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闇の迷宮

「ここが冥府の迷宮……? ……おどろおどろしいところだな」

「まあ死神……リリィ先生が言ってた場所だし」

「うわぁああん! 怖いよぉおっ!!」

「……最悪だ……」

 はい、上から順に俺、ブロッサム、シルフィー、再び俺のセリフだ。
 俺たちはローズガーデンの近くにあるダンジョン――通称“冥府の迷宮”の前にいた。

「不気味だな……つか、セルシアはともかく、レオノチスたちは来ているのか? ブロッサム」

「俺かよ……なんだかんだで来ているんじゃないのか?」

 セルシア、と言うだけで嫌そうな顔をするブロッサム。
 シルフィーは……隅っこでびくぶると震えているだけ。
 ……あ。レオノチスって奴はプリシアナ名物(?)の英雄……もといヒーロー・ヒロイン学科の生徒。一言で言えば……アホの申し子だ←

「たしか……大型モンスターが溢れ出したんだっけ? 奥から」

「ああ。それで、地下施設工事の奴らが負傷したから、薬を届けてほしい……というクエストだ」

「うわぁあん! ボクたち食べられちゃうよぉ!」

「何もしなくていいからおまえはまず黙れ!」

 泣き叫ぶシルフィーの後頭部を殴って黙らせる。
 ……あー。上記の説明通り、このダンジョンの奥からデカイモンスターが現れた……との事らしい。
 で、俺達は負傷者が出たのでその救護、ついでにモンスター退治っつー訳。

「この奥か……行くぞ」

「ああ……」

「うわぁああああん!!! 帰りたいよぉおおおぉーーー!!」

「「…………」」

 負傷者が待ってるので、話し合いもそこそこに俺たちは行く。
 ……泣き叫ぶシルフィーの腕を掴んで引きずりながらな。

 ――――

「――なるほど。たしかに厄介だな」

 ダンジョンに入り込んでわかったが、ここのモンスターは強い。
 シルフィーは戦力外にしかならないのでブロッサムに後衛を任せ、俺が魔物を一閃している。

「おい、大丈夫か? 怪我したなら治すぞ」

「大丈夫だ。ブロッサム、気遣いサンキュ」

「なっ!? ば、バカっ! 違っ……そんなんじゃねぇ!!」

「ブロッサム~、怖いよ~!」

「おまえも翼に絡まるなッ!!」

 ブロッサムはすごく優秀だ。光術師の魔法で攻撃も回復も補助も役に立つ。
 加えてツッコミも高速でさばけるという完璧な男だ!

「……おい。今失礼な事考えなかったか?」

「……さあ? 何の事やら」

 ……ついでに勘もいいな、こいつは。

「アユミちゃあん、ブロッサム~!」

「「帰らんぞ」」

 ブロッサムとハモった。
 ってかまだ言うかこいつ。

「違うよ~! セルシア君とレオノチス君がいるよ~」

「……何?」

「げっ……」

 シルフィーが指差す所を見ると、セルシア組とレオノチス組がいた。
 ブロッサムが隣で嫌そうな顔をしているが、首根っこ引っつかんでグイグイ引っ張っていく。

「よぉ、おまえら。無事か?」

「お! 美少女転入生にブロッサム、それと……シルフィネスト、だったっけ?」

「うん! でもボクはシルフィーでいいよ~♪」

「ハハッ、そうかそうか」

 声をかけるとバロータが返事を返した。
 初めて会うシルフィーは気さくなバロータに即刻慣れ、弟の如くじゃれつき、バロータもわしわしと頭を撫でてる……うん、良い絵面だ。

「あ! アユミ! ここはボクたちが先に着いたんだぞ!」

「ほう? 先に着いて隠れてたのか」

「ちっ、違うよ! 相手の様子を伺ってたんだ!」

 俺がからかえばレオノチス君は真っ赤になって反論してきた。
 あー、面白ェ。

「私たち、あんなモンスターと戦ったことないものね……レオが怖がるのもわかるわ……」

「ばか! 誰が怖がってるって!?」

 今度は超のつくガチムキマッチョなエルフ(男)、ブーゲンビリアに食いついた。
 ……つかどうやったらこんなのに育つんだ、ホント。

「セルシア様、薬を待っている者たちがいます。ここはレオノチスさん、そしてアユミさんたちと協力なさった方がよろしいかと」

「そうだな。今は成績よりも救助が優先だ」

 さすが優等生セルシア。
 セレスティアらしいセレスティアランキングNo.1だ。

「んじゃ、全員で協力するか? シルフィーやレオたちも楽に進めるように」

「そうだね。行こう、レオノチス君!」

「う、うん! さすがボクのライバルたち! 言うことがカッコイイ~!」

 ……うん。シルフィー並に心配だな、レオノチスは。

「セルシアたちが一緒なら百人力だね! アユミたちも気をつけてね!」

「サンキュ、チューリップ。……つー訳で行くぞ、野郎共!」

 ジャーナリストのフェアリー・チューリップのエールを背に受け、俺はブロッサムとシルフィーの首根っこを引っつかんでズルズル引きずって先に進んでいった。

「ちょ……首絞まるだろ――うぐ……ッ!?」

「うぇえええんッ!! もう学校に帰りたいよぉおおお!!!」

 叫び声は無視してな。

「…………。転入生、スゴ……」

「ある意味あいつが一番強くね……?」

 ……チューリップとバロータのつぶやきもな。
 だって……俺、さっさと済ませて帰りたいからな!
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