三人だけでやっつけちゃったの!?」
「まあな。……一部はそこのデカブツがザコども巻き込んで魔法をぶっ放したせいもあるけど」
目を丸くしているチューリップに俺が答える。
俺らが倒したのは数十匹だけど、嘘は言ってないし。
「すごい……これだけのモンスターを、三人だけで倒したなんて……」
「えへへ♪ ブロッサムがう「待て!」むごっ!」
セルシアのつぶやきにうれしそうに言おうとしたシルフィーの口を、ブロッサムが素早く塞いだ。
そして俺とシルフィーに素早く耳打ちする。
「俺がアイドル学科に入ってることはセルシアたちには黙ってろ! 頼むから!」
「……なんでだよ」
「なんでもだ! 知らねぇんだよ、アイツら!」
答え言っちゃってんだけど。
まあ不毛なやり取りになるのはわかりきっているので黙っておくが。
「う……? 何を言いかけたんだ?」
「いや、気にするな!」
「え……? あ、うん……」
ブロッサムの焦り様に首を傾げるが、とりあえず頷く天然生徒会長。
……真逆、と言っても良いかもな。この二人。
「……あ。負傷者は?」
「時間が掛かりましたが、すべて終わりました。もう大丈夫です」
「そっか」
フリージアの報告に安堵する。
誰かが犠牲に、なんて冗談じゃないからな。
「わわっ、すごっ! 真っ二つだ! ねぇねぇ! 伝説の武器とか手に入れたの!? それだったらボクにちょうだいよ~っ!」
「んな訳ねぇだろ」
「伝説の武器が出るには早過ぎでしょ……」
ここでレオノチスが岩虫を見て興奮し出した。
……どんだけ夢見てんだこいつは。
「すごいわねぇ、アユミさん……強くて綺麗でかっこよくって……。ブーゲンビリア、憧れちゃう!」
「はあ!? おい、ブーゲンビリア! おまえの憧れは、このレオ様じゃないのか!?」
熱烈な視線を向けられると、レオがわめき出した。
どんだけお子様!?
「そ、そうだけど……アユミさんも素敵だから……」
「だからって浮気するのか! この尻軽め~っ!」
「ちっ、違うわ! 私はレオ一筋よっ!」
「…………」
あれ? この浮気現場遭遇みたいな会話は何?
レオノチスが夫役でブーゲンビリアが言い訳染みた妻役で俺が浮気相手で……。
うっ……自分で想像しておいて気持ち悪くなってきた……。
「ちょっと……お二人さん、怪しい会話はやめてよ。変な目で見られるでしょー?」
チューリップが苦笑しながら二人の仲裁に入る。
たしかに傍から聞けば、引いちゃうような会話――。
「いや、僕は愛情に垣根はないと思っている。気にしないでくれ」
「私も、セルシア様のお考えに従っております」
「俺もそういうの気にしないぜ? それに、おまえらならお似合いだと思うし……」
……上からセルシア、フリージア、バロータのセリフ。
おまえら……器が広いな……。そっちの方にびっくりなんだが……。
「そっ、そんな……お似合いだなんて……」
「ばっ、ばか! 気色悪いこと言うなよな! ボクが言ってるのはブーゲンビリアがボクの子分だって意味だよ!」
真っ赤になって照れてるブーゲンビリアに「おまえも照れてるんじゃない!」と言ってレオノチスが殴った。
「きゃあっ! ご、ごめんなさい、レオ!」
「うるさい、うるさい! くらえ! レオ・キーック!!」
「いやああんっ!!」
ドロップキックを決められ、気色悪くくねりながら倒れるブーゲンビリア。
……ある意味ホラーだ。
「……戯れているようにしか見えないんだが……」
真面目な顔して言うな、生徒会長。
「……ブロッサム。生徒会長をマジで脳と眼科の病院に連れて行っていいか?」
「やめろ。……フリージアに殺される……」
……ですよねー←
だって後ろから一瞬殺気が走ったし。
「アユミちゃあん、ブロッサム~。終わったなら帰ろうよ~……」
「そうだな。帰るか」
都合良くシルフィーが話しかけてきたので頷いておく。
そして一斉に頷いた後、この場にいる全員で学校へ戻っていった。